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【45万PV感謝!】真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます  作者: 難波一
第六章 学園編 ──白銀の婚約者──

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第296話 偽アルドの脅威

夕暮れの眞学の森。


焦げた木々の匂いがまだ残るその空間で、雷と炎の光がゆらゆらと揺れている。


その中央に立つ“それ”を前に、流星の喉がひくりと鳴った。


銀の髪。

均整の取れた体躯。

見慣れたはずの横顔。


だが、その肌には黒い筋が走り、胸元の白蛇の紋様がぬらりと蠢いている。瞳は深い蒼ではなく、濁った赤。


流星は額から流れる冷や汗を拭う余裕もなく、炎の大剣──”気炎万丈(レヴァンテイン)“を構え直した。




「おいおいおい……」




声が、わずかに裏返る。




「アルドさんに変身とか、どういう症状なんだよ、こりゃ!? それはナシだろ流石に!?」




軽口のはずだった。

だが、笑いは一切含まれていない。


隣で、雷人も金色の雷刃──”雷月刃(チャンドラハース)“を静かに構えている。紫電がぱちぱちと弾け、森の影を裂く。




「ザイード・ジュナザーンのスキルは植物操作……」




視線は偽アルドから逸らさない。




「アルドさんに変身する、なんて真似は出来ないはずだ……。やはり、今の彼は……!」




言葉の続きは、口に出さない。

だが、思考ははっきりしている。


──外部干渉。

──何者かの操作。


あのマリーダ教授と同じ匂い。

理性の芯を抜き取られたような、あの様子。


偽アルドは、二人の視線など意に介さぬ様子で、自分の両手をゆっくりと開いたり閉じたりしていた。


グーパー。

グーパー。


筋肉の動き。

関節の軋み。

その一つ一つを確かめるように、恍惚とした笑みを浮かべる。




「これが……」




低く、震える声。




「”銀の新星(シルバー・ノヴァ)“の身体……か。」




銀髪が夕陽を受けて、鈍く光る。




「素晴らしい……素晴らしいぞ……!」




天を仰ぎ、両腕を広げる。

その姿は、陶酔そのものだった。

流星はごくりと唾を飲み込む。




(やばい……これ、完全にキマってるやつだろ……)




だが、黙っていると本気で足が震えそうになる。




「ひょ、ひょっとしたらさ……」




無理やり口角を上げる。




「アルドさんの強さに憧れて、見た目だけ魔法で真似してるだけ、とか……ねぇかな? ほら、コスプレ的な?」




自分でも分かる。

苦しい軽口だ。


偽アルドの首が、ぎぎぎ、と不自然な音を立てるように動いた。


ギンッ。


赤い瞳が、流星と雷人を射抜く。

その瞬間、空気の温度が数度下がったように感じた。




「手始めに……」




低い声。




「貴様らで、この力を試させてもらうとするか。」




背筋に、冷たい刃を押し当てられたような感覚が走る。

流星と雷人、ほぼ同時に息を止めた。

次の瞬間、偽アルドの姿が──消えた。




「ッ!?」




視界から、完全に消失。

雷人の瞳が見開かれる。




「乾、危ないッ!!」




叫びと同時に、ドン、と流星の肩を突き飛ばす。

流星の身体が横に弾き飛ばされる、その刹那。

空間が裂けるように、偽アルドが現れた。

跳び回転踵落としの姿勢。

銀の髪が円を描き、黒い筋が不気味にうねる。


ドゴォォォンッッ!!


