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名探偵なら苦労しない  作者: 黒井白紙
3/11

第二話―生麦生米生卵。生麦と生卵はわからなくもないが、『生米』とは一体何だろうか

引き続き、タイトル全く関係ないです。

紙野が、通り魔に襲われた。

その知らせを聞いた俺と壁斑は、大至急紙野の運ばれたという病院へと向かった。



「間暮警部!!!」

「病院では静かにね」

「そんな悠長なこと言ってる場合かこのクソジジイ野タレ死ね」

「・・・・・・・泣いていい?」

「冗談はともかく警部、紙野は大丈夫なんですか?」

「え、あ、冗談?あははははは、まあ紙野はぶっちゃけ・・・・・・やばいかも」

「!!!!」

「紙野は犯人に(目撃情報の特徴の一致から、例の通り魔の犯人とされたらしい)鈍器のようなもので後頭部を撃たれたらしいんだが、その凶器に毒が塗ってあったらしくてな・・・・・・・」

「毒?」

「ああ。確か医者が、結構強力な種類の毒で、何とかって言ってたような・・・・」

「覚えてねえのかよ」

「あ、ああ。幸い、傷は浅いので毒はあまり回っていないとは言っていたが・・・・」

「まあ、事実回ってなかったんですけどね」

「後遺症も残る心配もないし、大丈夫だとは思うが・・・・・・・」

「まあ、事実大丈夫でしたしね」

「「「・・・・・・・・・紙野!?」」」

「気づくの遅ぇよ!!!!」

三十分。

紙野様次はその日、搬送患者の中で、最速の退院記録を残したという。



「・・・・・・まあ確かに、昔から丈夫な奴ではあったけれども・・・・・」

紙野と知り合ったのは小学校のころ。

幼稚園から進級したてで、期待に胸ふくらませていた当時の俺の希望を、丁寧に一つ一つ握りつぶしてくれやがったのが紙野だ。

そういえば昔、運動会の一週間前に右腕を複雑骨折した時も、当日には完治してたっけ。

尋常じゃない回復力を持つ紙野だからこそ、今回も見事生還したわけだ。



「いや・・・・・おかしいだろ、常識的に」

「毒って言っても、大した奴じゃなかったんだろ」

頬を引き攣らせる壁斑に、あっけらかんと答える紙野。

「ていうか、傷も浅い、かすり傷レベルだったし」

「マジかよ」

「たかが通り魔程度に、俺が傷を負う訳ないだろ」

「まあいいや。元気なんだったら。じゃあ折角だし快気祝いに、焼き肉にでも行く?」

壁斑の提案で、焼肉屋に行くことになった。


・・・・・・・・日付はもう、次の日になっていた。



九内町の商店街には『一生事欠かない』といわれるほど多くの店が連なっているが、当然のようにその中焼肉屋もある。

『上々縁』。

パクリか、と誰しもが真っ先に突っ込みたくなるこの店は、店長の計らいで、二十四時間営業となっている人気の店である。

肉の味はそこそこ。また、下手なことを言うと『肉マニア』の店長に、長い話を聞かされるので注意。


「店長いるか~?」

「おお、探偵さんとその助手とその知り合いで刑事の男じゃないか」

「助手じゃねえ。事務担当だ」

「刑事じゃねえ、署長だ」

「副署長な」

焼肉屋の店長、二階堂(某大企業の、エリート社員だったのに、何故か『肉を毎日食べたい』という理由で焼肉屋を始めた、ある意味尊敬できる人)は昔、俺達に事件の依頼をしてきたことがある。

