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磯の入口に看板を立ててみた

作者: しるべ雅キ

 私の家の近所には自然豊かな磯がある。


 道路との間には木々が生い茂り、海に出ても突き出したような岩場があるだけで近隣の住民も滅多に入らない。


 他にも偶然が重なり、開発の手から逃れる形で自然が残った。


 潮が引いた時に岩場に出来る潮溜まり(タイドプール)には貴重な生物がたくさんいる。


 だが最近、夜中に入り込んで自然を荒らす輩が出て来た。


 どうやら、海外から来た動画配信者らしい。


 しかもバーベキューかキャンプでもしたのか、火を使った跡まであった。


 とはいえこちらも見張りを立てる訳には行かないので、看板を立てる事にした。


 ▼


 看板には、この磯に貴重な生物がいる事や触れると危険な生物がいる事など10項目を箇条書きにした。


 更には貴重な自然を理解してもらうために磯で撮った巻き貝やタコやカニなど、色々な生き物の写真を貼った。


 だが、いざ看板を立てようとした時に妙な市民団体が押しかけて来た。


 ひと通り看板を読んだ1人が、もっと読みやすくしろと言って来た。


 別の1人が外国語も追加しろと言って来た。


 他にも口々に相手の文化を尊重して当事者意識を持てと、修正を迫って来た。


 ▼


 市民団体のしつこさに根負けして看板を持ち帰った私は、まだ何も書いていない予備の看板を前に途方に暮れていた。


 看板には多くの注意を書いたから外国語なんて入らない。


 しばらく考えた私は、看板に書いた項目を

【ここには貴重な生物がいます、とって食べないでください】

と書き直し、そのまま3か国語に機械翻訳した。


 続けて私は、元の看板から滑らかで丸い甲羅をしたカニの写真を剥がして新しい看板に貼った。


 これなら余計な情報も無いから、見やすいだろう。


 ▼


 修正した看板を立てようとした時、またしても市民団体がチェックしに来た。


 だがあるメンバーは項目の数を数えて満足し、別のメンバーも外国語を見て満足した。


 こうして市民団体を満足させた看板は、生い茂った木々を抜けた先にある岩場の手前に立つ事となった。


 しばらく看板を抜かれたりもしたが、今ではすっかり静かになった。

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