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第98話 真祖竜の逆鱗

 雷が、俺のこめかみをかすめた。


 


 ……いや、かすめてすらいなかった。


 正確には、よそ見していた俺の手が勝手に動いて、右手の指2本でそれを弾いていた。


 空気が震え、雷撃の残滓が火花を散らす。それすら俺には、たいして意味のあるものには思えなかった。


 


 だって、今、あっちの戦いが面白すぎるのよ。


 


 視線の先では、グェルくんが“変身”していた。


 ムキムキの二足歩行。


 見た目は……


 うん、なんていうか……


 首から下がジャ◯ク・ハ◯マーで、顔は完全にパグのまま!という、悪夢みたいな様相を呈している。


 


(……グェルくんが、とんでもないことになってる……)


 


 遠くから見てもインパクトがすごい。


 なにそのフォルム。


 しかも動きがやけに俊敏。


 なにあれ、生前パグをいじめた悪人が落ちる地獄の獄卒かな?


 


 対する敵──鳥人(とりじん)は、タキシード姿のハト顔。


 しかも二丁拳銃を乱射しながら「ホロロロロッ!!」と奇声を上げてる。


 


(……いや……うん。鳥人もキモいなーとは思ってたけど……)



 正直、グェルくんは更に輪をかけてキモい。



 けど、そのキモさが逆に格好良く見えてきたのは、たぶん俺の目がおかしくなったんじゃない。


 きっと、彼が本気で努力して、命がけで闘ってる姿が……そう見せてるんだ。


 


 いや、それにしてもキモいけど。


 


「貴様ァァッ!! どこまで僕達を舐めれば気が済むんだぁッ!!」


 


 キレた声がすぐ背後から聞こえた。


 雷撃を纏い、ものすごい速度で移動してきた少年──一条雷人が、背後から雷撃サーベルを俺の背中めがけて振りかぶっている。



 けど。


 


「──ちょっと、今それどころじゃないから後にして。」


 


 俺は振り向きもしなかった。


 ただ、右手をスッと後ろに上げ、中指と人差し指の二本だけで、迫りくるサーベルの刃をガキィン、と鍔迫り合いの様に止める。


 


「ッ……!!?」


 


 一条の動きが止まった。剣を握る両手に力がこもってるのが分かる。だが、刃は1ミリも動かない。


 


「ウソだろ……! こんな、片手で……いや、二本指で……っ!」


 


「ほんとに今いいところなんだって。ほら、グェルくんが、アッあぶない!……うぉぉっ!? よけたぁーっ!! すごっ!!」


 


 まるで格ゲーの実況でもしてるように俺は叫んだ。


 ついでに、視線は前のまま。背後のサーベルは、まだ二本指で挟みっぱなし。


 


 一条の額から、汗がだらだらと流れていた。


 


「……どこまで化け物なんだ、こいつは……ッ」


 


 そんな声が漏れ聞こえたが、それより今は──


 


 グェルくん、さっきの技は胴回し回転蹴り!?


 ついさっきまでクソデカパグだった君が、何でそんな機敏に格闘戦をこなせるの!!?


 ていうか動き早ッ!! ハトが見えてないじゃん!!


 


「今だ西条! 撃てぇっ!!」



「くらえぇぇえっ!!」


 


 別方向からの声に振り向く暇もない。


 ドゥンッ!!と破裂音のような銃声が轟く。



 ──対物ライフルの弾丸が、俺のこめかみに向かって飛んできていた。



 撃ったのは、後方で伏せて構えていた西条くんと久賀くん。


 彼らにしてみれば「今が隙だらけ」って思ったんだろうけど。


 


「──今いいところだって言ってるでしょうが!!」


 


 俺は、目も見ずに──ただ、首をぐっと傾けて、

 ヘディングの要領で、弾を頭で弾いた。


 


 キィィィンッ!!


