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【45万PV感謝!】真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます  作者: 難波一
第六章 学園編 ──白銀の婚約者──

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第305話 統覇戦の影

フォルティア荒野の地下トンネル。

その最奥部に、まるで秘密を抱え込むように静かにそびえている巨大な機構塔がある。


"ソウル・ドライバー"。


地上からは決して見ることのできないその施設の中枢部に、俺は今、立っていた。


室内は完璧な半球体。

天井も壁も床も、すべてが継ぎ目のない白。

塗装というより、光そのものを固めて作ったような質感の空間だ。

余計な装飾も、柱も、機械らしい部品も何一つ見当たらない。

ただ、巨大な卵の内側に閉じ込められたみたいな、どこまでも無機質で静かな白い世界が広がっている。


その中心で、俺はゆっくりと息を吐いた。


体の奥底から、魔力を引き上げる。


胸の奥、背骨の内側、血の中に溶けている熱が、少しずつ表へと押し上げられてくる。

俺はそれを、意識的に制御しながら外へ放出した。


次の瞬間。


ゴゥッッ!!と音がした。


俺の体から放たれた魔力が、渦を巻くように広がり、室内の白い壁へと叩きつけられる。

そして壁に触れた途端、その膨大なエネルギーはまるで巨大な胃袋に吸い込まれるみたいに、凄まじい勢いで内部へと飲み込まれていった。


白い壁の表面に、淡い光の波紋が走る。


吸収された魔力は、目に見えるほどの光の流れとなって壁の内部を駆け抜け、塔の奥深くへと送り込まれていく。


しばらくの間、室内には低く唸るような振動音だけが響いていた。


そして。


天井のどこかに埋め込まれた魔導スピーカーから、落ち着いた声が流れてきた。




『臨界値に達しました』




機械音声ではない。聞き慣れた、静かで知的な声だ。




『本日のチャージを終了します』




わずかに間が空いて、続く。




『毎日、本当にありがとうございます。アルドさん』




一条くんの声だった。

俺は肩の力を抜いて、ふう、と息を吐く。




「……よし、こんなもんかな」




軽く首を回すと、骨がコキッと鳴った。


スレヴェルドでの戦いが終わってから、俺はほぼ毎晩ここに来ている。

理由はもちろん、このソウル・ドライバーへの魔力チャージだ。


"ソウル・ドライバー"。


名前の通り、これは魂を転送するための装置だ。

正確には、魂と肉体を上位世界へ送り返すための巨大な発射台と言った方が近い。


つまり──彼らが日本へ帰るための装置。


召喚された高校生たちを、元の世界へ送り返すための、唯一の方法。


まあ、そのために必要なエネルギー量が、ちょっと笑えないくらい膨大なんだけどね。

恒星一個分とか言ってた様な……


俺は肩を回しながら、ぼんやりと天井を見上げる。


とはいえ、移動自体は別に大変じゃない。俺には"竜渦(ドラグ・ボルテックス)"がある。

ワープ能力だ。どこでも◯ア的な。

カクカクシティどころか、王都ルセリアからここまでだって、ほんの数秒で来られる。


むしろこの場所、個人的には結構気に入っている。


なにせ──




「俺にとっては……ここ、ジムみたいなもんだしね。」




思わず独り言が漏れた。


俺の魔力って、普段はあんまり本気で放出できない。街中でやったら、建物ごと消し飛びかねないからだ。


でもここは違う。

ソウル・ドライバーが全部吸収してくれる。

だから、かなり本気に近い出力で魔力を吐き出しても問題ない。


ぶっちゃけ、なかなかスッキリするんだよね!


