表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/10

6.簡単に魔法を使えるようになった

 早朝から、引っ越しの荷物を纏め、午前中にテレポート魔法ででモンテサント市の借家に運んだ。

 そして直ぐにコギタナ村の家に戻った。しかしよくまあ、今までこんなボロボロの家に住んでいられたもんだ。雨が降れば雨漏りが起きる。漆喰は初めからあちこち剥がれ落ちており不動産屋に直せと言っても、勝手に直して良いと返事が来るだけ。床板もあちこち腐っていて、どれだけ直したことか。隙間風も吹いてくる。この国は、比較的温暖だからよかったものの、それでも寒い季節は辛かった。住めば都と言うが、俺は二度とこんな家に住みたくない。

 母と役所に向かった。職員に他国への移住を申請し、身分証明カードを渡した。申請はすぐに受理された。身分証明カードには、『ランディース王国から他国への移住を許可』と記載されていた。商人のビリーさんが教えてくれた通りだ。ひょっとしたらビリーさんも移住者なのかな?

 不動産屋に行き、借りていた家の賃貸契約を解除した。その時


『なんか不動産屋の態度がおかしい』と思った。


 母に言った。


「あの家、あんなにボロボロなのに家賃はあまり安くなかったよね」


「何処の不動産屋も、あの家以外はうちの収入では貸せないって言ったんだよ。あの家は他の家よりは少し安いので貸せると言うから借りた家だよ」と母。


『分相応の家に住めって事か。借り手の無いボロ家を無理やり高い値段で貸しやがって。この国の奴ら、どこまでも俺らを馬鹿にしていやがる』


 母とテレポート魔法でモンテサント市の借家に移動した。午後からは母と役所に行き、移住の申請を行い、これもすぐに受理された。

 ようやく最低な暮らしから解放された気分になった。その後、母と分かれ、薬草の採取等行い、ギルドで換金し、家に戻った。


 次の日、ユートは早起きし、六時を告げる教会の鐘が鳴った後、家を出て東に向かって歩いた。

 東側には、なだらかな斜面の山が見える。あれがサントス山だろう。サントス山には魔力石があるはずだ。それを採りに行きたい。近いとはいえ、かなりの距離だ。四時間程歩いて山の麓に辿り着いた。太陽の傾き具合で恐らく午前十時頃であろう。

 麓でテレポート用の座標を記録用の板に書き込み、次回はここまでテレポートで来られるようにした。

 魔獣に見つからないように周囲に気を付け、真っ黒い石を探しながら頂上に向かった。魔物に見つかったときは直ぐにテレポート魔法で逃げるように決めていた。

 7個目の黒い石を手に取ると。魔力を集中した時のような感じがした。


『これかもしれない』


「ステータス」ステータス情報を見た。

 この石を持った時の魔力量は百二十四。石を放した時の魔力量は百十九だった。石の影響で魔力量の値が五変わった。、間違いなく魔力石だ。それにしても、この魔力石、期待通りだ。

 ステータス情報を出した状態で黒い石を見つけては手に取って魔力の変動を確認した。頂上に向かって三時間程探し、魔力石を四十個見つけた。魔獣は昼間目立つ所に出歩かないのかもしれない。今日は魔獣を見かけなかった。

 モンテサント市に戻り、薬草を採取に出かけた。

 ユートは今日の仕事を終え家に戻ると採取した魔力石を、一つの石にする作業を始めた。

粉魔法陣を使って四十個の魔力石を粉にした。


「パウダー」


それを固体魔法陣で一つの魔力石に変えた。


「ソリッド]


この状態で魔力石の魔力量を確認した、魔力石の魔力量は百九十であった。


 ユートは毎日朝にテレポート魔法でサントス山に魔力石を採りに行き、正午になる前ににテレポート魔法でモンテサント市の家に戻るという日課をこなした。

 五日程は、魔獣に見つかり、慌ててテレポートで帰宅した事が有り、充分に魔力石を採れないこともあったが、三十四日目には魔力石の魔力量は5833まで増加していた。

 三十五日目、サントス山から魔力石を採って来てから粉魔法陣を使って全魔力石を粉にした。


「パウダー」


魔力石の粉を木箱に入れた。固体魔法陣を使って


「ソリッド]


四角い魔力石が出来た。


「ステータス」


ユート自身の魔力量を見ると、百四十二程度と少ない。しかし魔力石に振れるとステータス情報の魔力量は六千百七十九に上昇した。魔力石の魔力量は六千三十七だ。

 魔力量が五千以上になると、天恵であるアーカイブ機能を利用可能になる。しかし、魔力量が五千だと、万が一魔力量を消費して五千以下になった場合何が起こるか分からないので、魔力量が六千以上になるまで魔力石を探したのだ。


