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ヲタッキーズ150 萌える死体

作者: ヘンリィ

ある日、聖都アキバに発生した"リアルの裂け目"!

異次元人、時空海賊、科学ギャングの侵略が始まる!


秋葉原の危機に立ち上がる美アラサーのスーパーヒロイン。

ヲタクの聖地、秋葉原を逝くスーパーヒロイン達の叙事詩。


ヲトナのジュブナイル第150話「萌える死体」。さて、今回は真面目な保険数理士の死体が街路樹に引っかかっているのが発見されます。


自殺が疑われる中、移送中の死体が強奪され、背後に世界最強チャイニーズマフィアの存在が浮上。ついにチャイナタウンに主人公が潜入捜査を…


お楽しみいただければ幸いです。

妄想ばかりスルのはヲタクかSF作家。僕は稼ぎの良い方。SF作家のテリィたんだ。しかし、僕ってヲタク。

SF小説にはスーパーヒロインのモデルが必要。ムーンライトセレナーダー。リサーチのため秋葉原で彼女に同行。

まるで女刑事とミステリー作家がコンビの海外ドラマみたいだ。まぁ確かに僕は戌年w


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


第1章 ラギィは御機嫌斜め


プロのピンナップガールって絶滅危惧種だ。


例えば、街のカラオケクイーンと地下アイドルの境界とか、限りなく曖昧だけど、グラビアの世界も同様。

プロのグラドルと体入キャバ嬢との本質的な違いは、セックスアピールにおける、プロ意識の有無にある。


で、僕は今"プロ"に囲まれ新刊宣伝用のグラビア撮影中w


「いいね!最高にセクシーだ!」

「左右の君達、テリィたんにもっと手足を絡めて!」

「目線をくれ」


現場の喧騒に担当編集の機関銃(マシンガン)トークが被る。


「人気SF作家、世界のテリィたん。彼が新作"宇宙女刑事ギャバ子"のためにリサーチしたのが彼女。ねぇ教えて、ラギィ警部。ヒロインの"ギャバ子"にインスパイアされた御感想は?」

「テリィ氏のお力になれて、万世橋警察署一同、光栄に思います」

「ヲタク心理に精通しているテリィたんの妄想が何度も実際の事件解決につながったとか?」


さすがにムッとするラギィ。


「そんなコト、誰に聞いたのょ?」

「テリィたん」

「ちょっと失礼…レイカ、ちょっと」


南秋葉原条約機構(SATO)の最高司令官は早くも逃げ腰だ。


「え?後で良いかしら」

「ダメ!」

「あわわ…」


SATOは、アキバに開いた"リアルの裂け目"からの脅威に対抗スル大統領直属の防衛組織で、レイカは最高司令官だ。


「ラギィ、協力する約束でしょ?」

「取り消すわ、レイカ」

「なんでw」


グラビア撮影の成功に賭けてるレイカは大慌てw


「ポールダンサーみたいなセクシーポリスのコスプレ女や作り笑顔の取材対応には我慢スル。でも、テリィたんが事件の解決に役立ったって?」

「そうょ。SATO傘下の民間軍事会社(PMC)が新刊本の表紙に載るなんて、滅多にナイの。桜田門(けいしちょう)も気合を入れてルンだから協力して。全ては来年度の予算獲得のためょ。わかった?」

「…ROG(了解)


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)のギャレー。ミニスカポリスのコスプレをしたグラドルが息抜きに来てる。飲んでるのは、ミネラルウォーター。


「君達との仕事は楽しいな。次の取材が待ち遠しいょ…あ。ラギィ!君はあのコスプレ着ないの?」

「チップをもらってもゴメンょ」

「私達お邪魔ょね?失礼スルわ」


仏頂面のラギィが現れ、グラドル達は蜘蛛の子を散らすw


「ラギィ、あの取材は僕のアイデアじゃナイんだ!だけど、SATOの広報がヤタラ乗り気で」

「別に気にしてナイわ。テリィたんのコトは、どうでも良いの。私も取材に戻らなきゃ」

「何を怒ってルンだ?お母さんの事件を再捜査したら、発見があったろ?」

「そのコトはもう忘れたの。さ、マリザ。取材の続きょ」


ソコへヲタッキーズのエアリが飛び込んで来る。


「死体が出た!"blood type BLUE"」

「マリザ、ごめんなさい。私達、現場に出なきゃ」

「私も行く!テリィたんの活躍を生でレポするチャンス」


目を剥くラギィをレイカが睨む。


「読者のみなさんをガッカリさせたくナイわ」


新橋鮫(ラギィ)"は…御機嫌ナナメだ。

 

