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名探偵なら苦労しない  作者: 黒井白紙
9/11

第九話―青春シリーズその2、青春青春っていってたら、心なしかゲシュタルト崩壊

二日目の朝、日ごろの習慣で勝手に六時に目が覚めた俺は、暇だったので部屋でラジオ体操をしているうちに、段々ガチになってきて、体操を終えるころには全身汗だくであり、起きたばかりの壁斑にどん引きされた。


相神達の話を聞くところ、二日目は班ごとに翠津の町をフィールドワークだとか何とか。

特に出番がないと悟った俺達は、早々に宿を出て、生徒達とともに翠津の町へと繰り出す。


「あ、長良川さんだ~!!!お~い!!!」

ちなみに、俺は壁斑が帰ってくる前、生徒達と夕食を共にしたことで、かなり知り合いが増えた。

こっちに手を振ってくる彼女は並岡(なみおか)さん。

相神や瑕村と言ったキャラの濃い生徒ばかりと知り合いだっただけあり、逆に新鮮な普通の女子生徒だ。

「昨日は酷いですね。俺も連れて行ってくれればよかったのに」

「男を何人も引き連れて観光地を練り歩く趣味はねえよ」

宿を出て早々、相神に捕まった。

よく考えるとこいつと会うのは、昨日のバス以来ではないか。

「お陰で参りました。あの爺の話ったら詰まんないのなんの。あいつ、じきにくたばる身だからって調子に乗りやがって」

毒づく相神。

「いや、俺が高校生の時もあのじーさんあんな感じだったぞ。歳、とってないんじゃないか?」

「マジで!?」

「いや、嘘だ」

「ま、まあ・・・・・・気付いてましたけどね?」

「嘘つけ」


そんな風に相神と会話して時間をつぶし、いい加減に活動しないとやばいらしい相神がフィールドワークに行ったあと、俺は壁斑と別れてひとりで翠津の町の探索に出かけた。

とはいえ、街並みは高等部のころに来た時と全く変わらず、俺はむしろ町中を徘徊している学園の生徒たちとの会話を活動のメインとしていた。

「長良川さんですよね、うちの先輩で探偵だっていう」

「正確には事務だ。探偵は壁斑」

「どっちでもいいです。ところで、ウチの班は『翠津の今と昔』をテーマにしてるんですけど、長良川さんの意見を聞かせていただいてもいいですか?」

時々、生徒たちの方から話しかけてくることもある。

「先生から聞いたんですけど、長良川さんって意外に成績良かったんですか?」

「意外にって何だ・・・・・・・・。まあほら、教師にもそれぞれ特徴があるから、『この先生は宿題を重視してないけど授業態度は見てるからきちんとする』とか『この先生はノートしか見ない』とか色々と考えてやってたんだ。なんなら、どの先生はどうやってやり過ごせばいいか、教えてやろうか?」

「はい!!!お願いします!!!」

とか。そんな感じだ。


そうやってぶらぶらと町を徘徊しているうちに、裏の裏の裏通りといった感じの、薄暗い道に出た。

「・・・・・・ほう」

とか言いながらカッコつけて歩いていたら、面倒くさすぎるくらいにたくさんのわかれ道などがあり、案の定俺は迷った。

時計を見ると、時間はまだそれほどたっておらず、朝に宿を出てから一時間と数分しか経っていなかった。

ケータイを探すが見当たらず、恐らく壁斑が持って行ったのだろうと見当をつける(携帯電話を持っていない壁斑は、ナンパ等で出会った女の子とメールアドレスを交換するのに、俺のケータイを勝手に使う。故に、時たま本当に必要な時に見つからない)。

宿に帰ったら半殺し決定だな、などと物騒なことを考えつつ、『このビルの塀をぶち抜けば、外に出られんじゃないか』などなどと更に物騒なことを思考し、無言で俺が壁に向かって構えたところで、それは聞こえた。


