狩猟免許の手続き及び、試験の要点 銃猟編
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※本作は、あくまでも銃所持及び狩猟免許取得の手続き及びそれらの注意点のみが記述してある。細かな法律については猟銃等取扱読本と狩猟読本にほぼ全ての記述があるので、そちらを参照すること。
もし本作と記述の相違があれば、正しいのは猟銃等取扱読本及び狩猟読本である。
※狩猟免許試験及び猟銃所持許可は県や所轄によって試験内容(主に実技)や申し込み(郵送の可否など)が違うので、まめに情報収集しよう。基本的に都会は難しい傾向にある。
※本作は第一種銃猟免許と猟銃所持許可のみについて記述するが、これは第一種銃猟免許が第二種銃猟免許の上位互換で受験資格や難度が同等であるため。
厳密には模擬銃を用いた実技試験が加わるが、youtubeに参考動画がたくさんあるため難しいものではない。むしろエアライフルの操作の動画が少なくて苦労するかもしれない。
※詳細は後述するが、銃猟を始める資金は30万円前後が基準である。初心者講習から銃の購入までの半年があれば稼げる額ではあるが、ポンと用意できる額でもない。初心者講習の申請前の時点で、20万円程度は貯金しておこう。
ハンター志望で18歳未満の方は、手続きができる歳になる前に地元の猟友会事務所に免許や道具について聞きに行くと良い。ついでに狩猟読本も買っておこう。獲物の調理方法なども載ってるので、読み物としても悪くない。
ただし、免許の優先度は普通自動四輪の方が高い。そもそも可猟区は山奥で、猟期の半分は零下である。積載量が多いバイク(スーパーカブなど)も使えなくはないが、四輪自動車の方が遥かに安全である。
射撃場は、余裕があれば行く程度でよい。地元の銃砲店や所轄の警察署で十分に情報を得られるだろう。
銃砲店は、Google Mapで評判が悪くなければどこでもよい。大抵は良い店であるが、日曜休みの店が多いことに注意。日曜に出猟する人が多いせいだろうか。
また基本的に住所と同じ県にある銃砲店の方が、射撃場や猟友会に顔が利くため便利である。筆者のように運のない人は頑張って良いところを探そう。三ヶ所も行けば良いところがあるはず。
ここからは、もっと具体的な猟銃所持許可と狩猟免許取得の過程を記述する。取得までに長期間を要する(半年~1年)猟銃の記述が先である。
0.猟銃所持の過程
一.所轄の警察署にて初心者講習会受講申込→講習会受講(学科試験有り)
エアライフルは、二.三.無し(ただし、ガンロッカーは所持許可申請までに購入しておくこと)
二.所轄の警察署で教習射撃認定申請・猟銃用火薬類等譲受許可申請→身辺調査の後に認定証・許可証交付
射撃練習や技能検定は実施されない都道府県が多いので除外
三.教習射撃(認定とは別に申し込む)→教習修了証明書交付
三.五.銃砲店に教習(講習)修了証明書を持って行き、譲渡等承諾書を書いてもらう
四.猟銃所持許可申請→所持許可証交付
五.銃砲店で許可証を提示、銃器を受け取り、所轄警察署で銃と許可証と譲渡証明書のデータを照合
エアライフルで半年、装薬銃であれば一.~五.に一年弱かかる。
0.では省略しているが、申請の前後に何度か警察との面接が入る。また友人知人への聞き取り調査もある。勤め人の方々は頑張って有給を取ろう。
1.初心者講習……合格は90点以上
初心者講習では、午後に試験が行われる。詳細は後述するが、運転免許並みには難しいので忘れず勉強すること。案外落ちる人がいる。
初心者講習の申し込みは、住民票の住所を所轄する警察署の生活安全課で行う。定員が少ないので日程が発表されたら急いで申請に向かおう。
