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執事さんはナルシスト

すみません。軽い話が書きたくなって勢いだけで更新です。

後日言い回しとか手直しするかもしれません。

落ち着かない。


私の部屋だと言われた、所謂主寝室は、なんと30畳もあった。


ええっと30畳ってこんなに広いんだっけ?

数字上ではなんとなく雰囲気つかめるんだけど、実際ここで今日から寝泊りしろち言われたら、正直落ち着かない広さだ。

しかも、どでんと置かれているベッドは大きい!これがきっと以前セルジュさんがこだわっていたキングサイズというヤツではないだろうか。

だって、あの家具屋さんで見たクイーンサイズよりも大きい気がするもん。

いや、クイーンサイズかも……自信ないな。

なんで自信がないかっていうと、ベッドの全体像が見えないのだ。

それまたなんでかっていうと……。



ちょっとコレ天蓋ついてますよ!!



淡いピンクや淡いオレンジの花びらのような薄い布が天蓋から優雅に垂れ下がるホワイトレースを彩っている。

天蓋付きのベッドというと、ピンクや白のふりふりレースのプリンセスベッドのイメージがあったのだけれど、目の前にあるベッドは優しく深い色合いのブラウンで可愛いというよりは美しい、という言葉が相応しかった。


ベッドに対して美しいって思うとは思わなかったけど……。


驚いたけれど、好奇心に負けたあたしはいそいそとベッドの上へとよじ登った。

文字通りよじ登ったんだよ!

高いな!もし寝てて落ちちゃったらどうするの!痛いじゃないの!

あぁー本物のお嬢様やお姫様は寝相までいいのかな。落ちるなんてあり得ないか。


中に入ってみると、ふかふかのお布団に視界を優雅に遮るレースはあたしに程よい閉塞感を与えた。レースは今カーテンのように四隅で括られているけれど、それでもまだたっぷりとしたドレープが広い寝室から空間を切り取ってくれている。

うーん、いい感じの狭さだ。こっちの方が落ち着く……。やっぱりあたしは庶民なんだなぁー。

ここがベッドと考えると広すぎるんだけどね。

ベッドの横にはサイドテーブルがあるんだけど……あのさ、手を伸ばしても届かないんだけど、これってどうなの?アリなの?

よいしょよいしょ。とベッドの上を移動して(とてもマヌケな光景だと思うんだけど、これを世のおセレブ様もしているの?)サイドテーブルにたどり着いたあたしは、横に取り付けられたリモコンのようなものを見つけた。

ひとつは……テレビ?これはテレビですね?人気俳優さんがCMやってるテレビの商品名が印字されてる小さなボタンが沢山ついたテレビのリモコンだ。

んんー?でもどこにテレビがあるの?見当たらないんだけど……あたしはリモコンを手にとって、とりあえず電源ボタンを押してみた。


ウィン。


どこかから音がして部屋を見渡すと、しゅるん!と壁一面にあった扉のひとつがシャッターのように上に巻き上げられ、これまた大きなおテレビ様が現れた。

えええ!まさか壁の中から出てくるとは!!いや、扉があるから収納なんだろうなとは思ってたけど、まさかテレビが出てくるとは……ベッドで寛ぎながら見れるって事なのね?

そしてあたしはまたいそいそとベッドの中央に戻り、ふっかふかの五つも並べられている枕のひとつに頭を預けテレビを……あの、天蓋のレースで見れないんですけど……。

あの、実際天蓋ベッドを愛用しているおセレブ様ってこんな場合はどうしてるんだろう?動く度にセレブライフへの疑問が湧くんだけど……。

そして今度はリモコンの横にあったボタンを押してみようと、あたしはまたよいしょっとベッドの上を四つん這いで移動した。

そのボタンはテレビのリモコンと違ってサイドテーブルに固定されている。ボタンの下には、穴が数個並んでいるし……なんだろう?空気穴?何の?


あぁ!!インターフォン?この広さじゃ誰かが訪ねてきても気付かないし!

思わずパチンと手を打ち鳴らすと、ベッドの上部の壁…ちょうど、天蓋の中に収まる様左右に取り付けられたアンティーク風のランプがポッと灯りを灯した。

び、びっくりした!!

なにコレは音に反応するの?


気を取り直してボタンを押してみると、すぐにセルジュさんがやって来た。


「お呼びですか?」


「え。これってもしかしてセルジュさんを呼ぶボタンだったんですか?」


「ええ。私が居ない場合には、ジェラールが参ります」


「あたしてっきりインターフォンかと……」


「インターフォン…で、ございますか?」


「だってこのマンションのお部屋、絶対実家よりも広いですよ。誰かが来ても聞こえない自信があります!」


「お嬢様がそのような事をなさる必要はございません。それはジェラールが行いますし、私達が留守の時には村井がお客様のお相手を致します」


「でも、そしたら村井さんお休みは?柏木さんだって……」


「ちゃんと休暇はございますよ。その際には次席の者がおりますので大丈夫です。ですが責任者である村井と柏木が一緒に休暇に入る事はございませんよ。その者達も追々ご紹介しますね」


次席!!!って事はまた執事の執事の執事の……って事になるの?