第2章 死体は盗まれた


街路樹に男の死体が引っかかってる。高所作業車が出動して鑑識が作業してる。そのすぐ下で僕とラギィの…痴話喧嘩w


「なぁ少し話さないか」

「結構ょ」

「どうすれば許してくれる?」


とりつくシマもナイ。


「ほっといて」

「やってみたけど無理だった。ポニーでも買おうか?」

「現場ょ。テリィたん、集中して」


高所作業用ゴンドラからも声がかかる。


「ラギィ、テリィたんを連れて来たの?」

「まだケンカ中よ。どう?」

「枝がオッパイを突くしライトがお尻を照らして…最悪」


スピアだ。車椅子の超天才ルイナの代理で現場出向中。


「脱いでスク水になれば?」

「テリィたん、降りたらビンタね」

「楽しみだ」


ゴンドラからID入りのパスが飛んで来る。


「アジアン系の男性。30代後半。枝の折れ方からあの雑居ビルから飛んだみたい。IDによると名前はジョア・ヨレン。保険会社勤務。財布にはクリーニング券とクレジットカード。確かに現金は抜かれてるけど…強盗にしては大袈裟ね。ソレと…"blood type BLUE"」

「自殺?」

「自殺じゃない」


口を挟んだマリザに僕とラギィが異口同音。


「マリザ、ホンキで死ぬつもりなら、あんな低い建物は選ばない。それに木は避けるだろう。角度からして…」

「突き落とされたのょ。だとしたら死因は何かしら?」

「絞殺ね。気管が潰されてる」


街路樹の上から声がスル。


「スピア、索痕は?」

「え。索痕って?」

「索痕は、ロープの痕だ。索痕がナイなら、手で絞められたってコトになる」


僕の解説に大きくうなずくマリザ。


「さすが。テリィたんの知識は、捜査に不可欠ね」

「まったくそうなの!ホントに優秀だから、現場にいるのはMOTTAINAIわ。スピアと一緒に遺体を検視局に置いてきて」

「待て。僕は、現場の方が活躍出来る」


ラギィは、全力で僕の追い出しにかかる。


「でも、後は目撃者を探したり聞き込みしたりのツマラナイ仕事しかないわ」

「そうか。じゃポニーは考えといて。君も一緒に死体車に」

「え。私も」


編集のマリザを誘うと、彼女は明らかに迷惑そうだ。


「私、死体と一緒の車に乗るの?」

「貴女は助手席にどーぞ。私が後ろに乗るわ」

「ホント?」


高所作業用ゴンドラから降りたスピアが、思い切り人の良さそうな笑顔で大きくうなずく。


「私、死体には慣れてるから…テリィたん、ダメよ。私に話しかけないで。 ラギィに聞いたわ」

「え。やっぱりラギィ、怒ってるのか?」

「当然でしょ。彼女は3年も母親の事件に費やした。やっと忘れられると思ったのに…」


瞬時に般若の顔に変わるスピアw


「でも、スピア。新発見があったンだ」

「え。何?」

「聞いてないのか?ラギィのお母さんが刺されたのと同時期に、同様の殺人が3件起きている。1件目はお母さんの教え子。2件目は事務員。3件目はNPOの弁護士」


思わズ、身を乗り出すスピア。


「当時の検視官は?」

「何もしてない」

「検視官とは話した?」


おぉコレが順当な反応というモノだ。


「ソレが4年前に死んでる。だから、ラギィに直接話した」

「で、彼女はなんだって?」

「絶交だとさ。そして…」


その時!車同士が衝突スル激しい衝撃。投げ出される僕達。

後部ドアが開き、黒覆面に短機関銃の女が飛び込んで来る。


「GO!GO!GO!」

「お前達は動くな(don't move)!」

「死体を。急いで!行くわょ!」


女の手下?がヤタラと手際良く死体を運び出す。

黒いSUVに積み込み、猛スピードで走り去るw


「な、何だ?死体泥棒?」


呆気にとられる僕達。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


駆けつけた神田消防(アキバファイア)の救急車の中で手当てを受ける。


「僕は死ぬのかな?」

「まさか。かすり傷ょ」

「脳損傷は?」

「あるとしたらパーティのし過ぎ」

「金曜の奴か!しまった」


何とラギィが付き添ってくれてるw


「とりあえず、ぶつけて来たSUVは指名手配中。襲撃現場と建物の屋上も捜査中ょ。しかし、いったい誰が死体を盗むの?」

「臓器売買の闇業者、解剖の練習をする医学生、モンスターを作るマッドサイエンティスト…わかった!遺体に証拠を残した犯人だっ!被害者はスパイで極秘情報の入ったマイクロチップを飲んだ。それを狙った闇組織の仕業?」

「いつもながら、マシンガンみたいな妄想の連発には感心だけど、今日は帰って」


またまた追い返そうと躍起のラギィ。粘るなw


「ダメだ!捜査はコレからだ。ソレに僕は目撃者だぞ」

「…じゃ今回だけ同行して良いわ。でも、終わったら2度と私に関わらないで」

ROG(了解)。だが、警部さん。1つだけ警告しておく。君の気は変わる」

「変わらない」

「変わる」


運転士が助手席のマリザに万札を渡す。


「変わらないに賭ける」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ジョア・ヨレンのアパートは、神田元佐久間町にアル。


「何時間か前まで、この家にいたのに死ぬなんて」

「御主人は、なぜあの場所に?オフィスがミッドタウンだから現場から離れている。家を出たのは?」

「仕事して来ると言って6時頃出ました。出張から戻ったばかりで、何時間かしたら帰るからと」


汗腺から生活感が溢れ出てるが、元は美形?の奥さん。


「出張?」

「研修で大連に。2日間」

「最近、何か気になる行動は?」


セオリーどおりに質問するラギィ。


「残業が多かったのは確かです。でも、不況なのだから当然です。昨年、部署の半数を解雇したと言ってました」

「ホントに残業かな?」

「浮気してるとでも?夫は、毎晩ココに帰って、子供達を抱き締めてた。でも、もういないの…浮気を疑うより、なぜ死んだかを捜査して」


構わズ不躾のダメ推し←


「深夜の電話とかなかったですか?」

「テリィたん!」

「…そー言えば、確かにありました。夫が解雇したマクスが深夜に電話で怒鳴って来たコトがありました。お金が必要だったのでしょう。電話を切れば良いのに、夫は無視出来ないと言って…」


