表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/31

執事さん江戸を行く

ちょ~~っとだけ、ここから数話しんみりします。


ガラガラガラガラガラ・・・

どこからともなく、鼻歌が聞こえてくるような気がする・・。


ちらりと左上に視線を上げると、満面の笑みの執事さんと目が合った。


すぐ隣を歩いているのに、確実にふたりの間に温度差を感じるんですが!


「あの。ごめんね荷物持ってもらっちゃって」


そう、さっきからガラガラ聞こえているのは、ふたりの1週間分の荷物が詰め込まれたスーツケースの音だ。


「いいえ。これ位なんでもありませんよ。でも残念ですね。お姉さまのお宅には

3泊しか出来ないなんて」


そう。本当は1週間お姉ちゃんの家に泊まらせてもらおうと思っていたから、最初

荷物は送る予定にしていたんだ。


「うん・・・仕方ないよ。お義兄さんはお仕事が忙しい人だから」


義兄の事を思い出して、ちょっと眉を顰めて身体を少し引いた瞬間。


セルジュさんが空いた右手で、隣を歩くあたしの右肩を抱えるように引き寄せた。


「え!?何??」


突然のことにバクバクと力強く打ち始める心臓。


自分の右半身であたしに覆いかぶさるようにするセルジュさん。でも歩みを止めないので、あたしは

ついて行くのに必死だった。


「ね、ねぇ!歩きにくいんですけど!どうしたの?」


「さっき、ぶつかりそうでしたよ。東京は人が多いんですから。気をつけないと」


あ。そっか。地元感覚でのんびり歩いてた。

いや、それにしてもくっつきすぎ!くっつきすぎですから!


べしべしと肩にがっしりとかかっているセルジュさんの右手を叩いてみても、

びくともしないし!


すると、周りがザワザワ騒がしくなった。


「何?なんかの撮影?」

「え?誰?芸能人じゃないの?」


うぅ・・・なんで芸能人とかモデルとかゴージャス美形がいっぱいいるはずの

東京でも目立つんだよーーー!


思わず身体をきゅっと縮こまらせる。

と、何を勘違いしたのかセルジュさんもふっと顔を下げ

「私が守って差し上げますから」

と、甘く囁いた。


ちがーーーう!あたし1人だったら注目を集めることなく、悠々と移動出来てるから!

原因はセルジュさんだからーーー!


「お嬢様、この辺ではないですか?」


一瞬身体が自由になって、周りを見渡す。


「あ、うん。ちょっと待ってね。えっと、次の路地を右に入るの」


「では参りましょう」


また右手をこちらに差し出した。


えっ!またあの密着ですか!確かに週末のこのお洒落な街は人で混むけど・・!

それは勘弁!と、とっさにこちらに伸ばされたセルジュさんの手を掴んだら・・・


「嬉しいですね。お嬢様の方から手を繋いでくださるなんて・・」

輝くような笑顔を向けられた。


へ?ち、違うでしょ!手を繋ぐって、こんなワシッと掴まないでしょう!


でも相変わらず鼻歌歌いそうな上機嫌のセルジュさんは、右手にあたし。左手にスーツケースで

軽やかに路地に入った。


先ほどまでの大通りの騒ぎはどこへやら。一気に静寂に包まれる。

路地を入ったそこからは、オフィスや高級マンションが並ぶ。ここから奥は、オフィス関係者や

マンションの住人しか通らない為、一気に人通りが少なくなるのだ。


「もう少し奥ですか?」


「うん。そうなんだけど・・待って。お姉ちゃんの家に行く前に話があるの」


「?何でしょう?」


セルジュさんは不思議そうに首を傾げると、そっとあたしの手を離して正面に立った。


本当は新幹線の中で話そうと思ってたんだ。でも、お弁当やらデザートのバタバタで

気がついたら到着してて、それどころじゃなかった。


でも行く前に話さなきゃ。


「あのね、お姉ちゃんやお義兄さんが何を言っても、何も反応しないで欲しいの」


「・・それはどういう事です?」


「あたし、お義兄さんに嫌われてるから・・。でもお義兄さんは忙しいから

あまり会わないと思うから、きっと何もないと思うけど・・」


セルジュさんはなんだか納得がいかないようだったけれども、それでもしぶしぶ

「・・わかりました。お嬢様がそうおっしゃるなら・・」

と言ってくれた。

それを見て、あたしは「よし!行くぞ!」と気合を入れて歩き出した。


そして少し坂になっている小道を登りきった場所に立つ、街並みに負けないお洒落な

ビルの前に立ち止まった。


「こちらですか?」


あたしの緊張が伝染したのか、セルジュさんの声色も少し硬い。


「うん」


「では、参りましょう」


先を行こうとするセルジュさんを慌てて制止する。


「そっちじゃないよ!あたし達は裏口から!」


だってあたしは、お義兄さんに正面からの出入りを禁止されていたから。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