新居 ⑧
第63話 「新居⑧」始まります。
「いやぁ、終わった終わった。やっぱこっちの部屋が落ち着くわぁ。」
両足を投げ出して、壁に背中を預けて、くつろぐ藤次郎に、由紀が肩に凭れ掛かり、
「藤ちゃん、お疲れ様」
そんな甘い空間に、カール達が入ってきた。
「おっ殿下やって居りますなぁ」
「兄ちゃんも人の事言えるのぁ。あっ殿下に、紹介するね」
「待て待て、こういう事はそれがしから言う。殿下、某の伴侶にしたい人を紹介したいです。入れて宜しいでしょうか?」
土下座するカールをみて、
「連れてこい」
カールの嫁かぁ気になるなぁ。とワクワクしている吉政達、
「殿下の許可が下りた。入ってこい」
カールに呼ばれて入ってきたのは、四尺ぐらいの犬の娘であった。
「初めまして殿下、ミツエ・オーマ・エスピノと申します」
余は真かと思い、すかさず彼女を視た。其処に書いてあった名は、小山光江であった。吉政は思わず声を上げた。
「光ネェちゃんか?久しいのぅ今はどうしている」
「えっ、まさか、もしかして」
光江は両手を口に当てた。
私を光ネェちゃんて呼ぶのは、現世前世を見てもたった一人、木下藤次郎唯一人。
「近江様のとこの藤次郎様?」
「やはり伊賀か」
「はい、お懐かしゅう御座います」
付いていけないカールは、首を傾げ、
「殿下?」
「すまない。カール、厭加賀よ。」
カールは、吉政が加賀と呼んだ事で、その時を思い出す。
木下政権での二代目伊賀大納言で、総務大老のトップに小山光江が居たことを。
次回「新居⑨」お楽しみに