追跡⑥
第82話 「追跡⑥」始まります。
時は入学式の日に遡る。
組会の時はあれだけ絡んできたハリソンも、弥生の言葉が、訊いたのか其れとも実践しているのか不明だが、
大人しくしている。
「ねぇ彼まだ付いて来るね」
弥生がうんざりしながら聞いてきた。
「まぁ、付いて来るだけならいいんやないか、まぁ余程弥生が怖かったんじゃないか。あの時威圧出してたやろ」
「あは、やっぱじっちゃんには気付かれていたかぁ」
「弥生に勝てる人がいるなら見てみたいわ。あっ」
由紀は余の顔見て、
「居たわ」
余は孫娘と妻に挟まれ、何故か連行されている。
「で、二人して腕を絡ませているのかな?」
「「護衛です」」
二人揃って返って来た返事に、余の同組生達が苦笑いしていた。
「豪華な護衛だね。藤治郎」
「後で紹介してね」
「そうだぞ」
正清、エミリィ、孝太郎が説明を求めてくる。
「分かったよ。俺の実家に招待するよ」
「僕も行ってもいいのかな?」
「あぁ。チヨも来てくれ、娘も安心するだろうからな」
「娘って子供いるのか?」
孝太郎の問いに言葉をつまらせた。
やってしまったぁ
「じっちゃん、駄目やん」
「すまん」
余は弥生に謝ると、
「弥生も人の事言えないよぉ」
「あっ、ごめん由紀」
「まぁいいけどね」
この子達は私たちの直臣になるのだから・・・いやさせないとね。
「皆、手繋いで、あの角曲がりきるまで走るよ」
余は彼らを巻く為に指示をした。
皆が角を曲がりきると、余のスキル瞬間移動で実家の門前に移動した。
離れてからたった二週間だが、とても懐かしく想われた。
「なぁ此処は」
正清達は目の前に広がる大門に驚愕していた。
「あっ」
突然大声を上げる孝太郎に皆は注目する。
「僕、此処に来た事ある」
そう、あれは五年前、父麟太郎に連れられて此処に来た事がある。
「あっ、ウチもある」
チヨも思い出したようだ。
「私も来た事あるあるよ」
「儂もあるなぁ。でも何処なんやろ」
「だよね」
声にしたエミリィーと正清にチヨが言葉にして皆が頷く。
その皆の疑問に答えたのは生徒奉行長の弥生である。
「そらぁそうよ。十歳になれば、其処の領主に挨拶しに来るんだから」
後ろを振り向いて、手を後ろに回して後輩達に、にこにこ笑いながら説明していた。
次回「追跡⑦」お楽しみに。