踵が地面に叩きつけられた瞬間、衝撃波が爆ぜた。

土と石が吹き飛び、半径数メートルのクレーターが一瞬で形成される。


木々が揺れ、森が悲鳴を上げる。


転がるように回避した流星は、地面に手をついたまま、ぱくぱくと口を開閉した。


クレーターを見る。

雷人の顔を見る。

もう一度、クレーターを見る。




「……え?」




言葉が出ない。

クレーターの中心で、ゆらり、と偽アルドが立ち上がる。

まるで、ただ地面を踏みしめただけのような、余裕の動作。

流星の顔が、みるみる青ざめていく。




「……今の、さ。」




震える声。




「当たってたら……俺、消えてたよな?」




雷人は、呼吸を整えながら答える。




「分かった。言いたい事は分かった。」




落ち着いた声。




「だから、今はまだ生きている事に感謝してくれ。」




流星は無言で頷く。

偽アルドは、クレーターの縁に片足を乗せる。

その仕草さえ、どこか様になっているのが、余計に腹立たしい。


流星は、乾いた笑いを漏らした。




「……完全なる見かけ倒し、って訳じゃなさそーね。」




炎の大剣を握る手に、じっとりと汗が滲む。

雷人も頬を伝う汗を感じながら、静かに相槌を打つ。




「……出来れば、そうであって欲しかったけどね。」




紫電が、ぱちり、と弾ける。

目の前にいるのは、本物ではない。

それは分かっている。

だが、身体が本能的に警鐘を鳴らす。


──あれは、危険だ。


偽アルドが、ゆっくりと二人へ歩み寄る。

一歩。その一歩だけで、地面がきしむ。




「どうした……?」




ねっとりとした声。




「余に……挑まぬのか?」




夕暮れの森に、三つの影が向き合う。


炎と雷。

そして、歪んだ“銀の新星”。

流星は喉を鳴らし、無理やり笑った。




「……一条。」



「何だい。」



「これ、マジで“本人並み”だったらさ。」




視線は偽アルドから逸らさない。




「俺ら、今日で人生終了じゃね?」




雷人は、ほんのわずかに口元を緩めた。




「その可能性は、否定しない。」




紫電が強く瞬く。




「それどころか……この世界の危機だよ。」




偽アルドの口元が、にたりと歪む。

次の瞬間、再び空気が張り詰めた。

本物ではない。

だが、軽く見ていい相手でもない。


森の戦場は、さらに深い領域へと踏み込もうとしていた。




 ◇◆◇




眞学の森の木立を、二つの光が縫うように駆け抜けていく。


一つは紅蓮。


流星の足裏から、ボッ、ボッ、と短い爆発音とともに炎が噴き出す。まるで即席の噴射装置だ。蹴るたびに火花が散り、焦げた落ち葉が宙を舞う。




「うおおおおおッ……! これ、逃げてるだけで結構体力持ってかれんだけどッ!?」




もう一つは紫電。


雷人の全身を薄い雷光が包み、足が地面に触れるたび、バチィッと空気が弾ける。ほとんど滑るように、無駄のない直線移動。


だが──


背後から響くのは、もっと単純で、もっと暴力的な音。


ジュバババババッ!!


地面を蹴るだけの、純粋な脚力。

偽アルドは、特別な技も使わず、ただ“走って”迫ってくる。


それだけで、二人との距離が縮まっていく。




「嘘だろ……! あれ、ただのダッシュだぞ!?」




流星が振り返った瞬間。

偽アルドがドンッと地面を踏み切った。

爆発のような音とともに、身体が垂直に跳ね上がる。次の瞬間、近くの大木の幹に足をかけ──


ドドドドドドッ!!


木々を足場に、空中を駆ける。

まるで森そのものが、彼のための階段になったかのように。




「どぅわっ!? ああああぶねぇえええ!!?」




真上から降ってくる影。

流星は空中で身体をひねり、炎を噴射して強引に軌道を変える。

その一瞬後、偽アルドの飛び蹴りが空を裂いた。


バキィィィン!!


蹴りの余波だけで、通過した木の枝が粉砕される。




「フハハハハハ!!」




空中を駆けながら、偽アルドが狂気に満ちた笑みを浮かべる。




「力が……力が溢れてくる様だッ!!」




その声音は陶酔そのもの。

流星は歯を食いしばる。




「アルドさんは、そんな中二病みてぇなセリフ、言わねえよッ!!」




炎の大剣を振りかぶる。




「“焔大蛇”ッ!!」




刀身から放たれた炎が二匹の巨大な蛇へと変貌する。


ゴォォォォッ!!


螺旋を描きながら、空中の偽アルドへ襲いかかる。

炎が森を赤く染め、偽アルドに直撃する。


だが──




「効かんッ!!」




偽アルドが両腕をバッと広げた瞬間。


パァンッ!!


