表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【250000PV感謝!】真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます  作者: 難波一
幕間 ──大賢者王子──

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

208/213

第206話 side ???① ── "覇空塔" 第20階層──

──その塔は、世界の果てからでも見える。


エルディナ王国の南方、地平を突き破るようにしてそびえ立つ超巨大建造物。


古の時代に“神々の試練”として築かれたと伝わるその塔は、誰もその全貌を見たことがない。


名を、"覇空塔(バキュレア)"。


高さは千丈、階層は百。

頂上──第百層には、「傲慢の魔王」が玉座を構えていると言われていた。

だが、これまでにその姿を拝んだ者は一人もいない。


歴戦の冒険者たちが挑み、命を散らし、その最高到達記録は“十八階”。

塔は静かに、そして永遠のように、人間たちの奢りと欲を見下ろしてきた。


……その二十階層。


深紅の絨毯が敷かれた広間の中央で、一人の魔人が、退屈そうにため息をついていた。


下半身は黒曜石のような光沢を放つ巨大な蜘蛛の脚。

上半身は、人間の美女──いや、妖艶な悪魔そのもの。


名を、"禍蜘蛛(まがぐも)のアラクネルラ"。


彼女はゆるやかに玉座に腰をかけ、金糸の櫛で自らの長髪をとかしていた。




「ふぅ……今日も挑戦者ゼロ、ねぇ。何十年、何百年……“守護者”の座を任されるのも考えものさねぇ……」




艶やかな唇が不満げに歪む。

“傲慢の魔王”直々に与えられたこの役職は、名誉であり、権威の象徴。

だが同時に──恐ろしく退屈な“監視の檻”でもあった。




「たまには……ちょっとした刺激が欲しいところだよねぇ……」




赤い舌先で唇を舐めながら、長い指で爪を磨く。

彼女の周囲には、大小さまざまな鬼蜘蛛たち──蜘蛛の魔獣が群がり、沈黙の中で女王の機嫌を伺っている。


と、そのときだった。




「ア、アラクネルラ様っっ!!」


「緊急事態です!!」




部下の鬼蜘蛛たちが慌てふためきながら部屋へ駆け込んできた。

突然の慌てように、アラクネルラは細い眉をひそめる。




「……うるさいねぇ。何の騒ぎだい? まさか、下層の魔物どもがまた寝返ったとか言うんじゃないだろうねぇ?」



「い、いえっ! そ、そうではなく……! 一時間ほど前に、“十八階層”で新たな攻略者が現れまして!」



「お、おそらくこのまま十九階層を越えて……二十階層に到達するかと!」




アラクネルラの瞳が、驚きに揺れた。

そして、ゆっくりと立ち上がる。




「へぇ……? ついに来たのかい、挑戦者が。」




長い脚が床を這い、カツ、カツ、と妖しく響く。

蜘蛛の糸を編むように指を滑らせながら、彼女は笑みを浮かべた。




「面白いじゃないかい……♪」




その声は甘く、しかし冷たく響いた。




「それで……その冒険者たちが十九階層を突破するのに、どれくらいかかりそうなんだい? 二日? 三日? それとも、一週間?」




しかし、部下たちはお互いに顔を見合わせ、震える声で答えた。




「そ、それが……!」


「──ま、間もなく十九階層も……突破されそうです!!」




アラクネルラの動きが止まった。




「……は?」




空気が、一瞬で凍る。

長いまつげの下で、金の瞳が大きく見開かれた。




(……そんな、馬鹿な……!?)


(十九階層は、広大な迷宮フロア。幾重にも張り巡らされた幻影の回廊と、属性トラップの巣。)


(そこに配備された魔物たちは、それぞれ“弱点を突かねば倒せぬ”特殊種ばかり……!)


(それを、たったの一時間で、攻略だと……?)




彼女の胸中に、ざらりとした不安が走る。




(そんなこと、あるわけがない……。──“あらかじめ正解のルートを知ってる”のでもなければ……!)