また日程の発表や手続きは地域によって差があるので、できるだけ早く都道府県のサイトで確認すること。年度末くらいに一年分の予定が出て一年先まで申し込める県(岐阜など田舎に多い)もあれば、数ヶ月分だけ発表される面倒な県(東京・大阪・愛知など都市部に多い)もある。いずれにせよ定員はすぐ埋まるので、発表されたらすぐ申し込もう。
余談だが、筆者が申し込んだときは半年前時点で八割が埋まっていた。
本格的な手続きは、事前に所轄の警察署に電話連絡をしておくとスムーズに進む。必要書類は、
・申請者の顔写真1枚(無帽、正面、肩から上、カラー、縦3cm×横2.4cm、6か月以内に撮影、裏面に氏名及び撮影年月日が記載されているもの)。所謂証明写真である。狩猟免許などにも使うので、余りを捨てないように。
・申込書……警察署や銃砲店で貰えることもあるが、ネット上でダウンロードした方が早い。
の二枚。これに加えて収入証紙6,800円を提出する。警察へ行くたびに毎度のように証紙を購入することになるので、常時20,000円程度を財布に入れておこう。
加えて、申し込む際に面接が行われる。20分程度の短いものだが、銃を持つ理由・保管場所・家族構成や職業を聞かれる。特に所持したい理由や保管場所については、できる限り具体的に答えよう(罠猟の止め刺し・射撃・有害駆除etc)。保管場所は押し入れやクローゼットなど人目に付きにくい場所が良い。
猟銃の使用用途は、射撃だけよりは狩猟目的である方が許可されやすい。雑な知識で狩猟目的といっても信用されないから、師匠やターゲット、狩猟する地域・射撃場など、ある程度のあては用意しておこう。実際のところは猟友会で探すと答えればある程度は納得してくれるが、少なくとも狙いたいターゲットくらいは答えられるようにすべきである。また、生き物を捌いた経験が全くないと本当に狩猟目的かどうか疑われる。手近なところでは、カメ・ヘビ・カエルあたりが美味である(同シリーズ二作目亀解体マニュアルを参照のこと)。あるいは狩猟免許を持っておくのも良い。
講習の流れは、午前中に講習ビデオの視聴及び講師の解説→午後も多少の講習ののちに試験。合格者のみ講習修了証明書の配布と解説。終了は17:00が目途である。
試験内容は、銃砲店にほぼ全ての過去問が網羅されたテキストが販売されている。それを二周もすれば十分である。が、それだけでは不親切であるから例題集の解説から注意すべき内容を記述する。
一.所持・保管できる弾数:実包空砲計800個。雷管計2000個。火薬の合計重量5kg。
二.技能講習は受講者が所持する銃で行う
三.都道府県知事と記述がある問題全般:猟銃関係の許可は全て公安委員会である。狩猟免許は都道府県知事だが、そんな問題は出ない。
四.銃の号・番径の意味:号が弾丸の大きさ、番が実包の口径を指す。長さはインチ表記だが、mmであることもある。
五.射撃場のレシートや射票(射撃のスコア票)など消費弾数を証明する書面を保存する。帳簿は三年保存する。
その他、銃所持を制限される状況と制限がなくなるまでの年数を覚えておくこと。
基本的に一般常識を問う問題が多いので、そこまで怖がることはない。前述の通り、難度は運転免許と同等である。一回落とすと一年くらい余計に時間がかかるが……また、有効期限は三年である。早めに射撃教習(猟銃の場合)か所持許可申請(エアライフルの場合)に進むこと。
2. 射撃教習申し込み
エアライフルは学科(初心者)講習のみで所持できるので、2.3.を読み飛ばしてもよい。ガンロッカーは所持許可申請までに買っておくこと。
射撃教習そのものは射撃場に電話や郵送で申し込むが、教習を申し込む前に所轄の警察署で教習資格認定と猟銃用火薬類等“譲受”許可の申請を行う必要がある。必要な書類は以下の通りである。
教習資格認定申請:
・教習資格認定申請書
・猟銃等初心者講習修了証明書
・精神保健指定医(かかりつけ医)の診断書(書式は各都道府県警の公式サイトからDL)
・同居親族書
