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【250000PV感謝!】真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます  作者: 難波一
第五章 魔導帝国ベルゼリア編

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第188話 影山、帰還。そして“ベルゼリアの子”

──静まり返った謁見の間で、影山くんがぽつりと話し始めた。


鬼塚くんの魂の結晶を、紅龍さんが握ってい人質にしようとしてたあの時、彼は誰にも気づかれぬまま、こっそりとそれを奪い返してくれた。




「紅龍将軍が、鬼塚の魂を人質に取った瞬間……

あの時、俺は“絶対不可視(イグノーシス)”の力で存在を消して、結晶を奪い返しましたよね。」




影山くんは淡々と語る。けれど、その声の底には確かな熱があった。




「……で、その瞬間に、“絶対不可視イグノーシス”のレベルが10に上がって、ようやく……コントロールが可能になったみたいです。」




俺は思わず腕を組んだ。

なるほど、そういうことね……。




(ステルス性能を活かして行動すれば経験値が入るタイプのスキルだったってわけだね。)




そう考えると妙に納得してしまう自分がいた。


影山くんは小さく息を吸ってから、ぽつりと呟いた。




「……やっと……やっと、皆と普通に話したり出来る……」




その言葉は、まるで何かの呪いが解けた後のように、静かで、温かかった。

見れば、彼の目尻がほんの少し潤んでいる。


……ああ。

見えないまま、ずっと傍に居たんだ。

誰にも気づかれず、声も届かず、それでも仲間を見守り続けてきた。


そんな時間を、やっと終わらせられたんだな。


けれど、その余韻をぶち壊すように、鬼塚が口を開いた。




「──よっ、“守り神”!」


 


そう言って、ガッと肩を組む。

突然のことに、影山くんがビクッと身体を震わせた。




「お、鬼塚……!?」




鬼塚くんはニヤリと笑う。




「おうよ。お前、見えない間もずっと俺ら守ってくれてたんだろ?俺のことも助けてくれたしな。」




彼、不器用なくせに、こういう時だけは言葉が真っ直ぐだね。


影山くんの頬がわずかに緩んだ。




「……はは……そんな風に言われると、照れるな。」




その笑顔を見た瞬間、なんだか胸が詰まった。

ずっと孤独だった少年の笑みは、まるで冬の夜に灯った小さな焚き火みたいだった。


そこに、佐川くんがずかずかと近づいてきて、

信じられないものを見るような顔で二人を交互に見た。




「ちょ、ちょっと待てよ。影山!? 今までどこに──っていうか玲司!お前、影山とそんな仲良かったか!?」




鬼塚くんは鼻で笑い、肩をすくめた。




「あぁ? 決まってんだろ。マブダチだよ、マブダチ。」




「マブダチ」という単語に、場が一瞬静まり返った。




佐川くんは「えっ」とだけ小さく呟いて絶句。

一条くんが後ろで「……クラスでは、そんなイメージは全く無かったが。」と冷静に突っ込んでいた。



──そして、俺はそれを見て思う。




(佐川くん。『鬼塚、お前の“マブダチ”枠、俺じゃなかったのか……?』って地味に傷ついてそう。) 