その結果、俺達は焼肉屋のタダ食い権利という報酬を得るのだが、それはまた別の話。


「あれ?さっきからいるそこの人、新人?」

肉を食べている最中(何故か店長も一緒になって食べていた)、壁斑が一人の店員を指して言った。

「ああ、アルバイトの奈良部だ。今年から大学生で、一人暮しなんだと」

「へえ・・・・・・・一人暮らしで、よくこんな治安の悪い街選んだね」

「治安が悪いのと変態が多いのは別だろ」

「どこが」

スポーツ刈りである、という点を除けば、一瞬で忘れそうな顔の青年だった。

「影の薄い奴でな。なかなか名前を覚えられなかったぜ」

・・・・・・やっぱりか。

店長はその前衛的かつ斬新で大雑把な性格のため、物を覚えることが苦手だ。

「なんだか、最初に会った時の壁斑みたいだな」

「ああ、わかるわかる」

「どういう意味だコラ」

壁斑は、高一の四月に入ってきた転校生だったりする。

当時の壁斑は、今のように変人でもなければロリコンでもない、キャラクターのない平凡な奴だった。


「おい、肉焦げるぞ」

「わかってんよ店長」

「なあ壁斑、俺たちなんでここにいるんだっけ?」

「は?紙野の快気祝いだろ」

「通り魔事件の調査、しなくていいのか・・・・・・・」

「!!!!」

ビクリと体を震わせ、固まる壁斑。

俺達と警部が結んだ契約は七日間一日一万円コース(成功報酬別)。

つまり、あと五日で契約は終わるわけだ。

「こうしてはいられない・・・・・・行くぞワトソン君!!!事件の調査だ!!!」

いきなり叫びだし、店を出て行った壁斑を店長と紙野は不思議そうな眼で見、俺はため息をついてそのあとを追った。



「・・・・・・まず、佐戸島を訪ねようと思う」

事務所に帰った後、壁斑が言った。

「昨日、話したように佐戸島には現在拘束中の自称『犯人』ことサンダー伊藤を拷も・・・・・じゃなくて取り調べしてもらっている。まあ、さっき紙野が襲われた時点でそいつのアリバイは成立しているわけだが・・・・・まあそれはそれこれはこれ。面白いものも見られるし、まあ行ってみようじゃないか」

「面白いもの?」

なんだか凄く、嫌な予感がした。



中略。

壁斑の後輩で拷問師の佐戸島嬲子は、九内町の事務所から各交通機関を利用して一時間ほどのところに居を構えている。


「おお佐戸島、来たぞ」

「あ、長良川さんじゃないですか、あとその付き人」

「付き人じゃねえし。むしろ長良川が助手だし。オレ、もともと君の先輩だし」

「どうでもいいけど佐戸島、拷も・・・・・じゃなくて取り調べは、うまくいってるのか?」

「ああ、上々ですよ先輩。いい感じに完成しました」

「?」

「まあ立ち話もなんですから、入ってくださいよ」


事務所のほうに案内された俺は、絶句する。


・・・・・・・事務所には、上半身裸の、四十代後半とみられる中年男性が、椅子に縛り付けられ、目隠しをされて、床に転がされていた。

その隣には火のついた低温蝋燭と、鞭。

わかりたくないのに、何が行われていたのか、即座に分かってしまった俺である。


「ふふふふふ・・・・・・僕は佐戸島様の奴隷です・・・・・・・・」

不気味な笑みを浮かべてつぶやく男。

「なあ壁斑、もしかしてこいつが・・・・・・・」

「・・・・・・・・ああ。そのもしかして、自称『超能力者』のサンダー伊藤だ」



「サンダー伊藤、あんたがここで拷も・・・・じゃなくて取り調べを受けている間に、例の通り魔事件の新たな被害者が発生した。これはお前の無実を証明する動かぬ証拠だ。だがオレの考えでは、お前はただのイタい中年、略してイタ中じゃないはずだ。あんた、|誰かに命令されて偽犯人を名乗り出たな?《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》」

「ふふふふふ・・・・・・僕はブタです、醜いブタです・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

だめだ、あきらめたらそこでお仕舞いじゃないか。

質問を続けるんだ!!!長良川良助!!!