・身分証明書(破産していないことの証明書)
・写真二枚(初心者講習の残り)
・住民票の写し(本籍地の記載があるもの)
・経歴書
・(狩猟用で所持許可を取る場合、狩猟免許状のコピー)
猟銃用火薬類等譲受許可申請
・猟銃用火薬類等譲受許可申請書(裏表印刷)
・教習資格認定証(教習資格認定の後日に申請する場合)
なお、教習資格認定申請書と同居親族書・経歴書・診断書(形式がある)及び猟銃用火薬類等譲受許可申請書(別記様式2.)は警視庁のサイトから入手できる。精神科の診断書は3,000円程度で書いてもらえる。また申し込み手数料を8,900(教習射撃)+2,400円(火薬)、収入証紙で支払う。教習資格認定と猟銃用火薬類等譲受許可申請を別日に行う自治体もあるようだが、筆者は同日であった。
2.5.身辺調査
教習射撃の許可申請を行うと、当日中に所轄の警察署によって面接が行われる。同時進行で、身辺調査も行われる。身辺調査では、同居親族や近所の人、友人及び職場の人などから三名を選び、人柄や素行を聴きとられる。筆者は友人・母親・雇用主の三人に依頼した。調査が入る相手はこちらで指定できるが、厄介なことに日時の指定はできない。友人たちには平日9:00~17:00のどこかに電話がかかってくることと10~15分が調査に必要であることを説明しておこう。折り返し電話もその時間帯でないと繋がらない。要注意である。筆者は幸い雇用主のご厚意で昼休みに応対して頂けたが、そう都合よいものでもなかろう。
更に、自宅でも面接がある。前述の通り、平日9:00~17:00のみにしか面接はできないが、日時はこちらで指定できる。素行や考え方などいろいろ聞かれるが、倫理的に答えれば問題なかろう。ただし、何故銃を持ちたいのか過程などを含めて言語化できるようにしておくこと。初心者講習が受けられた以上は問題なかろうが、あまり曖昧だと弾かれる。
ガンロッカーが必要になるのは所持許可申請のときだが、教習資格認定と猟銃用火薬類等譲受許可が出るまでには買っておこう。なにせ生産数が少ない物なので、ギリギリのタイミングで欲しいサイズがあるとは限らない。また、ガンロッカーは意外と大きい(高さ1.3m程度)うえに重い(20kg程度)。設置スペースは大きめにしておこう。
装弾ロッカーはでかい電子レンジくらいの大きさなので、ガンロッカーのような問題はない。筆者は合計8万円程度で購入した。
この許可は三ヶ月しか有効期間がないので、射撃教習の日程を考えて許可を取ること。また、火薬類等譲受許可証はあとで警察に返却する。決して無くさないように。
3.射撃教習本番
後日、所轄の警察署で資格認定証と譲受許可証を受け取ったら、教習日程を確認したのちに射撃場に電話で申し込みを行う。日程は射撃場の公式サイトか警察署で調べられる。射撃教習は定員が五人程度なので、早めに申し込むこと。費用は4~5万円である。このとき、必要なもの(昼食・耳栓・服装など)を確認すること。実包は教習の費用に含まれることが多いが、あらかじめ銃砲店で購入する必要がある場合もある。射撃場に確認しておくこと。大きな射撃場でも装弾の販売がないこともある。
教習は、午前に座学、午後に実射という形で行う。座学は初心者講習の時と大差ないので割愛する。
午後の教習は、教習銃を借りる。銃は上下二連式の12番で、3kg少々。実射の前に射撃フォームの練習があるが、やりすぎると無駄に体力を食うので要注意。また、使うのは実銃である。武器である。“決して銃口を人に向けないように”(窓に向ける)。また作業の度に脱包確認すること。射撃姿勢まで引き金に触れないこと。
余談だが、ここで利き目がわかる。基本的には右用で教習が進むが、狙わない方の目を閉じれば照星と照門が一直線に見える。上下二連は左右差が少ないので、利き目が左だった方は左手でも撃ってみよう。個人差はあるが、利き目と利き手が違う場合は利き目に合わせた方が上達しやすい。
