追跡③
第79話 「追跡③」 始まります。
藤治郎達の後ろ二十間ぐらいの所を追跡していると、前方から駆け込んできた。あまりにも大きな声だったので此方まで聞こえてきた。
「皆さん手伝って下さい・・・」
「皆行くぞ」
藤治郎の緊迫した声がすると、彼達は駆けだした。
「俺達も続くぞ」
俺達も彼に続いた。
街道を走っていく。森に入り暫くすると、山を切り崩した様に、両側の崖が高くなっていく。そして道なりに曲がっていく。
俺は絶句した。目の前の惨劇に、大岩に塞がれた道、大岩にのし掛かっている青々と茂った大木達に、被さる土砂。泣き崩れている人々。
大岩の前にある土砂には手や足が見え隠れしている。
当然道の向こうはどうなっているのか解らない。
藤治郎が動ける人々に指示を出していた。
俺にも何かできるはずだ。土砂の前に行き民の持っていた鋤を借りると、山になった土を掘り返す。
「ハリソン、少し待て」
「誰にものを言っている。早く掘り返さなければいけない事ぐらい解っているだろ」
俺は手を止めず藤治郎に言い返した。
「それでお前まで怪我したら本末転倒だ。冷静になれ。孝太郎頼めるか」
「任しとけ」
孝太郎の方を見れば手を土に付けている。
「塀」
道端の崖に沿って灰色の土でできた板状のものが並べられていく。
「これでもう崩れることはない。土をどかすぞ」
皆の手が進む。土は荷車に乗せられ運び出される。
「もう少し耐えられるか」
藤治郎が中にいる人に聞いている。
「はい、まだ魔力は残ってます」
「今しばらく待っててくれ」
「皆も慎重に土を取り除いてくれ」
疲れてきた俺は藤治郎を見た。彼は助けられた人々の救助活動をしており、怪我人を治していた。
次回 「追跡④」お楽しみにm(__)m