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【45万PV感謝!】真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます  作者: 難波一
第六章 学園編 ──白銀の婚約者──

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第267話 ブリジット vs.ビビアーナ② ──伝説の魔獣vs.ミニチュアダックスフンド、開戦!──

灰色のコンクリートに囲まれた広大なダンジョンの空間に、ぽん、と──

まるで小道具でも落とされたかのように、場違いな存在が現れた。


短い脚。

妙に長い胴。

つややかな茶色の毛並みが、無機質な灰色の床の上でやけに生々しく映える。


ミニチュアダックスフンド──フレキは、前脚で携帯用のドッグボウルを押さえたまま、何の警戒心もなく、ぽりぽりとポップコーンを咀嚼していた。

小さな顎が規則正しく動き、軽い音が静かな空間に不釣り合いに響く。


しかし、その動きが、ふと止まる。




「……?」




鼻先が、ぴくりと動いた。


次の瞬間、フレキは違和感を覚えた。

いや──違和感、などという生易しいものではない。


視界が、明らかにおかしい。


さっきまでそこにあったはずの、観客席の柔らかな照明。

隣でポップコーンをつまんでいたリュナの気配。

少し離れた場所で、のんびり構えていたヴァレンの存在感。


それらが、綺麗さっぱり消えている。


代わりに目に飛び込んできたのは、見上げるほど高く聳え立つ無数の四角柱。

装飾も温もりも一切ない、打ちっぱなしの灰色の壁。

ひんやりと乾いた空気が、鼻先をくすぐり――その奥には、微かだが確実に感じ取れる魔力のうねりが漂っていた。


フレキは、ぱちくり、と瞬きをする。

もう一度。

念のため、さらにもう一度。

だが、景色は変わらない。




「こっ、これはっ……!」




思わず、声が漏れた。

自分でも驚くほど、少し裏返った声だった。

その声に反応するように、すぐ目の前で人影が動く。




「ふ、フレキくん、あのねっ……!」




慌てた様子でしゃがみ込んできたのは、ブリジットだった。

両手をわたわたと動かし、何かを説明しようとしているのが分かる。


だが、フレキはそれを制するように、小さく首を傾げた。


まずは──状況確認。


彼は、地面すれすれの視点から、ゆっくりと周囲を見渡す。


視線を上げた先。

高い柱の上に立ち、鞭を構えている女性──ビビアーナ。

その背後には、圧倒的な存在感を放つ巨大な狼。

茶色がかった白い毛並みを持つ、七メートル級の魔獣──カフェラッテ。


さらに少し離れた場所には、腕を組んで様子を見守る鬼塚と、余裕の表情を崩さないジュラ姉の姿。


点と点が、頭の中で静かに結ばれていく。




「……なるほど」




フレキは、ハッハッハッと口で息をしながら、ゆっくりと顔を上げた。

その表情には、焦りよりも、むしろ納得の色が強い。




「これは、ひょっとして……」




一拍置いて、言葉を選ぶ。




「ブリジットさん達が戦っていた、ビビアーナさんのテイマー系スキルによって……ブリジットさんと従魔契約状態にあったボクが……強制的に、ダンジョン内に召喚されてしまった……」




