表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/31

執事さんの牽制

結構重いハズなのに。


まるで、重さなんて感じていないかのように、あたしを横抱きにして、

ずんずんずんずんと歩いて行く。


横抱き・・・・つまり、俗に言う『お姫様抱っこ』だ。



ひ~~~!キャラじゃないんだけど!!!


恥ずかしいよ~~~。


セルジュさんに密着している、体の右側と、思った以上に逞しい腕が回されている

膝裏と、背中から脇にかけてが・・・・熱い。


は、恥ずかしい・・・。


でもきっと、2階には従業員用のエレベーターで行くはずだから、人目につかずに・・と思ったら。



セルジュさんはずんずんと、速度を落とさずに建物の真ん中の吹き抜け部分の

エスカレーターに向かっていた。


「ちょ・・!エレベーターで行けばいいでしょう?」


焦って言ってはみたものの・・・


「遠回りになりますから」


確かにそうだけども!!!


「そうだけど・・あの!恥ずかしいから降ろして」


ちょっと、お願いしてみるも・・・


「ダメです」


即答かよ!!


準備中の為まだ動いていないエスカレーターを、セルジュさんはあたしを

抱き上げているとは思えない軽やかさで上っていく。


だぁぁぁぁ!!!2階にこの状態で行くのは嫌だ!!


もう、ただでさえ人目についていた。

存在するだけで目立つセルジュさんが、お姫様抱っこをして颯爽と歩いていたら、

それはそれは目立つ。


でも困る!!だって2階には・・・


「おーろーしーてーー!」


どうしても降ろしてもらわなきゃ、困るんだってば!!!


「お嬢様、暴れると落としてしまいますよ?」


バランスを崩したのか、セルジュさんの腕から、一瞬背中が飛び出しかけた。



「やぁっ!!!」


落ちるのは怖い~~~~!187cmからの落下は、相当痛い!!


必死でセルジュさんにしがみついた。その時。



「・・日野さん?」


背後で、ずっとずっと聞きたかった声がした。


折りしもあたしは、落ちかけた恐怖からセルジュさんに必死にしがみついたとこで。

しっかりとセルジュさんの首に腕を回していて。

傍から見たら、そりゃ~抱きついてるようにしか見えず。

あたしの耳が、セルジュさんの柔らかいキラキラ金髪でくすぐったく感じる位に

密着してる時だった。


今!

今ですか!なぜこのタイミング!!!


振り返るに振り返れない・・・なんとか、「人違いです」って感じで通り過ぎよう。

そう思ったのに!


なぜ!!!!なぜ止まるんだセルジュ!!



「よ、横井さん!えっと、あの、足を・・ぶつけてしまって、あの。医務室に・・」


出来る限りセルジュさんから離れて(でも落とされない程度に)必死に説明するも・・

なぜか、横井さんは厳しい表情でセルジュさんを見ていた。


あの~ぅ?話しているのはあたしなんですが~?


「失礼ですが、あなたは?」


セルジュさんが、今まで聞いた事がないような冷たい声で聞く。


「N時計店の横井と言います。日野さんとは・・友人です。あなたは?」


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


・・・・しまった!!!


人に聞かれた時に、セルジュさんをどう紹介したらいいのか、まだ考えてなかった!

まさか正直に執事っていうワケにもいかないし(ウチは庶民だから)、

遠縁??いやいや!どっからどうなっても親類っぽくないし!

ど、どうしよう?


と、ひとりあわあわしていると・・とんでもない爆弾が投下された。



ふ。



頭上で、セルジュさんが柔らかく笑った。


へ?思わず見上げると、そこには蕩ける位の甘ったるい表情をしたセルジュさんが。



「みはるの、婚約者です」



な、何ですとーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!


「!横井さん、違・・・・・いったぁ!!!」


違う。そう言いかけたら、脇に鋭い刺激が!


「足が痛むの?ごめん。早く行こうね。では、失礼」


瞬く間に、遠くなる横井さん。


チガウ!足じゃなくて!今!脇の肉をつねった~~~!?


「な、なんでつねるの!」


「私が?何をおっしゃっているのですか」


つねったじゃん!!!

思いっきり睨んでも、セルジュさんは相変わらず甘ったるい笑顔を向ける。


むーーー。


諦めて後ろに視線を向けると・・・・

セルジュさんの背中越しに見える横井さんは、いつもよりちょっと硬い表情をしていたように見えた。

主人をつねる執事。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