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第68話 side 影山孝太郎⑤ ── 一人ぼっちの異世界脱出計画──

 天井の魔導照明が、微かに低く唸る音を立てていた。


 石と金属の質感が入り混じった通路を、二十人の高校生たちがフラムに導かれて歩いていく。


 異世界の王城の内部にあるとは思えないほど、通路の壁は滑らかに磨かれ、所々に埋め込まれた水晶柱のような魔導管が淡く光を放っていた。


 


「まるで……近未来SFの世界だな」


 


 そう呟いたのは、メガネをかけた久賀レンジだった。すぐ隣の藤野マコトが「いや、これ完全に“アトラス系RPG”だろ」と返す。


 


 がやがやと、緊張と興奮が入り混じった空気の中、生徒たちは扉の前に立たされる。


 


「こちらです」


 


 フラムが手をかざすと、何かが機械的に反応したような音がして、分厚い金属の扉がスライドする。


 重々しいはずの音は驚くほど静かで、逆にそれが不気味だった。


 


 広い。


 そして、美しい。


 


 白銀と紺を基調にした円形の会議室。床には金属製の魔法陣がうっすらと刻まれ、中心にはホログラムのように浮かぶ立体地図。


 周囲を取り囲むように配置された二十の椅子と、環状のテーブル。


 


「うお、何これ……すげぇ……!」


「SF映画の秘密基地って感じだな……!」


 


 生徒たちは目を輝かせ、ぞろぞろと席に着いていく。


 ……二十脚の椅子。


 ……二十人のクラスメイト。


 


「……いやいやいやいやいやいや」


 


 思わず、声が漏れた。


 誰もこちらを見ない。


 


 (おいおいおい……お前ら……!)


 (俺、いるよな!? お前らのクラスメイト、影山孝太郎くんだよ!?)


 


 彼らの反応は、まるで“元から二十人のクラスだった”かのようだった。


 椅子の数も、まるで最初から自分の居場所なんて存在しなかったかのように、ジャスト二十。


 


 ──やばい。



 ──これ、マジでやばい。


 


 (俺のスキル……もしかして……)


 


「“存在自体を認識させない”ってレベルじゃなくて……“記憶からも消える”ってこと……!?」


 


 肩がぶるりと震えた。


 自分が幽霊になったような感覚に襲われて、影山は後ろに一歩引いた。だが、誰も気づかない。


 


「……もう笑うしかねぇな」


 


 ぼそっと呟いて、背後の壁に視線をやる。


 


 壁にもたれ、腕を組んで立っている男がいた。


 紅の軍装。金属で装飾された龍の肩章。


 風に揺れる赤髪。


 そして、その鋭く冷えた視線。異世界の将軍──紅龍(コァンロン)だ。


 


 (……"クール系強キャラ"感出しやがって。お前も座れや!俺と違って気付いてもらえてるんだからよ!?)


 


 影山はわざとらしくスッと紅龍の隣に立ち、同じように腕を組んで、壁にもたれた。


 背中に伝わる冷たい感触が、今だけは妙にありがたい。


 


「ふん……ま、これで俺も“存在感ゼロの戦士”だぜ」


 


 そう言って、口元を少しだけ緩める。


 周囲には誰も気づかない。


 彼の声も、気配も、記憶も──世界からすり抜けている。


 


 鬼塚がひとり、壁の反対側に座っていた。


 顔を伏せ、天野唯に施された回復魔法のおかげで体は元通りだが、あの紅龍に一撃で吹き飛ばされた記憶が、彼を押し黙らせていた。


 強気な彼が、今だけは子犬のように大人しい。


 


「……鬼塚もそうとうヘコまされちまったみたいだな。ま、無理もないけどな。」


 


 影山はため息をついて、少しだけ視線を上げた。


 円卓を囲む二十人の同級生。


 賑やかに話す者。


 神妙に黙っている者。


 何かに期待して目を輝かせている者。


 だが、そこに──“影山孝太郎”の姿は、誰の記憶にも存在していなかった。


 


 (よっしゃ。こうなったら、スパイ活動でも始めてみるか)


 


 冗談混じりに思いつつ、彼は肩をすくめる。


 誰にも気づかれない。


 けれど、それが今の自分の“唯一の武器”でもあるのだ。


 


 ──そう、まだ誰も知らない。


 “この教室の幽霊”こそが、彼らの命運を握る存在であることを。




 ◇◆◇




 沈黙の中に、機械のような音が鳴り響いた。


 


 シュイイィィン……。


 


 重厚な扉が音を立てて閉じ、円形の会議室が密閉空間となる。天井に浮かぶ光球が静かに輝きを灯し、部屋の中心にある巨大な円卓を、柔らかく照らしていた。


 


 「さあ、皆さん。落ち着いて話せる環境になったわね」


 


