表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/21

片や建設

本話でも登場人物やエクステリアなどのイメージ画像が挿絵として後書きの前に入っています。


文字で浮かんだイメージを損ないたくない場合は、画像が見えてきたらストップしてページ上部の「次へ」で進むなどの自衛策をお願いします。


「さて、最後は“暮らしづくり”ね」


 凜玖が指を鳴らすと、エクステリアの視界が大型モニターに映し出された。

 校庭の端、白いラインの内側に、杭で印が打たれている。

 ARゴーグル越しには、そこに**完成後のログハウスの半透明モデル**が重なって見えた。


「オホーツク共和国の辺境では、パイロットたちがエクステリアと一緒に、こういう小屋を何十棟も建てる。

 風よけ、作業拠点、仮住まい、安全地帯。

 **国の形って、こういう“小さな箱”の集まりだからね**」


 凜玖はあたりを見回し、ニヤッと笑った。


「体験パイロット、一名。

 さっき一番に走ってきた──そこの子。手、挙げてもらっていい?」


「え、あ、私?」

 里奈が、反射的に自分の胸を指さす。


「うん、その“ミンちゃん”って呼んでた方の子。

 さっきから目がキラキラしてるから、絶対向いてる」


 ざわ、とクラスメイトたちがどよめいた。

 里奈は顔を真っ赤にしながら、前に出る。


 ヘッドセットを装着して、簡易の操作レバーを握らされる。

 視界の端に、文字がポップアップした。


 > 手順1:基礎位置の確認

 > 提案位置:白線内中央。杭マークをハイライトしました。

 > この位置でよろしいですか?[はい/いいえ]


「あ、うわ……」


 里奈が思わず声を漏らす。

 視界の中で、地面の特定の範囲がうっすらと光っている。

 エクステリアのカメラと、設計図と、測量データが一体になって、自分の目の代わりをしてくれている感覚。


「声でいいよ。『はい』って言ってみて」


「……はい!」


 その瞬間、エクステリアの足元に印が浮かび、

 機体がゆっくりと位置を調整していく。

 自分が歩いているわけじゃないのに、足が地面をつかむ感覚だけが伝わってくる。


 > 手順2:基礎用の穴掘り

 > 深さ:80cm 直径:40cm


 > 掘削を開始してよろしいですか?[はい/いいえ]


「はい!」


 右手のレバーが軽く振動し、

 視界の中で、アーム先端のオーガーが地面に食い込んでいく。

 音はさほど大きくない。ただ、土が砕ける鈍い感触だけが、ハンドル越しに指に伝わる。


「……なんか、思ったより簡単?」


 里奈がつぶやく。

 凜玖が笑った。


「難しい部分は、全部AIがやるからね。

 でも、『どこに建てるか』『何をしたいか』は、いつも人間が決める。

 それをサボると、いくらロボが賢くても、役に立たない箱が立つだけ」


 穴を掘り終えたエクステリアが、今度は丸太を一本抱えて戻ってくる。

 太い柱を、まるで鉛筆か何かのように軽々と持ち上げて。


「手順3:支柱の立て込み。

 支柱の垂直を保持するため、微調整に協力してください」


 AR表示の指示にしたがって、

 里奈は「そこ」「もうちょい右」「ストップ」と言葉を重ねる。

 言うたびに、巨大な腕が数センチ単位で動いてくれる。


 自分の声が、そのまま新しい世界を作っていく感覚。


「わぁ……」

 一見ゆったりした静かな動きのエクステリアが建てる柱の一本、梁の一本が家へと変わる。

 誰のものともつかない感嘆が、あちこちから漏れる。


 明忠は、エクステリアの背中越しに、その光景を見ていた。

 ロボがただの“作品”でも“敵の兵器”でもなく、

 「自分の進路」「投資」「外付けの体」としてそこにある、というイメージが、

 ようやく具体的な形を持ち始める。


 参考書を買って、自分の頭に組み込む。

 エクステリアの操作を覚えて、**自分の行ける場所を増やす**。

 どちらも本質的には同じ“勉強”の延長線上にあるのだ、と。


 AIの声が、里奈の耳元で静かに告げる。


 > 本日の進捗:基礎シーケンス 35%完了

 > 初回としては上出来です。

 > 次回、支柱間の水平確認から再開できます。


 ヘッドセットを外すと、世界の色が一段階トーンダウンした気がした。

 さっきまで自分のものだった巨大な視界は、もうエクステリアの頭の中へと戻ってしまった。


「ど、どうだった?」と明忠。


 里奈はしばらく言葉を探して、それからぽつりと笑った。


「……ありかもね。“ロボの国”」


 そう言ったときの横顔に、

 凜玖が、少しだけ満足そうな目を向けていたのを、明忠は見逃さなかった。

挿絵(By みてみん)

挿絵は雰囲気ですよ雰囲気!

今回はめちゃめちゃだまし絵になっているので、そのつもりでお楽しみください!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