実射では、クレー射撃を練習50発、試験25発の計3ラウンドで行う(練習が25発の場合もある)。本番で、25発中2発の命中があれば合格となる。また本来は皿一枚に対して上下の薬室に一発ずつの計二発まで撃ち込む(一発で割れたら止める)が、教習では下の薬室に一発装填するだけ。筆者は四発命中で合格したから、当たらないからといって悲観することはない。頑張ろう。
流れとしては、
射台に立つ→指導員から弾を受け取る→装填→構える
→プーラー(皿を飛ばす人)に声で合図+同時に皿が飛ぶ→狙って撃つ
といった感じ。2発命中で合格なので、当たらない心配はしなくてよい。脊柱起立筋を鍛えて臨もう。なお、合図の声は「はあいっ」とか「あ゛ー」という感じで緩く出すとよい。気合を入れると動きが硬くなり、銃の振りが遅れる。
注意点:
・銃口を他人に向けない(暴発時の事故軽減)
・銃を折るとき、銃床を腹に当てる(暴発時、手だけでは反動を保持できないので銃が後ろに飛んでいくが、このとき銃口が射手の方を向く。落下の衝撃で次弾が暴発したら、射手が死ぬ)
・銃を折るときは銃身を動かす(機関部を動かすと銃口が下を向くので、暴発時に至近距離で跳弾する可能性がある)
・射撃後、脱包前に銃口を上に向ける(下向きでは、二発目が暴発したときに至近距離で跳弾する可能性がある)
・射撃後、必ず脱包する(暴発防止)
・射台以外では銃を折る(暴発防止。脱包確認も兼ねる)
・銃を両手で保持する(落とすと衝撃で撃針が動くことがある。暴発防止)
・耳栓を付ける(鼓膜を守るため)
長々と書いたが、つまるところ暴発防止と暴発時の被害軽減である。とはいえ、大雑把に二つ無視すると事故が起きる。特に実猟で事故が起きる。真面目にやること。一切の冗談抜きで死人が出る。
射撃教習に合格すると、教習修了証明書を交付される。なお、教習修了証明の有効期限は一年しかない。早めに猟銃所持許可を申請すること。教習修了証明書があれば、銃砲店で実銃を触れる。買うまでに一度は触れておこう。
前述の通り、教習のために申請した猟銃用火薬類等譲受許可証は警察に返却すること。
3.5 銃選び
射撃教習の修了証明書を手に入れたら、銃砲店で良さそうな銃を選んで譲渡承諾書を書いてもらおう。即日で書けるものではないので、ざっくり三日後くらいに銃砲店で受け取るか郵送してもらおう。
なお、銃を買うときに通販は勧めない。銃と射手には相性があるからだ。気軽に改造したり買い換えられるものでもないし、少なくとも最初の一丁は実際に持って構えるべきである。ハンターの場合は刃物も同様。筆者はキクナイフ(岐阜県関市の刃物メーカー)様の工房で実感したが、高価・高性能と使いやすさはイコールでない(相関はある)。握りの感触など、使い勝手に直結するわりにカタログでは認識しづらい要素がある。
筆者が愛読する狩猟ブログの「吾輩はプアである」様の作者は銃も通販で購入していたが、取り寄せになるにしても銃砲店で助言を受けた方がいい。店主の趣味の影響はあるが、良い銃を勧めてくれるはずだ。筆者の左利き用Affinity3(自動式散弾銃)など、初心者が検索するだけではまず見つからない銃を教えてくれたりもする。
作動方式は、軽い自動銃か上下二連が推奨。安全性や値段重視ならポンプ式も良いだろう。重量の目安は3.3kg前後。その他の方式は値段か入手性か汎用性・強度あるいはその全てに難点があるので、二丁目以降の購入を推奨。
口径は12か20番。エアライフルなら5.5mm。珍しい口径の銃器は弾の入手に難儀する。最初の一丁はメジャーな口径を推奨。村田銃を受け継ぐとかなら仕方ないが。
4.猟銃所持許可申請
猟銃所持許可申請では、以下の書類を提出する。
・精神科の診断書
・譲渡等承諾書
・身分証明書(破産してないことの証明)
・写真*2(初心者講習申請の余り)