 中央の席に座る銀髪の魔導官──フラム・クレイドルが、背筋を正しながら語り始めた。


 


 その口調は落ち着き、優雅。だがどこか、冷たい硬さを帯びている。話し慣れている印象を与える、まさに“外交官”といった風貌だ。


 


 「今、我が国ベルゼリアは、二つの脅威に晒されています」



 円卓を囲む“二十人”のクラスメイト達が、息を呑む。



 「一つは、我が国に隣接する、“強欲の魔王”が支配する領土……“スレヴェルド”。」



 その言葉に、一部の男子がザワつく。


 「強欲の魔王は、“この世の全て”を手に入れようと目論む、七柱の大罪魔王の一柱。()の軍勢は日々、我々の国境に侵攻を試みており……現在、我が国の魔導兵団と交戦状態にあります」


 その言葉に反応したのは、オタク四人組の一人、藤野マコトだった。



 「“この世の全て”……って、海賊王かよ……」


 「バカ、茶化すなよ!」



 と隣の石田ユウマが軽く小突く。


 しかしフラムは微笑みを浮かべたまま、軽く首を振ると続けた。



 「君たちには……その戦いに、加勢していただきたいのです」



 ──静寂。



 「……ッ!」



 影山は息を呑み、心の中で叫ぶ。



 (マジかよ……!)


 (いきなり呼び出された俺たちに、いきなり“戦場へ行け”ってか!?)



 そのときだった。


 円卓の一角、冷静な雰囲気を纏った男子──一条雷人が、すっと挙手した。


 彼は理性的で、どんな時も客観的な視点を忘れない男だ。影山も、彼の判断には信頼を置いていた。



 「質問です」



 低く落ち着いた声が響く。



 「我々に求められているのは、つまり……“戦争への参加”という理解で、よろしいですか?」



 空気が一瞬凍りついた。


 フラムは、しかし表情を崩さない。むしろ、少しだけ芝居がかった柔らかい笑みを浮かべた。



 「いいえ、これは“戦争”ではありません」


 「……?」


 「だって、相手は“人間”じゃないのですから。“魔物”よ」


 「……魔物……?」


 「ええ。あなた達の世界には、“ゲーム”という文化があると聞きました。その中には、“人類を脅かす魔物を倒す”といった内容のものも多いのでしょう?」



 フラムは、あたかも子どもに絵本を読んで聞かせるかのように語りかける。



 「我々が君たちに求めるのは、まさしく“それ”です。人類の敵である魔物を、君たちのスキルで討伐する。それはまるで“ゲーム”のような体験……そう思っていただければ」


 「魔物を倒せば、君たちのスキルもさらに成長し、より強力になります。戦えば戦うほど、強くなれるのです」



 影山の眉が跳ね上がった。



 (……え、何? )


 (今の言い回し……明らかに“丸め込もう”としてねえか!?)



 クラスメイトたちの反応も、明らかに変化し始めていた。



 「なるほど……ゲーム感覚ってわけか」


 「リアルモンハン……てか、無双系に近いか?」


 「スキル強化……俺、最強になれるんじゃね?」



 影山は心底焦っていた。



 (おいおいおい……お前ら……!?)



 一条ですら、しばらく沈黙した後、軽く頷いてこう言った。



 「……なるほど。納得しました。そういうことでしたら、協力しましょう」



 「はァァァ!?!?!?!?」



 心の中で思わず叫んだ影山は、壁に寄りかかったまま、頭を抱えた。



 (何なんだ!? お前まで納得すんのか、一条!? 理詰めで否定するタイプだろお前は!!)



 (いや、皆おかしい……! おかしすぎるぞ……!)



 ふと、目線を横に向けると、鬼塚玲司が目を伏せたまま、鋭くフラムを睨みつけていた。


 ただし──その視線に気づいた紅龍将軍が一瞥をくれた瞬間、鬼塚はビクッと肩を揺らし、青ざめた顔で目を逸らした。



 (……鬼塚だけは、納得してない)



 影山は、ただ一人の“異常者”として、自身の感覚がまともであることを信じながら、改めて周囲を見渡した。



 (……いや、違う)


 (《《まともじゃない》》のは、アイツらの方だ)



 胸にまとわりつく、ただならぬ予感に影山はブルッと肩を震わせるのだった。




 ◇◆◇




 静まりかけていた会議室の空気を、清らかな声が震わせた。


 


 「──あの……!」


 


 手を挙げていたのは、女子クラス委員長・天野唯。


 普段は控えめで落ち着いた性格の彼女が、真っ直ぐにフラムを見つめている。


 その眼差しには、揺るぎない意志が宿っていた。


 


 フラムは小さく目を細め、彼女の言葉を促すように頷いた。


 


 「どうぞ、天野唯さん」


 


 唯は息を整え、ほんのわずか震える声で質問を口にした。


 


