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執事さんは居候

イタイ・・・・



人の視線が痛いなんて、生まれて初めての経験だ。



地元の小さな空港は、アジア数カ国の直行便がある、一応は国際便も飛ぶ

空港で。


だからってこんなコンコルドが来ると、それはそれはエライ騒ぎで。



どこにそんな人が?って位に集まった中、たったの2人で出てきたら

それはそれは注目の的。


しかも一緒なのがこの超美形の、セルジュ=アクア・・・おっと。


今は、セルジュ・ロマーニさんだった。



今、勘当状態のセルジュさんは、名字=国名。しかも王族しか持てないという

宝石の名も語れず、母方の姓を名乗る事にしたらしい。



ていうか・・本当にこの人、あたしについて来る気だろうか。



今、人々の視線は、セルジュさんがほぼ独占している。



シンプルな細身のスーツだけれど、それでも一目で高級品だと分かる。

しかも中身が金髪碧眼のモデル並みの美男だ。



ついて来るの?ついて来る?ついて・・・来るよなぁ・・・。


あぁ~・・どうすれば・・・。荷物が出てくるのを待ってる間、そればっかり考えていた。


とりあえず、ひとりになりたい!この視線に耐えられない!(たとえ全員がセルジュさんを見ていても!)


「えと。トイレに行ってきます!」


「でしたら、荷物を受け取りまして、ロビーでお待ちしております。」



1人になったところで良い考えなんて浮かぶはずもなく・・。

迎えに来ているであろうママに、何て説明しようか考えながらセルジュさんの

ところに向かうと・・・



キラビヤカな人が・・・増えてた。



程よく髪に白いものが混ざったブラウンの髪をした、40代くらいのおじさまが

セルジュさんに分厚い封筒を渡していた。

その顔立ちは整っていて。ジュエル王国の人だなと一目で分かる。


「あのぅ」


「あぁ、お嬢様。ご紹介致します。日本のジュエル王国大使の、リチャードです」


にっこりと挨拶するリチャードさんは、とっても人の好い笑顔をしていた。


って、そうじゃなくて!



「そそそ、その封筒、もしかしたら遺産放棄の書類とか入って・・」


「なワケないじゃないですか。私が日本で暮らす為の、諸々の書類です」



がふーーん!


やっぱり・・・ついて来る気なのか・・・。



その時。


「みはるちゃんっ!」



あ。ママがロビーで待ってる事を忘れてた・・・・。



基本お気楽で、ミーハーなママはセルジュさんの登場に浮かれまくっている。

一緒に車に乗る事のも違和感は感じてないらしい。


なんで!?



いつの間にか、リチャードさんはいなくなっていた。


この首都から遠く離れたこの地に、わざわざ封筒だけを届けに来たのか!?



あわあわしていると、荷物はあっという間にトランクに積み込まれ、後はあたしが

乗るだけになっていた。



「セルジュ・ロマーニと申します。お嬢様の執事として日本にやって参りました。

以後、よろしくお願い致します。奥様」


「おーくーさーまーー!!!!」


奥様、と呼ばれ、ママは一層ハイテンションになった。


あの、ママ・・・あたしが相続放棄に失敗した事はどーでも良いの?



---------------------------------------------------------



我が家は小さな2階建てだ。


1階にはリビングダイニングキッチンと、水周り、両親の部屋と、死んだお祖母ちゃんが

使っていた和室。

2階にはあたしの部屋と、お姉ちゃんの部屋が向かい合わせになっていて、

廊下の突き当たりにトイレと小さな洗面台があった。



こんな小さな家に、こんなゴージャスな人が住めるわけない。



が、頼みの綱のパパも、セルジュさんを快く迎えてしまった。


元々パパは社交的で明るいママをニコニコとサポートしてるような穏和な人だ。

でも、こんな時は父としての威厳と見せてくれると淡い期待を抱いていたのに・・。



「それで・・・執事というのは、具体的にどんな事を?」


「そうですね。主人のスケジュール管理や、訪問客の管理ですとか・・・

身の回り全般ですね」


「ウチは見ての通り小さな家だ。管理が必要な程忙しくもないし、お客もそうそう

無いよ」


「つまり、私が特にする事は無い、と?」


「そうだね。第一、こんな家のローンもまだ残っているような私達だ。君がみはるの

執事だと言うのなら、当然、給料が発生する。

この子も、ウチも君に払える程余裕は無いんだ」


!!!そうだ!!!

執事って事は、あたしは雇い主って事なんだ!!さすがパパ!一家の大黒柱!

目の付け所が違うね!!!と思ったと、同時に。


どうしよう・・ただでさえビンボーなのにっ!自分の懐具合も心配になってくる。


パパの、にこやかにはしているけれども鋭い指摘に、最初少し目を見開いてた

セルジュさんだったけれど、またにっこりと笑顔を向けた。


「大丈夫ですよ。相続した遺産の中には、おばあさまが遺されたパリのマンションも

含まれます。

そのマンションの収入がかなりの額でして・・。

私はその中からお給料を頂きますし、それにマンションの管理人と連絡を取って

色々指示も必要になります」


マンションって、パリなんだ。じゃあ、フランス語がまるっきりダメな

我が家にはどうする事もできない。


「そうか。では今日から我が家の一員だ」


お給料の面がクリアになったら良いらしく、パパはあっさりとセルジュさんに

握手を求めた。


うそーーーーん!


「だ、だって、部屋!部屋は!?」


「みさきの部屋があるだろう」

「おねえちゃんの部屋が空いてるでしょう」



ふたりに同時に返された。確かに。お姉ちゃんは3年前にお嫁に行って、

今は向かいの部屋は空いていた。けど!


「みさきには里帰りの時は、和室を使ってもらったら良いさ。」


ソ、ソウデスカ・・・。


3対1じゃ、断然分が悪い。



「あれ?でもさ、じゃあセルジュさん、日本では何をするの?マンションも外国なんだし」


「お車の運転などは?」


「いや、あたし基本チャリだし。」


スケジュール管理も、運転手も必要ない。


「では今は特に何も・・・・」



それじゃ単なる居候じゃないか!!



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