・住民票の写し
・講習修了証明書のコピー
・教習修了証明書のコピー
・所持許可申請者が一緒に映ったガンロッカーの写真
・装弾ロッカーの写真(猟銃のみ)
・狩猟免許のコピー(狩猟を所持許可の用途に書く人のみ)
一部の書類は所轄によって不要なこともある。あらかじめ警察で確認しておこう。
これに加えて手数料10,500円を収入証紙で支払う。猟銃所持許可申請を提出すると、二回目の自宅面接が行われる。このとき、ガンロッカーや装弾ロッカーの設置状況を確認される。また、筆者は所持許可申請の後に近所の交番の警官と所轄の警察署の生活安全課課長の面接を受けている。上手く予定を合わせよう。
5.猟銃の購入と確認
所持許可が出たら、銃砲店で所持許可証を見せる(大抵はコピーもされる)と銃を購入できる。この後は、印鑑、所持許可証と銃砲店で貰える譲渡証明書(2枚あるが、片方は自宅保管)及び猟銃と共に警察で確認を行う。所要時間は約20分。
“購入~確認は2週間以内でないといけない”ので要注意。内容としては鉄砲を分解して銃身長や装填数を測るだけであるが、猟銃所持許可証を忘れないように。
例外なく銃と許可証はセットである。
この辺の手続きが全部終われば晴れて銃所持者である。毎年の銃検と三年に一回の所持許可の更新を忘れないように。
ここまでの費用をまとめると、
初心者講習……6900
教習資格認定……8900
猟銃用火薬類等譲受許可……2400
所持許可申請……10500
ガンロッカー……50000
装弾ロッカー……20000
初心者講習例題集……2000
射撃教習……45000
診断書*2……6000
写真……900
住民票の写し*2……600
身分証明書*2……600
耳栓……110
計153,910
がほぼ必要になる。加えて、
銃本体……新銃で20,0000~
・モスバーグ社のポンプ式など安い銃もある
ブラシなど掃除用具……4000
・半分以上ガンオイル代
ガンケース……3000(釣竿入れを転用した場合。銃砲店だと万単位)
射撃ベスト……10000
あたりが掛かってくる。銃やガンロッカーを中古で探せば27万円程度までは下がらなくもないが、銃はまだしもロッカーの中古は少ない。銃は銃で、銃砲店を通さない中古は錆が酷かったりする。筆者の場合はガンケース以外全て新品で37万円ほど消費(猟友会及び狩猟者登録で+5万)。
エアライフルの場合、装弾ロッカーは不要である。銃本体はプレチャージ式で20万台半ば~、ポンプ式で20万~、スプリング式で10万弱からある(口径は5.5mmを想定)。プレチャージ式の場合、空気を充填するポンプが別売りであることが多いので注意しよう。また巷には大口径スプリング式が優秀という話もあるものの、素直に連発式のプレチャージを使った方が良い。2丁目の選択肢としては悪くないが、単発銃と連発銃は使い勝手に天地の差がある。エアライフルの消音性なら二の矢を掛けることも現実的なので、一丁目をエアライフルにするならプレチャージ式にしておこう。
余談だが、エアライフルは韓国製が意外と優秀である。これは、韓国は装薬銃の所持が日本より厳しく空気銃全般(空気散弾銃なども)が発達しているため。筆者は用途が多い散弾銃を勧めるが、比較的安価なプレチャージ式エアライフルが欲しい方は購入する価値があるだろう。
6.狩猟免許
猟具によって4(第二種銃猟含)種あるが、本作では第一種銃猟免許のみについて記述する。学科試験については特筆すべきことが少ないので、実技試験を先に記述する。
零.申し込み
住所地を所轄する地域環境室あるいは県事務所環境課に以下の書類を提出する。ただ、提出先に関しては居住地によって名称が違う(たいてい環境と付く部署ではある)ので、「狩猟免許 (居住する都道府県)」と検索した方が良い。
書類は、
・写真*1(猟銃所持申請の余りでよい)