 「……もし、この世界での”使命”が終わって、私たちが……元の世界に帰れるとしたら……」


 


 一呼吸、置いて。


 


 「その時、私たちは……今、与えられたスキルを身につけたまま、元の世界へ戻ることができるんでしょうか?」


 


 空気がピンと張り詰めた。


 誰もが思っていた疑問。


 しかし、誰もが口にできなかった問い。


 それを唯は、真正面からぶつけたのだ。


 


 フラムはほんの一瞬、目を伏せた。


 そして──微笑む。


 


 その微笑みは、あまりにも優しく、そして……ほんの少し、冷たい。


 


 「ええ。全てが終われば……あなた達はスキルを保ったまま、地球へ帰ることができるはずよ」


 


 「やったァァアアアアア!!!!!」


 


 誰かが叫んだ。


 それを皮切りに、会議室が一気に騒がしくなる。


 


 「マジかよ!? 俺、火使えるとか最強じゃね!?」


 「スキル持ちで帰還とか、もう現代のヒーロー確定だろ!」


 「は!? 俺は治癒スキルだから病院開業できるわ!!」


 「俺、異能力バトル系の漫画原作やるわ。マジで!」


 


 次々と飛び出す妄想と歓喜の声。


 唯はそんな騒ぎの中で、胸に手を当て、安堵と希望に満ちた表情を浮かべていた。


 


 ──お母さんを、助けられるかもしれない。


 私の”至天聖女パナギア“の力なら、どんな病も癒せるかもしれない──


 


 彼女の目元には、光るものが滲んでいた。


 


 一方で──その喧騒の中、誰にも気づかれない席の外。


 会議室の壁際に、背を預けた少年が一人、頭を抱えていた。


 


 影山孝太郎である。


 


 (…………ちょ、ちょっと待て!?)


 


 (スキル持ったまま帰還!? マジで!? っていうか、それヤバくないか俺!?)


 


 脳内アラートがガンガンに鳴り響く。


 周囲が狂喜乱舞している中で、彼の内心はほとんどパニックだ。


 


 (“何者にも認知されなくなるスキル”がこのまま元の世界でも発動してたら……俺、帰っても親に気づいてもらえねぇんじゃね!?)


 


 (いや、親どころか警察にも、役所にも、教師にも、誰にも認識されないとか……)


 


 (俺、存在証明ゼロ人間として闇に生きていくハメじゃね!?)


 


 壁に頭をゴンッと打ちつけそうになるのをこらえて、彼は唸った。


 


 (それってもはや“透明人間の呪い”じゃねーか!!)


 


 そんな影山の存在に気づく者は、当然、誰もいない。


 騒いでいるクラスメイト達も。


 優しく笑うフラムも。


 祈るように目を閉じる天野唯さえも。


 


 ──彼の存在は、この世界から、すでに“忘れられていた”。


 


 そして。


 


 壁際に立つ紅龍将軍の隣で、まるで影のように同じポーズで立つ影山の姿を──


 やはり誰も、見ていなかった。


 


 ◇◆◇




 銀と黒を基調とした円形会議室に、重い静寂が流れていた。


 天井に浮かぶ魔導式ランタンが柔らかくも冷たい光を放ち、中央に鎮座する円卓を照らしている。


 生徒たちは興奮と緊張の入り混じった表情で席に着き、その目を壇上の一人の女性に向けていた。



 銀髪赤眼の美貌の魔導官、フラム・クレイドル。



 その整った顔立ちに微笑を浮かべながら、彼女は再び口を開いた。



 「貴方達が、元の世界に帰るためには……もう一つ、重要な脅威について知ってもらう必要があるわ」



 彼女の言葉に、空気がわずかに張り詰めた。言い回しこそ穏やかだが、その声には奇妙な抑揚がある。



 「“強欲の魔王”が支配するスレヴェルド領の……その先。そこに広がる未踏の地——“フォルティア荒野”。」



 その名を口にした瞬間、フラムの瞳が一瞬だけ鋭く光った。だが誰も、それに気づいた様子はなかった。



 「かつてその地は、我が国にとっての第二の脅威……"咆哮竜ザグリュナ"によって支配されていたわ。しかし……ある日を境に、その姿は忽然と消えたの。今なら——彼の地に存在する“遺跡”の力で、貴方達を元の世界に帰すことができるかもしれない」