その瞬間だった。


ボガァァァァァン!!!


轟音とともに、二十階層の巨大な黒鉄の扉が爆ぜた。

魔力障壁が粉々に砕け、風圧が荒々しく吹き抜ける。

鬼蜘蛛たちが「ひぃっ!!」と悲鳴を上げ、壁際に吹き飛ばされた。




「な、何事だいっ!? 防壁は……っ!」




アラクネルラが振り返る。


吹き荒れる煙と粉塵の向こう──そこには、光を背にした四つの人影が立っていた。


先頭の男は、陽光を浴びて輝く金髪の青年。

その顔は整いすぎていて、まるで“物語の主人公”そのもの。

軽装ながら、腰の剣には宝石のような魔石が嵌め込まれている。


どこか高貴で、しかし軽薄な笑みを浮かべながら、彼は口を開いた。




「──うーわ、懐かしい(・・・・)な。二十階層のボスって、アラクネルラだったっけ? やっば!まんまのやつ出てきたじゃん。」




その声は、まるで再会を楽しむ少年のようだった。

アラクネルラは眉をひそめる。


……何だい、この小僧。


そして背後から、軽い足音と共にもう一つの声。




 「ラ、ラグナ様〜っ!! またそんな強引な扉の開け方をなさってぇ〜っ!」




──ラグナ。


どうやら、あの青年がその名らしい。


アラクネルラは、金の瞳を細めた。

その口元には、これまでにないほどの笑みが浮かんでいた。




「……ふふ。ようやく退屈が終わるみたいだねぇ。」




そして彼女は、八本の脚をしならせながら、ゆっくりと立ち上がった。

広間全体に、紫色の魔力の霧が漂い始める。


覇空塔二十階層、久方ぶりの来訪者。

この日、塔の静寂が初めて破られた。




 ◇◆◇




爆ぜた扉の向こう。

立ち上る煙と熱の中から、黄金の髪が光をはね返した。


先頭に立つ青年は、日光を纏うかのような金の長髪を後ろに流し、額の横で軽く結んでいる。

冒険者風の軽装だが、肩から掛けたマントの仕立てや腰の装飾、革の質一つとっても、凡俗とは一線を画していた。

高貴──だが、それを意識していない者だけが持つ、自然体の気品。


青年は、破壊された扉の残骸を軽くまたぎながら、口角をゆるりと上げた。




「……うーわ、出た。二十階層のボスって、アラクネルラだったよな。懐かしっ。」




その軽すぎる口調に、場の空気が一瞬、妙な温度を帯びた。

アラクネルラは、蜘蛛の足先で床を叩きながら、無意識に眉間に皺を寄せる。




(……“懐かしい”? 何を言ってやがる、この小僧……)




