第296話 偽アルドの脅威
夕暮れの眞学の森。
焦げた木々の匂いがまだ残るその空間で、雷と炎の光がゆらゆらと揺れている。
その中央に立つ“それ”を前に、流星の喉がひくりと鳴った。
銀の髪。
均整の取れた体躯。
見慣れたはずの横顔。
だが、その肌には黒い筋が走り、胸元の白蛇の紋様がぬらりと蠢いている。瞳は深い蒼ではなく、濁った赤。
流星は額から流れる冷や汗を拭う余裕もなく、炎の大剣──”気炎万丈“を構え直した。
「おいおいおい……」
声が、わずかに裏返る。
「アルドさんに変身とか、どういう症状なんだよ、こりゃ!? それはナシだろ流石に!?」
軽口のはずだった。
だが、笑いは一切含まれていない。
隣で、雷人も金色の雷刃──”雷月刃“を静かに構えている。紫電がぱちぱちと弾け、森の影を裂く。
「ザイード・ジュナザーンのスキルは植物操作……」
視線は偽アルドから逸らさない。
「アルドさんに変身する、なんて真似は出来ないはずだ……。やはり、今の彼は……!」
言葉の続きは、口に出さない。
だが、思考ははっきりしている。
──外部干渉。
──何者かの操作。
あのマリーダ教授と同じ匂い。
理性の芯を抜き取られたような、あの様子。
偽アルドは、二人の視線など意に介さぬ様子で、自分の両手をゆっくりと開いたり閉じたりしていた。
グーパー。
グーパー。
筋肉の動き。
関節の軋み。
その一つ一つを確かめるように、恍惚とした笑みを浮かべる。
「これが……」
低く、震える声。
「”銀の新星“の身体……か。」
銀髪が夕陽を受けて、鈍く光る。
「素晴らしい……素晴らしいぞ……!」
天を仰ぎ、両腕を広げる。
その姿は、陶酔そのものだった。
流星はごくりと唾を飲み込む。
(やばい……これ、完全にキマってるやつだろ……)
だが、黙っていると本気で足が震えそうになる。
「ひょ、ひょっとしたらさ……」
無理やり口角を上げる。
「アルドさんの強さに憧れて、見た目だけ魔法で真似してるだけ、とか……ねぇかな? ほら、コスプレ的な?」
自分でも分かる。
苦しい軽口だ。
偽アルドの首が、ぎぎぎ、と不自然な音を立てるように動いた。
ギンッ。
赤い瞳が、流星と雷人を射抜く。
その瞬間、空気の温度が数度下がったように感じた。
「手始めに……」
低い声。
「貴様らで、この力を試させてもらうとするか。」
背筋に、冷たい刃を押し当てられたような感覚が走る。
流星と雷人、ほぼ同時に息を止めた。
次の瞬間、偽アルドの姿が──消えた。
「ッ!?」
視界から、完全に消失。
雷人の瞳が見開かれる。
「乾、危ないッ!!」
叫びと同時に、ドン、と流星の肩を突き飛ばす。
流星の身体が横に弾き飛ばされる、その刹那。
空間が裂けるように、偽アルドが現れた。
跳び回転踵落としの姿勢。
銀の髪が円を描き、黒い筋が不気味にうねる。
ドゴォォォンッッ!!