 


 金属音とともに、ライフル弾が跳ね返って、誰もいない壁に突き刺さった。


 


「…………」


「……なあ……アイツ……今、頭で弾いたよな……?」


「……ってことは、当たっても……ダメージ与えられないってことじゃね……?」


 


 うん、ごめんね。多分そう。


 俺、別に“硬い”っていうより、“壊れない”に近い存在だから。


 


 でも今はそれどころじゃないんだ。


 グェルくんが、あの身体でハトの銃撃をかわしながら、逆に地面を抉って突っ込んで――!!


 


(……グェルくんvs鳥人(とりじん)……熱すぎる……!)


 


 そう、もう心は完全に観客。


 いやさ!少年漫画のバトルシーンに熱中する読者の心境だ!


 


 ──いいぞ、グェルくん。そのまま勝ってくれ。


 ──でもちょっとキモいのは抑えめでお願い。


 


 そんな願いを心の中で叫びながら、俺は相変わらず「よそ見しながら」も、完全に無傷で攻撃を捌き続けていたのだった。




 ◇◆◇




 ──ズガァンッ!!!


 爆音と共に、あの“ハト頭の鳥人”が空中を弾丸のように吹き飛ばされていった。


 ちょっと遅れて、遠くの壁に叩きつけられたピッジョーネの体が、ぼぐん、と奇妙な音を立てて崩れ落ちる。


 真後ろにいた男子高校生っぽい少年が、隣の少女を庇いながらもろとも巻き込まれ、鳥人と一緒に二人して意識を失って崩れた。


 


 (おぉおおおお!? 今の一撃——)


 


 俺は思わず目を見開いた。


 グェルくんの拳が、土砂を割り、空気を裂き、まるで山を砕くみたいに真っ直ぐピッジョーネに叩き込まれていた。


 


 「王狼崩拳撃フェンリル・インパクト」……だっけ?いいねー!王道だね!


 


 うん、あれはもう完全に漫画で言うところの見開きドン!!だ。


 効果音も背景も、勝利のオーラも、頭の中で勝手に鳴り響いてる。


 集中線が脳内再生されて止まらない。


 


 (うーん……)


 


 俺は一度、目の前に迫ってきた雷撃サーベルを、背筋をしならせて軽く回避した。すれ違いざま、空中にバチバチと火花が散る音。


 


 (……いや、うん。すごいな、グェルくん)


 


 左手にはすでに対物ライフルから発射された弾丸が二発。俺は右手でその弾を指先で摘み、回転させながら軌道を逸らす。


 


 (ポメちゃんが「もうダメかも!」って悲鳴上げて、グェルくんもピンチになってたから……最悪、石でも投げて援護しようかって思ってたんだけど……)


 


 ポケットの中に入ってる小石をチラッと確認。使わずに済んだみたいで、ちょっと安心。


 


 (いやぁ……必要なかったな)


 


 あのムキムキボディ……うん、あれは確かにキモい。


 鳥人(とりじん)のキモさを凌駕してしまった時点で、グェルくんの勝ちだったのかもしれない。


 でも、強くなった。


 間違いなく、グェルくんはキモ強くなった。


 


 「……ふふっ」


 


 思わず笑みが漏れる。


 


 最初はね。この子たち——目の前で俺を攻撃してきてるこの日本人ぽい子たち。


 もしかしたら、俺と同じように日本から転移してきたのかもって思って、力になりたいと思った。


 


 どうにかしてあげたいって。今でも、そう思ってはいる。




 でも。


 


 (グェルくんたちの戦いが始まってから、ずっとそっちばかり気になってた)


 


 雷の剣が再び飛んでくる。


 俺はその輝きの軌跡を目だけで追いながら、軽く身を逸らして受け流す。


 心は、もうここにはなかった。


 


 (……たぶん俺、完全に"こっちの世界の人間"なんだろうな)


 


 もう、「橘隆也」じゃない。


 今の俺は、「アルドラクス」だ。


 


 “この世界にいる仲間”のことが、“元いた世界から来たかもしれない誰か”より大事に思える。



 それは、たぶん、もう選んだってことなんだ。


 