青年の瞳は、陽光のように明るい金色。

まるで全てを見透かしているような、だがその実どこか夢見がちな光。

その異様な存在感に、鬼蜘蛛たちは一歩も動けず、息を潜めていた。




「ら、ラグナ様ぁ〜!!」




間延びした声が、慌てて彼の背後から響いた。


明るい茶髪のセミロングをゆるく巻き、白と黒のメイド服に身を包んだ少女が、パタパタと駆けてくる。

ふわふわと揺れるスカートの裾が、戦場の空気には似つかわしくない柔らかさを運んでいた。




「もう〜っ! またそんなド派手な登場をしてぇ! 扉、直す人の身にもなってくださいよ〜!」




ラグナと呼ばれた青年は、ヘラリと笑って振り返る。

どこか少年のような、悪戯っぽい笑顔だった。




「大丈夫大丈夫。どうせ扉も“リスポーン”するんだし。」


「知ってた? オブジェクト破壊でも、ちょっとだけ経験値入るんだよ。」



「け、けいけんち……?」




メイドの少女──リゼリアは、首を傾げながら困り顔を浮かべた。

彼女の瞳は琥珀色で、怯えよりも“理解できない不安”が滲んでいる。




「……リゼリア。」




その後ろから、低く落ち着いた声が響いた。


長身の青年が一歩前に出る。

オレンジがかった金髪を後ろでまとめ、重厚な剣と盾を装備したその姿は、王国の騎士そのものだった。

声は冷静で、どこか諭すようでもある。




「殿下の行動に、いちいち驚いていてはキリが無い。敵を注視しろ。……そして、俺は殿下を守る。」




「うん、頼りにしてるよ、セディ。」




ラグナは軽く笑って、親しげに肩を叩いた。




「流石は僕の“盾”だね。」




その笑顔には信頼と、ほんの少しの悪戯が混ざっていた。

セドリック──彼は一瞬だけ、表情を緩めたが、すぐに真剣な眼差しに戻る。




「……殿下の“軽口”も、昔より切れ味を増したようですね。」


「それ、褒めてる?」


「……解釈はお任せします。」




軽い冗談の応酬。だがその空気は、不思議と温かかった。

この四人が“ただのパーティ”ではないことを、誰もが直感的に悟る。


そんな中、さらに奥の闇から、ひときわ静かな気配が歩み出た。


マントと一体化したウサギ耳付きのフード。

水色の髪がフードの下から少し覗き、長いマフラーが口元を隠している。

少女の歩みは遅く、静かで、眠っているように淡い。


ラグナがくるりと振り返り、軽く片手を挙げる。




「おーい、大丈夫かい? 転校生。なんか、いつもより眠そうだね。」



「……大丈夫。」




彼女は一拍置いて、淡々とした声で答えた。




「……あんまり、動きたくないだけ。」




その無表情な言葉に、リゼリアが慌てて口を挟む。




「ルシアさ〜ん! もう少し、やる気出してくださいよぉ〜!」



「そう。私はやる気がない。」




まるで、眠りながら喋っているかのような淡々としたトーン。

その声は不思議と柔らかく、しかし空気の温度を一度下げるような冷たさを持っていた。


セディがため息をつく。




「……実力はあるが、やる気がないのが玉に瑕だな。」




ラグナは苦笑いを浮かべ、手を頭の後ろで組む。




「まぁまぁ、やる気だけあって実力が無いよりは、遥かにマシさ。」




ルシアは視線を上げることもなく、ただ「……うん」と小さく返した。

その声が、なぜかやけに響いた。


アラクネルラは、その一連のやり取りを沈黙のまま眺めていた。


──何だ、この連中は。

 

目の前に“階層守護者”が立ちはだかっているというのに、緊張の欠片もない。

自分の縄張りに入ってきて、まるで観光でもしているような態度。




(ふざけた小僧どもめ……。だが……奇妙だねぇ。)


(さっきまで、このフロアには何の気配もなかった。それが今、異様なほど濃い魔力が渦巻いている……。)


 


アラクネルラはゆっくりと、艶やかな唇を吊り上げた。

蜘蛛の脚がカツ、カツ、と床を鳴らすたび、紫の魔力が滴のように広がる。




「よくぞ、ここまで辿り着いたねぇ、坊やたち。」




声は甘く、だが底冷えするような毒を孕んでいる。




「その若さで、覇空塔の二十階層に到達するなんて……さぞや高名な冒険者なんだろうねぇ。」




ラグナたちは一瞬だけ顔を見合わせた。

その呑気な空気が、アラクネルラの苛立ちをさらに煽る。




「ふふふ……楽しみだよ。」




艶やかな舌が唇をなぞる。




 「アンタたちみたいな若輩の冒険者が、このアタシ──"禍蜘蛛(まがぐも)のアラクネルラ"を相手に、どこまで抗えるかねぇ。」




彼女が舌なめずりをする音が、空気の中で艶めかしく響いた。

それは獲物を前にした捕食者の音。

 