あぁ最悪のパターンだw


「お金を渡した?」

「いいえ。渡してもマクスのためにはならないと…夫は何処ですか?サヨナラを言いたい」

「ソレが、実は…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


目の前でピシャリとドアが閉まる。唖然とするラギィ。


「そりゃそうょね。警察の車で護送中に死体が盗まれるナンて…しかし、良い仕事に良い家族。安定した男がなぜあんな事件に巻き込まれるの?」

「マクスの怨念だ」

「遺体を盗むほどの?」


ラギィは、ヲタッキーズに電話スル。


「マクスを万世橋(アキバポリス)に連れて来て」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


御屋敷(メイドバー)のバックヤードをスチームパンク風に改装したら居心地良く常連が沈殿。回転率が落ちメイド長(ミユリさん)はオカンムリだw


「テリィ様、大丈夫ですか?死体泥棒ですって?」

「アレは死体強盗だな…でも、なんで知ってるの?」

「ラギィから連絡がありました。無事を知らせてくれましたけど…仲直りしたの?」


ミユリさんは、カウンターの中から絡んで来る。


「いや。未だだけど、事件には同行OKだって」

「ソレは大進歩ですね」

「進歩じゃなくてチャンスだ。ラギィが心の中に築いた万里の長城に、僕は門を作る。梯子をかけるか穴を掘っても良いな」


ミユリさんは愉快そうに微笑む。


「で、ストラテジーは?」

「"僕らしく"さ」

「…プランBの御用意を」


瞬間、微妙な空気が流れたが、モニター画面からルイナが話題をチェンジ。彼女はラボから"オンライン飲み"の常連。


「テリィたん、死体泥棒は怖かった?」

「少し。でも奴等の狙いは遺体だったから。たくさんメールをありがと…テリィたん、何処?テリィたん、心配。テリィたん、大統領とフェイム見に行って良い?」

「だって、無事だってわかったから」


テヘペロ顔のルイナ。超天才の彼女は大統領の補佐官だw


「僕と見る約束は?」

「ソレが…大統領に誘われちゃったの」

「僕より大統領と見たいのか?」


ココは粘ってみるw


「…わかった。テリィたんと見るわ」

「いや、今回は譲る。でも、クリスマスキャロルは譲れないからな」

「thank you。テリィたんが生きてて良かった。マジで」


モニターの向こうからキスが飛んで来る。


「どーせ最近のハリウッド映画はリメイクばかりだしね。そーいえば、ゲームの"大旋風"も映画化されるみたいだ」

「まぁ!キャスティングは?」

「ヒロインは"カンパ組.inc"」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


一方、取調室の隣室ではマジックミラー越しに呪詛の声w


「ホントにアイツなの?」

「間違いナイわ。被害者の元同僚マクス・マスクょ」

「死体どころか…鉛筆も投げられそうにないけど」


禿げた青白いモヤシ系男子。ラギィ警部自らの取調べ。


「連行の理由を御存知かしら」

「全然」

「昨夜ジョア・ヨレン氏が殺害されました。貴方は友人でしたね?」


ニコリともしない。


「確かに会社の席が隣だ」

「最後に会ったのは?」

「D-DAY以来会ってない。つまり、我々が解雇されたD-DAY以来だ」


傷に高濃度食塩水を塗るラギィ。


「貴方は会社をクビになったのですね?」

「15年間働いた。その忠誠心は評価されると思っていたのに、最後はこのザマだ。この仕打ちはヒドい。神に誓ったさ。必ずリベンジしてやるとね!」

「だから殺した?」


初めてマクスが感情を現す。


「え。殺した?誰を?」

「ジョア氏ょ」

「ヨレンを?私がか?どうして?」


嫌な予感がするラギィ。


「だって、貴方を解雇したのはジョア氏でしょ?」

「何を言ってルンだ。彼も、私と一緒に解雇された側だ」

「はい?」


元の無表情に戻るマクス・マスク。


「私は次の仕事が見つかったが、彼は今も無職のママだ…でも、もう働く必要はナイ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


万世橋(アキバポリス)帳場(捜査本部)立つ(立ち上がる)


「事実でした。被害者は8ヶ月前に解雇されてます」

「だけど、研修で大連に出張とか言ってたけど」

「大連便の飛行艇に搭乗記録がありません」

「妻にウソをついてた?生活費はどこから?」


ラギィのスマホが鳴る。


「再び死体発見!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


今度の現場は、神田仲町の路地裏だ。


「誰かが遺体に手術を施した。臓器が摘出されてます」

「腹の底から憎まれてたンだな」

「ヤメて、テリィたん」


萌えないゴミの日にゴミバケツと一緒に捨てられる死体…


「完全に素人だわ。カッターや包丁で切開してる」

「目的はわかる?」

「血液は異常ないけど体腔から微量の粉末コカイン」


うなずくラギィ。


「やっぱり運び屋だったのね。(ブツ)を無理矢理取り出された。手術自体は、死後だものね」

「ラギィ、どうかな?薬物との関わりや犯罪歴のない保険数理士が運び屋になるか?彼は、余りにもマトモでヲタクですらない。そもそも、運び屋にはコネが必要だが、彼は闇社会との接点が皆無だ」