 (グェルくんとポメちゃんが、命懸けで頑張ったんだ)


 


 俺もいつまでも“舐めプ”してるわけにはいかない。


 もう見てるだけじゃダメだ。


 もう、“様子見”してる場合じゃない。


 


 (とっとと、終わらせるか)


 


 俺はゆっくりと視線を移した。


 まずは、一条くん。


 雷撃サーベルを構えている少年。


 鋭い目つき。たぶん、リーダー格。


 目が合った瞬間、彼の肩がピクリと揺れる。


 


 次、西條くん。スナイパータイプ。


 狙撃用の大口径銃を手にしながら、顔はこわばっている。


 


 最後に、久賀くん。


 目が泳いでる。あれは内心ガチビビりしてる顔。


 


 三人とも、俺が真正面から視線を向けた瞬間、わずかに息を呑む音がした。


 


 俺は、ただ一歩、ゆっくりと前に足を踏み出す。


 音もなく、風もなく、ただ“静か”に。


 


 その一歩が、三人の顔色を確実に変えたのがわかった。


 空気が変わった。


 何もしていないのに、彼らは本能的に“何かが始まる”と察していた。


 


 (……さて。行こうか)


 


 俺の中で、何かが「カチリ」と音を立てて切り替わった。


 


 次の瞬間からは、もう様子見に徹したりはしない。


 “本気”というほどじゃないけど……俺なりに、「敬意を込めて、ちゃんと勝つ」つもりだ。


 


 グェルくんが命を懸けたなら、俺もちゃんと応えないとね。




 ◇◆◇




 空気が、張りつめていた。


 目の前の三人、俺にとっての“後輩”みたいな年頃の彼らは、緊張と怒りを滲ませたまま、武器を構え続けている。


 


 「……忠告するのは、これで最後だよ」


 


 俺は静かに口を開いた。


 


 「もう、実力差は分かったでしょ? 無意味に戦いを続けても、君たちが傷つくだけだ。……だからさ、諦めて、事情を説明してくれない?」


 


 できるだけ優しく。できるだけ穏やかに。


 


 「そうすれば、悪いようにはしないからさ」


 


 でも——


 


 「貴様の甘言には……乗らないッ!!」


 


 一条くんの叫びが、怒気を孕んだ雷鳴のように響いた。


 


 「そうやって油断させて、僕たちを殺すつもりだろう!? 人の皮を被った魔物めッ!!」


 


 怒りと恐怖と、正義感が入り混じった目。全てを疑い、全てを拒絶するような目。


 きっと、彼は彼なりに戦ってるんだと思う。誰かのためか、自分のためかはわからないけれど。


 


 だからこそ。


 


 「……ハァ」


 


 俺は小さく、ため息をついた。


 風が一瞬だけ揺らいだ。


 


 「それじゃあ……今から君たちにちょっと酷いことするけど」


 


 一条くんが再びサーベルを振りかぶった、その瞬間——


 


 「……頼むから、泣かないでね?」


 


 鋭く放たれた雷撃の一閃を、俺はそのまま、右手の二本指で挟み取った。


 


 人差し指と中指。たったそれだけで。


 


 「な……っ!?」


 


 一条くんの顔が凍りつく。


 サーベルの刀身が、金属音をひとつ鳴らしたかと思うと——


 


 ポキッ


 


 気の抜けたような音を立てて、綺麗に折れた。


 その破片が地面にカラカラと転がり、鈍い音で止まる。


 


 「……ば、かな……っ」


 


 一条くんは言葉を失ったまま、折れたサーベルを見つめている。


 動けない。


 足も、声も、凍りついたように止まっていた。


 


 その間にも、次の一手が迫っていた。


 


 ドウンッ!!


