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愛し、かなし、恋し。  作者: 紀璃人
新しくできた”ともだち”
1/9

第一話 瞳を閉ざした少女

地霊殿で心温まる話が作れれば、とおもいます。

また、書き終わってはいないです。

ちなみに不定期更新で。

地霊殿。

そこには2人のさとりと沢山の動物が暮らしている―。


*****


 冬の地霊殿。間欠泉がらみでひと悶着あった後のこと。


 古明地さとりはロッキングチェアに揺られながら膝の上の黒猫を撫でていた。とくに理由も目的もなかったがこうして何も考えない時間も必要だとは思っている。ただ、今回は疲れてしまったのだろう。久しぶりに弾幕勝負をした事だし。また、お燐がこの異変を起こす前に相談してくれなかった事も心のどこかで気にしていた事もあるのだろう。ふと喉が渇いている事に気が付いた。こうして椅子でぼーっとし始めてから随分時間がたっていた。

「お燐、ちょっとどいてくれるかしら?」

 そう声をかけると黒猫は音もなく降り、少女のなりをとった。

「どうしました?さとり様」

「ちょっと珈琲でも、と思ってね」

「言って下さったら―」

「いいのよ。淹れる時の香りも楽しみたいから」

「お燐ー!」

 さとりがそう返したと同時に入ってきたのはお空だった。彼女は突然入ってくるとお燐に抱きつき、彼女の髪の毛をワシャワシャとかき乱した。

「わっ!ちょっと…」

「お燐~遊ぼ?」

「分かったからその手を止めなよ」

「わしゃわしゃ~」 

「止めなってば!」

「うにゅ?」

 二人が騒がしくじゃれあい始めたのでさとりは微笑ましく眺めていたが、ロッキングチェアでくつろぐ気にもなれず、自室で読書をする事にした。


*****


 さとりは自室の明かりを灯し、本棚から適当に抜き出した本を読み始めた。

(そう言えばこのミステリー小説はまだ手をつけていなかったわね…。)

 どれくらい時間が経っただろうか。

 珈琲を飲もうとしてカップがからだという事に気が付いた。淹れなおそうと思い、読書を中断した。しおりを挟もうと机の上のペン立ての横に手を伸ばして―


 写真立てに目が行った。


 写真には二人の少女が写っている。一人はさとり。もう一人は少し癖っ毛の人懐っこい笑顔を浮かべた覚の少女。彼女はさとりの腕に抱きつくようなかたちで写っていた。彼女の名は古明地こいし。さとりのたった一人の妹。

 しかし今の自宅である地霊殿にこいしの姿はない。いや、もしいたとしても気づく事が出来ない。


 彼女が笑わなくなってしまったのはいつだっただろうか。

 彼女が暗い顔をする様になったのはいつだっただろうか。


 彼女は他の妖怪の心を読む事で不快に思われてしまう事を知った。

 彼女は他の妖怪の心を読む事で自分の心もまた傷つく事を知った。


 だから彼女は第三の瞳を閉じた。

 だから彼女は自分の心を閉じた。


 それから彼女は誰にも気づかれない様になった。他人の無意識下で行動するようになった。今では誰にも関わらず、一人放浪したりしている。時たま地霊殿に帰ってきている様だが姿を見せてはくれない。


 彼女を最後に見たのはいつだっただろうか…。


 さとりは写真立ての見つめたまま、暫く立ちつくしていた。


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