これ以上はもう混乱するから勘弁して欲しい……!


「このボタンは私かジェラールに用事をいいつける時にお使いください。ベッドにいたまま呼べるようにしたのです」


セルジュさんが「便利でしょう?」とにっこり笑ったけど……ケド…


「でも…寝ながらは……届かないんだ、よね」


ぽつりと零した言葉に、セルジュさんの笑顔は止まったけれど、彼からの返事は無かった。うーん……触れない方が良かったのかな?


「と、とりあえず!おなかがすいたんですが!」


いたたまれずに、空気を変えようと思ってそう言うとやっとセルジュさんが動き出した。


えーー。あれごときで動き止められちゃったら天蓋の所為でテレビ見れないとか言えないよ……。



「遅いですから」と簡単に食べられる夕食がダイニングルームに用意されてたんだけど、チーズの香りがふうわりと鼻腔をくすぐるリゾットと色鮮やかなサラダ、温かなオニオンスープに瑞々しいフルーツ、それに小さなムースケーキまであった。

簡単な夕食でこれ!じゃあ普通の夕食ってどんな事に……それをちょっと考えて楽しみ……げふんげふん。いや、慣れちゃだめ慣れちゃダメ。


「このお部屋はかなり広いみたいですけど、もしかして最上階全部を使ってるんですか?建物自体、かなり大きいですけど……」


「ええ…。ですが、厳密に言いますとこの建物は二つが中央で繋がっているのですよ。西館と東館に分かれておりまして。こちらは東館の最上階です。西館の最上階にはまた別の住人がおりますので、建物全てのスペースを使用しているわけではないのですよ」


「そうなんですねー。それでも広すぎだけど……外から見たら曲線が綺麗でした。大きな建物ってカッチリした四角いイメージがあったんですけど、ここは違うんですね」


「ええ。ちょうど良い物件がみつかりましたので、少し前から準備していたのですよ。この建物は上空から見ると東館と西館を合わせた形が“S字”になっているのです」


「S……セルジュさんのSですね!」


「偶然ですけれどもね。何か縁があるように思えまして購入したのです」


「こうにゅう……あ、分譲マンションだったんですね?」


「いえ……建物まるごとですが……」


思わずあたしの口からプチトマトが飛び出したのは仕方が無いと思う!

それをセルジュさんは目の前でなんなくキャッチした。そしてあたしの口元にそっと運んでくれる。

いや!でも今はプチトマトを気にしてる場合ではないんです!一応受け取りますが、一旦お皿に置かせてください!一度口にしましたけども、ごめんなさい!それどころじゃないんです!


「この建物まるごと買ったって言いました?東館も西館もですか!?」


「ええ。サラダのドレッシングお好みでは御座いませんでしたか?」


いえいえ大変おいしゅうございますけども、プチトマトは後で食べますから!


「じゃあ、このマンション全部セルジュさんのなんですか?」


「いいえ?お嬢様のですよ?」


「はぁーーーー!?」


あたしは大口開けて叫んでしまった。やっぱりプチトマトをお皿に置いておいて良かった。

それにしても、それにしてもS字の建物だからって買っちゃうって……セルジュさんてほんとに自分大好きなんだから!

ん?でも……


「あたしの、なのに、セルジュさんのSなんだ……」


ついつい考えてる事を声にしてしまうと、セルジュさんの手がピタリと止まった。


「申し訳ございません。Mは見つからなかったのです。でもそれではいけませんね。M字の建物が無いなら建てましょうお嬢様!そしてすぐに引越しましょう!」


今日来てまた引っ越すんかい!


「いえ!大丈夫です!ええ、ほんと、ここ大好き!大満足!M字とかS字とかあたしはこだわってませんから!」


「そうですか?本当に?」


「はい!セルジュさん、だからまた引越しとか、それはやめましょう!あ!このリゾットも美味しいです!セルジュさんて本当に料理がお上手ですね!そうそう。さっきのプチトマトも食べなきゃ…」


セルジュさんの思考をなんとかM字豪邸から逸らすために多少おどけてプチトマトを口に頬張ったあたしは、即行後悔することになる。


「それはなによりです。彼も喜ぶでしょう。後ほどシェフを紹介いたしますね」


シェフまで居るのか!プフッ!この日再度口から飛び出したプチトマトは、またしてもセルジュさんにキャッチされた。

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