 


 重低音を響かせて、対物ライフルの弾丸がこちらへ飛んできた。


 だが。


 


 「いや、もういいから、それ。」


 


 俺は、左手をそっと構える。


 そして、中指を弾くように——デコピン。


 


 パンッと弾かれた小さな音の直後、弾丸の一つが回転しながら弧を描き、逆方向へと跳ね返った。

 


 その軌道の先。


 


 ガッシャアアアンッ!!!


 


 乾いた爆裂音と共に、西條くんが抱えていた巨大な対物ライフルが真っ二つに割れて吹き飛んだ。


 破片が宙を舞う。


 


 「うわぁっ!!?」


 「な、なんだよぉ!?!?」


 


 西條くんと久賀くんが揃って叫び、尻餅をつく。


 対物ライフルの衝撃で腕に負担がかかったのか、二人とも痺れたように手を押さえていた。


 


 その光景を、少し後ろから見ていた三人もいた。


 スキル封じのスキルを持ったギャル系の女の子と、その子に寄り添うもう一人のギャルと、オタクっぽい男子。


 彼女たちは連携して、"竜泡(ドラグ・スフェリオン)"を封じていた。


 でも、今の戦況を目にした彼女たちは——


 


 「……うそ……だろ……」


 「え、待って……」


 「………」


 


 呆然としていた。


 


 俺は、そっと目を細めて、崩れ落ちた彼らを見下ろす。


 


 「……前にさ」


 


 ぽつりと呟いた。


 


 「斬りかかってきた相手の武器を折ったら……その人、泣いちゃったことがあってね。」


 


 あの時のことを思い出す。すごく申し訳なかった


 思い出しただけでも胸がキューってなる。


 大の大人が"ちい◯わ"みたいになってたからね。


 


 「だからちょっと、ためらってたんだけど……」


 


 一条くんは未だに唇を噛みしめたまま、声を発せずに震えていた。


 


 「君たち、話を聞く気ないみたいだし」


 


 俺は、ほんの少しだけ微笑む。


 


 「……このくらいは、勘弁してよね」


 


 風が吹いた。


 静かな、まるで戦いの終わりを告げるような風だった。





──────────────────





 「……まだだッ!! 諦めてたまるかっ!!」


 


 静寂を打ち破るように、一条雷人が叫んだ。


 


 その声はもはや、決意や覚悟というより、“執念”に近かった。


 彼の手に握られていた、すでに折られた雷撃サーベル。


 それに、信じられないほどの魔力が流し込まれていく。


 


 バチバチと紫電が舞い、一条の腕から肩、全身へと奔流する魔力の波が走る。魔術回路が焼けつく寸前の悲鳴を上げながら、それでも彼は叫んだ。


 


 「"雷月刃チャンドラハース"……!!」


 


 その呟きとともに——


 折れたサーベルの刃先に、雷の魔力が凝縮されていく。


 


 生まれたのは、三日月のように湾曲した、蒼白の雷刃。


 眩いほどに煌めくその刃は、まるで“月の一欠片”を剣に封じたかのようだった。


 


 「……!」


 


 遠くから見ていた佐倉サチコが、思わず声を詰まらせた。


 その傍らの内田ミオが、焦燥を隠せない表情で呟く。


 


 「……一条、無茶だよ……それ、発動したら……!」


 


 だが——


 その危険な魔術を目の前で見ていたアルドは、少しの間、黙ったまま。


 表情も、変わらなかった。


 ただ、その内心には、わずかな困惑があった。


 


 (……あれだけ実力差を見せつけて、まだ心が折れてない……?)