「…死因は?」


確かに僕の逝う通りとは思いつつ、素直になれないラギィ。


「警部。犯人が両手で首を絞めた痕があります。指1本だけアザが薄い。指を骨折してる可能性があります」

「上品な奴で、お茶会(ティーパーティ)で小指を立てながら絞めたのカモ」

「テリィたん、黙って」


確かにそうだワと思いつつヤッパリ素直になれないラギィw


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


再び万世橋(アキバポリス)の捜査本部。


「神田リバー水上空港の出入"秋"管理局データと照合スルと、ジョアは大連ではなく平壌に行っていたようです」

「犯罪歴のない中流層のサラリーマン。まさか運び屋とは誰も思わない」

「ホワイトカラーなら他の仕事も出来たろうに」


次々と明らかになるジョアの素顔w


「妻がジョアの口座を確認。ここ半年、全て支払いはカードでした。妻も驚いてます」

「彼は毎日何処に出かけていたの?」

「職探しですね。PCに大量の履歴書がありました」


哀れだw


「アパートを売れば良かったのに」

「安過ぎます」

「生命保険は?」

「4ヶ月前に解約」


出るのは溜め息ばかりだw


「今さら死んでも大した金にはなりません」

「金に困って運び屋になったホワイトカラーか」

「でも、どーゆーツテで運び屋になったの?」


ほーら見ろ。僕が逝った通りだ。ココでスマホ鳴動。


「鑑識からょ。収穫は無い。衝突した車は盗難車で、車の持ち主の指紋しか残ってなかった」

「現場に落ちてた手袋は?」

「指紋はなかったそうょテリィたん」


昨日見た海外ドラマの1シーンを思い出す。


「内側は?」

「内側?」

「手袋の内側に指紋が残ってる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


鑑識が、遺留品の手袋を裏返して犯人の指紋を採取中。


「無音?CSIのこーゆーシーンだと、必ずポルノっぽい音楽がかかるけど」

「テリィたん、黙って」

「あの鑑識、割礼とか上手そうだな」


ラギィは、僕を見ようともしない。


「来世でやってもらえば」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「ビンゴ!手袋の裏側の指紋がデータベースでヒットしました。ルーサ・ルーザ。薬物所持で2度逮捕。共謀罪でも逮捕され、音波銃の不法所持で5年服役。先月、薬物販売の共謀罪で仮出所」

「やれやれ。仮出所は取り消しだな」

「住所は?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田宮本町の古アパート。締め切った部屋に流れるロック。

血濡れた秤に薬を載せ小分けにスル女達。ドアが薄く開く…


床に転がるM84スタングレネード。突然、閃光。大音響!


万世橋警察署(アキバP.D.)万世橋警察署(アキバP.D.)動くな(don't move)!」


第3章 テーブルは何処だ


1時間もしない内にヤリ手弁護士が飛んで来る。


「ダメょ。今回は司法取引はしないわ。音波銃の不法所持に薬物所持、暴行、死体の損壊。他にも複数の罪の証拠をつかんでるの」

「ラギィ警部、殺人の証拠は?」

「えっと、ソレは…捜査中」


ニコリともせズ切り出す弁護士。


「警部。彼等は誰も殺してナイ。懲役10年。仮出所の資格は5年後。ソレで全部歌わせる」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