「・・・・・・・でだな・・・・・」

「成程。悪くはないが・・・・・・・」

「・・・・ちょっと、ずっと正座で足痛いんだけど」

「知らん」


話声が聞こえる。

怪しげな裏通りの一角、俺が今まさにぶち抜かんとしていたビルの中から、その声は漏れ聞こえていた。

どうやら、内部の会話の声が、廊下や玄関で反響し、小さくはあるものの、俺のところに届いているらしかった。


「・・・・・・なんなんだ」

会話の内容は聞き取れなかったが、どうせこんな怪しげなところでする会話何ぞ、ろくなもんじゃない。

俺は自分の心の中の正義の心(と野次馬根性)がメラメラと燃え上がるのを感じた。

「・・・・・・・・・・・」

俺は深呼吸をひとつすると、建物の中へと、足を踏み入れた。



「・・・・おい、なんか足音が聞こえないか?」

『影』の一人が言う。

「気のせいだよ気のせい。君は聴力が過敏と言うより只の心配性の馬鹿だからねェ」

別の『影』が手をひらひらと振り、言う。

「・・・・・どういう意味だ?」

「そのままの意味さ。鬱陶しい」

「テメエ・・・・・・・・」

「・・・・何だい、やるのかい?」

立ち上がり、にらみ合う二人。

「やめろ」

二人を、『影』達の中心に座っている、ボスらしき人物が止める。

「下らん。目的の遂行に邪魔となるようなことはやめろ」

重々しい、威厳をもった言葉。

声の様子からして、どうやら女らしい。

「そう、我々の目的、つまり――」

女が何かを言いかけた時、唐突に、部屋の壁が突き破られた。

「そこまでだ!!!悪の組織め、成敗してくれる!!!!」

全く空気を読まない、一人の男――長良川良助に。


「!!!」

壁をぶち破った先には、黒いフードをかぶった怪しげな四人がいた。

黒フードたちは、俺の乱入に一瞬驚いた素振りを見せたが、すぐに元に戻り、四人同時に俺に襲いかかってきた。

「・・・・・・・・」

俺は冷静に、一番先頭にいた一人の持っていたスタンガンをけり上げ、そのまま脳天にかかと落としを決め、右方向に迫っていた一人に空いた手で裏拳、その勢いのまま後ろに回り込んだやつにはヒジ打ち、よろけた瞬間に頭を鷲掴みにし、最後の一人に振り下ろす。

「ひでぶ」

「あべし」

「たわば」

「よぺぺぺぺ」

奇怪な悲鳴を上げ、倒れる四人。

その深くかぶられたフードがめくれる。

「ん?・・・・・・・・!!!」

そのフードの下にあったのは。

高校生くらいの、少年少女の顔であった。



「・・・・・・ッ、痛てててて・・・・・・・」

このまま放置しておくのも何なので、取りあえず横一列に並べて起きるまで待っていることにしてから数分後。

メンバー(?)の一人、腰までありそうな長い黒髪を持つ少女が頭を押さえながら起きる。

「よぉ」

「!!!」

挨拶してみたら、めっちゃ驚かれた。

「お前、藤岬学園の生徒か?」

質問してみると、少女はムスッとした表情で答えを返す。

「だったらどうした」

「俺は長良川良助。お前らの先輩でわけあって今回の夏季合宿に同伴してるモンだ。こんな怪しげなところで話し込んでる連中がいるから気になってきてみればいきなり襲われて?ホントあり得んわ」

「ふん、邪魔をする貴様が悪い。自覚はあるのか?」

「そういや・・・・・・最初に俺にスタンガンを持って飛びかかってきたの、お前だよな・・・・・・」

うろ覚えだが、たぶん間違いない。

「乙女のたしなみだ」

「『乙女』ねえ・・・・・お前、名前を言え。取りあえず教師どもに報告しといてやるから」

「ふ、そんなもの欠片ほども脅しにならんぞ。なぜなら、この程度の問題沙汰、慣れっこだからだ。私の名前は黄城天我、言わずと知れぬ藤岬学園の生徒会長にして絶世の美女だ」

「お、黄城・・・・・・・?」

こ、こいつが相神の彼女か・・・・・・・・・。

苦労してそうだな、あいつ。

「なんだ、気味悪いな。さっそく私に惚れたか?」

「誰か惚れるか。壁斑と一緒にするな。俺はガキは対象外だ」

「絶世の美女を前にして・・・・・ガ、ガキだと・・・・・・・・!?」

あ、壁斑も高校生は対象外なんだっけ。

たしか、中学生以下だったような。

あ、やべ、吐き気してきた。

「まったく、相神に全く合わないな・・・・・・・」

俺のつぶやきが聞こえたのか、黄城がピクリと動く。

「き、貴様・・・・・・・・・」

「なんだ」

「そ、そ・・・・・『そーちゃん』を知っているのか?」

・・・・・・・どなたでしょうか?