 円卓の周囲で、生徒たちがザワ……とざわめいた。



 「……え、それって、つまり……」


 「帰れるチャンスがあるってことだよな!」


 「マジか!やったじゃん!」



 フラムは、そんな生徒たちの反応に満足げに頷き、さらに続けた。



 「ただし、そのためにはまず、我が国と“フォルティア荒野”の間に位置する"スレヴェルド領"を攻略する必要があるわ」



 「つまり、結局は“魔王軍”と戦えってことだな」


 「でもさ、勝てば勝つほどスキル成長するって話だったし? 超効率いいんじゃね?」


 「俺、攻撃性能高いスキル手に入れたから、ゴリ押しでいける気がしてきた」



 生徒たちが口々に前向きな言葉を漏らし、雰囲気が高揚していく。



 「"ザグリュナ"の行方は誰にも分からない……。でも、万が一フォルティア荒野で"咆哮竜ザグリュナ"が生存していたら、貴方達のスキルで退治してもらいたいの。それこそが、君達にとっての"ラスボス"って訳ね。」



 「君たちの持つチートスキルなら、魔王の部下たちなど容易いでしょう。スキルを更に磨いて、“ラスボス”である"咆哮竜ザグリュナ"に備えてちょうだい」



 ——ラスボス。



 その言葉にさえ、生徒たちはもはやゲームの延長にしか感じていないようだった。



 「よーし!やるしかねぇ!」


 「まずは魔王軍で肩慣らしってやつだな!」


 「レベル上げだと思えば楽勝でしょ!」



 その賑わいの中、影山孝太郎は——誰にも認識されないその存在のまま、壁際で肩をもたれさせていた。円卓に彼の席は、存在していない。



 (……いや、ちょっと待てよ……)


 (今の話……要するに、“召喚したけど、帰還装置はここには無い”って言ってるよな?)



 影山の心臓が、ひときわ大きく打った。



 (何だよその展開!? 一か八かで敵地の向こうの遺跡に行かないと帰れませんって!? そんなのアリかよ!?)



 ざわめくクラスの中心、佐川、ユウマ、マコト……どの顔も、なぜか妙に素直で、納得している。



 (あいつら……! 完全に呑まれてる……!?)



 天野委員長でさえ、まるで迷いなど一切ない様子で、隣のギャル三人娘と何やら笑顔で会話している。



 (おかしい!絶対におかしい……!)


 (こんな急展開に納得しちまうなんて、いくらなんでも《《馬鹿すぎる》》!)



 影山は、ふと円卓の向こう側、沈黙を守る男の姿に目を向けた。


 ——鬼塚 玲司。


 目を伏せ、口を一文字に結んでいる。あきらかに他の生徒とは違う空気をまとっていた。



 (鬼塚……お前、納得してないのか?)



 鬼塚の瞳がフラムを睨んだ瞬間、背後の壁に寄りかかっていた紅龍将軍がゆっくりと鬼塚に目を向ける。


 ピクリと鬼塚の肩が震え、そのまま顔を逸らした。青ざめたような表情。



 (やっぱり……!)


 (あの時、紅龍に吹っ飛ばされたトラウマが、まだ残ってる……でも、それでもフラムに疑いの目を向けた。ってことは、鬼塚だけは冷静なんだ……!)



 影山の呼吸が浅くなる。脳が猛烈な速度で回転し始めていた。



 (クラス全体が、何かに“納得させられてる”。……いや、違う……これは——)



 影山の脳裏に、稲妻のような仮説が閃いた。



 (……洗脳……!?)



 言葉にすれば荒唐無稽すぎて笑ってしまいそうなその可能性が、しかし、目の前の異様な光景すべてを説明してしまう。



 (そして……俺だけは、その影響を受けていない……!? いや、違う。俺は、そもそも“存在自体を認識されていない”から……)



 影山はぎり、と奥歯を噛み締める。



 (……俺のスキル"絶対不可視(イグノーシス)"が、この洗脳だか扇動だかの対象からも、俺を外しているんだとしたら……)



 (……そうだ!さっき鬼塚のスキルの中に"状態異常耐性・大"ってのがあった……!だから、鬼塚には洗脳的なスキルか魔法の効果が薄いと考えれば、説明がつく……!)



 (今、この中で“正気”を保ってるのは……俺と鬼塚だけ……?)



 そして、思い至る。



 (でも、俺はもう“存在を認識されない”状態だ。誰かの協力なんて……どうやって取ればいいんだ!?)


 (もし、俺のスキルを上回る……“看破能力”でも持ってる奴がいれば……)


 (けど、そんなやつ、このクラスに——いや、この世界に……いるのか!?)



 影山は壁にもたれたまま、静かに頭を抱えた。


 目の前では、誰もが明るく「帰還」と「冒険」の話に花を咲かせている。


 ただの高校生たちが、戦場へ赴く覚悟を、笑いながら語っている。



 その異様な光景に、たった一人、取り残されたかのような孤独と絶望が、影山の背中にのしかかっていた。



 ——だが彼は、まだ知らない。



 この絶望の中にこそ、真の出会いが眠っていることを。


 この“誰にも気づかれない存在”が、後に世界を左右することになるなどと——


 今はまだ、誰も知る由もなかった。

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