心の中で軽く突っ込んでみたけど、

鬼塚くんはそんなことお構いなしに影山くんの肩をバンバン叩きながら笑っていた。




「いいじゃねぇか。やっと顔見れたんだ。

これからは、ちゃんと、皆と一緒にいりゃいいんだよ。な?」




影山くんは、少しうつむいて笑う。

涙の跡が光に反射して、ほんの少しきらめいた。




「……ああ。そうだな。

これからは……皆と、ちゃんと並んで歩いてくよ。」




その声には、もう“透明だった頃”の孤独の影はなかった。

見えなかった存在が、ようやくこの世界に立ち戻った瞬間だった。




 ◇◆◇




影山くんが“存在する”という事実に、皆がようやく馴染み始めた頃だった。


ブリジットちゃんがぱちくりと瞬きをしながら、にっこりと笑った。




「影山くん、そんなお顔だったんだねぇ〜!」




彼女の声は、まるで春の陽だまりみたいに明るい。

今までは俺以外誰も、彼の顔を見たことがなかったからね。

だから、それは“初対面”みたいな反応でも無理はない。


影山くんは少し戸惑ったように頬をかきながら、照れくさそうに笑った。




「……初めまして、じゃないけど……初めまして、みたいな感じですよね。」




柔らかく笑うその表情は、どこか不器用で、でも真っ直ぐだった。

あの透明だった頃の彼からは想像もできないほど“生きている”顔をしていた。


ヴァレンがサングラスの奥から視線を送る。

その声には、妙な艶っぽさが混じっていた。




「ふぅん……なかなかどうして、男前じゃあないの。影山クン!」




ウインクまで添えてくるあたり、完全にいつものノリだ。

影山くんは顔を真っ赤にして両手を振った。




「い、いえいえいえっ! そんなことはっ!」




──と、そこへリュナちゃんがひょいっと顔を突っ込んできた。

腕を組み、じと目で影山くんを見る。




「んでさぁ、影山っち。そのスマキになってる女は何っすか?さらって来たんすか?」




彼女の視線の先には、銀色のロープでぐるぐる巻きにされた女性──


うん。どう見ても誘拐現場だね。

絵面の犯罪臭が半端無い。




「他人聞きが悪すぎる! ……まあ、その通りではあるんですけど!」




影山は慌てて両手を振り、

そのまま“荷物”をドサリと床に下ろした。

金属音のような、ロープの擦れる音が響く。




「……ちょっと! 本当にさらってきたの!?つーか、誰なのこれ!?」




思わず俺は口を挟んだ。


影山くんは真剣な顔でこくりと頷く。




「コイツは、ベルゼリアの責任者──高位魔導官、フラム・クレイドルです。アルドさんが紅龍将軍にバチギレしてる間に、こっそり逃げ出そうとしてたんですよ。だから、捕まえておきました。」



「……捕まえておきました、って、アッサリ言うね……」




俺は額を押さえた。

まるで「落とし物を拾ってきました」みたいな口調じゃないか。




「え、どうやって捕まえたの?」




恐る恐る聞いてみると、影山くんはあっさり答えた。




「いや、普通にチョークスリーパーで締め落として。

アルドさんが黄龍を縛るのに使ってたロープがあったので、それでぐるぐるっと。」


 


俺は思わず固まった。




「ちょ、ちょ、ちょっと待って!?

影山くん……“絶対不可視(イグノーシス)”発動中に、攻撃できるの……!?」




影山くんは首をかしげて、キョトンとした顔をした。




「え? できますけど?」



「……できますけど、って……!」



「まぁ、相手は僕のこと認識できないですし。たとえばチョークスリーパーなら『何か分からないけど、意識が遠のく』みたいな感じで気絶するんですよ。振りほどくって発想にもならないみたいです。」




いや、()っわ

ステルス状態で首絞めても相手に気付かれないって、ヤバ過ぎない?




「……あ!!」




影山くんが突然ハッとしたように声を上げた。




「こ、これは痴漢行為には当たりませんよね!?

止むを得ずの措置なので!! 逃すわけにはいかなかったですし!?」



「気にするとこ、そこ!?」




即ツッコミが出た。



いや、影山くん、こっわ。

暗殺者適正、高すぎじゃない?


俺たちフォルティアメンバーみたいに、生き物として素の防御力が高い相手は無理かもだけど、普通の人間相手なら、殺そうと思えばいつでも殺せるってことじゃん。やばー!


これ、実は“絶対不可視”が一番ヤバいスキルなんじゃない?


影山くん本人が善人なのが救いだわ、ほんと。


思わず心の中でため息が漏れる。


もし彼が悪人側にいたら──想像するだけで背筋が凍るよね。俺も同じこと思われてそうだけど!



その時、マイネさんが一歩前に出た。

腕を組み、難しい顔でフラム・クレイドルを見つめる。




「……此奴とは、色々と話をする必要があるが……」




その横顔は、まるで政治家のように冷静で、しかし何かを測るような目をしていた。

そして、ちらりとベルザリオンくんへ視線を送る。


ベルザリオンくんは一拍置いて、静かに胸へ手を当てた。




「お嬢様、私のことなら心配には及びません。

どのような事実があろうと──私はお嬢様と共に在ると、誓っております。」




その姿はまるで騎士のようで、思わず息を呑んだ。

マイネは小さくため息をつく。




「……この場におる者は、全員が当事者じゃ。

話をするなら、全員で、じゃな。」




その言葉に、場の空気がぴんと張りつめた。


高校生たちは互いに顔を見合わせ、

誰からともなく、静かに頷いた。


俺も皆も、無言で頷き返す。



──嵐の前の静けさ、という言葉があるけれど、

今の空気はまさにそれだった。


この後、何が明かされるのか。

その予感だけが、胸の奥で小さく鳴っていた。




 ◇◆◇




重い沈黙が、玉座の間を包んでいた。


石畳の床に、ロープで後ろ手に縛られたフラムが正座している。

背筋は真っ直ぐ、顔は俯き気味──けれどその瞳には、まだ誇りが宿っていた。


周囲を取り囲むのは俺たちフォルティア荒野の仲間達。異世界召喚組、そしてマイネさんたち。


高い天井から吊るされた灯火が、まるで尋問室のライトみたいにフラムの姿を照らしている。




「フラムさん……どうして……っ!」


 