どうやら、黄城天我が相神の彼女だというのは、本当らしい。

昼時になり、昼食をとるべく宿に帰ってきて弁当を食べている生徒たちの中でも、ひときわ鬱陶しい空気を放っている二人がいる。

案の定というか、相神と黄城である。

「・・・・・・・・・・」

「・・・・頼む黄城。離れてくれ。俺はまだ調べごとも大して進んでないし、昼食(これ)を食べてとっとと作業を進めたいんだ」

相神は迷惑そうに体をよじらせ、黄城はさながら、例えは悪いがコバンザメの様にくっついて離れない。

ただまあ、彼女の顔はとろけそうなくらいに幸せそうである。

「・・・・・お願いだから!!!」

「・・・・・・・・・・・・・」

やはり、離れない。

もう、こいつらだけならかなり円満な関係なのではないだろうか。

はたから見る限り、できることならなるべき書きたくない、反吐が出るほどのバカップルぶりだ。

できれば光景に関する描写なんて一文字も書きたくないが、まあ鬱陶しいところを可能な限り削って、書くなら、黄城が弁当を持って胡坐をかいて食べている相神にしな垂れかかる様にしてくっついていて、相神は大変迷惑そうな表情だ。

まあ、いい。気にしないことにしよう。

仲が良いのはいいことだ。

ただ。


「「「「「「「さ、相神め・・・・・・今に見てろ・・・・・・」」」」」」」

不特定多数の、有象無象様々な男子の、恨みのこもった視線が、相神を突き刺している。

このまま、あいつはストレスで倒れてしまうんじゃないかってほどに脂汗垂れ流しの相神。

「お、おのれ・・・・・後輩の分際で・・・・・・・」

「・・・・・・・何やってんだお前」

不特定多数の有象無象の中には、壁斑も交じっていた。

「壁斑さん、アイツ、締めちゃいましょう」

「ああ、やってやろうぜお前ら」

「おい!!!ついに壁斑さんが動くぞ!!!!」

ていうか、中心人物だった。


「長良川、協力してくれるな?」

「・・・・・・お前は一体何のためにこの夏季合宿に同伴したかわかってんのか?」

「勿論。一日三食ただ飯が食える上に、リゾート気分で暮らせるから。あと相神達の縁を引き裂くため」

「真逆だボケ」

二日目にしてもう目的も忘れたか。

壁斑当、救いがたし。

「ああ、そういえば依頼、受けてたな。全く、ワトソン役ならメモ帳の一つも持ち歩けよ、長良川」

「蹴り十発と突き二十発。嫌なほうを選ばせてやる」

「嫌な方!?・・・・・まあ冗談だ、冗談。ハハ、だからしまえよ、そのメリケンサックと思しき凶器を」

「チッ」

俺は取り出しかけた凶器を再びポケットにおさめ、舌打ちする。

「なんでそんな物騒なものを持ってきてるんだ・・・・・・・」

「ああ、只の保険だ。この学校は昔から『ぶち抜けた』頭の血管がどこかキレてるような奴が多いからな。不良とかそういう意味じゃなくて、こう、もっと人間的な面で」

「ああ・・・・・・・わかる気がする。お前とか」

「どこがだよ」

「忘れたとは言わせないぞ、お前がオレと『学園の校舎四階から飛び降りて生き残ってられるか』って賭けして、ホントに飛び降りておまけに生きて帰ってきて、オレから千円ふんだくったの。もう人間とかいうレベルじゃねえだろ。・・・・・・まあ、昔からそういう人間として間違ってるような連中は多かったけれども」