小さな身体でありながら、その声は妙に落ち着いていた。




「……みたいな状況ですかっ!?」




ぴたり、と言い切る。

あまりにも的確な推理だった。




「いや、フレキくん……来て早々、察しが良すぎねぇか!?」




鬼塚が、思わず間の抜けた声を上げる。




「マッ!フレキくん、相変わらず出来る男子ネッ!」




ジュラ姉も、くすっと笑い、感心したように指を立てる。

その言葉に、フレキは少し照れたように耳を伏せた。尻尾が、ふりふりと小刻みに揺れる。




「いえっ!さっきまで観客席で、魔力球を通して皆さんの様子を見てましたから、まあ……何となく、分かりましたっ!」




あくまで謙虚だが、声音はどこか誇らしげだった。


そのやり取りを聞いていたビビアーナが、信じられないものを見るように目を見開く。




「こ……この、おりこうすぎる小型犬が……アンタの従魔だっていうのかねぇ!?」




声が、わずかに裏返る。

その驚きに気付いたフレキは、「あっ」と小さく声を上げ、くるりと身体の向きを変えた。


そして、前脚を揃え、背筋──いや、背中のラインをぴしっと伸ばす。




「はじめましてっ!」




元気よく、はっきりと。




「フォルティア荒野、"わんわん開拓団"CEO──フレキと申しますっ!」




ぺこり、と深々と頭を下げる。

あまりにも礼儀正しく、あまりにも“社会性”のある挨拶だった。


鬼塚はフレキの言葉に(CEO……最高経営責任者なのかよ……)と内心ツッコむ。


ビビアーナは、その光景を前に、一瞬、完全に思考が止まった。




「あっ……あっ。び、ビビアーナ・ロカと、もうします……」




慌てて、背筋を伸ばす。




「こ、このたびは、お日柄もよく……」




言葉が、完全に迷子になっていた。

巨大な魔獣を従えるテイマーであるはずの彼女が、

今この瞬間──


礼儀正しい小型犬に、完全にペースを握られていた。




 ◇◆◇




その横合いから、低く、地鳴りのような声が飛んだ。




『おい、ビビアーナ!相手のペースに、飲まれるでない』




空気を切り裂くような一喝。

巨大なフェンリル──カフェラッテが、唇を吊り上げ、鋭い牙をわずかに覗かせていた。

それだけで周囲の温度が数度下がったかのように感じられるほどの威圧だった。




「あっ、そ、そうなのねぇ……!」




ビビアーナは、はっと我に返り、反射的に背筋を伸ばす。

先ほどまでの動揺が嘘のように、鞭を握る指に力が戻る──が、視線は一瞬、フレキに泳いだままだった。


その間にも、ブリジットはフレキの前にしゃがみ込み、両手を胸の前で合わせる。

年上らしい責任感と、素直な申し訳なさが、その表情に滲んでいた。




「ごめんねぇー!フレキくん!まさか、こんな形で急に呼び出す事になるなんて……」




声のトーンは、戦闘中とは思えないほど柔らかい。

フレキは、すぐに首をぶんぶんと横に振った。

長い耳が、ぱたぱたと揺れる。




「大丈夫ですよっ、ブリジットさん!」




はっきりとした声。

そこに迷いはない。




「“統覇戦ドミナンス・カップ”では、従魔契約をした魔物は、“主人のスキルの一部”として扱われるみたいですねっ!」




言いながら、尻尾が勢いよく左右に振れる。

喜びと覚悟が入り混じった、犬らしい仕草。




「ボクも、ブリジットさんの力になれるなら、望むところなのでっ!」




その言葉に、ブリジットの表情がふっと緩んだ。

肩の力が抜け、口元に自然な笑みが浮かぶ。




「──うん!よろしくね、フレキくん!」



「はいっ!」




元気よく返事をすると、フレキはくるりと身体の向きを変えた。




「それじゃあ……ボクは、こっちの方のお相手をすればいいんですねっ!」




視線の先。

柱の影のように立つ、七メートル級の巨躯。

フェンリル──カフェラッテ。


対するフレキの全長は、40cmほど。

サイズ差は、もはや比較すること自体が無意味なほどだった。




「それじゃ……お願いしちゃおっかな!」




ブリジットは、どこか無邪気に笑いながら言う。




「頑張って、フレキくん!」




ガッツポーズでフレキを応援する。

だが、その瞬間。




「クルァ!!ちょい待つのねぇ!!」




ビビアーナの怒声が、空間を叩いた。




「アタシが言うのも変だけど……アンタ、正気かい!?」



「えっ?」




ブリジットは、きょとんとした顔で首を傾げる。




「何が?」



「そんな小さなワンちゃんに……ウチのカフェラッテちゃんの相手をさせるなんて……!」




言葉の勢いとは裏腹に、ビビアーナの視線には、明らかな“心配”が混じっていた。

敵であるはずのフレキを、無意識のうちに庇うような目。




「……イカれてるのねぇ!」




カフェラッテも、低く鼻を鳴らし、豆粒のようなフレキを見下ろす。




『フン……その通りだ、小さき者よ。貴様、本気で我に挑むつもりか?』




鋭い牙が、ゆっくりと露わになる。




『一度、闘争の場に立てば……相手が子犬と言えど、もはや、手加減は出来ぬぞッ!』




その声音には、警告と──ほんのわずかな慈悲が混じっていた。




(我とて、弱い者いじめは好かぬ。ここで戦意を喪失してくれれば……無駄な殺生をせずに済むが……)




そう思いながら、圧倒的な威圧を放つ。


だが。


フレキは怯まなかった。

ハッハッハッと軽く口で息をし、尻尾を揺らしたまま、穏やかに口を開く。




「お気遣い、ありがとうございますっ!ですけど……」




──その途中で。


空気が、はっきりと変質した。

フレキの小さな身体を中心に、黄金色の魔力が、渦を巻くように立ち上る。

柔らかな光ではない。

重く、濃く、圧縮された“力”の輝き。

床に散った細かな砂塵が、わずかに浮き上がる。


ビビアーナは、反射的に一歩後ずさった。




(な……何なんだねぇ……!?あの子犬から、こんな……濃密すぎる魔力が……っ!?)




背筋を、冷たい汗が伝う。

カフェラッテも、はっきりと異変を察知した。




(な、何だ……!?この神聖さ……この圧……ッ!?)




視界が、歪む。

幻影の中で、フレキの姿が膨れ上がる。

小さな子犬ではない。

遥か昔、フェンリルの血脈が語り継いできた──




(我らが一族を導く存在……一族が、長く誕生を待ち侘びていた……“王”の気配……!?)



「……ッ!」




カフェラッテは、強く首を振った。




(バカなッ!!有り得ん!!我が、こんな子犬に……)




幻影を振り払うように、現実へと意識を引き戻す。

牙を剥き、低く吠えた。




『貴様……ただの愛玩動物ではないようだなッ!!いいだろう……フェンリルの爪牙(そうが)……とくと味わうがいいッ!!』




巨体が、ゆっくりと前脚を踏み出す。

戦闘態勢。


フレキは、黄金の魔力をその身に纏ったまま、静かに四つ足を開いた。


その瞳には、迷いはない。

ただ、澄み切った覚悟だけが宿っていた。




「──では……ボクも、本気でいかせてもらいますっ!」




小さな身体と、王の気配。


ダンジョンの空気は、張り詰めきり──

戦いの幕は、今まさに上がろうとしていた。

(おまけ)


フォルティア荒野メンバー

賢さ暫定ランキング


1位……ヴァレン・グランツ

2位……一条雷人

3位……フレキ

4位……紅龍

5位……ブリジット・ノエリア


 (中略)


15位……アルド・ラクシズ

(※魔法知識のみに関しては1位)


 (中略)


38位……リュナ


 (以下略)

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フレキ君 ファンロンより上なのかよ!
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