だが──。


ラグナの瞳には、恐怖の色は欠片もなかった。

むしろ、ほんの少しの懐かしさと、軽い期待すら滲んでいた。




「ふーん……やっぱ、戦闘前の口上も、そのまんまなんだね。」




「……は?」




アラクネルラが眉をひそめた瞬間、

ラグナの背後で、三人の仲間がそれぞれ構えを取る。


空気が、一変する。


蜘蛛の糸が張り詰める音と、心臓の鼓動が重なった。

世界の空気が凍りつくような沈黙──

それが、“覇空塔二十階層の開戦の狼煙”だった。




 ◇◆◇




空気が揺れた。

ラグナがひらりと手を振ると、その仕草に合わせるように、彼の背後で吹き荒れていた魔力の風が一瞬だけ止む。




「違う違う。」




少年のような無邪気な笑みを浮かべ、ラグナは軽く首を振った。




「僕たちは、冒険者じゃないよ。」




その言葉に、アラクネルラのまぶたがぴくりと跳ねた。




「……何だって?」




低く、湿った声。

魔力の糸が空中で震え、微細な蜘蛛糸の粒子が光を反射して揺らめく。


ラグナは肩をすくめると、何気なく自分の二の腕を指でトントンと叩く。

そこには銀の留め具で固定された青い腕章が巻かれていた。




「ほら、見てみなよ。僕ら、ほら……これの所属。」




彼が見せるのに合わせて、後ろの三人も静かに腕章を掲げた。

竜が剣に絡みつき、王冠の紋章の下で炎を噴く──それは、エルディナ王国の王家直属機関を示す象徴。


アラクネルラの目が鋭く細まる。

その瞳の奥に、青い怒りの火が宿る。




「──その紋章……まさか、あんた達……!」




唇を噛み、蜘蛛の脚がギチギチと鳴った。

その表情の変化を面白がるように、ラグナはてへっと舌を出し、軽い調子で返す。





「そ。僕たち、ルセリア中央大学の学生で〜す。」





片手を頭の後ろに回し、もう片方でピースサインを作る。

その軽さに、アラクネルラの額の青筋が一際濃く浮かび上がった。




「な……何を言ってるんだい、アンタ……」




アラクネルラの声が震える。




「ここが……どこだと思っている……? “覇空塔”だぞ!? 学生風情が戯れに登って良い場所じゃない!」




ラグナはニッと笑って肩をすくめた。




「いやぁ、君の言う通り、ここは危険なダンジョンだよ。でもさ──」




彼は視線を天井に向ける。

その目はどこか懐かしげで、同時に愉悦を含んでいた。




「この“覇空塔”ってさぁ。10階ごとに守護者を倒すと、レアアイテムがもらえる“仕様”になってるんだよね。」


「だから、二学期に起こる“イベント”に備えて、ちょっと先取り周回しておこうかな〜って。」




リゼリアが「あわわ……また始まったぁ……」と頬を押さえ、セディは深くため息をつく。




「殿下、また訳の分からない言葉を……」



「ま、要するに“サブクエスト消化”ってやつさ。」




ラグナは軽く指を鳴らす。

その笑顔には、微塵も冗談の色がない。


アラクネルラは、言葉を失っていた。

眉間に皺を寄せ、頬を引き攣らせながら低く呟く。




「……冒険者ですらない学生風情が、訳の分からないことをベラベラと……」




その肩から、どろりと紫の毒気が滲み出す。




「“傲慢の魔王”様から守護者の座を賜ったこのアタシを……相手にできるとでも思ってるのかいッ!?」




叫びと共に魔力が炸裂した。

紫電が床を走り、蜘蛛糸が空中で絡み合って刃と化す。


リゼリアが悲鳴を上げそうになるのを、セディがすかさず庇う。


ルシアは無表情のまま一歩も動かず、指先で糸を触れるように空気を探った。


だが、ラグナは微動だにしなかった。

むしろ、その光景に微笑みすら浮かべていた。




「相手にできるも何も、君のことは何十回も倒してる(・・・・・・・・)んだよね。」



「──なに……?」




アラクネルラが目を細める。




「“ダンジョン周回”でさ。もう攻略法はバッチリ。ほら、ここに全部刻まれてる。」




ラグナはこめかみを指でトントンと叩いた。

笑みは明るいのに、どこか底知れない狂気があった。




(“攻略法”? “周回”……?)