いわば、真祖竜専用フィットネスジム。

言葉にするとだいぶ意味不明だけど。


ちなみに、ここで貯まるエネルギー量は、一日あたり日本帰還に必要な総量の約0.3%。

一年くらい続ければ、全員を送り返せる計算になる。


現時点で、だいたい四〇%くらい。


あと少し──とは言えないけど、確実にゴールは近づいている。




「……頑張らないとな」




俺はそう呟いて、半球体の白い空間を後にした。


扉を抜けると、そこはフォルティア荒野の地下トンネル。高さ二十メートルはありそうな巨大な空洞で、壁面には無数の魔導灯が埋め込まれている。淡い青白い光が、長い通路を静かに照らしていた。


その端に、ソウル・ドライバーの制御装置──コントロールパネルが設置されている。


パネルの前に立っている人物に、俺はすぐ気づいた。




「……という具合で、アルドさんの放出が終わったら、このアイコンをタップしてコンパイル」




パネルの画面を指しながら、淡々と説明している。




「これでチャージ作業は終了になるんだ。分かったかい?」




一条雷人くん。


相変わらず、背筋の伸びた立ち姿だ。

落ち着いた声で説明している様子は、大学の研究者みたいにも見える。


その両脇には、巨大な二匹の獣。


片方は、五メートル級のパグ型フェンリル──グェルくん。


もう片方は、同じく五メートル級のポメラニアン型フェンリル──ポメちゃんことポルメレフ。


二匹とも、真剣な顔でパネルを見つめていた。


グェルくんが、前脚を顎に当てて唸る。




「な、なるほど……ッ!」




巨大なパグの顔が、やけに真剣だ。




「なんという……高度な技術……ッ!」




隣のポメちゃんも、前脚でペンを握りながらメモ帳にカリカリと何かを書き込んでいる。




「う、ウチにはちょっと難しいです〜!とりあえずメモは取っておきますね〜!」




クソデカポメラニアンがペンでメモを取る光景、冷静に考えるとかなりシュールだ。

まぁ、もう見慣れたけども。

その時、一条くんがふとこちらを見た。




「あ、アルドさん」




軽く頭を下げる。




「お疲れ様でした」




律儀だなあ、この子。

俺は笑って手を振った。




「いいっていいって!一条くんこそ、毎晩付き合わせちゃってごめんね!」




この作業は、俺が魔力をチャージしてる間、外のコントロールパネルを操作する必要がある。

そこで、一条くんは、毎晩こうして管理を手伝ってくれているのだ。


一条くんは静かに首を振った。




「いえ。僕達の帰還のために頑張ってくださっているアルドさんを手伝うのは、当然の義務です」




ほんの少しだけ微笑む。




「これくらいはさせてください」




律儀すぎる。

その横で、ポメちゃんが感心した声を上げた。




「一条さん、異世界から来られたとは思えない手際の良さで本当にすごいです〜!」




尻尾をふりふりしながら続ける。




「ウチ、尊敬しちゃいます〜!隊長よりも〜!」




グェルくんの動きがピタッと止まった。




「……えッ!?」




ゆっくりとポメちゃんを見る。

ショックを受けたパグ顔。

一条くんは乾いた笑いを浮かべた。




「ははは……いや、僕の説明だけで概要を理解してるグェルくんも凄いよ」




完全にフォローだ。

グェルくんの耳が少し立った。

その空気を見ながら、俺は苦笑する。


……うん、いつもの光景だ。


そのまま、ふと思い出したように言った。




「そういえばさ」




一条くんがこちらを見る。




「一条くん、慰労会来なかったよね?」




軽い調子で続ける。




「乾くんはともかくさ、一条くんが約束の時間に遅れるなんて珍しいじゃん?」




肩をすくめた。




「何か事故とか遭ったんじゃないかって、ちょっと心配してたんだよ」




その瞬間。

一条くんの表情が、ぴたりと固まった。

空気が、ほんのわずかに変わる。

そして一条くんは、ゆっくりと口を開いた。




「……その事で」




視線がまっすぐこちらに向く。




「アルドさんに、お話ししたいと思っていたんです」




さっきまでの穏やかな空気とは、明らかに違う。

真剣な顔だった。えっ、何?




