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秘密~異世界ハーフの受難~  作者:
2章:白の貴婦人と不機嫌少女
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式典<3>

問題の区画に近づくに連れて、子供達の顔が見えてくる。その顔ぶれに見覚えがあったリリアナは驚きのあまり目を丸くした。それに子供達と一緒にいるのは、シアン星で信仰されている宗教の教皇であった。


 (えぇ、あの人何をしているの? 自分がこの領の宗教の一番お偉いさんって自覚あるの?)


 子供達と一緒にニコニコと無邪気な笑顔で手を振ってくる老人に思わず、リリアナの顔は引きつりそうになる。すぐさまフィリップへ視線を向けると主の意図に答える為にすぐに指示を飛ばす。


 (あのじじぃ、余計な仕事を増やすな。リリアナ様の心労が増えるだろうが!)


 フィリップの指示のおかげで自分達が彼等の前にたどり着く頃には、リリアナの護衛官達が各所に陣取り周囲に睨みをきかせている。隣の区画にいたマスコミも始めは何事かとざわついたようだが、隣の区画に子供と一緒にいる教皇の姿を見てなるほどと納得したようだった。今の教皇がとてもお茶目で神出鬼没な人物だということは、国民の間では周知の事実だからだ。なのでその場にいたマスコミが思ったことは皆同じだった。


 (姫様、お気の毒に。いつものいたずらに巻き込まれてしまったのか)


 「姫様、晴天に恵まれた素晴らしいお披露目になりましたな」


 「教皇様。…………あまり驚かせないでほしいですわ。私の心臓が持ちません。この間、お会いした時に一言仰って下さればよろしかったのに」


 「はっはっはっ。それでは、姫様の驚いた可愛らしいお顔が見えないではありませんか」


 「もう、お人が悪いですわ。私はそんなお茶目な教皇様は大変好ましいのですが、周りの者の為にも少しは自重してくださいませ」


 孫娘と祖父の様な気安いやり取りを見たマスコミは、安心してシャッターを押し出した。リリアナも思いがけず、ネタを提供出来てホッとする。それとなく子供達の後方へ視線を向けると区画外にいたマスコミは式典係によってやんわりと元の区画に戻されていた。


 (グッジョブよ。さすがうちの式典係、チャンスは見逃さない)


 「さぁ、お前達は何か伝えたいことがあるんだろう。今の内にお伝えしなさい」


 「姫様! 先日は、寄付をありがとうございました! これは私達からのお礼の品です」


 「まぁ、綺麗な花束。ありがとう」


 その場にいた一番年長と思われる少女から、手渡されたのはシアンの国花である薄紫色のバラを基調としたミニブーケだった。受け取る際に一瞬、フィリップが動きかけたがそれを手で止めるとリリアナは嬉しそうに受け取り、微笑んだ。その瞬間、一斉にフラッシュがたかれとても眩しかったが何とか耐える。


 「まぁまぁ、教皇様ったら話してしまわれたのね?」


 「子供達に詰め寄られたら、むげにも出来ませんので。別に隠すことでもないでしょう?」


 「姫様のおかげで、主星で開かれるコンクールに参加出来るようになりました。それにあの方達とも仲良くなれて今では合同で練習出来るくらいになりました」


 「そう、良い関係が築けたなら嬉しいわ。やはり同じ事を頑張る者同士だものいがみ合うのではなく、切磋琢磨する関係になれなくてはいけないもの。今回は、困った大人達に反省していただきましょう」


 「まったく。若者の頑張りに大人が口を出しすぎてはいけません。それが彼等の成長を妨げている自覚を持ってもらわないと困りますからな」


 リリアナは、教皇や子供達と会話をしながら先日首都の教会を訪問した際の出来事を思い出す。


 (まぁ、わりとよくある社会の階級意識の悪い面が出た出来事だったけれど)

 

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