踵が地面に叩きつけられた瞬間、衝撃波が爆ぜた。
土と石が吹き飛び、半径数メートルのクレーターが一瞬で形成される。
木々が揺れ、森が悲鳴を上げる。
転がるように回避した流星は、地面に手をついたまま、ぱくぱくと口を開閉した。
クレーターを見る。
雷人の顔を見る。
もう一度、クレーターを見る。
「……え?」
言葉が出ない。
クレーターの中心で、ゆらり、と偽アルドが立ち上がる。
まるで、ただ地面を踏みしめただけのような、余裕の動作。
流星の顔が、みるみる青ざめていく。
「……今の、さ。」
震える声。
「当たってたら……俺、消えてたよな?」
雷人は、呼吸を整えながら答える。
「分かった。言いたい事は分かった。」
落ち着いた声。
「だから、今はまだ生きている事に感謝してくれ。」
流星は無言で頷く。
偽アルドは、クレーターの縁に片足を乗せる。
その仕草さえ、どこか様になっているのが、余計に腹立たしい。
流星は、乾いた笑いを漏らした。
「……完全なる見かけ倒し、って訳じゃなさそーね。」
炎の大剣を握る手に、じっとりと汗が滲む。
雷人も頬を伝う汗を感じながら、静かに相槌を打つ。
「……出来れば、そうであって欲しかったけどね。」
紫電が、ぱちり、と弾ける。
目の前にいるのは、本物ではない。
それは分かっている。
だが、身体が本能的に警鐘を鳴らす。
──あれは、危険だ。
偽アルドが、ゆっくりと二人へ歩み寄る。
一歩。その一歩だけで、地面がきしむ。
「どうした……?」
ねっとりとした声。
「余に……挑まぬのか?」
夕暮れの森に、三つの影が向き合う。
炎と雷。
そして、歪んだ“銀の新星”。
流星は喉を鳴らし、無理やり笑った。
「……一条。」
「何だい。」
「これ、マジで“本人並み”だったらさ。」
視線は偽アルドから逸らさない。
「俺ら、今日で人生終了じゃね?」
雷人は、ほんのわずかに口元を緩めた。
「その可能性は、否定しない。」
紫電が強く瞬く。
「それどころか……この世界の危機だよ。」
偽アルドの口元が、にたりと歪む。
次の瞬間、再び空気が張り詰めた。
本物ではない。
だが、軽く見ていい相手でもない。
森の戦場は、さらに深い領域へと踏み込もうとしていた。
◇◆◇
眞学の森の木立を、二つの光が縫うように駆け抜けていく。
一つは紅蓮。
流星の足裏から、ボッ、ボッ、と短い爆発音とともに炎が噴き出す。まるで即席の噴射装置だ。蹴るたびに火花が散り、焦げた落ち葉が宙を舞う。
「うおおおおおッ……! これ、逃げてるだけで結構体力持ってかれんだけどッ!?」
もう一つは紫電。
雷人の全身を薄い雷光が包み、足が地面に触れるたび、バチィッと空気が弾ける。ほとんど滑るように、無駄のない直線移動。
だが──
背後から響くのは、もっと単純で、もっと暴力的な音。
ジュバババババッ!!
地面を蹴るだけの、純粋な脚力。
偽アルドは、特別な技も使わず、ただ“走って”迫ってくる。
それだけで、二人との距離が縮まっていく。
「嘘だろ……! あれ、ただのダッシュだぞ!?」
流星が振り返った瞬間。
偽アルドがドンッと地面を踏み切った。
爆発のような音とともに、身体が垂直に跳ね上がる。次の瞬間、近くの大木の幹に足をかけ──
ドドドドドドッ!!
木々を足場に、空中を駆ける。
まるで森そのものが、彼のための階段になったかのように。
「どぅわっ!? ああああぶねぇえええ!!?」
真上から降ってくる影。
流星は空中で身体をひねり、炎を噴射して強引に軌道を変える。
その一瞬後、偽アルドの飛び蹴りが空を裂いた。
バキィィィン!!
蹴りの余波だけで、通過した木の枝が粉砕される。
「フハハハハハ!!」
空中を駆けながら、偽アルドが狂気に満ちた笑みを浮かべる。
「力が……力が溢れてくる様だッ!!」
その声音は陶酔そのもの。
流星は歯を食いしばる。
「アルドさんは、そんな中二病みてぇなセリフ、言わねえよッ!!」
炎の大剣を振りかぶる。
「“焔大蛇”ッ!!」
刀身から放たれた炎が二匹の巨大な蛇へと変貌する。
ゴォォォォッ!!
螺旋を描きながら、空中の偽アルドへ襲いかかる。
炎が森を赤く染め、偽アルドに直撃する。
だが──
「効かんッ!!」
偽アルドが両腕をバッと広げた瞬間。
パァンッ!!