二匹の焔大蛇が、まるで風船のように弾け飛び、炎の粒となって消滅した。

流星の顔から血の気が引く。




「耐久力、本人並みなのかよッ!?」




その叫びを遮るように、雷人が前へ出る。




「下がってろ! 乾ッ!!」




懐から小袋を取り出し、宙へ放る。

ジャラッ、と音が鳴る。

それを”雷月刃チャンドラハース“で──

ズバァン!!と、切り裂く。


空中に散らばる、無数の鉄製ベアリング弾。


一瞬の静止。


次の瞬間、それぞれがバチィッと雷を纏い、キィィィン……と甲高い音を立てる。


空気が震える。

磁場が歪む。


雷人が刃先を偽アルドへ向ける。




「”電磁投射連弾(ローレンツ・バレット)”……!」




キュドドドドドドッ!!


一斉射出。


磁力で加速された鉄球が、レールガンのような軌跡を描き、音速を超えて襲いかかる。

森の空気が裂ける。


だが──




「無駄だ……無駄無駄ァァッ!!」




偽アルドの瞳が狂気に染まる。

両腕が残像を引くほど振るわれる。


バシィッ!!

バギィッ!!

パァン!!


高速弾丸を、素手で叩き落とす。

鉄球が弾け飛び、火花と衝撃波が散る。

流星の喉から、情けない声が漏れた。




「だ……ダメだ……! こんなもん……本物のアルドさんみてぇじゃんか……!? 俺ら2人なんかじゃ、敵うわけ……」




恐怖が、じわじわと足元から這い上がる。


だが。




「いや……それはどうかな。」




雷人の声は、静かだった。




(確かに驚異的だ……)




紫電が彼の周囲で微かに震える。




(だが……僕は知っている)




記憶がよみがえる。

以前、アルド本人と対峙した時の、あの絶望的な圧力。


呼吸一つで空間が歪み、

視線一つで膝が震えた。




(本物は……こんなものでは無かった)




雷人の口元が、わずかに緩む。

その笑みを、偽アルドが見逃さない。

ピタリ、と動きを止める。




「……おい、貴様……何を笑っている……!?」




怒りが混じる声音。

雷人は肩をすくめる。




「──いや、失礼。」


「キミがどんなカラクリでアルドさんに化けたのかは知らないが……」




視線を真っ直ぐに向ける。




「本人ほどの力は無い様で、安心していたところさ。」




空気が凍りつく。

偽アルドの額に、ビキビキと青筋が浮かぶ。




「余の……俺の力が……まだ、彼奴に劣る、だと……ッ!?」




怒気が爆発する。

黒いオーラが揺らめく。

隣で、流星が青ざめる。




「一条……お前、なんでそんな煽る様な事言うの……?」




声が震えている。

雷人はちらりと横目で流星を見る。




「……ごめん、つい。」




素直に謝る。

流星は思わず叫んだ。




「つい、で命賭けんなよッ!?」




だが、その軽いやり取りの裏で。

二人の足は、もう震えていなかった。


“本物ではない”。


その確信が、ほんのわずかだが、恐怖を削っていた。

偽アルドの怒りが、森を揺らす。

そして戦いは、さらに激しさを増していく。




 ◇◆◇




ドゴォンッ!!


偽アルドの蹴りが大木を根元からへし折る。

軋む音すら追いつかない。

折れた幹はそのまま空中で回転し、弾丸のように一直線に放たれる。


ヒュゴォォォッ!!




「おわああああああ!!充分ヤベェんだけど!!この攻撃量ォ!?」




流星は”気炎万丈(レヴァンテイン)“を両手で握り、腰を落とすと、そのまま身体ごと回転させた。


ブゥゥーーン!!


炎の刃が円を描き、迫る大木を次々と弾き飛ばす。


バキィン!!

ドォン!!

ボォッ!!