 ユートは魔力石を正面に、手で触れた状態で


「アーカイブ」と詠唱した。


すると魔力石の場所に魔法陣のようなものが表示された。


『これを天恵陣と呼ぶことにしよう』


 予想と違った。魔力石はそのままだ。保管されない。ひょっとしたら天恵陣が表示された状態でもう一回詠唱すればいいのであろうか。


 もう一回「アーカイブ」と詠唱した。


まだ、魔力石はそのままだ。なら他の言葉を唱えてみよう。


「魔力」と言う。すると、天恵陣及び、魔力石が消えた。


「アーカイブステータス」と詠唱するとアーカイブ情報が表示される。


『魔力』の欄が作成された。そこに魔力石、魔力量六千三十七と表示され、魔力石と魔力がアーカイブに保管された事を確認した。


「ハイド」と詠唱し、アーカイブステータスを隠し、


「ステータス」と詠唱した。


 ステータス情報の魔力量が六千百七十九になっていることを確認した。ユートはアーカイブに触れることでアーカイブ天恵を利用可能にし、そのアーカイブに魔力石を入れてしまう事で、ユートの魔力量を上げたのだ。

 これでアーカイブ機能をいつでも使えるようになった。


『アーカイブはデータを管理できると書いてあった。魔法陣もデータだから管理出来るはずだ』


 まずは安全な照明魔法陣を記述した。その場所に


「アーカイブ」詠唱し天恵陣が現れる

「照明」と言う。


照明魔法陣の記述と天恵陣が消える。


「アーカイブステータス」


と詠唱し、アーカイブステータス情報を見る。『照明』という欄に魔法陣と記載されている。つまりアーカイブは魔法陣データを魔法陣と認識して保管している事が判明。


「ハイド」と詠唱しステータス情報を隠す。


「アーカイブアウト」と詠唱する。


天恵陣が現れる。


「照明魔法陣」と言う。


 瞬時に天恵陣が消えると共に照明魔法の魔法陣が現れ赤く光り、魔力が照明エネルギー変換され掌に出現した。


「ライトオン」


と詠唱するとその場所に球の光が輝き、周りを照らした。その状態で


「ライトオフ」


と詠唱すると光と魔法陣が同時に消えた。


「アーカイブステータス」


と詠唱し、アーカイブステータス情報を見る。


「照明」という欄に魔法陣と記載されている。


 以前図書館で読んだ魔法の本には、アーカイブ機能について

『保管しているデータを取り出そうとするとクローンを作成しそれを出す』と記載されていた。だから魔法陣データは消えず、何度でも使える。

 魔法陣を出すのに『照明魔法陣』と言うのはちょっと長い。『照明』の欄には照明魔法陣しかないので、照明と言うだけで魔法陣は出現するのではないか?


「アーカイブアウト」と詠唱する。


天恵陣が現れる。


「照明」と言う


 瞬時に天恵陣が消えると共に照明魔法の魔法陣が現れ赤く光り、魔力が照明エネルギー変換され掌に出現した。思った通り魔法陣を呼び出す言葉を短く出来た。

 一つ疑問が残った。今までは掌に魔力を集中しなければ魔力の変換が出来なかったが今は魔法陣を呼び出すと既に魔力の変換が出来ている。


『なぜだろー..んー..んー..あ..』


思い出した。ルミナ先生が言ってたな。魔力が増加すると魔法は起動し易くなるって。今は魔力量が六千百七十九。これなら、あえて一生懸命魔力を集中しなくても、一瞬で魔法を起動出来ておかしくない、とんでもなく大きな魔力だ。


『アーカイブには他の魔法陣も保管しよう』


 索敵魔法陣

 雷魔法陣

 炎魔法陣

 水魔法陣


を保管した。


『テレポート魔法陣はテレポート先の座標を記述した魔法陣を保管すると便利だ』


 サントス山のテレポート魔法陣

 モンテサントのテレポート魔法陣

 サンディモのテレポート魔法陣


を保管した。


 あ、今閃いたけど、すぐに魔法が起動できる、という事は、魔法を組み合わせた魔法陣を作っても上手く作動させる事が出来るということだよな。

 索敵魔法で索敵した瞬間、その魔法陣内で雷魔法を起動して魔獣を倒すなんてことが出来てしまうかも。

 索敵した場合は、その座標を抽出する。それを条件にに雷魔法が起動するように記述を入れ、詠唱部分を削除すれば完成だ。

 まてよ、詠唱部分は残しておいた方が良いな。誤って人を索敵した場合、殺人になってしまうぞ。最終確認は出来るようにしておいた方が良い。


索敵魔法と雷魔法を組み合わせた、『オートライトニング』という魔法陣を作った。



 ユートが働き始めたので母は無理して働きお金を稼ぐ必要が無くなった。家にある農地で野菜作りをしたり、近所の人とのお付き合いをしたり、少し贅沢する余裕が出来た。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