確かにアジトでパクられた順に歌い出す。先ずデブ女。


「旅籠町の安宿で7時に会う約束だった。でも来なかった。7500万円分のコカインを腹に詰めたママ、野郎は消えた」

「ソレで?」

「探したょ必死で。そしたら、サイレンが聞こえた。姉貴と外に出たら、警察が木を見上げてた。そしたら、野郎が木に引っかかってた」


お次に歌うのは、痩せっぽちのガリガリ女。


「アタシが切開した。どうせもう死んでたし」

「彼はなぜ運び屋になったの?」

「さあね。ヤケだったンでしょ」

「ジョアは、そんなタイプじゃナイわ」

「おまわりさん。あんな泥沼では誰もが手を出す。追い詰められて、時間もなかった」

「追い込みかけたのは誰?」


最後はルーザ・ルーサご本人。歌唱力?には定評w


「殺したのは金を取り立ててる連中ょアタシじゃナイ」

「不十分。誰が紹介したの?」

「紹介?」

「誰のツテでジョアを運び屋にしたの?アンタ達が信頼してる人ね?知らない奴を運び屋なんかにしないわ。警察の囮捜査カモしれナイし」


数秒後、ラギィが取調室から出て来る。


「紹介したのは投資銀行勤務のローン」

「銀行勤務?リスクの高い投資をスル奴だな」

「高過ぎたわ…連行して」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


取調室のローンは、昔のヤンエグを思わせる絶滅危惧種w


「ジョアが死んだ?」

「何度聞いても答えは同じょ」

「ヒドい話だ!君、ジョアって人間を知ってるか?第二のウィリー・ローマン、現代社会の被害者だ。戯曲にすべきだ。ソコの君、戯曲も描くのか?」


僕は首を横に振る。


「僕はSF作家だ。戯曲はやらない。ところで、君は最近ジョアに運び屋の仕事を紹介したろ?」

「知ってたか?」

「貴方に薬を売ってた連中は、さっき全員逮捕した。で、連中にジョアを紹介したのは貴方ね?」


ラギィが畳み掛けると、暫くローンは遠くを見ている。

やがて、慎重に言葉を選びながら、少しずつ歌い出す。


「ジョアは、俺がテーブルでした話を覚えてた」

「テーブル?」

「ジョアとは違法ポーカー場(ポーカーテーブル)で出会った。最初は、少しだけ賭けてストレス発散をしてた。だが、ジョアは解雇されてから、ポーカーで生活費を稼ごうと考えた。ソレで東秋葉原のチャイナタウンに通うようになって…最初は悪くなかったが、福建の連中に捕まり、大損して支払えなくなった。その時、奴は俺の話を思い出したワケさ。平壌で1日で500万円を稼いだ話。俺は、儲かる情報は他の奴にも教える主義だ。富の再配分って奴さ」


結局、ジョアを追い込んだのは?


「龍のタトゥの福建マフィアだ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


ギャレーでラギィと話す。


「確かに、そんな状況じゃ運び屋にもなるなー」

「龍のタトゥの福建マフィア?さて、どうやって探したモノかしら」

「東秋葉原のチャイニーズマフィアは、上海、福建、残留孤児の3グループょ。先ず福建人がいるチャイナタウンの賭博場から探さないと」


ラギィは頭をヒネる。


「当然、違法賭博場だと思うけど、あーゆー人達は警察には協力しないから」

「その点、僕は警察じゃない。僕が潜入して福建マフィアを探してみるょ」

「良い案だけど…でも、違法賭博場って何処?」


警察が知らないのもムリはナイw