火花と火の粉が舞い、焦げた木片が森に降り注ぐ。


その横を、雷人はまるで風に揺れる葉のようにヒラリと躱していく。ほんの数センチ身体を傾けるだけで、弾丸のような大木が頬を掠めて通過する。


だが次の瞬間。

視界が黒く染まる。

飛び蹴り。


偽アルドが空を裂き、一直線に迫る。




「っ……!」




雷人は反射的に”雷月刃(チャンドラハース)“を横に構えた。


ドォォォォン!!


衝撃。

雷刃が軋み、雷人の腕に凄まじい反動が走る。




「ぐうぅッ!?」




骨が軋む。

足元の地面が抉れる。

そのまま後方へ吹き飛ばされそうになるけど──


だが。


ドンッ。


背中に衝撃。

流星が踏み込み、雷人の身体を支えた。

二人分の体重が地面に食い込み、土煙が舞う。

流星は歯を見せて笑う。




「だけどよ!」




偽アルドの拳が迫る中、炎の大剣で必死に受け止めながら叫ぶ。




「お前の言ってる意味は、分かったぜ……!」




雷人も口元にわずかな笑みを浮かべる。




「ああ……」




息を整えながら、刃を握り直す。




「もし、本物のアルドさんが相手なら……今の一撃で”雷月刃”もろとも、僕は粉々にされているはずさ。」




その言葉に、恐怖はない。

あるのは、冷静な比較。

偽アルドがパンチのラッシュを浴びせる。


ドドドドドッ!!


流星は大剣で必死に打ち払う。




「それに……!」




炎が散る。

衝撃が腕を痺れさせる。




「“竜渦”も!“竜泡”も使ってこねぇ!」




歯を食いしばる。




「コイツは……アルドさんじゃねぇ!!」




その言葉は、自分への呪文だ。


“これは本物ではない”。


“俺たちが戦える相手だ”。


そう言い聞かせなければ、心が折れる。

偽アルドの瞳がギラリと歪む。




「貴様……貴様らッ……!?生意気な……生意気なァァッ!!」




黒いオーラが噴き上がる。


ドンッ!!


震脚。

中国拳法のそれのように、地面を踏み締める。

衝撃波が円状に広がり、土と落ち葉が吹き飛ぶ。


そして──


ドォン!!

ドォン!!

ドォン!!


周囲の木々が、根こそぎ抜けて空へと打ち上がる。

まるでロケットのように。

雷人の瞳が見開かれる。




(この戦い方は……!?)




宙に浮かぶ木々。

それを足場にする動き。

予選会で見た、あの光景。




(──そうか!)




思考が一瞬で繋がる。




(この偽アルドさんは……ザイード・ジュナザーンが“見た”アルドさんの模倣……!)


(予選会で力を抑えていたアルドさんを、そのままなぞっているんだ……!)




偽アルドは浮かぶ大木を次々と蹴り、空間を駆け回る。

その動きは速い。

だが、どこか“再現映像”のような違和感がある。

大木が次々と撃ち出される。


ドンドンドン!!


弾幕。圧倒的な物量。

雷人は叫ぶ。




「乾!!相手の攻撃進路を狭められるかッ!?」




流星は息を荒げながらも、ニヤリと笑う。




「──よく分からねーけど、やってみるッ!!」




大剣を後方に構える。

炎の魔力が刀身に渦を巻く。

空気が熱を帯びる。


その目に、もう迷いはない。

偽物だ。本物じゃない。


だったら──


やってやる。

流星は足を踏み締め、炎をさらに膨らませた。




 ◇◆◇




流星の大剣に、炎が巻き付く。


ゴォォォォ……。


赤と橙の魔力が渦を描き、刀身を中心に竜のように唸りを上げる。熱風が周囲の落ち葉を巻き上げ、地面の土を乾かし、焦がしていく。


流星は奥歯を噛みしめた。




「──”火焔旋風(ファイア・ホイール)“ッ!!」




大剣を思い切り振り上げる。

瞬間、炎が解き放たれた。


ドォォォン!!