最初に声を上げたのはミサキさんだった。

彼女の目は真っ赤に充血していて、今にも泣き出しそうだった。




「……あんなに、親切にしてくれてたのに……!」




「私たち、信じてたのに……! 一緒に、笑ってたのに……!」




ギャルズ三人──ミサキさん、ミオさん、サチコさん。俺やグェルくん達と地下道で戦ったメンバーの中にいた、ギャルギャルしい3人組だ。


彼女たちの声が次々と重なる。

そのどれもが、裏切られた痛みをそのままに乗せた叫びだった。


フラムはその声を静かに聞いていた。

まるで、すでにすべてを受け入れているかのように。


そして、ゆっくりと顔を上げた。




「……私は、ベルゼリア第七師団統括、最高魔導官フラム・クレイドル。」




その声音は、先ほどまでの優しい教師のような声ではなく──

氷の刃みたいに冷たかった。




「貴方たち、異世界召喚者に首輪を付けて、

ベルゼリアの国益とするのが、私の使命なの。」




その一言で、場の空気が一気に凍りついた。

怒りと絶望、そして信じられないという感情が入り混じり、誰も言葉を発せなくなる。




「……ふざけんな……!」




低く、鬼塚くんが唸る。

だが、マイネさんが静かに片手を上げただけで、彼は口を閉じた。


まるで王の一声のような圧力。

玉座の上で、マイネさんはゆっくりと足を組み直し、凛とした声を響かせた。




「此度のベルゼリアによる“和平条約”を無視したスレヴェルドへの侵攻について、何か申し開きはあるか、フラム・クレイドルよ。」




その声は静かだった。

怒りも嘲りもない。

ただ、絶対的な威圧だけがあった。


フラムはわずかに肩を震わせたが、すぐに薄く笑った。




「……焼きが回った、ってやつね。私も。」




口調は乾いていて、それでいてどこか吹っ切れたようだった。




「──貴女が“魔神器”を取り戻してしまった以上、

我が国ベルゼリアの敗北は、もはや決定したも同然。」


 


その言葉に、場の誰もが息をのむ。




「私も本国へ戻れば、作戦失敗の責を問われるでしょうね。良くて投獄。悪ければ……処刑、かしら。」




淡々と、まるで他人事のように語る。

けれど、笑みの端がわずかに震えていた。




「この場で殺された方が、まだマシかもしれないわね。」




そう言って、フラムは皮肉な笑みを浮かべた。

その表情に怯えも後悔もなかった。あるのはただ


──覚悟だけ。


マイネさんは沈黙を貫いたまま、視線を逸らさずに問う。




「……何故、盟約を破ってまで、妾のスレヴェルドを攻めた?」




その声には怒りが籠っていた。

しかし、王としての矜持がそれを冷たく抑え込んでいる。




「そこな召喚者どもが、いかに強力なスキルを持っていたとて……危険な賭けになる事は分かっておった筈じゃ。」




フラムは静かに笑い返した。




「……あら。貴女だって、本当は見当は付いてるんじゃなくて?」




マイネさんの瞳が細くなる。




「ベルゼリアが“強欲の魔都”スレヴェルドを攻めた狙い──それは、我が国の国家資産の多くを差し押さえている魔王マイネ・アグリッパ、貴女の命と、その領内に眠る地下資源“龍生水(りゅうそうず)”。」


“竜生水”──初めて聞く名だな。

地下資源って事は、石油みたいなもんかな?


フラムは続ける。




「でも、それだけじゃない。」




そう言って、ゆっくりと顔を上げ──

真っ直ぐに、ベルザリオンを見据えた。


その瞬間、彼の眉がわずかに動いた。

空気が、張り詰める。




「……っ!」




ベルザリオンは表情を保ちながらも、指先が微かに震えている。

彼の胸の奥に、何か重いものが沈んでいくのが見て取れた。


フラムの唇が静かに動く。




「ベルゼリアが──この戦を仕掛けた“もう一つの理由”よ。」




その言葉を最後に、沈黙が落ちた。


灯火がわずかに揺れ、フラムの影が床に伸びる。

その影は、まるで過去の罪を突きつけるように、ゆらめいていた。




 ◇◆◇




フラムの言葉は、止まることを知らなかった。


静寂の玉座の間に、彼女の声だけが響く。

まるで、長い間心の奥に隠してきた“真実”を、今この瞬間に吐き出しているように。




「ベルゼリアが誇る、異世界とこの世界を繋ぐ門──“召喚塔”。初代皇帝リヴィス・ハルトマンがもたらした異世界の技術によって建造されたそれは、

帝国ベルゼリアのみが持つ異世界へのアクセスポイント。」




彼女はゆっくりと顔を上げ、薄く笑う。




「それこそが、帝国を世界最強の国家たらしめていたの。」




その声には皮肉が混じっていた。

誇りではなく、呪いを語るような声音だ。




「でも、近年になって──ベルゼリア以外の地にも、

リヴィスの建造した“遺構”が残っていることが判明したわ。」




遺構……?