「まあ、そんなこともあったな。でさ、ざっと生徒達を見回したところ、結構今年の連中はヤバ目なんだよね・・・・・・・」

つぶやく俺に、同意する壁斑。

「相神とかな」

そんな感じで昼を食べ終え、午後が始まる。



「午後は暇だと思ったんだがなあ・・・・・・・・」

一時間後。

俺はどことも知れない翠津の町で、一人つぶやいた。


午後一番(一番?まあいいや。一番で)。

昼食もとい弁当を食べ終え、つまようじを弄んでいた俺と壁斑のもとに、いつぞやの炭酸部部長のように、来訪者が現れた。

今度の生徒は、至って普通というか、これと言って目立つところのない、強いて言うなら全身黒ずくめな点が気になる程度の、平凡な少年だった。

悪野怪人(あくのあやひと)といいます。お二人に依頼があってきました」

これまた凄い名前だった。

この学園は変な名前オンパレードだな。

「まあ、夏季合宿に同伴している間は、依頼のバーゲンセール、金もとらないから何でも言ってくれ」

適当なことを壁斑が言う。

「じゃあ、御言葉に甘えて・・・・・・・」

相神や炭酸部部長(弾橋だったか)よりは、遥かに礼儀正しい少年だった。


「僕の身の上を話すなら、非常に複雑なものがありて」

「ああ、浮島沈のことなら聞いたぞ、相神から」

「あのおしゃべりめ・・・・・・・・」

「ところで君、全身黒づくめだけど暑くないの?」

どうでもいいことを聞く壁斑。

「あ、いや、これは『悪』の基本ファッションなんで・・・・・・・」

よくわからない答えを返す悪野。

「あの・・・・話していいですか?」

「ああ、どうぞ」


浮島沈って名前は聞いていても、具体的にどんな容姿なのかとか、そんなことはお二人はまだ聞いていないと思います。まあ、浮島の見た目云々はさておくとして、性格です。彼女はその・・・・・なんというか・・・・一時期もてはやされた、所謂『ツンデレ』という属性の人間でしてね?その、あの、まあ結構頻繁に僕も殴られたりしてるんですが・・・・・・どうやら、最近その彼女にストーカーがついているらしいんです。

ええ、ストーカーです。

最初は例えば、視線を感じるとか、そんな感じのことだったらしいんです。でも、だんだんエスカレートしてきて、下駄箱に着替えの盗撮写真が入れられてたりとか、見覚えのない手紙や花束が届けられたりとか。さらにそのうち、リコーダーが盗まれたりとか・・・・・。

流石にやりすぎでしょ?犯人は多分、この学年の誰かなんじゃないかと僕は思うんです。

浮島自身は強がって、『あんたなんかに心配される筋合いはない』なんて言ってますけど、内面は普通の、いや、むしろかよわい女の子なんです。怖いに決まってます。で、僕が調べてみたところ、どうやらウチの学年の一部の男子によって『浮島沈ファンクラブ』なる組織が作られているらしいんです。そこの連中は、僕と浮島が付き合うことをよしと思っていないらしくて・・・・・・・・。

僕、先輩たちが実は凄い人だって知ってるんです。

僕の親戚に、警視庁の九内署で副所長をやってる人がいて、その人に聞いたんですけど、公表されてないけど、この街で起こった事件のいくつかは、例えばちょっと前にあった通り魔事件なんかの、犯人を捕まえたのはお二人だと聞いています。その人は、二人の馴染だとか。

紙野さんって言うんです。

とっても優しくて、カッコいい人ですよね。

話を戻します。

で、徐々にストーカーはエスカレートして言ったんですが・・・・・・先日、浮島のもとに『夏季合宿までに悪野と別れなければ、不幸が舞い降りるだろう』って書かれた手紙が送りつけられたんです。赤インキで血文字っぽく演出してあって、けして趣味がイイとは言えない代物なんですが。