「少しツテを当たってみるょ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


世界共通の言語、ソレはトランプ。中でもポーカーは、一般人もヲタクも、みんながやっている。もちろんSF作家もw


「面白いストーリーだ。冒頭も良いしヒネリもアル。でも、運び屋の展開は読めたな」

「あのさ。煽ってもレイズしないぜ…ところで、君はテレパシーを使う違法ポーカーのSFを描いてたょな?今回の容疑者は、福建マフィアの賭博場の常連なんだ。何とか潜入出来ないかな?」

「冗談だろう。アソコは秋葉原のモス・アイズリーだ。店の中のあらゆる出来事が暴力と流血に行き着く。殺し屋の溜り場(カンティーナ)だぞ」


"NEW HOPE"か。懐かしいなw


「福建?今やチャイニーズマフィアは、世界最大の犯罪組織だ。目をつけられたら、いくらベストセラー作家でも一巻の終わり、最終巻まで逝かない」

「僕は、リスクは取らない。退屈な金持ちが運試しに来たと思わせるだけだょ」

「ホレてるな?ムーンライトセレナーダーは知ってるのか?」


誰が誰にホレてルンだw


「"新橋鮫"だろ?昔から危険な橋を渡る時は、女のためと決まってる」

「橋は、渡るより買った方が手っ取り早いぞ」

「いーから。テーブルは何処だ?教えろ」


第4章 ポーカーテーブル


東秋葉原のチャイナタウン。路地裏に停めたバンの中。


「OK。隠しカメラをつけたわ」

「映像はクリア。音声も問題ナシ」

「テリィたん、私達の声はテリィたんには聞こえない。何か起きても指示は出来ないから」


ラギィに念を推される。


「作戦をもう1度、言ってみて」

「タトゥの福建人の画像を撮ったら店を出る」

「OK。決して長居しないコト」


僕は深呼吸。


ROG(了解)。チャイナタウンだ。福建ナンて直ぐに見つかるさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


くたびれた街中華"新秋楼"。奥の調理場を素通りして裏に出ると老コックが一心不乱にジャガイモの皮を剥いている。錆びた非常階段を登ろうとスルと闇から現れた黒服が立ち塞がるが、老コックがうなずくと、彼等は再び闇へと消える。


踊り場の鉄扉を開ける…


「…カジノにいる全員がタトゥ入りのチャイニーズだ。全員、僕を見てる…聞いたトコロによると、あのテーブルは賭け金が無制限。ジョアもあそこでプレイしたのだろう。汚い手口で掛け金を引き上げるらしい…」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


路地裏に停めた移動指揮車。


「いちいち説明しなくても会話は聞こえてるのに」

「まるでジェームス・ボンド気取りね」

「カメラつけたママでトイレに行ったら画像切ってね」


ココで僕の一声。


「…僕もあのテーブルに座ってみよう…」

「今なんて?」

「作戦と違うわ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「やぁみんな。調子どうだい?」

「誰だ?お前、このテーブルは賭け金無制限だぞ」

「良かった!万事が無制限な僕にはピッタリだ。500万円をチップに」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「俺の年収の半分がチップだと?」