「この後、お時間よろしいですか?」




……えぇ。


俺の背中を、なんとも言えない冷たいものがスーッと走った。

かしこの一条くんに、そんな顔で言われると──

なんか、すごく怖いんだけど。

でも、ここで狼狽えるのも格好悪い。

俺は軽く咳払いをして、できるだけ冷静な顔を作った。




「もちろん」




腕を組んで、ゆっくり頷く。




「聞くよ」




大人の威厳ってやつを見せないとね。

内心ちょっとビビってるけど。




 ◇◆◇




地下トンネルの空気は、さっきまでと変わらずひんやりとしていた。

ソウル・ドライバーの制御盤が、低く安定した駆動音を鳴らしている。魔導灯の青白い光が、長い通路と俺たちの影を無機質に照らしていた。


なのに、一条くんが「話したいことがある」と言った瞬間から、この場所の温度だけが一段下がったように感じる。


俺は制御盤の脇に寄りかかるのをやめて、ちゃんと一条くんの方へ向き直った。

グェルくんも、ポメちゃんも、何となく空気を読んだらしく、さっきまでのゆるい雰囲気を引っ込めて大人しくしている。


一条くんは一度だけ息を整えるように胸を上下させ、それから静かに口を開いた。




「……慰労会当日の記憶が、一部抜け落ちているんです」



「──え?」




間の抜けた声が出た。


いや、だって。

もうちょっとこう、「遅れてごめんなさい」から始まる話だと思うじゃん。

体調が悪かったとか、誰かに呼び止められたとか、そういう現実的な理由を想像していた俺の頭に、記憶が抜けているなんて言葉はまったく用意されていなかった。


一条くんは自分でも、その言葉がどれだけ異常に聞こえるか分かっているみたいだった。少しだけ眉を寄せて、言い直すように続ける。




「……そうとしか考えられない、と言った方が正確かもしれません」




その声音は、いつもの冷静さを保ってはいる。

でも、その冷静さの表面に、どうしようもない不気味さが薄く張り付いていた。




「慰労会の前、僕は(いぬい)と一緒にいたんです」




俺は黙って頷く。




「乾がピアスを落としたと言っていて、それを一緒に探していました。会場へ行く途中だったので、長引かせるつもりはありませんでしたが……気づけば、僕たちは『眞学の森』の中にいた」



「……眞学の森?」




思わず聞き返す。

ルセリア中央大学の構内にある、でかい森だ。

確かに広いし、見通しも悪い。学生が迷っても不思議じゃない場所ではある。でも──




「え、ちょっと待って。一条くんたちって、ピアス探してただけなんだよね? なんで急にそんな場所に……」



「それが、分からないんです」




一条くんは俺の言葉を遮るでもなく、ただ静かに答えた。




「僕の中では、乾の落とし物を探していた記憶の次にあるのが、もう森の中なんです」




言いながら、一条くんの視線がわずかに宙へ泳ぐ。

その時の情景を、記憶の中から慎重に取り出しているようだった。




「周囲の木は、酷く倒れていました。何本も、何本も。自然に倒れた、という感じではありませんでした。幹が裂け、地面は抉れ、枝葉は散乱していて……まるで、そこで大規模な戦闘でもあったみたいに」




その言葉を聞いた瞬間、俺の胸の奥がひやりと冷えた。


倒れた木々。

抉れた地面。

戦闘の痕。


嫌な予感しかしない。




「……乾くんと、一条くんだけ?」




俺はできるだけ平静を装って尋ねた。

一条くんは、わずかに首を横へ振る。




「いいえ」




短い返答のあと、ほんの一拍の間が落ちる。




「近くには、ザキ・クローバーもいました」



「──は?」




今度は本当に素っ頓狂な声が出た。




「ザキさんも、その場にいた……?」




一条くんは真っ直ぐ俺を見たまま、静かに頷く。




「はい。彼も、自分がなぜその場所にいるのか分からない、と言った様子でした」




そして、一条くんらしく一言付け加える。




「……演技でなければ、ですが」




その“但し書き”が逆に怖い。


ザキさん。俺と同時期に編入してきた、

統覇戦予選三位通過チームのリーダー。

あの、軽薄そうに見えて、実は優しいチャラ男。

そんな人が、一条くんと乾くんと一緒に、記憶を飛ばした状態で森の中にいた?