巨大な火災旋風が地面から天へと立ち上がる。炎の竜巻は円環を描くように広がり、偽アルド、雷人、流星を包囲する形で立ち上がった。


燃え盛る壁。

轟々と唸る炎。

熱が空気を歪ませ、景色が揺らぐ。


偽アルドが炎の向こうで目を細める。




「炎の渦……」




黒い筋の浮かぶ顔が、歪む。




「こんなもので、余を捕らえたつもりかッ!!」




足を踏み出そうとするが、炎の壁が視界と足場を奪う。空中を跳び回るための木々は、今や炎の中で炭化しつつある。


その一瞬。


雷人が動いた。




「いいや──」




雷月刃を両手で握り、天へ掲げる。

紫電が白へと変わる。




「一瞬でも動きを制限出来れば……上出来だッ!!」


「”白樹雷轟(フラクタル・サンダー)“ッッ!!」




雷刃から枝分かれするように白い雷撃が奔る。


バチィィィン!!


空中に浮いていた大木へ雷が走る。


一本、二本、三本──。


雷はまるで樹木の枝葉のように枝分かれしながら、偽アルドが飛ばした大木を次々と焼き切っていく。


ドガン!!

バキィン!!


炭化した幹が崩れ、炎の竜巻の中へと落ちる。

やがて、無数に枝分かれしていた雷撃が収束を始める。

一本の、純白の雷へ。

空間が静止したような錯覚。


そして──


バァァァーーーンッ!!


収束した雷が、偽アルドへ直撃した。

白い閃光が炎をも塗り潰す。




「ぐ、グアァァアアアアッ!?」




偽アルドの絶叫。

その身体が吹き飛び、炎の竜巻の内側で地面へ叩きつけられる。


ドサリ、と鈍い音。


土煙が上がる。


炎が揺らぎ、やがて消えていく。

流星が息を呑む。




「……やった、か?」




だが。


土煙の中から、ゆらりと影が立ち上がる。

黒い筋の浮かぶ身体。

焦げた痕は、ない。




「小癪……小癪……ッ!!」




偽アルドが顔を歪める。




「だが、この身体は……その程度では傷付きはせぬ……ッ!!」




無傷。本当に、無傷。

雷人の喉がわずかに鳴る。




(くっ……!?)




内心で舌打ち。




(力はともかく、耐久性の高さが厄介すぎる……!)




隣で流星が引き攣った笑みを浮かべる。




「そういえば……」




汗が頬を伝う。




「アルドさんがダメージ受けてるとこって、見た事ねぇよな……!」




その言葉が、妙に現実味を帯びる。

偽アルドがゆっくりと人差し指を二人へ向けた。




「もうよい……」




声が低く沈む。




「消し飛ばしてくれる……ッ!!」




キィィィィン……。

指先に魔力が収束する。

空気が震え、森の音が消える。

流星の顔色が変わる。




「こ……これって……」




唇が震える。




「ラグナ王子の、核撃魔法……!?」




雷人も目を見開く。




「まさか……まずいッ!?」




次の瞬間。

極太のビームが、一直線に放たれた。


ズガァァァァァァッ!!


大地を削り、空間を裂く白光。

逃げ場は、ない。

二人は刹那、死を覚悟する。


その直前。


ザッ。


誰かが、前へ踏み出した。

光の前に立つ影。

一瞬、鞘から刀が抜かれる。


居合。


空気が切断される音。


──シュバァァンッ!!


核撃魔法の光が、真っ二つに割れた。

左右へと分断された光が森を抉り、霧散する。

静寂とともに、残光が消える。

雷人の声が震える。




「──核撃魔法の光を……切った!?」




信じられないものを見る目。

その人影は、静かに刀を鞘へと納めた。


チン……。


乾いた音が、森に響く。

細い目。落ち着いた佇まい。

──ザキが肩を竦める。




「……つい飛び出してもうたけど。」




ゆるい関西弁。




「どういう状況やねん、これ。」




視線を偽アルドへ向ける。

細い目が、じっと観察する。




「君ぃ……アルドくんそっくりやね。」




少し首を傾げる。




「双子のお兄さんか何か?」




その場違いな軽さが、逆に空気を揺らした。

流星がへたり込みそうになりながら叫ぶ。




「た……助かったぁああ……!?」




雷人もようやく息を吐く。

だが、その目は真剣なままだ。


目の前に立つ男。

そして、偽りの“銀の新星”。


戦場は、まだ終わっていない。

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