「ちょっと!テリィたん、何スルつもり? 」

「警部?警部!ダメだ、泡を噴いてるw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「美しいな…いや、君じゃなくてタトゥだょ。龍?ちょっち見せてょ」

「黙ってポーカーしてろ」

「タトゥは何て意味?まぁ良いや。実は、僕はSF作家でリサーチに来たンだ」


ピットボス役が胡散臭げに顔を上げる。


「SF作家?有名なのか?」

「"ラッシュの終わり""最後の終電"」

「"地下鉄戦隊サボイ5"か?息子が大ファンだ!サインしてくれ!」


お安いご用だ。サラサラ…


「ところで、次の本はサイキックが違法ポーカーに手を出す話ナンだが…細部の描写で煮詰まってルンだ」

「リアリティが欲しいのか?」

「YES。そのために、十分な授業料を払う用意がアル」


マフィア達の顔が一斉にほころぶ。


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「やった!打ち解けたわ」

「いいえ。閩語(びんご)で搾り取れって話し合ってるわ。テリィたん、大丈夫かしら」

「とにかく、奴等の手を見て!犯人は小指に特徴があるハズ!」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「コール!今度のセンセの新作について話してくれ」

「ポーカー好きの福建マフィアの話だ。崖っぷちの人間を食い物にして、先ず全財産を賭けさせる」

「何だと?…ナゼそんなコトを?」


場が微かに色めき立つ。視線が飛び交う。


「奴等の本業が高利貸しだからだ。ポーカーと一緒さ。挑発して食いつくのを待ち、深みにハメて破産してから金を貸す。ところが、今回の獲物は、堅気のホワイトカラーで家庭持ちだった。金が返せなくなったが、他の債務者にシメシをつけるため、マフィアはそいつを殺すしかない。ある晩、そいつを廃ビルに呼び出し、首を絞めて突き落とした」

「おいおい。青龍刀で首をハネた方がずっと簡単じゃナイか」

「…モノホンの福建は青龍刀ナンか使わない。今回はリアルにこだわりたいンだ。話したろ?」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「見て!5時方向の女の小指!」

「拡大して…何コレ?指をクルクル回してる?…人工指だわ!」

「なるほど!コレなら小指に力が入らないワケね。間違いナイわ、彼女が犯人ょ!」


ヲタッキーズが騒ぎ出すw


「SWATを突入させる?」

「待って。その前にテリィたんを助け出さなきゃ。今、警察(アンダーカバー)だとバレたら殺されるわ」

「警部、警部!ダメょ白眼を剥いてるw」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


真っ赤なミニのチャイナドレス。凄まじい殺気だ。


闇に紛れたボディガードがソッと音波銃を抜く。

老コックが手を止めて、ユックリと立ち上がる。


「私が近くにいないと、御主人様が負けちゃうの。私は御主人様のラッキーガールだから」

「…」

「だめ?じゃこうしましょ。私が入って大儲けしたら、その幸運を貴方達にも御裾分けスルわ」


ボディガードは老コックを見る。老コックはうなずく。


「金は要らない。その代わり御主人様(テリィたん)のサインをくれ、ムーンライトセレナーダー」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