何それ。

どう受け止めたらいいのかも分からない。


俺が言葉を失っていると、横から巨大なパグボディがもぞりと動いた。

グェルくんだった。

不安そうに耳を伏せながら、前脚で床を掻く。




「い、一条くんの勘違いなんじゃあ……?」




声が少し弱い。

でも、否定したい気持ちは伝わってくる。




「ほら、その……色々忙しすぎて、記憶が混濁してるとか……そういう可能性は……」




もっともな意見だ。

実際、普通の人間が「記憶が抜けた」なんて言い出したら、まずは疲労とか混乱を疑うべきだろう。


だが、一条くんはそこで、静かにグェルくんの方を向いた。




「──グェルくん」




声は柔らかい。

けれど、その奥には妙な決意があった。




「僕はね」




少しだけ言葉を区切る。




「一度でも見聞きしたことは忘れない」




地下通路の空気が、ぴたりと静まる。

一条くんは続けた。




「……そういう特性(・・)があるんだ」




グェルくんが「?」という顔で首を傾げる。

ポメちゃんもメモ帳を持ったまま、きょとんとしている。


でも俺には分かった。




(ああ、そういうことか)




完全記憶。

いわゆる、見たもの聞いたものをほぼ丸ごと保持するタイプの記憶特性。

昔、前世の世界で聞いたことがある。

HSAMとか、そんな呼び方だった気がする。


とんでもなく賢い子だとは思っていたけど、なるほど、それが前提なら話が一気に変わってくる。

疲れていて忘れました、なんてレベルの話じゃない。忘れない人間が、忘れている。


それはもう、“忘れた”じゃない。


“消された”と考える方が自然だ。


一条くんは俺の目を見た。

その眼差しは、普段よりも少しだけ年相応に見えた。冷静に整理してはいるけれど、やっぱり怖いのだろう。自分の身に起きた異常事態が。




「魔法やスキルのあるこの世界です」




一条くんは、言葉を慎重に選ぶように続ける。




「僕も、まだ確証を持って言い切ることはできません。ですが……」




そこで、ほんの僅かに息を呑む。




「気をつけてください、アルドさん」




その言葉に、俺は思わず背筋を正した。

一条くんの声は大きくない。

むしろ、かなり静かな方だ。

なのに、その一言は魔導灯の光よりもはっきり、この地下通路の空気に刻まれた。




「僕には、この“統覇戦(ドミナンス・カップ)”の裏で……何かとんでもないことが起きているように思えてならないんです」




沈黙。

その場の誰も、すぐには口を開かなかった。


グェルくんは巨大な身体をわずかに縮こまらせ、ポメちゃんもメモ帳を抱えたまま不安そうに尻尾を垂らしている。

俺自身だって、正直かなり怖かった。


そりゃそうだ。

一条くんみたいな切れ者が、ここまで真剣な顔で「何かとんでもないことが起きてる」なんて言うんだ。怖くないわけがない。




(いやいやいや)