そのことを須下原さんに相談したら、お二人に依頼しろ、と・・・・・・・・。

初日はずっと、クラスごとの行動だったんで、僕が浮島についていればよかったんです。

二日目の午前も、友達に頼んで見張ってもらってました。

でも、その友達から『変な気配を感じる』って・・・・・・・・。お願いします。

どうか、浮島を助けてやってください。


少年の、話が終わった。

隣で壁斑が

「紙野が・・・・・・『優しくて、カッコいい』?あ、ありえん・・・・・」

などとつぶやいているが無視する。

「悪野・・・・・だったよな、お前・・・・・」

「な、なんですか?」

「・・・・・すっげえいい奴だな」

お節介すれすれの、『いい人』。

いくら恋人がストーカーにあっているからと言って、ここまでするような奴は稀だろう。

「僕は、人が泣く姿を見たくないんです」

大真面目な表情で悪野が言う。

「僕、こんな名前なんで、よく昔は苛められてたんですけど、その時に思ったんです。『こんなに人が笑ってくれるなら、それもいいかな』って」

「あ、悪野・・・・・お前それって、ただのエ」

「Mじゃないです。ぎりぎりMじゃないです。・・・・・兎に角、僕は人が泣くところを見たくないんです。依頼、うけてもらえますか?」

炭酸部と同じノリで始まった依頼だったが、あんなものより百倍ましだった。

比べることさえ、申し訳ない。

「ああ。全力でやらせてもらう」

そういうが早いか俺は、外へと繰り出した。


「と言っても・・・・・・・俺達はそんなに深く生徒間の関係を把握してるわけでもないし・・・・・・情報源があれば便利なんだが」

翠津の町に再び繰り出してから数分、俺がつぶやく。

「まったくだ。でも生徒は今、個々の学習で忙しいからな。暇な生徒なんてなかなか――」

壁斑が言いかけた時。


「お呼びかな?」

「お呼びのようだね?」

「お呼びっすか?」

「お呼びだな」

突然目の前に、四人の生徒が立ちふさがる。


「「「「呼ばれて飛び出て総合遊戯研究部、今宵は一人欠いて四人でお送りいたします!!!!」」」」

「メンドくせえのが来た・・・・・・」

俺は誰ともなしに、つぶやいた。


「まず、悪野ですが、クラスどころか学年全体で、印象は『超いい奴』です。いい奴なんです」

「いい奴、ねえ・・・・・・」

仕方なしに、俺達は相神たちのなかの説明担当、新風神輿の話を聞くことにした。


「悪野は、超いい奴です。おおよそ『悪』と呼べる要素はその奇怪な名前ぐらいのもので、実に善良、非常に普通な男子生徒です。クラス内では良くも悪くもない『お人よし』というポジションに収まり、趣味は読書で昔助けた人間との間にできた若干引くレベル、瑕村級の巨大な情報網の持ち主です。これでアイツみたいにあくどい心の持ち主なら最悪ですが、生憎と彼は善良な人間、情報網も精々『困った人センサー』程度にしか使っていません。ちなみに、その情報網の中には某国の大統領や高名な学者も含まれるとか・・・・・・・それはさておき、そんな奴です、悪野は」

メモ帳をぱらぱらとめくりながら、新風が言う。

「成程、わかったようでわからない。まあいい、アイツよりもあいつの彼女――浮島沈について話してくれ」

俺の要望を聞き届けてくれたようで、新風はまたメモ帳をめくり、あるページで手を止める。

「浮島沈、私達や悪野と同じクラスですね。出席番号三番、女子。ちなみに二番が私で四番が黄城です。それはさておき、ご存じのとおり悪野の彼女で、クラス内、否、本人以外のだれしもが認める『ツンデレ』です。見てて面白いですよ、結構。ストーカーに悩まされている、というのは初耳ですが、その性格が一部の方々のツボを非常に刺激するらしく、『隠れファンクラブ』が存在します。顔はいいですが、スタイルはまあ、スレンダーと言うかまあそんな感じなんですけど、それも余計にツボを刺激する要因となってるらしいですね、吐き気がします。そんな感じです。浮島は」

「そうか。ありがとう、帰っていいぞ」

俺が手でしっしっと追い払う仕草をすると、相神が『わかってないな』とでも言いたげに、肩をすくめ、首を横に振る。

「何言ってんですか、友のピンチを救えないで、何が友達でしょう。俺達は、全身全霊で協力しますよ」

「・・・・・・協力してくれるのは有難いが・・・・・・・。本音は?」

「その代り、いつか無償で労働力になってもらいます」

「・・・・・成程」

半ば強制的に『誓約書』なる怪しげな紙にサインさせられ、俺達の捜査陣に総合遊戯研究部が加わった。

いまさらですが、話数が七話から一個ずつずれていて、六話が抜けています。とくに修正の予定はありません。本当にすいませんでした。

あと、作品中に登場していた正体不明の『須下原さん』(修正済み)はなんやかやで紙野様次と同一人物です。

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