ゲイボルク・11
モリガン・ダイアリー
彦様からカンムリの起動解除のお達しがあって、はや十日。
今日、花を摘みました。
アンナ様が好きだったヒヤシンスの花です。
私は花が枯れる前に、とアンナ様が亡くなった地に赴きました。
其処には見るも無残な遊撃キャラバンの姿。そして、アンナ様が搭乗しておられたルコルパーンMkⅢが見るのも痛々しい程朽ち果てておりました。
私はコックピットであろう場所へと入りました。
アンナ様のご遺体は既に回収されており、エーリン本土へと帰っているのですが、中は血痕がこびりつき赤黒くなっていました。
私はそのコックピットの中にヒヤシンスの花を添えました。
一番初めにアンナ様を見つけたのは私です。
ファーディア様とご一緒に鬼の討伐をされた、との噂を聞き、アンナ様にファーディア様の話を聞こうと思ったからです。
ファーディア様はどうしておられるのでしょうか。私は胸躍らせて、アンナ様の下へと飛びました。
しかし、其処に在ったのは炎に包まれた遊撃キャラバン。
あの時のアンナ様のご遺体は既に人の形を保ってはいませんでした。……思い出すのも苦しいです。
アンナ様と過ごした日々を考えると……胸も苦しいです。
しかし一番苦しいのはファーディア様のはず。
今すぐあの方を抱きしめたい。
それしか私には出来ないのですから……。
私は公の場でファーディア様には逢えません。もし逢ってしまえば、あの方の邪魔をしてしまいます。
気がつくと涙が流れていました。
私がカンムリに乗ると、カンムリが哀しい声で鳴きました。
私と繋がっているカンムリも啼いているのです。
彦様から連絡がありました。
どうも、ファーディア様が首都ベルファストへ向かう、とのこと。
私はすぐに飛び立ちました。
これであの方に逢える。
一体どのくらい逢っていないのでしょうか。
一年……二年……三年……五年でしょうか。
カンムリの羽ばたきがいつもより力強くなっていました。
丁度、機人の村上空を通ると、彦様のお姿を見かけました。
甘味屋の外に設置された席で何かをお召しの様子。
その隣には天城様とヒガン様も居ました。
ヒガン様……。
いずれあの人が……。
いいえ、まだ決まったわけではありません。
今はファーディア様が望んでおられるだけ。
しかし、彦様のお弟子様であられるのなら、もしかするかもしれません。
ただ、何となくですがファーディア様の願いは叶わない気がします。
私はこのままベルファストを目指します。
これは題名変えようかと思いましたが、このままで投稿。