二匹の焔大蛇が、まるで風船のように弾け飛び、炎の粒となって消滅した。
流星の顔から血の気が引く。
「耐久力、本人並みなのかよッ!?」
その叫びを遮るように、雷人が前へ出る。
「下がってろ! 乾ッ!!」
懐から小袋を取り出し、宙へ放る。
ジャラッ、と音が鳴る。
それを”雷月刃“で──
ズバァン!!と、切り裂く。
空中に散らばる、無数の鉄製ベアリング弾。
一瞬の静止。
次の瞬間、それぞれがバチィッと雷を纏い、キィィィン……と甲高い音を立てる。
空気が震える。
磁場が歪む。
雷人が刃先を偽アルドへ向ける。
「”電磁投射連弾”……!」
キュドドドドドドッ!!
一斉射出。
磁力で加速された鉄球が、レールガンのような軌跡を描き、音速を超えて襲いかかる。
森の空気が裂ける。
だが──
「無駄だ……無駄無駄ァァッ!!」
偽アルドの瞳が狂気に染まる。
両腕が残像を引くほど振るわれる。
バシィッ!!
バギィッ!!
パァン!!
高速弾丸を、素手で叩き落とす。
鉄球が弾け飛び、火花と衝撃波が散る。
流星の喉から、情けない声が漏れた。
「だ……ダメだ……! こんなもん……本物のアルドさんみてぇじゃんか……!? 俺ら2人なんかじゃ、敵うわけ……」
恐怖が、じわじわと足元から這い上がる。
だが。
「いや……それはどうかな。」
雷人の声は、静かだった。
(確かに驚異的だ……)
紫電が彼の周囲で微かに震える。
(だが……僕は知っている)
記憶がよみがえる。
以前、アルド本人と対峙した時の、あの絶望的な圧力。
呼吸一つで空間が歪み、
視線一つで膝が震えた。
(本物は……こんなものでは無かった)
雷人の口元が、わずかに緩む。
その笑みを、偽アルドが見逃さない。
ピタリ、と動きを止める。
「……おい、貴様……何を笑っている……!?」
怒りが混じる声音。
雷人は肩をすくめる。
「──いや、失礼。」
「キミがどんなカラクリでアルドさんに化けたのかは知らないが……」
視線を真っ直ぐに向ける。
「本人ほどの力は無い様で、安心していたところさ。」
空気が凍りつく。
偽アルドの額に、ビキビキと青筋が浮かぶ。
「余の……俺の力が……まだ、彼奴に劣る、だと……ッ!?」
怒気が爆発する。
黒いオーラが揺らめく。
隣で、流星が青ざめる。
「一条……お前、なんでそんな煽る様な事言うの……?」
声が震えている。
雷人はちらりと横目で流星を見る。
「……ごめん、つい。」
素直に謝る。
流星は思わず叫んだ。
「つい、で命賭けんなよッ!?」
だが、その軽いやり取りの裏で。
二人の足は、もう震えていなかった。
“本物ではない”。
その確信が、ほんのわずかだが、恐怖を削っていた。
偽アルドの怒りが、森を揺らす。
そして戦いは、さらに激しさを増していく。
◇◆◇
ドゴォンッ!!
偽アルドの蹴りが大木を根元からへし折る。
軋む音すら追いつかない。
折れた幹はそのまま空中で回転し、弾丸のように一直線に放たれる。
ヒュゴォォォッ!!
「おわああああああ!!充分ヤベェんだけど!!この攻撃量ォ!?」
流星は”気炎万丈“を両手で握り、腰を落とすと、そのまま身体ごと回転させた。
ブゥゥーーン!!
炎の刃が円を描き、迫る大木を次々と弾き飛ばす。
バキィン!!
ドォン!!
ボォッ!!
火花と火の粉が舞い、焦げた木片が森に降り注ぐ。
その横を、雷人はまるで風に揺れる葉のようにヒラリと躱していく。ほんの数センチ身体を傾けるだけで、弾丸のような大木が頬を掠めて通過する。
だが次の瞬間。
視界が黒く染まる。
飛び蹴り。
偽アルドが空を裂き、一直線に迫る。
「っ……!」
雷人は反射的に”雷月刃“を横に構えた。
ドォォォォン!!