・狩猟免許申請書(免許の種類ごとに1枚)
・精神科医(かかりつけ医)の診断書(6ヶ月以内)
・受験票送付用封筒*1(長形3号に氏名・自宅住所・郵便番号を書き、84円切手を貼る)
・(学割がある場合は学生証か在学証明書のコピー)
である。これらに加えて免許一種類につき“収入証紙で”5,200円を支払う。既に別の狩猟免許を持っている一部免除者は3,900円。稀に学割がある県もあるが、把握しきれないので割愛する。
一.適性試験
身体検査
・稀に視力で不合格になることもあるので、眼科を受診しておこう。眼鏡で両眼とも0.8くらい見えれば大丈夫。視力は緊張や目の乾きによって低下するので、気軽に受けよう。
聴力や体力は、補聴器を忘れたとかミカンの皮を剥けないとかでなければ受かる。心配無用。
二.技能試験……合格は70点以上
距離判定
・電柱の間隔(30~50m)で練習しておくと良い。わりとコロコロ試験の距離や問題数が変わるので、満点は難しい。減点が少なく全問不正解でも合格圏内なので、気軽に受けよう。参考までに、筆者の正答率は1/4。
銃器の取り扱い
・獲物以外を撃たないための動きができるかの試験。実銃では二つ失敗が重なると人を殺しうるので、最も真面目にやるべき試験。多くの猟友会が事前講習をやっているので、ぜひ受講しよう。多くは有料(数千円)である。申し込み開始から数日で定員が埋まるので、早めに予約しよう。
・装填・脱包・点検・分解・組み立て……ほぼ上下二連だが、自動銃の可能性もある。事前講習会に参加できなかった場合はYouTubeで勉強すべし。基本操作は教本に任せるとして、大まかに
1.装填時、銃床を腹に当てる(暴発時、銃を後ろに吹っ飛ばさないため)
2.装填時、銃身を持ち上げて薬室を閉じる(上下二連。跳弾対策)
3.点検時、銃口から銃身を確認しない(上下二連。銃を折って薬室側から覗く)
あたりは身に着けておこう。全て暴発時の安全策である。
銃によってレバーの硬さやパーツの外しやすさに差があるので、要注意。また折につけて脱包確認が必要で、銃器を操作する前は毎回行うくらいでちょうどよい。筆者は射撃場でもやってる。
・休憩時の取り扱い……脱包と矢先の確認があれば大丈夫。上下二連なら折っていても
OK。自動銃は薬室を開放しておく。銃口の方向転換は上を向けて行うと矢先が人に向か
ない。試験官は石ころ扱いなので、矢先が向いても減点はない。
・移動……休息時と同じ。複数人の試験では、絶対に試験メンバーに銃口を向けないよう
に。
・射撃姿勢。鉄砲所持の教科書を読むべし。大雑把には、
1.上方の目標を狙って引き金を引く(水平射撃は厳禁。バックストップ意識)
2.撃つ瞬間以外は引き金に触れない(軽い衝撃でも暴発事故が起きる)
3.胸筋のあたりに銃床を当てる(より正確な構え方は射撃教習で教わる)
4.射撃後、“銃口を上に向けた状態で”肩から銃床を外す(暴発時、至近距離の跳弾を防ぐ)
5.絶対に人に向けない(試験官は石扱いだが、硬い物に発砲すると跳弾の危険がある。銃口を向けない)
あたりができるようにしておこう。
これらの注意点はエアライフルにおいても同様である。試験の合格には七割でよいが、実地での安全面を考えると八割は得点したい。特に、引き金に無意識に触れてしまうことが多い。レバー操作(上下二連)のときを除いて、銃床は五本指で握ろう。自分の命を守ることにもつながる。
エアライフルの取り扱い
・模擬銃を用いて圧縮操作をし、弾頭を使わず装填操作を行った後に射撃姿勢をとる。
エアライフルの模造銃は、基本的にポンプ式かスプリング式である。稀にプレチャージ式もあるようだが。
鳥獣判別
・基本的に狩猟読本の絵で判別する。哺乳類はあまり問題ないと思うが、種類が多い上に見た目が似ている鴨が鬼門。
歴史的仮名遣いを活用して、「良い(き)子は顔をマスク」と覚えよう。