「あんたのバックにいるのは誰だ?犯人か?けど犯人だったら、なんでそんなことをする?そもそも犯人には人を動かせるほどの権力があるのか?」

「あははははは・・・・・・・鞭にぶたれる瞬間、それは至福の悦楽・・・・・・・」

「あんたはいったい何者だ?どうして偽犯人を買って出た?金か?権力か?そもそもお前は犯人とかかわりがあるのか?無関係な別の組織のものなのか?」

「くふふふふふ・・・・・・・蝋燭熱いなあ・・・・・けどそれがイイ!!!!」

「話を聞けやゴルァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!!!」

「落ち着け長良川。こいつ、完全に佐戸島に調教されている・・・・・・」

「・・・・・・・・チッ」

そもそも、この男にはさっきから質問を繰り返しているが、答えどころか会話すら成立した試しがない。

ずっと『佐戸島様に打たれたい』だの『鞭の音を聞くだけで私の何かが昂る』だの、そんなことしか口にしていないんだ。

「なあ佐戸島・・・・・・・お前、こいつに何をしたんだ?」

眉間にしわを寄せながら訊くと、佐戸島はにっこりと笑って答えた。

「・・・・・・・・知りたいですか?」

「・・・・・・・・・・・いや、いい」

結論。

唯一つ確かなのは、拷問師、佐戸島嬲子の手によって、貴重な情報源が一つ、握りつぶされたということだ。



「・・・・・どうすんだよ壁斑、情報源が消滅したぞ」

「ふむ、・・・・・・・これだけは使いたくなかったが仕方ない。アレを使うか」

「アレ?」

「ああ。かの有名な探偵小説、シャーロックホームズシリーズで、ホームズが浮浪児たちを集めて、小隊みたいなものを作っていたのは知っているか?」

「ん?ああ、名前とか忘れたけど、そんなのいたな。確か」

「そう。オレはあれを読んで、便利だから自分も作ろうと思ってね。母校の中学校で、一番面白そうな五人を勧誘したんだが・・・・・・この五人がまた、とんでもない奴らでね。まあいい、見ればわかるさ・・・・・召集!!!」

壁斑が事務所の扉に向かってそう叫ぶと、扉が開き、五人の少年少女たちが入ってきた。


「一つ、逃げ足速きは風のごとく」

「一つ、起こるざわめき林のごとく」

「一つ、熱いハートは火のごとく」

「一つ、威圧するは山のごとし」

「備考、あくまで部長(オレ)がリーダー」

五人が扇形のような配置で、左右対称となるようにポーズを決める。

「五人合わせて!!!」

「「「「「区立・藤岬学園高校総合遊戯研究部、推して参る!!!!!」」」」」

「・・・・・・・・・・」

ああなんか、また。

変な知り合いができそうだ、と思った。



「区立、藤岬学園高校はオレ長良川、紙野の出会いの場であるわけだが・・・・・・・・・」

「キモい言い方するな」

より正確に言うなら、俺と紙野が交友を持つのは小学校の時だ。

「その時に設立した『遊部』を覚えているか?」

遊部、というのは、当時高校に入学した時に全く入りたい部活のなかった俺達が、ないのなら作ってしまおうという発想で作った『遊ぶため』の部活だ。

部活動に関する規定が異常に緩いあの学校だからこそできたことだが、教員の評価が下がることを恐れて、五年生になるまで、一人の部員も入らず、俺と壁斑と紙野の三人で過ごした思い出である。

「確かにな。そう、あの時にはオレ達の卒業時に入った二人の部員が後を継いだにすぎなかった。だがあの後、いろいろあってね。遊部は総合遊戯研究部と名を変え、彼ら五人の組織となっている。総合遊戯研究部、学校内の代表的な問題児の集まりといえる集団なのだが、オレはひょんなことから彼らの協力を得るのに成功したのだ。凄いだろ」