でも、ここで俺まで一緒に青ざめてたらダメだろ。

一条くんはまだ高校生なんだ。いくら賢くても、どれだけ落ち着いて見えても、根っこのところでは年下なんだから。


こういう時こそ、年長者の出番だ。

大人の余裕ってやつを見せなければならない。


……まあ、精神年齢の計算を始めると、俺が“年長者”でいいのか怪しくなってくるんだけど。今はそういう細かいことはいい。


俺はなるべく柔らかく笑って、一条くんの方に一歩近づいた。




「一条くん」




声をかける。




「ありがとうね。教えてくれて」




まずはそれをちゃんと伝えたかった。

怖いことでも、不穏なことでも、ちゃんと共有してくれた。それは信頼してくれてるってことだ。

そして、俺は肩を軽くすくめてみせる。




「でも、大丈夫」




できるだけ明るく言う。




「もし何かあったとしても……俺が絶対解決するから」




グェルくんとポメちゃんが同時にこちらを見る。

俺は親指で自分を指した。




「ホラ! 俺って結構強いからね!」




一瞬の静寂のあと。

一条くんが、きょとんとした顔をした。

それから、ぷっと吹き出す。




「……『結構強い』とかいう次元じゃないでしょう、貴方の場合」




くすりと笑う、その顔は、ようやく年相応の高校生のものだった。

さっきまで張り詰めていた緊張が、少しだけほぐれたのが分かる。




「でも……ありがとうございます」




一条くんは、少しだけ目を伏せてから言った。




「アルドさんにそう言ってもらえて、心的負担が軽くなった気がします」




よしよし。

それでいい。


怖いなら怖いで、半分くらい俺に預けてくれればいいんだ。そういう役なら、俺は割と得意だと思う。多分。


その横で、ポメちゃんがしゅんと耳を寝かせた。




「一条さん、頼りになりますからね〜……」




巨大なポメラニアンボディが、しょんぼりと沈む。




「ウチらも、知らず知らずのうちに頼りすぎてたのかも〜。それで、疲れさせちゃってたとか〜……」




一条くんは、そんなポメちゃんを見て目を細めた。

そして自然な動作で、巨大な頭をそっと撫でる。




「そんなことはないよ、ポメちゃん」




優しく言う。




「僕は……僕達は、君達には感謝してもしきれないくらいなんだからね」




ポメちゃんの丸い目が、じわっと潤む。




「一条さ〜ん……!」




感動したように身体をすり寄せる。




「もういっそ、グェル隊長に代わって、わんわん開拓団の隊長になっていただければ〜……!」




その瞬間、隣でグェルくんの身体がビクンと震えた。




「えッ!?」




ショックを受けたパグ顔。

一条くんは苦笑しながら首を振る。




「はは……嬉しい申し出だけど、僕は犬じゃないからね」




その返しに、俺は思わず心の中でツッコむ。

いや、グェルくんとポメちゃんも厳密には犬じゃないんだけどね?フェンリルだよ?

まあ、今さらそこを正すのも野暮か。


でも、そんないつも通りのやり取りを見ていると、逆にさっきの話の不穏さが際立つ。


俺は笑いながらも、頭の中では別のことを考えていた。


統覇戦。


言われてみれば、確かにおかしいことが多すぎる。


そもそもの始まりは、合格発表の時だった。

俺の受験番号が、一つズレていた。あれは今思えば、あまりにも不自然だ。


その後、予選会で起きたマリーダ教授の変貌。

そして今回の、一条くんたちの記憶喪失騒ぎ。


一つ一つは、別個の出来事に見える。

けれど、こうして並べてみると──




(……何かが、この大会の裏で起きている)




そう考える方が自然だ。


でも。


俺はブリジットちゃんの顔を思い浮かべた。

あの子は今、一生懸命、両親との和解の道を探している。統覇戦で結果を出して、自分を認めてもらおうとしている。そこに余計な不安を上乗せしたくない。


ジュラ姉も、鬼塚くんもそうだ。

皆、自分なりの事情や戦いを抱えながら、この大会に向き合っている。


だったら──




(俺が並行して調べるしかないか)




でも、俺一人でこっそり動くと、何となく色々失敗しそうな予感がする。

うん、これはもう経験則だ。


こういう時は、ちゃんと相談できる人に頼るべきだ。




(ヴァレンには、きちんと話そう)




あいつなら、こういう裏の匂いがする話にも頭が回る。

あと、今ちょっと暇してそうなリュナちゃんにも手伝ってもらおう。あの子、やる時は本当に頼りになるし。


ヴァレンとリュナちゃん。


あの二人が揃えば、だいたいの問題は何とかなる。


少なくとも、俺一人で考えて変な方向に突っ走るよりは、ずっとマシだ。


そう決めると、胸の中の重さが少しだけ整理された。


俺は顔を上げて、一条くんたちを見回した。




「──さ!」




わざと少し明るめの声を出す。




「夜も遅いし、そろそろ帰ろうか」




そして右手を軽く前へ出した。

空間が、黒く歪む。


まるで夜そのものを引き裂いたみたいに、目の前に黒い渦──"竜渦(ドラグ・ボルテックス)"がゆっくりと口を開いた。

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そうなんだ〜でもそれでも更新ペースが短くてすごい!
もしかしていこれからずっと二日おきに更新?
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