第1志望はロボの国?開拓は巨人と共に。
「ねえミンちゃん、あの“ロボの国”……ほんとに第一志望にするの?」
里奈の手が、授業の増補資料に載ったオホーツク海の地図へ伸びる。
ちょん、と指がカムチャッカ半島の根元に着地し、そこから歩くみたいに紙面を二人のあいだへ引き寄せた。
気づけば距離が詰まり、並んで覗き込む格好になっている。
明忠はタブレットを、そっと二人のあいだへ滑らせた。
指がふるえるのをごまかしながら、入力を始める。
「オ」と打っただけで、“オホーツク”が予測変換の一番上に浮かぶ。
続けて“共和国立”、“自然科学技術アカデミー”まで滑らかに並んだ。
横で里奈が、ほんの少しだけ口元をゆるめたように見えた。
「オホーツク共和国は、モンゴル帝国とアメリカ合衆国をモデルとして発展計画を立てていると言われています。……林くん、どこが“モンゴル帝国的”なのかわかりますか」
教員の声に、明忠はびくりと顔を上げる。先ほどのやりとりをどこまで見られていたのか。
居住まいを正しながら立ち上がり、ところどころつっかえながら考えをまとめる。
「モンゴル帝国では、生活の足も、経済も、戦争も馬が中心でした。シベリア共和国では、人型ロボットを生活と産業の軸に据えて……集中投資と現地定住者の獲得を狙っています。そこが“モンゴル帝国的”……だと言われています。
で、もう一方の“アメリカ的”というのは……内側の開拓と技術革新で発展する姿勢、というか……そういうアピールで海外投資を呼び込むところ、だと思います」
語尾が揺れたが、言いたいことはかなり出せた。
「……アメリカ的、まで答えなくても良かったのですが。よく勉強していますね」
教員は満足げに頷くと、講義に戻った。
シベリア共和国がロボット中心政策で“ロボファン”を入植者として惹きつけたこと、
かつてのアメリカ車や日本家電のように“生活の中の投資”が社会を変えること——
そんな話が続いていく。
それだけじゃないんだけどな、と明忠は小さく呟いた。
里奈が、何かを分かったように微笑んだ気がしたが、
手元の資料とホワイトボードを行き来する視線には、その色は入らなかった。
オンライン説明会のアナウンスが流れる。
そのとき——
正門の方から、重い地鳴りが一度だけ響く。
「え? 地震?」
「違う、人型だ」
窓に張り付く生徒たち。
里奈が明忠の袖を引く。
「──ねえミンちゃん。
来てるよ、
“ロボの国”が」
校庭に立つのはオホーツク共和国式<エクステリア>
4.5m級の実働機。
陽光にきらめきながら、正門から堂々と入ってきた。
メリークリスマスと新年に向けて心機一転、現代の進路やキャリアとひと味違う冒険を!
本作は拙作EmberFlightのすぐあとに続く時系列で、しばらく1日1話でお送りしたいと思います。
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完全に新しい登場人物でこの章は始まりますが、途中から1章の人物も一部合流します。よろしければ前作の方もお楽しみいただけるとこの上なく嬉しいです。