「オールイン!さぁ賭け金が大金になったぞ、SF作家のセンセ。でも、大したコトないか。どーせリサーチ費用だから税金はかからないモノな」

「やっと面白くなってきたぞ。僕もオールインだ!」

「深みにハマったな。"地下鉄戦隊"の最終回と同じだ。クイーンのスリーカード」


ホントだ。アッサリ僕は兜を脱ぐw


「ソレには勝てないな!インサイドストレート以外は…さ、換金してくれ。これじゃ持ち切れナイょ。あ、こんな端金(はしたがね)、福建マフィアには大したコトないか」

「そのママ歩いて」

「え。コレって逆お持ち帰り?」


席を立った僕の手首を掴む、黒のミニチャイナドレスの女。


「止まらないアルね。私はスーパーヒロイン、電気ナマズ女アルょ。右手がプラス。左手がマイナスね。一瞬で黒焦げアルょ。アンタ、誰?」

「だから、SF作家だって。因みに、弘安の役で日本人は数千から数万の捕虜を殺したが、福建の者だけは助命した。知ってるとは思うけど念のため」

「何?…日本の公安、怖くない。ソンなコトより、さっきの話、誰から聞いたアルか?」

「遺族からアルょ」

「日本人、みなウソつき。アンタ、警察ね」


ソコへ凄まじい殺気をまとった赤チャイナ登場w


「ソコの黒チャイナ。私の御主人様をお持ち帰り?"推し(私ょ)"の目の前で?テリィ様っ!」

「あわわ、ミユリさん?コレにはワケが…」

「ミニの赤チャイナ?もしや、アンタは…ぎゃあああっ!」


次の瞬間、黒焦げになり倒れる黒チャイナ。パンツ丸見え。


「…アンタ、何者?この私が…"超電圧のリファ"が負けるなんて…」

「テリィ様、SWATに突入命令を!」

「その前に一言…"散らかして悪かったな"」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


神田消防(アキバファイア)の救急車の開け放した後部ドアにチョコんと座ってる僕。目の前を逮捕された福建マフィアが連行されて逝く。


「あのセリフ、反則(ハン・ソロ)ょね?ジョアの奥さん、辛そう。夫に嘘をつかれてたナンて」

「全部がウソじゃない。少なくとも、彼が家庭を愛していたのは事実だ」

「でも、そのせいで間違ったコトを…テリィたんの編集担当、良い宣伝記事が描けそうね」


正気?に戻ったラギィが話しかけて来る。


「僕も命が助かった」

「テリィたんが死んだら始末書が面倒だわ」

「ラギィ。僕らは良いチームだ。刑事と犬がコンビの映画"ターナー&フーチ"みたいでさ」


久しぶりに笑顔を見せるラギィ。


「確かにテリィたんって戌年w」

「…ラギィは、怖いんだろ?お母さんの事件を再捜査して、また自分の心のバランスを崩したくナイ。でもさ。今回は違う。かなり強力な手がかりがアルんだ。しかも、ラギィは1人じゃない。一緒にやろう」

「テリィたん。私は知りたくないの。ソレは考えなかった?犯人を捕まえたとして、司法取引で10年でまた自由の身になるカモしれない。再捜査は、私のためじゃなく、テリィたんの好奇心を満たすためでしょ?今回の事件は解決したわ。もう私とは関わらないって約束ょ…ねぇ何を見てるの?聞いてる?テリィたん!」

「初めて、チャイナドレスにスリットを入れた人は神だな」

「バカ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


その夜の"潜り酒場(スピークイージー)"。


「テリィ様、執筆中ですか?ラギィは?」

「ダメだった。口を聞いてくれない」←

「(ラギィから全部聞いてるのょw)御主人様方って、どうして自分を正当化しようとスルの?ただ一言、謝ればソレで済むのに。たとえ相手がメイドであっても」


僕は、ハッと気がつく(フリ)←


「(バレバレかw)ありがと、ミユリさん!」

「え。ハグしてくださるの?何で?」

「ミユリさんがミユリさんでいてくれてさ」


☆ ☆ ☆ ☆ ☆


明け方まで、ただ1人、捜査本部にいたラギィ。僕が訪れても、顔を上げようともしない。勝手にモノローグを始める。


「悪かった。僕が間違ってた。ラギィの意思を尊重しないで古傷に触れるコトをした。もう僕と会わないなら、話しておきたいコトがアル。僕は、心から反省してる」


回れ右して役者は退場。すると、大向こうから一声かかる。


「また明日ね、テリィたん。あ、もう今日かしら」



おしまい

今回は、海外ドラマによく登場する"ポーカー賭博"をテーマに、違法ポーカーにハマる保険数理士、その真面目な同僚、主人公担当の美貌の編集者、チョイ役だけど南秋葉原条約機構SATOの最高司令官、刑務所帰りの売人、敵方のスーパーヒロイン、福建マフィアを追う超天才や相棒のハッカー、ヲタッキーズに敏腕警部などが登場しました。


さらに、敏腕警部の母親の不可解な死、謝らない男に許せない女という永遠の男女問題などもサイドストーリー的に描いてみました。


海外ドラマでよく舞台となるニューヨークの街並みを、非ヲタク系インバウンドで溢れかえる秋葉原に当てはめて展開してみました。


秋葉原を訪れる全ての人類が幸せになりますように。

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