衝撃。
雷刃が軋み、雷人の腕に凄まじい反動が走る。
「ぐうぅッ!?」
骨が軋む。
足元の地面が抉れる。
そのまま後方へ吹き飛ばされそうになるけど──
だが。
ドンッ。
背中に衝撃。
流星が踏み込み、雷人の身体を支えた。
二人分の体重が地面に食い込み、土煙が舞う。
流星は歯を見せて笑う。
「だけどよ!」
偽アルドの拳が迫る中、炎の大剣で必死に受け止めながら叫ぶ。
「お前の言ってる意味は、分かったぜ……!」
雷人も口元にわずかな笑みを浮かべる。
「ああ……」
息を整えながら、刃を握り直す。
「もし、本物のアルドさんが相手なら……今の一撃で”雷月刃”もろとも、僕は粉々にされているはずさ。」
その言葉に、恐怖はない。
あるのは、冷静な比較。
偽アルドがパンチのラッシュを浴びせる。
ドドドドドッ!!
流星は大剣で必死に打ち払う。
「それに……!」
炎が散る。
衝撃が腕を痺れさせる。
「“竜渦”も!“竜泡”も使ってこねぇ!」
歯を食いしばる。
「コイツは……アルドさんじゃねぇ!!」
その言葉は、自分への呪文だ。
“これは本物ではない”。
“俺たちが戦える相手だ”。
そう言い聞かせなければ、心が折れる。
偽アルドの瞳がギラリと歪む。
「貴様……貴様らッ……!?生意気な……生意気なァァッ!!」
黒いオーラが噴き上がる。
ドンッ!!
震脚。
中国拳法のそれのように、地面を踏み締める。
衝撃波が円状に広がり、土と落ち葉が吹き飛ぶ。
そして──
ドォン!!
ドォン!!
ドォン!!
周囲の木々が、根こそぎ抜けて空へと打ち上がる。
まるでロケットのように。
雷人の瞳が見開かれる。
(この戦い方は……!?)
宙に浮かぶ木々。
それを足場にする動き。
予選会で見た、あの光景。
(──そうか!)
思考が一瞬で繋がる。
(この偽アルドさんは……ザイード・ジュナザーンが“見た”アルドさんの模倣……!)
(予選会で力を抑えていたアルドさんを、そのままなぞっているんだ……!)
偽アルドは浮かぶ大木を次々と蹴り、空間を駆け回る。
その動きは速い。
だが、どこか“再現映像”のような違和感がある。
大木が次々と撃ち出される。
ドンドンドン!!
弾幕。圧倒的な物量。
雷人は叫ぶ。
「乾!!相手の攻撃進路を狭められるかッ!?」
流星は息を荒げながらも、ニヤリと笑う。
「──よく分からねーけど、やってみるッ!!」
大剣を後方に構える。
炎の魔力が刀身に渦を巻く。
空気が熱を帯びる。
その目に、もう迷いはない。
偽物だ。本物じゃない。
だったら──
やってやる。
流星は足を踏み締め、炎をさらに膨らませた。
◇◆◇
流星の大剣に、炎が巻き付く。
ゴォォォォ……。
赤と橙の魔力が渦を描き、刀身を中心に竜のように唸りを上げる。熱風が周囲の落ち葉を巻き上げ、地面の土を乾かし、焦がしていく。
流星は奥歯を噛みしめた。
「──”火焔旋風“ッ!!」
大剣を思い切り振り上げる。
瞬間、炎が解き放たれた。
ドォォォン!!