「いや、よくわからん」

「速い話、壁斑さんの後輩に当たる、俺達が先輩たちを助けてやろう的なノリで今回、協力を依頼をされたわけですよ。はい」

「・・・・・・・お前は?」

「総合遊戯研究部部長の相神創一(さがみそういち)です。趣味は読書のインテリ系です」

この少年は、五人の中で最も見た目の印象が薄かった。

身長は165センチほど、太っているわけでもなく痩せているわけでもなく、筋肉質なわけでもない、普通の体型(いや、若干背が低いのか)。

いいわけでも悪いわけでもない、どっちかといえば、カッコいいのか?みたいな顔。

そしてそれらに不釣り合いなほどに漂う、巨大な存在感。

一目見ただけで、この中のリーダー格とわかる風格をまとっている。

「嘘つけ。ちなみに僕は瑕村優雅(きずむらゆうが)。趣味は遊ぶこと、副部長だったりして」

この少年は、ぱっと見クラゲのような少年だと思った。

どちらかといえば年齢的には高めであろう身長と、糸目。全体的に柔らかいというか、ぐにゃっとしているというか。

そんな印象を受ける少年だった。

「相神を部長と認めてる人間なんて、この世に何人いるんだろうね。私は新風神輿(あらかぜみこし)、立場的には書記にあたります」

短い髪に鋭い瞳。

端的に表現すると、若干性格のきつそうな美少女だった(後で壁斑に聞いたところ、壁斑的には高校生以上は対象外らしいが、『あと五年若ければ・・・・・!!!』と歯を食いしばって涙していたところから察するに、容姿的には好みらしい)。

「いるだろ、せめて一人位は。自分は大王崎(だいおうざき)。会計だ」

ゴッツイ少年だった。

一人だけずば抜けて身長が高く、筋肉質。

二メートルはあるんじゃないかというくらいの巨漢で、がっしりした体は見た目だけで十分怖かった。

「そんなことないです、相神先輩は立派で素敵な部長ですよ、庶務にしてたった一人の一年生、白崎朗(しろさきほがらか)が保証します」

最後の一人は、にこにこと笑顔を顔に浮かべた少女だった。

瑕村君のような柔らかさではなく、もっと天然な雰囲気をまとった子だった(彼女に関しても、壁斑が『あと四年若ければ・・・・・!!!!』と唇を噛んで悔しがっていた)。

ただまあ、全体の第一印象を述べると・・・・・・・・

「・・・・・・・・壁斑、なんだかよくわからないが、こいつら一枚岩じゃないのか?」

いまひとつ、リーダーを中心としている感じがない。

誰もが誰も、思い思いの方向を向いているような、印象を受けた。

しかし壁斑は、俺の意見を聞くと、ヤレヤレ、といった風に肩をすくめ、言った。

「一枚岩なわけないだろう?一枚岩なんて面白見ない関係が、『遊ぶための部』なんて言うぶっ飛んだ組織に生まれるはずがないだろう」

「まあ。一枚岩どころか、結束のけのじも見当たらない関係ですけどね」

相神が悟ったように言う。

「まあそんな彼らだが、行動力に関しては群を抜いていてね。彼らだけでも真狩先輩の所有する情報の半分に匹敵する量の情報を得ることができる。実は長良川は知らないけれど、今までにも何回か協力してもらっていたりして。それなりに信用し難いと思うけど、一応信じてくれて構わない」

「そういうことです。長良川先輩。さて、ところで壁斑先輩?今回のご用件は何でしょうか。三十分ぐらい前から外にスタンバッていて汗をかいたので、今すぐコーラを買いたいので手短にお願いします」

