「マラッカ海峡漂流記」 6
これを二つ作った。つまり一人1日、2リッターのペットボトル一本飲める計算だ。
フランコは感動した。海の水が真水になったのだ。
「お前、凄いな。何処で覚えたんだ」
「海洋調査船に乗るには海洋学を学ばないとならないんだ、その過程で覚えた。真水の作り方
は他にもあって、ここでは無理だが海水を凍らせると氷になるが、塩分は中央にだけ集まり分離
するんだ。外側が塩分のない氷となるのだ。その氷を剥ぎ取り溶かせば真水になるんだ」
フランコは驚きを隠せなかった。人の物を取る仕事に誇りを持っていたものが崩れ始めた。
海賊船では強い者が優先的に何でも出来た。海賊には優しさは必要が無い。あるのは常に
強い者に権利がある。それが海賊の掟のようなものだった。
まさに太陽熱を逆手に取った手法は功を奏した。これで水の心配は解消された。
しかし缶詰も底がつき掛けた。今度は海賊生活の知恵をフランコが発揮した。
海賊は海を生きる糧としている。魚を獲るのもその得意分野のひとつだ。
ましてや父が漁師だったので魚を獲る事に関しては他の海賊仲間より群を抜いていた。釣り糸を
利用して魚を獲った。丸太とガラス球を割ってモリを作り潜って魚も獲った。二人は生きる為の
知恵をいかんなく発揮した。そんな日々がやがて二週間続き、その間に二人は色々な事を話した。
愛情の代わりに人から奪うことしか教わらなかったフランコ。愛情、友情なんて皆無だった。
それがいま変化しつつある。それをモレノが教えてくれた。
二人には友情が芽生え始めていたが、しかしもう漂流して二週間、焦りも出て来た。
フランコは思った。モレノの云うとおり自分が一人だったら今頃どうなっていたのか、改めて
殺しあわなくて良かったと思っている。例え水と食料が1ヶ月分あったとしても一人では話し相手
も居ないし、いつまでも続くか分からない漂流生活ではいずれ水も食料も尽きてしまう。
今はなんとか水と食料は海から獲ることが出来るのだ。
そんな安堵している所へ、再び暗雲が漂い始めた。真っ青な空が暑い雲で覆われ始めた。
ただ雨なら大歓迎だが、嵐の予感が現実のものとなってきた。
つづく