俺は無意識に眉を寄せる。




(遺構って……まさか、例の地下トンネルや、

フォルティア荒野の地下にあったあの巨大なマスドライバーみたいな構造物のこと……?)




頭の中で過去の光景が繋がっていく。

思えば、あれも常識では説明できないほど精密な構造だった。


フラムは俺の思考など見透かしたように、独白を続ける。




「恐らく、初代皇帝リヴィスは“異世界との繋がりやすい座標”を探し、国の臣下にすら秘密裏に転移塔の建設を進めていたのでしょうね。」


「……しかもご丁寧に、自分の“血”が無いと起動できないようにロックまでかけて。」




その言葉には、わずかに悔しさが滲んでいた。




「ベルゼリアの上層部は焦ったでしょうね。

帝国が独占していた異世界転移の技術の結晶が、他国の領土内に“無造作に”建造されていたのだから。」




天井の灯火が揺れ、フラムの影が壁に伸びる。

その姿は、まるで“ベルゼリアという巨塔”そのもののようだった。




「唯一の救いは、鍵である“リヴィスの血”。

これは、ベルゼリア王家の者にしか転移門を起動できないことを意味するわ。」


「ベルゼリア上層部は胸を撫で下ろしたでしょうね。

たとえ転移門が他国にあったとしても、起動できないのなら、異世界転移の技術は今もベルゼリアだけのものだから。」




そこまで言って、フラムはふっと息をつく。

そして、冷たい瞳でベルザリオンくんを見据えた。




「──だけど。」




その一言が、空気を変えた。


ゆっくりと彼女は言葉を重ねる。




「“そこの彼”……その“お人形”の存在が確認されたのが、運命の分かれ道だったわ。」




場が、静まり返った。

まるで、全員の心臓が一瞬止まったかのように。


ベルザリオンくんの顔が強張る。




「なっ……!?」


 


怒りとも、動揺ともつかない声。

それに反応したマイネさんが、玉座からゆっくりと立ち上がった。

その瞳には、凍てつくような怒気が宿っていた。




「ベルを“人形”などと呼ぶことは、妾が許さぬ。

言葉に気をつけよ、フラム・クレイドル。」




低く、一言一言を噛み締めるような声音。

その瞬間、玉座の間の空気がひび割れそうなほど張り詰めた。


フラムは、しかし眉一つ動かさずに言った。




「ああ、これは失礼。」




その言葉に、情感はない。

まるで、もう全てを諦めた者のように。


ベルザリオンくんは拳を握りしめ、低く声を震わせる。




「今の話に、私が……何の関係があると言うのです!?それに、私が……“人形”とは……一体、どういう意味なのですか!?」




その必死な問いに、フラムはわずかに目を細めた。

そして、皮肉な笑みを浮かべてマイネさんへと視線を向ける。




「……貴女、本当に何の説明もしてあげてないのね。」




マイネさんの眉がわずかに動く。

その表情に、一瞬だけ迷いが走ったのを俺は見逃さなかった。


フラムは、静かに息を吐いて続けた。




「いいわ。秘密主義のご主人様に代わって、私が教えてあげる。」




ゆっくりと、ベルザリオンくんを真っ直ぐに見つめ──


告げた。






「強欲四天王、至高剣・ベルザリオン。

貴方は『偶然、魂の呪いに蝕まれ捨てられた人間の子』なんかじゃない。」






言葉が、刃のように突き刺さる。

ベルザリオンくんの呼吸が乱れた。






「貴方は──ベルゼリア初代皇帝、リヴィス・ハルトマンが “バックアップ”として残した、彼自身のクローンなのよ。」


 




その瞬間、誰も声を発せなかった。


ベルザリオンくんの顔から血の気が引く。

サラリと垂れた前髪の下で、瞳が見開かれていた。


信じたくない、でもどこかで納得してしまうような──そんな矛盾した表情。




「……そ、そんな……馬鹿な……」




掠れた声が漏れる。


だがフラムは止まらない。




「貴方は、人間でも魔族でもない。

造られた存在なのよ。」




まるで死刑宣告のように、静かに、淡々と。


彼女は最後に──かつての名を、皮肉を込めて口にした。




「ベルゼリア系列・A1番クローン幼体。

《Belzz-A1-ION(ベルゼリアの子)》さん。」




金属的な響きが、玉座の間の空気に突き刺さった。

その名が示す“生まれの番号”が、彼の全てを定義してしまうかのように。


ベルザリオンくんは立ち上がろうとするが、足が震えて動かない。


唇がかすかに開く。




「私が……ベルゼリア初代皇帝の……“コピー”……だと……?」




その声は、まるで自分の存在そのものを否定するようだった。

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