「じゃあ、今回の調査報酬は君たち五人分のコーラ代で」

「割に合わなすぎじゃないですか」

「いいんだよ。それが狙いなんだから。で、そもそも今回の依頼を受けた経緯から始めるけど・・・・・・」

壁斑が今回の依頼を受けた経緯、現在得ている情報などを話し始めた。

中には、俺が初めて聞く情報もあったが、ここでは割愛する。




「・・・・・・・・はい、というわけでたった今この瞬間から、今回のお話の語り手を務めることになった、相神創一です」

「?相神、誰に向かって話してるんだい?僕らはこっちだよ?」

「・・・・・・・?あれ?誰だっけ」

壁斑先輩から依頼を受け、取りあえず情報収集を始めようとした矢先、突然今この状況を誰かに向かって説明しなきゃいけない気がした俺である。

「ところで相神、今回の依頼は例の『通り魔事件』についての情報収集だったわけだけれど、どうするつもりだい?」

現在、九内町を横行している通り魔事件。

被害者は皆一様に、『白ずくめの男に真っ赤な冷たい塊で頭を殴られた』と話している、現在死者は一人も出ていない、奇妙な通り魔事件だ。

凶器の特定さえなされておらず、被害者が健全であるにもかかわらず、犯人像がようとして浮かばない。

そんな面倒極まりない事件の依頼を、受けてしまった先輩である。


「まったく、あの先輩は面倒事を引き寄せる体質のようだね。尊敬に値するよ」

呆れたように肩をすくめ、瑕村が言う。

「そう言ってくれるな。きっと壁斑さんも好きで探偵やってるんじゃないさ」

「ああ、確か就職氷河期で仕事がなくて、楽そうな自営業で探偵を選んだんだっけか」

「意外とシリアスな現実ですね・・・・・・・・・」

白崎が頬を引き攣らせる。

「まあ、実際適当に選んだだけあって、儲けは低そうだよね。この間壁斑さんが、近くのファミマでバイトしてるの見たよ」

どこか嬉しそうに報告する新風は、事実うれしいのだろう。

何故かと言えば

「私、人の不幸話って大好き」

こういうことだ。

「不幸不幸と言えば言うほど、その意味合いは薄れてしまうものだよ。本当に不幸な奴は、不幸であることさえ気がつかないものさ。・・・・・・・例えば、今の相神のように」

「?瑕村、何か言ったか?」

「別に。それよりか相神。これからどうするつもりだい?」

「ああ、取りあえず、通り魔の被害者たちについて調べてみようと思う。壁斑先輩たちは何の共通点もないとは言っていたけれど、何の共通点がないのならないなりに考えようもある。まずは足りない基礎情報を得るところから始めるべきだ」

「おお、珍しく意外とまともなことを言っているじゃないか」

「どういう意味だ」

「まあ、君の持つ少ない常識に乾杯」

「殴られたいのか。俺じゃなくて大王崎に」

「別に構わないぞ。さあ瑕村、面を貸せ」

ファイティングポーズをとる大王崎。すっかりヤル気だ。

「それって僕、多分死ぬよね?君はそれでいいのかい相神?」

「構わんが」

「構わないんだ」

大王崎は、見た目の通りケンカがかなり強い。

少なくとも、町内最強といわれるほどには。

「冗談はさておき相神、被害者といってもいろいろいるけど、どういう風に、どういう順番で調べるの?」

いまだに戦闘態勢を解かない大王崎と緊急回避の準備に入っている瑕村を冷めた目で見ながら、新風が言う。

「そうだな・・・・・・」

俺はその問いに対し、あごに手を当てて少し考えるジェスチャーをしてから、答えた。

「とりあえず、壁斑先輩たちの友人で、一番最新の被害者でもある、紙野様次さんでも調べてみるか」



「・・・・・・なあ壁斑」

「・・・・・・なんだ?長良川」

相神達が事務所を出て行ったあと。

俺と壁斑は、のんびりと事務所で寛いでいた。

「こんなに楽にしてしまって、いいのだろうか」

「いいんじゃないか?どうせ相神達が何か情報を掴んでくるまで、大したアクションも起こせんさ」

「しかしなあ・・・・・・・何かしら出来ることはあるだろ。例えば真狩先輩に新しい情報をもらいに行く、とか・・・・・・・」

「いや、それは無理だな」

「無理?」

「ああ。長良川、予め一つ忠告をしておこう。今回の事件、真狩先輩は・・・・・・」

そこで壁斑はいったんせりふを切り、大きく息を吸ってから、その一言を放った。

「今回の事件、真狩曲は、オレ達の敵だ」

「・・・・・・・・」

静寂が場を支配する。

遠くの商店街の雑踏が、やたらはっきりと、聞こえた。

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