魔王軍を叩け⑤
題119話 「魔王軍を叩け⑤」 始まります。
「おい、使者はまだか」
「はっ、まだ見えませぬ」
鬼族の針田権六家勝は家臣の返事を聞き天を仰いだ。出撃命令がまだでないのだ。家勝は大きく息を吐くと、
「信用ならんのだろうのう」
「我が曾孫なら解ってくれよう」
虎人族の大井五郎信直は家勝を諫めた。
「孫や曾孫らには御主も勝てんか」
「そう言う権六も娘に弱いでないか」
「あはは、それだけ歳もいったという事じゃ」
「まさか曾孫か来ているとは儂も思っていんかった」
「主家が解体されたがこっちで復興して、さらに義娘が・・」
「まぁお互いに、新たな元の鞘に収まったと言う事で良いのではなかろうか。歳も若くなったし、今まで出来なかった事をする。楽しみじゃないか」
「だよな」
話をしていたら使者若い女性が到着した。
「爺御久しゅうござります」
「おーおー、こっちでも元気そうだな」
「爺と言えぬ位若くなって、これじゃ爺と呼べないわね。いっその事、義兄上と御呼びした方がいいかしら」
弥生は一礼すると、信直の隣に行き頬を突っついた。
「義父上も変わりなく。」
権六に挨拶したのは、麻綾だった。麻綾はこの世では霞に視出された忍びで前世で、吉信のお抱え忍びになり、権六の養女となって権六の後を継いで、領主になったことがある異例の人生を歩んできた。
「さて再会の喜びは後にて、吉政様の下知を伝える」
「はっ」
権六達は戦人の顔になると、弥生の言葉に耳を傾けた。
「今より山を下り、背後を付け。注意する事を言う。死ぬな。・・・これは勅命でる」
権六は叫んだ
「出陣だぁ」
権六の言葉に総勢十万の兵が順に山を下りて行った。
次回 「魔王軍を叩け⑥」 お楽しみにm(__)m