贈り物は執事さん
登場する国は架空のものです。
とにかく明るく軽いシンデレラストーリーが書きたくて書きました。
苦手な方は回れ右で!
初めての海外旅行!
そして初めてのパリだ!!
1年も前から準備していた。お給料が安い私は少しずつお金を貯めて準備していた。
ピアノ留学した友人が、そのままパリに暮らす事になったので仲の良かった
香澄と都子と一緒に遊びに行こうという事になったのだ。
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パリは街中どこもかしこも絵になる街で、あたし達は浮き足立っていた。
パンもチーズも美味しいし、ケーキなんて宝石のようなケーキがずらりと
並んでいた。
滞在3日目、友人がお世話になっているマダムに会える約束だったが、
その日の朝、マダムが熱を出し、流行りのインフルエンザの疑いが濃厚で
結局会えなくなり、あたし達は老舗のデパートに向かった。
目的は、ブランドバッグ!!!
香澄と都子は、旅行の一番の楽しみがこれだったと言っても過言ではない。
建物に入るなり、それぞれ目的のお店に散った。
あたしは・・・正直あまり興味がない。
観光疲れもあって、ベンチが並んだスペースを見つけ、座り込んだ。
今は海外でも携帯が使えるから便利だ。後から2人と連絡を取ったらいいだろう・・。
座って休んでいると、お上品な感じの老夫婦が現れ、おばあさんがあたしの
隣に腰掛けた。
おじいさんは・・空席が無く、立ったままだ。
もう充分休んだし・・と思って、席を譲ろうと立ち上がろうとした。
ええっと、ここはフランスだ。何て言えばいいんだろ?
とりあえず「プリーズ」でも通じるかな?なんて考えていると、隣のおばあさんに
「non!」と腕を押さえられた。
どうやら、立たなくていい。という事らしい。
そのまま腕をつかまれ、笑顔で話しかけてくるマダム。
えぇっと・・・何言ってるんだろ?
きっと、ちょっと困ったのが顔に出てしまったんだろう。
「ニホンジン?」
と、カタコトだが日本語で話しかけてくれた。
「あ、ハイ。」
空席ができ、おじいさんも座って会話が進む。
「パリは初めて?」「どうして来たの?」「ひとりなの?」
なんだか質問攻めにあってしまった。
一生懸命、なるべく簡単な日本語を使って話していると、電話が鳴った。
都子だ。きっと、買い物が済んだんだろう。
自分はもう行かなければならない。と告げ、立ち上がった。
ふと、バッグの中に入っている物を思い出した。
そうだ・・・マダムに会えたらと思って、日本からお土産を買っていた・・。
「プレゼントです」
隣に居たおばあさんに渡そう。そう思いついて、棒状の物を渡す。
おばあさんは少し驚いたようだった。
日本の、扇子だと説明し、使ってみせるととても喜んだ。
無駄になるはずだったものが、喜ばれて良かった。そう思いながら老夫婦とは別れ、
都子達のもとへ向かった。
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帰国して3ヶ月も経ったある日。
我が家に似つかわしくない人がやってきた。
テレビでよく見る、国際弁護士とかいう人だ。
根がミーハーな両親は、かなり浮き足立っている。後でサインもらおうか・・
なんて話してるけど、いやいや、その前に何しに来たのか聞こうよ!
すると、とある外国の富豪の依頼で、あたしを探していたんだと言う。
ママは「みはる、出生の秘密!実は富豪の娘だったとか?」なんて言い出す。
けど・・・アンタがあたしを産んだって自分でわかってるでしょーが!
そんな漫才のような家族のやり取りに、テレビではタレントのようにノリの良い
国際弁護士は、へらっと営業用スマイルを見せただけだった。
「このご夫婦・・ご存知ですか?」
出された写真を見ると・・・
「あ」
そう、パリのデパートで出会った老夫婦だった。
「旅行で行ったパリで・・会いました」
「ええ。この方々が、あなたを探していました」
「へ?でも・・どうして?」
「実は・・こちらのご婦人が亡くなられましてね。あなたに遺産を残されました。」
「「「えっ!?」」」
パパとママと見事にハモった。
弁護士は難しい顔をして、分厚い書類を出す。
「遺言書によると、日野みはるさんに遺された遺産は以下の物です。
婦人が所有していたマンション。所有していた航空会社の生涯無料搭乗権利。
・・・これは後ほどみはるさん名義のIDカードを作成します。
このカードがあれば、その航空会社の飛行機はどこでも無料で乗れますよ。
そしてあともう1つ。専属執事が1名。」
は?
しつじ?
それってアレですか?よくテレビや本で見るような「お帰りなさいませお嬢様」とか
やる人の事ですか?
と言うと、返ってきたのは苦笑いだ。
すいませんねー。だってさ、弁護士さんの言う事は全部、庶民の域を超えすぎちゃってて、
想像も出来ないよ。
「で・・・」
口を開いたのは、一番最初に正気に戻ったパパだ。
あたしとママは、まだ口をあんぐる開けてる。
「マンションだとか言われてもですね、それは一体どこの話で・・」
「そりゃ、パリで会ったおばあちゃんだもの。パリなんじゃない?そんなの、
もらっても困るっていうか・・」
そうだよ。いくら遺産相続って言っても、あたしは日本に居るんだもの。
無料搭乗権利だとか、マンションだとか・・執事だとか、全部パリなら
相続は無いも同然だ。
あまりの話の規模の大きさに圧倒されてパニック起こしそうだったけど、
どうやら今までと変わらず過ごせるらしい。
あーびっくりした。ちょっとホッとした。
すると
「いえ。パリではございません。」
「へ?」
「ジュエル王国です」
はい?それってドコデスカ?
実は訳半分は実話。