すまん
第14話 「すまん」 始まります
何人も側室を持ち、数十人の孫もいる吉政にとって、本来女性の下着如きで照るはずもないのだが、彼は由紀を布団の中へ押し込めて、
さっさと起きあがって服を着ると、寝室にあるソファーに座った。
そして布団の上からの圧力が無い事で動けるようになった由紀は、
布団から顔だけ出して、彼を視ながら膨れていた。
「もう」
由紀の言葉に気が付いた吉政は、
「すまん」
一言だけ言って降りって行った。
吉政はそのままリビングに入って驚愕した。数十年ぶりに逢った見知った顔に、彼とは数十年前、吉政が関白として権威を奮っていた頃死別して依頼の再会であった。
「昭彦殿、久しいのぅこっちで又逢えるとは思わなんだど。どうだこっちの暮らしは?」
彼の名は多賀昭彦で鍛冶士である。余の3つ下の友である。子供の頃からよく一緒に遊んだ仲であった。
「吉利様お懐かし御座います。してお爺様は何処に?」
彼は我が孫の名を呼び、余を探すように見渡した。
「おいおい、余は此処におるぞ。何分若くなりすぎたがな」
彼はキョトンとした目になり、余をまじまじと見詰めた。
「まさかぁ・・・うん正しく殿下の子供の頃にそっくりである」
「昭彦、何考えておる。ん」
じっと見詰めていた昭彦は余に抱き付き泣き出した。
「逢えてよかったぁ、いきなり知らない土地で迷ってこんなに間近に居たなんて」
「余はこっちに昨日来たばかりで、で、後ろの子はそちの子か?」
昭彦の後ろには黙って視ている少年が居た。
「あっマートン君、どしたの」
部屋に入ってきた弥生は彼を見て訪ねた。
「弥生、彼の事知っているのか」
「同じクラスの子だよ」
吉政はニャリと笑うと、
「霞はいるか」
霞がパタパタとエプロンで手を拭きながらやって来た。
「はい、只今」
「ここにいなさい」
吉政は霞にいうと、少年に向かって
「君の名は何かね」
彼は先程から父を視ていた事もあってか、
見た目で判断することなく返答した。
「僕の名は多賀吉彦と申します。以後御見知りおきに」
頭を下げる彼を見ながら呟やき、
情報を取得した吉政は霞に言った。
「霞、弥生の嫁ぎ先が決まった。将来吉彦に嫁がせる」
「父上にお任せします」
霞は吉政を見て返事をした。納得した彼は昭彦を見て、
「昭彦、良いな」
「殿下、有り難き幸せに御座います。なぁ雅」
「はい」
トントン拍子に決まる婚姻話に、当事者の吉彦と弥生は固まっていたが、そのときパジャマ姿の由紀が部屋に入ってきた。
「マートン、弥生、おめでと」
その言葉に我に返った二人は照れ合っていた。
「おーー起きたか」
「はい、貴方」
吉政を見て、照れながらも会釈する由紀を見て霞が手を叩いた。
「よし決めた。父上と弥生の式は高専卒業後で決まりね。合同でやりましょ」
この話について行けないのが約三人いた。
その夜は由紀の両親もやって来て、どんちゃん騒ぎになったのは、言うまでもない。
次回「 凄いでしょ 」 お楽しみに