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君が振り向くその時まで  作者: 紅貴
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何故だろう

恋愛が多いというのは何処から言うのだろうか。

基準を述べろ、と言われても答えられる自信はない。

ただ365日のうちに何度も別の人を好きになるのは間違いなく恋愛が多いと言えるのではないだろうか。

その多くの色恋の中で、「本当」に好きな人はどれぐらい居るのだろうか。

そもそも恋愛に、好きという感情に本当か嘘か等或のだろうか。

恋愛経験が少ない俺が語れる事は無いのだろう。

ただ恋愛経験の少ない俺が一つ願うのであれば、自分が想う相手には少しでも相手の頭の隅の何処かで俺という存在が居て欲しい。

どんな形であれ。




私は自分で言うのもなんだけども恋多き女……だとは思う。

とは言え、結局、毎度上手くいかないんだけどね。

恋する度に、私自身、「本当」に好きなのか自分に、或いは幼馴染に問いかける日々を送る。

ちょっとでも気になると何も考えず真っ直ぐに相手に沼って仕舞う自分が居る。

少しぐらいの違和感を感じても好きだと自分に思い込ませる自分がいた。

きっと、幼少期から両親が忙しく、幼馴染と出会う前に独りの時間が多く、寂しかった私は隣に誰か居て欲しかったんだろう。

ずっと私の傍にいた彼を差し置いて、他の人を好きになろうとしていた。

もし彼を好きになってしまって、もし彼との関係が終わって仕舞ったら、きっと私は立ち直れないのだと思う。

だから私は毎度別の人を好きになろうとしていた。


ただある日、それでは駄目だと気付いた。


彼が放課後に同じクラスの子で優しくて可愛い優等生、委員長タイプの女の子と2人だけの教室。

彼女の表情は紅く染まり、今にも泣き出しそうな感じで震えて居た。

私は偶々、忘れ物を取りに教室に戻ろうとした時にその風景をドアのガラス越しに見てしまった。見えてしまったのだ。

この状況で考えるのは二つだろう。


一つは彼が彼女を怒らした。

二つ目は告白。


どちらにしても、入るのは違うだろう。

2人の問題なのだ。そこに私が入って行くなんて野暮な事はできない。

私はそんな事を思って、何処で時間を潰して後で忘れ物を取りに行こうとその場を後にしようとする。

答えも何となく想像出来る。

彼は女子とロクに絡んで来なかったのだ。そう、私以外に。

そんな彼が告白される訳が無いだろう。


ただ其れは間違えだと直後にに知る事となる。


「好きです。付き合ってください!」

先程まで2人の会話が聞き取れなかったのに、突然、女の子の大きな声が教室の中から聞こえて来た。

私の予想と違う答えに戸惑い、頭の中が真っ白になった。歩を止めてしまった。

何故だ、何故、私は歩を止めてしまうのだろう、頭が真っ白になってしまったんだろう。

この感覚、経験は初めてだ。


好きな人に恋人出来た事なんてザラにあった。

有って、悲しい、怒り、悔しいってのはあったけど、頭が真っ白になった経験はない。

喪失感のようなものは無かった。


私がずっと教室から1m程離れた場所で立ち止まっていると、後ろから聞きなれた声が聞こえ、後から右肩に数度軽く叩かれた感触があった。

振り向くと、先程まで教室にいた幼馴染の彼だ。

「なんだよ、盗み聞きか?タチ悪ィな、お前」

「違うって!忘れ物取りに行ったら偶々……あ、ああいう場面だったから立ち去ろうとしてたの!」

「へえ……その割には暫くその場に立っていた感じだったけど。まあ、良いや。もう少ししたら取りに行きなよ。流石に今はタイミング的にあれだし」

「そ、そうだね。そうする」

彼は先に帰るわ、と手を振って立ち去ろうとする。

そんな彼の元に近寄って、一つ確認する。

私が何故この行動したのか、その時は自分でも分からなかった。

彼だけ出て来た時点で結果なんて誰でも解るのだから尚更分からない。

「ねえ、ところで結局……返事はどうしたの?」

「んなもん、見れば分かるだろ。断ったよ」

その答えを聞いた私はホッとしていた。

「そっか、そうだよね。じゃあ、また明日ね、気を付けて帰ってね。友也(ともや)

陽夏(はるか)も気をつけろよ」

私は微笑みを浮かべて手を振る。


彼が去って5分ほど経過したので教室に入ろうとすると女の子が教室から出てきた。

目を腫らして出てくる彼女に何も声掛けられずに其の儘忘れ物を取りに入った。

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