巨大な火災旋風が地面から天へと立ち上がる。炎の竜巻は円環を描くように広がり、偽アルド、雷人、流星を包囲する形で立ち上がった。
燃え盛る壁。
轟々と唸る炎。
熱が空気を歪ませ、景色が揺らぐ。
偽アルドが炎の向こうで目を細める。
「炎の渦……」
黒い筋の浮かぶ顔が、歪む。
「こんなもので、余を捕らえたつもりかッ!!」
足を踏み出そうとするが、炎の壁が視界と足場を奪う。空中を跳び回るための木々は、今や炎の中で炭化しつつある。
その一瞬。
雷人が動いた。
「いいや──」
雷月刃を両手で握り、天へ掲げる。
紫電が白へと変わる。
「一瞬でも動きを制限出来れば……上出来だッ!!」
「”白樹雷轟“ッッ!!」
雷刃から枝分かれするように白い雷撃が奔る。
バチィィィン!!
空中に浮いていた大木へ雷が走る。
一本、二本、三本──。
雷はまるで樹木の枝葉のように枝分かれしながら、偽アルドが飛ばした大木を次々と焼き切っていく。
ドガン!!
バキィン!!
炭化した幹が崩れ、炎の竜巻の中へと落ちる。
やがて、無数に枝分かれしていた雷撃が収束を始める。
一本の、純白の雷へ。
空間が静止したような錯覚。
そして──
バァァァーーーンッ!!
収束した雷が、偽アルドへ直撃した。
白い閃光が炎をも塗り潰す。
「ぐ、グアァァアアアアッ!?」
偽アルドの絶叫。
その身体が吹き飛び、炎の竜巻の内側で地面へ叩きつけられる。
ドサリ、と鈍い音。
土煙が上がる。
炎が揺らぎ、やがて消えていく。
流星が息を呑む。
「……やった、か?」
だが。
土煙の中から、ゆらりと影が立ち上がる。
黒い筋の浮かぶ身体。
焦げた痕は、ない。
「小癪……小癪……ッ!!」
偽アルドが顔を歪める。
「だが、この身体は……その程度では傷付きはせぬ……ッ!!」
無傷。本当に、無傷。
雷人の喉がわずかに鳴る。
(くっ……!?)
内心で舌打ち。
(力はともかく、耐久性の高さが厄介すぎる……!)
隣で流星が引き攣った笑みを浮かべる。
「そういえば……」
汗が頬を伝う。
「アルドさんがダメージ受けてるとこって、見た事ねぇよな……!」
その言葉が、妙に現実味を帯びる。
偽アルドがゆっくりと人差し指を二人へ向けた。
「もうよい……」
声が低く沈む。
「消し飛ばしてくれる……ッ!!」
キィィィィン……。
指先に魔力が収束する。
空気が震え、森の音が消える。
流星の顔色が変わる。
「こ……これって……」
唇が震える。
「ラグナ王子の、核撃魔法……!?」
雷人も目を見開く。
「まさか……まずいッ!?」
次の瞬間。
極太のビームが、一直線に放たれた。
ズガァァァァァァッ!!
大地を削り、空間を裂く白光。
逃げ場は、ない。
二人は刹那、死を覚悟する。
その直前。
ザッ。
誰かが、前へ踏み出した。
光の前に立つ影。
一瞬、鞘から刀が抜かれる。
居合。
空気が切断される音。
──シュバァァンッ!!
核撃魔法の光が、真っ二つに割れた。
左右へと分断された光が森を抉り、霧散する。
静寂とともに、残光が消える。
雷人の声が震える。
「──核撃魔法の光を……切った!?」
信じられないものを見る目。
その人影は、静かに刀を鞘へと納めた。
チン……。
乾いた音が、森に響く。
細い目。落ち着いた佇まい。
──ザキが肩を竦める。
「……つい飛び出してもうたけど。」
ゆるい関西弁。
「どういう状況やねん、これ。」
視線を偽アルドへ向ける。
細い目が、じっと観察する。
「君ぃ……アルドくんそっくりやね。」
少し首を傾げる。
「双子のお兄さんか何か?」
その場違いな軽さが、逆に空気を揺らした。
流星がへたり込みそうになりながら叫ぶ。
「た……助かったぁああ……!?」
雷人もようやく息を吐く。
だが、その目は真剣なままだ。
目の前に立つ男。
そして、偽りの“銀の新星”。
戦場は、まだ終わっていない。