(何を言ってやがる……? それに、この異様なまでの余裕は……!)




アラクネルラの心臓が、ほんのわずかに脈を速めた。

それは、怒りではなく──恐怖の感情に近い。


その瞬間、ラグナが「あ」と思い出したように声を上げ、軽く手を叩いた。




「そうだ、自己紹介、まだだったね!」


「これは“ゲーム”じゃなくて“現実”なんだし、ちゃんと名乗らなきゃ。」




彼は胸を張り、まるで演説でもするかのように笑う。




「僕の名は──ラグナ・ゼタ・エルディナス。」




その名を告げると同時に、塔全体にわずかな振動が走った。


名に宿る“王の血”が、空気を震わせる。




「──エルディナ王国、第六王子さ。」




アラクネルラの瞳が大きく見開かれた。




「な……に、今……なんて……?」




声が掠れる。

ラグナはそんな彼女の反応を面白がるように、愉快そうに笑う。


「んで、こっちの堅っ苦しいのが僕の親友、セドリック・ノエリア。」




セディは静かに一礼した。




「……殿下。紹介の仕方、もう少し考えてください。」




「次に、この可愛いメイドちゃんが――リゼリア・ノワール。」




「は、はいっ!? わ、わたし!? か、可愛いだなんて……そ、そんなぁ……!」




顔を真っ赤にし、袖をモジモジと握る姿に、アラクネルラのこめかみがまたピキリと鳴る。




「で、そっちの不思議ちゃんが──ルシア・グレモルド。……で、合ってるよね?」




ルシアは眠たげな瞳でラグナを見上げた。




「……うん。いいよ。」



「だそうです。」




ラグナは笑顔を保ったまま、アラクネルラに視線を戻す。


アラクネルラの表情は、もはや呆然を通り越していた。




「え……エルディナ王国の、第六王子……? まさか……お前が……“大賢者王子(ウィザード・プリンス)”……!?」


 


その名を口にした瞬間、空気が変わった。

 

彼女の背筋に、ぞわりと悪寒が走る。


“傲慢の魔王”でさえ一目置く、天才王子──その噂を、彼女も聞いたことがあった。


だが、まさか……この軽薄な笑みを浮かべる青年が、あの存在だというのか。


ラグナは片目を細め、唇をゆるく上げる。




「ご明察。」


「僕こそが、その“大賢者王子(ウィザード・プリンス)”。」




そして──ゆっくりと手を胸に当て、言葉を続けた。




「そして、この──"世界(ゲーム)"の、主人公さ。」




その瞬間、彼の瞳に宿る金色が、異様な輝きを放った。


それはまるで、未来を見通す者の光。


──そのスキルの片鱗が、アラクネルラの背を震わせた。




 「な、何を……言って……」




アラクネルラは後ずさりながら、己の中の“恐怖”を認めまいとする。


だが、確かに感じていた。


目の前の青年は──己の死を、すでに知っている。


ラグナ・ゼタ・エルディナス。

その笑顔は、狂気にも似た自信と、絶対的な優越を混ぜ合わせたようなものだった。




「……じゃ、始めよっか。サブクエスト、"覇空塔(バキュレア)"攻略戦・二十階層ボス:アラクネルラ戦。」




その宣告に、紫の魔力が爆ぜた。

塔が唸りを上げる。



覇空塔(バキュレア)”20階層が、戦場となる──。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
これはブリジットちゃんも何処かで出てくるしサブキャラだったりするのかな? それで手を出そうとしてアルド君に返り討ち
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