 


 彼の目は、どこまでも冷静でありながら、その奥底に僅かな揺らぎが生まれていた。


 


 (……やっぱりこの子たち、何か“普通じゃない”よな)


 


 一条の表情は、痛みに歪んでいた。


 身体は限界に近い。


 それでも、彼は目を逸らさなかった。


 仲間たちに背を向けたまま、振り絞るように言葉を吐き出す。


 


 「僕たちは……この先にある“門”を……確保する……!!」


 


 「何がなんでもだ……!!」


 


 「そして……そこに——」


 


 その声が、次の瞬間。


 


 「“咆哮竜ザグリュナ”の魂を捧げて……」


 


 ——世界が止まった。


 


 「帰るんだ……!! 元の世界へ……!!」


 


 その言葉の刹那。


 


 アルドの意識が、真っ白になった。


 


 頭に、何かが「バツンッ」と音を立てて切れた気がした。


 


 瞳孔が一瞬、細く狭まり、空気が一変する。


 


 「──は?」


 


 それは、呟きだった。


 だが、その一言が、世界を凍らせた。


 


 ────。



 

 空間に、無音の"音"か響いた気がした。


 その場にいた全員が、肌にまとわりつくような“何か”を感じた。


 恐怖。圧。殺気でも怒気でもない、世界そのものが揺らいだような、銀色の気配。


 


 敵も味方も関係なかった。


 


 ポルメレフが顔を引きつらせ、グェルでさえ無意識に一歩だけ後ずさる。


 


 一条雷人は、止まらなかった。


 過度の興奮が、危機察知能力を鈍らせていた。




 「どけぇっ!!」




 叫びと共に、"雷月刃(チャンドラハース)"を、全力で振るう。


 


 彼の“最強”と“最速”を詰め込んだ渾身の一撃。


 視界が、刃の閃光に塗り潰された。


 


 ——だが。


 


 その一瞬後、一条は、何かがおかしいと気付いた。


 


 「……え?」


 


 手の中に、サーベルの柄がない。


 


 その感触が、忽然と消えていた。


 それと同時に、視界の前方に“いたはず”のアルドが、消えていた。


 


 次に彼が見たものは——


 


 自分の首元に、雷の刃が迫っている光景だった。


 


 それは、さっきまで自分が持っていた、折れたサーベル。


 だが、そこから放たれている雷刃は、さっきの五倍以上のサイズに膨れ上がっていた。


 


 しかも、それを握っているのは——


 


 「……っ」


 


 目の前に立つ、少年。


 その瞳が、射抜くように一条を見つめていた。


 


 銀色の少年、アルド。


 


 その手には、いつの間にか一条の折れたサーベルがあり、


 巨大化した雷刃を、寸分の誤差もなく、一条の喉元で止めていた。


 


 「──お前さ」


 


 アルドの声は、静かだった。


 だが、それ故に怖かった。


 叫びでも怒鳴りでもなく、淡々とした声の中に、抑えきれないものが滲んでいた。


 


 「……今、“誰の魂”を捧げるって……言った?」


 


 膝が、筋力という支えを失った様だった。


 背筋を凍らせた一条は、その場に崩れ落ちかけ、ガクガクと膝を震わせながら、どうにか立ちすくむ。


 


 汗が、滝のように流れ落ちる。


 


 周りで見ていた仲間たちは、言葉を失っていた。


 佐倉サチコが目を見開いたまま、口元を震わせている。


 内田ミオの顔色は蒼白。


 石田ユウマも、唇を噛んだまま、まるで石像のように動けなかった。


 西条と久賀も、大破した対物ライフルの側で、腰を抜かしてガチガチと歯を鳴らしている。


 


 ——それほどに、アルドが放つ“気配”は異質だった。


 


 怒っているのか。


 それとも、呆れているのか。


 あるいは、ただ“許せない”と思っているのか。


 


 だが、一つだけ確かなことがあった。


 


 今のコイツにだけは、逆らってはいけない。


 


 それは全員の本能が、言葉より早く察知していた。


 


 そして——

 戦場の空気が、沈黙に包まれていく。


 次に動くのが誰か。


 何が始まるのか。


 それを誰も、予測できないまま。

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― 新着の感想 ―
うおーー!!! グェラの覚悟がアルドを動かして無双が始まったかと思ったら、まさかの逆鱗に触れることでアルド坊ちゃんの本気の無双が見れて大満足すぎる! 更新が待ち遠しいです! エピソード100話と450…
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