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狩猟作戦会議

「……まだ少しだけ時間がある」


 明忠は、意識的に声を落として言った。


「もう一度、状況を詰めよう。

 僕たちの手元にあるのは、このMAPと、演習のテーマ……“狩りを通して大自然を感じる”だったな」


 言葉にしてみると、どこか浮いて聞こえる。


「その手段がハンティング。

 狩猟とか狩りだとか、まあ同じ意味か」


 明忠がもう一度課題の説明資料に視線を走らせる。


「ただ、それとは別に――かなり意図的な“違和感”がある。

 エクステリアと、物資セットだ」


 MAPの隅に表示された装備リストが、淡々とスクロールしていく。


「そうですね」


 秋月エリナが、感情を交えずに引き取った。


「エクステリアは前回の芋掘り演習と同じ、タイガ・モデル。

 開拓前線では汎用的な作業機体、という説明でした」


 2脚の簡易な装備のエクステリア。

 農耕、伐採、牽引を主用途としたコンパクトなサイズ感でパーツ換装による拡張性と整備性を重視した設計。

 装甲は最低限で、機体構造の大半は外気に晒されている。


「人間用装備は、射撃に必要な一式。

 加えて――」


 表示が切り替わる。


「捕獲後の鳥獣を引きずるためでしょう。

 ロープ、牽引用ソリ」


 淡々と、読み上げる。


「一方で、防寒具や長距離通信装置は最低限。

 山地での行動を想定するには、やや心許ない構成です」


 一拍。


「つまり、“エクステリアを活用せよ”という前提ですね」


 相変わらず他人行儀な口調だが、分析は的確だった。


「ねえ、ミンちゃん」


 里奈が、装備一覧を拡大したまま首を傾げる。


「ドローンが三種類あるんだけど……

 芋掘りで浮いてた竹トンボみたいなの以外に、

 “カットスロート”と“ドラゴンフライ”ってある」


 アテーネが即座に反応し、二機の簡易スペックが表示される。

 だが、詳細を拡大するまでもなかった。


「……対人攻撃用の徘徊ドローンと、対ドローン迎撃モデルですね」


 エリナの反応は早い。

 ウクライナ絡みの出自を持ち出すまでもない。


「偵察に来る武装勢力の存在を示唆しているか……

 あるいは、オホーツクでは“常識”なのかもしれませんが」


 明忠は、唇を引き結ぶ。


「どちらにしても、見過ごせない。

 仮に相手が軍用エクステリアや、対戦車ミサイル級の装備を持っていたら――

 僕たちに対抗手段はあるのか?」


 里奈とエリナが、再び装備リストに視線を走らせる。


 その間も、明忠の視界の端では、アテーネのインジケータが静かに明滅していた。


 ```

 < 警告 >

 < 本機に対装甲目標火器の装備なし >

 < 狩猟用装備では、センサー破壊・地形利用・トラップによる遅延が現実的 >

 ```


 逃げ道は、最初から想定されている。


「い、一応……」


 里奈が眉を寄せ、言葉を探す。


「観光で来られるエリア、って設定だよね?

 エクステリア同士の戦闘までは、さすがに……」


 自分に言い聞かせるような口調だった。


「だろうな」


 明忠も頷く。


「いきなりエクステリア戦をやれ、って話じゃない。

 むしろ――」


 画面に浮かぶドローンのアイコンを見る。


「早めに見つけて、逃げろ。

 それが正解なんだろう」


「はい」


 エリナが即座に応じる。


「ドローンによる警戒を密に。

 危険があれば、即座に引き揚げましょう」


 それでいい。

 少なくとも、この演習の段階では。


「じゃあ方針は決まりだな」


 明忠は、三人を見回す。


「不測の遭遇には最大限注意しつつ、

 ハンティングも疎かにしない。

 “見つからないようにする”という意味では、全部同じだ」


 一拍置いて、続ける。


「里奈、秋月さん。

 それで問題なければ、各自準備に入ろう。

 持ち物の分担や役割で気になる点があれば、すぐ相談してほしい」


 二人が頷く。


 視界の端で、装備チェックの進捗バーが動き始めた。

 忙しくも静かな準備の時間が流れる。


 ――まだ、この時点では。


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