ヨシガモ
ヒドリガモ(+キンクロハジロ)
コガモ
ハシビロガモ
カルガモ
オナガガモ←順不同
ホシハジロ(*ホオジロガモは違法)←順不同
マガモ
スズガモ
クロガモ
鴨以外では、シベリアイタチ(令和二年以前のチョウセンイタチ)とホンドイタチがわかりにくいが、でかくて尻尾が長いのがシベリアイタチである。
狩猟鳥獣は合計しても46種(令和四年度よりゴイサギとバンが非狩猟鳥獣)しかいないので、頑張って覚えよう。上記のカモ類を除けば、名前すら知らない鳥獣は20種程度に収まるだろう。筆者は筆記式だったが、口頭で解答する場合もある。実猟でも重要な技能であるから、八割は正答したい。
知識試験……合格は70点以上
・ペーパーテスト…………狩猟読本を読み込めばOK。また試験問題集(¥1800)が猟友会や銃砲店で販売されている。問題集は猟銃の初心者講習のそれより出来が良く、試験もより簡単なので9~10割は得点できるはずだ。
足跡の判別や法律など注意すべき設問はあるが、問題集を三周もすれば十分であろう。
ここまでの費用をまとめると、
・写真*1……900
・診断書……3000
・封筒*1……110+84
・収入証紙……5200
・狩猟読本……1650
・狩猟免許試験例題集……1650
計:12594円
写真や封筒は猟銃所持許可申請の流用が効くので、実際にはもう少し安いだろうが。ともあれ、ここまで進めばやることは残り少ない。狩猟者登録と猟用火薬無許可譲受許可の申請くらいだ。
勤め人にはありがたいことに、猟友会に所属すれば狩猟者登録と無許可譲受許可の申請は代行してくれる(というか無許可譲受は猟友会員でないと入手できない県もある)。
そもそも初心者が個人で狩猟をするのはいろいろな意味で無理がある(可猟区・師匠・無線関係etc)し、7~8月くらいまでに入会しておくと良いだろう。地元の銃砲店か射撃場で良い支部を聞けば、合わない支部に入会することも少ない。
なお、狩猟者登録に必要な書類と費用は以下の通り。
・狩猟者登録申請書及び狩猟税収入証紙納付書
県のホームページからDL
・狩猟により生ずる損害の賠償に係る証明書……6000
要は狩猟保険。会社によるが、4~5000円くらいが最低額。
・写真*(狩猟者登録を行う免許の数+1)……900
・レターパック台紙(登録証の郵送希望者のみ)……520(プラスの場合)
・狩猟税及び狩猟者登録手数料
手数料……1,800*狩猟者登録する県の数
狩猟税……16,500(装薬銃)……5.500(空気銃)……8,200(罠)*狩猟者登録する県の数
共に収入証紙で支払い。
・狩猟免状
基本的にコピーでよいが、稀に原本を要求されることもある。
計26,240円。猟友会入会の場合は会費が1,1000円及び新規入会金が8000円・無許可譲受票に400円・射撃場運営会費に2,500円で、計46,000円ほどかかる。
それなりに良い支部が前提ではあるが、人脈や無許可譲受、手続き関係などそれなりのメリットはある。最近はあまり評判のよくない猟友会だが、一度くらいは入ってもよいかと思う。個人で技術を磨くのは難しいし。
猟友会に関わらない手続きとしては、猟用火薬譲受許可を申請して射撃場で技術を磨かねばならない。無許可譲受票は猟期近くまで入手できないから、通常の譲受許可票でバンバン撃って銃に慣れよう。500発も撃てば狙えるようになる。
──────ひとまず、銃猟ハンターになるまでの手続きはこれで終わり。ただし、毎年のようにある銃検や、免許・所持許可の更新を忘れないように要注意である。
そして、何より無事故無違反。猟銃を用いた事件事故がときどき起きているが、そういったことが無いように安全確認を徹底しよう。脱包確認や安全装置など、指差呼称(何々ヨシ!と言いながら行う確認方法)が非常に有効である。筆者は射撃場でもやっている。