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サンライズ・1

「おおっ、これは優美なるぞ!」

 そう叫ぶのは豪華な色とりどりの着物に身を包んだ大和・撫子である。

 今、彼女が居る場所は、東照の宮国の首都、大和の端に設けられた工房である。ハンガーには組み立て中、または整備中のバンプ・ナイトが並んでいた。

 そして、その中にはヨシノのバンプ・ナイトである八丈軍・定定もある。撫子が見上げているのも定定であった。

 また、はしゃぐ撫子を見守るのは二人の人物。

 紋付羽織袴を着た染井・吉野といつも通りの紺色作務衣を羽織る八丈軍・桜子である。

「すまない。桜子。俺専用のバンプ・ナイトがあると知って、見たい見たい、と騒ぐものでな」

 ヨシノは桜子へと振り向くと、侘びを入れる。すると桜子は素っ気なく答える。

「教育係も大変ね。でも、仲がよさそうで羨ましいわ。手を繋いだってさ」

「……なにを怒っている?」

「別に。貴方がロリコンの気があることに驚きを隠せないだけよ」

「俺はロリコンじゃない。そもそも、俺自身何故、姫様の教育係を任せられたかわからんのだ」

 ヨシノは本当に謎だと、眉を寄せる。そんなヨシノの顔を見て、桜子は、

「わたしはなんとなくわかるけどね。蔵八木皇帝の考えそうなことだわ……。余程、貴方がお気に入りなんでしょう」

「どういうことだ?」

「これでもわからないのなら、とても幸せよね、貴方」

「……ん?」

 桜子は首を傾げるヨシノを見て、「鈍感」と小さく言う。

「で、ヨシノ。貴方も此処に用があるのでしょう? お堅い貴方が撫子姫のお忍びをそうそう許すはずがないもの」

 そう桜子が言えば、ヨシノはにやり、と笑みを浮かべる。

「流石は桜子。よくわかったな」

「これでも貴方との付き合いは長いもの。定定の調整具合と、新型の進行度を見に来たってとこかしら?」

「ご名答。――早速だが話してもらえないか? 姫様が定定に夢中な内に定宗の方でもさ」

 と、ヨシノは撫子の方をちらり、と見る。撫子は定定を周回し、見上げている。

「わかったわ。取り敢えず、定宗の方は今は素材待ち、っていうところかしら。今回のバンプ・ナイトには色々と新しい要素を詰め込もうと思っているの。その為に特注品が必要なんだけど、なかなか製造には時間が掛かる品物でね」

「そんな特殊なものなのか?」

「特殊も特殊よ。でも、それについては出来てのお楽しみね。――あと、他にも外部装甲に隠されてる内部装甲――エーテル装甲も新しくするわよ。従来のエーテル装甲はただ外側に溝を作って、その溝にエーテルを流すだけのエーテル機関からのパイプ役だったけど、今回はそのエーテルの流す量を大幅に上げることにしたの」

「流すエーテルの増やす? それに意味はあるのか?」

「大ありよ。エーテル機関が送り出すエーテルはまだあり余ってる状態なのよ。今のエーテル装甲じゃ、エーテル機関の送り出すエーテルをかなり無駄にしてるの。その無駄をなくすのよ」

 と、桜子は自信あり気に言う。しかし、ヨシノの頭上には「?」が浮かぶだけである。

「……つまり、どういうことだ?」

「あぁ! なんで理解できないかな! つ・ま・り・は、燃費がよくなって、馬力を上がるってこと」

「おー、それはいいな」

「まったく、これだから機士というのは……」

「おいおい、俺は防人だぞ」

「バンプ・ナイトに乗るなら皆機士よ! ――でね。その燃費もよく、馬力も上がるエーテル装甲にするために、今まで外側だけに溝を彫っていたのに加えて、反対側と中にも溝を彫ることをしたのよ。つまり二層構造にするの! するとエーテルを流す溝を三つに出来るから、通常の三倍のエーテルがバンプ・ナイト内を循環することになるわけ! オーケー?」

 桜子の勢いに押されたヨシノは慌てて頷いた。

「お、オーケー。つまりは強くなるって、ことだ」

「……わかってないわね。これは」

 桜子はがくり、と肩を落とした。

「むっ、仕方ないではないか。俺はこういうのに弱いのだ」

「はいはい。だからわたしの出る幕があるんだけどね。でも、まぁ期待はしといてよ。次の新作――八丈軍・定宗は強いよ。わたしは定宗をこの東照の宮国の国機にしたいと思ってるの」

 国機。それは各国を代表するバンプ・ナイトのことであるが、東照の宮国には国機が存在していない。

 それというのも、東照の宮国では今までバンプ・ナイトの製造に力を入れていなかったからである。その原因として、鬼の出現が極端に少なかったことと、東照の宮国が絶対不可侵と捉えられている為、他国から侵略の危機に晒されなかったからである。

 だが、昨今。鬼の出現が多いためバンプ・ナイトの重要性が東照の宮国でも広まりつつある。首都に桜子の工房があるのも、その重要性が認められた証拠でもある。

「桜子の夢だからな。国機は」

 ヨシノが感心しながら言えば、桜子は「それは違うわよ」と人差し指を振る。

「わたしの夢は国機を作ることじゃないのよ」

「ん? では桜子の夢ってのは何だ?」

 ヨシノが問うと、桜子はよくぞ訊いた、とばかりの満面の笑みを浮かべ、こう言い放つ。

「わたしの夢はね。わたしのような技師たちが集う村を作ることなのよ」

やばいやばい。プラモ作ってると時間を忘れる。

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