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4.狩りをしました

 雷魔法を覚えてから、ユートは三十センチ四方の板を作った。ユートは学校から帰ると、そこに雷魔法陣を書き込み、近くの野山に出かけた。そこには小動物が住んでおり雷魔法で仕留めることが出来る。歩き回りながら小動物や、獣を探す毎日だが、なかなか見つからない。

 そこで、魔法陣の教本で何か良いものが無いか探すと索敵魔法陣というものがあった。これを河原で実験することにした。

 板に索敵魔法陣を記述した。詠唱は『サーチ』と『エンド』であった。

索敵魔法を起動し、


「サーチ」


と詠唱し、しばらくすると川の場所に青の魔法陣が現れ、赤の魔法陣の一部が変化した。テレポート魔法と同じである。川に近づいてみると小魚には反応せず、大きな魚に照準を当てている。恐らく索敵する相手の大きさを絞ることが出来るようになっているのであろう。大きな獣のみを索敵する場合は調整が必要であるが、とりあえずこの設定でネズミのような小動物は索敵しないので大丈夫だ。

 この状態で別の板に書いた雷魔法陣を起動した。索敵された青い魔法陣の方向を見ると雷魔法の青い魔法陣がそこに重なり合った。多分索敵魔法で検出した座標をステータス天恵が検出し、ステータス機能経由で雷魔法が受け取ったのであろう。


「ライトニング」


と詠唱すると、泳いでいたその魚は一瞬で死んで浮かび上がってきた。雷魔法は終了したが、索敵魔法はまだ稼働中で、その赤い魔法陣は消えていなかった。


「エンド」


と詠唱すると索敵魔法は終了した。

この魔法は索敵という処理を繰り返しているはずだ。繰り返しを終わらせるための詠唱が『エンド』だ。『エンド』詠唱条件以外は索敵の処理に戻るという、ループ処理をしているであろう。


『今日の収穫はこの魚で良しとするか』とユートは獲った魚を持って家に帰った。



 索敵魔法は長時間索敵するため、その際の魔力消費が気になった、そこで、ユートは教会での勉強が終わった後、教会のシスターに砂時計を借りた。

 索敵魔法を発動した後砂時計を使って魔力量が一減少するまでの時間を計った。結果、魔力量を一消費するのにかかる時間は約一分であることが分かった。思った以上に魔力量の消費が少なかった。



 次の日から、ユートは教会の勉強から帰ると、板に索敵魔法陣、雷魔法陣、テレポート魔法陣を書き込み、それをリュックに入れ、人里から離れた丘に行った。

 この辺りでは小動物や獣を時々見かける事があるので、ここで索敵魔法を使って獲物を見つけようとした。

 魔力を集中し索敵魔法を起動し更に魔力を集中することで索敵範囲を広めた。現在ユートの魔力量は九十七である。他の魔法の魔力消費も考慮して魔力量を六十程消費し、見つからなければ止めるように、時々魔力量の数値を見ながら獲物が見つかるのを木陰で待った。

 しかし三日間、獲物は索敵魔法に引っかからなかった。

 今日は天気が良く、そよ風が吹いて気持ちの良い日だ。青空を見上げていると、現状のつらい日々を忘れ、穏やかな気持ちになった。現在ユートの魔力量は百一である。今までと同様に、索敵魔法で魔力量を六十程消費し、見つからなければ止めるように、時々魔力量の数値を見ながら獲物が見つかるのを木陰で待った。

 魔力量が半分程減ったあたりで索敵魔法が何かをロックオンした。その場所を見ると獣のようだ。相手はこちらに気づいていない。餌でも探しているのか、歩き回っていた。早速 気づかれないように腹ばいになり、雷魔法陣の板を出した。魔力を集中し、魔法を起動した。魔法陣が赤くなると同時に青い魔法陣が索敵魔法の青い魔法陣と重なった。


「ライトニング」


詠唱と同時に獣に雷が命中し獣は倒れた。獣が倒れた場所に行くと、そこには大きなイノシシが倒れていた。

 テレポート魔法陣を書いた板を出した。テレポート先の座標はユートの家だ。片手でイノシシを触れながらテレポート魔法陣を起動し、


「テレポート」


と詠唱した。一瞬でイノシシと一緒に家にテレポートした。

 母が仕事から帰ってくると、家の前に大きなイノシシが倒れているので、驚いて家の中に入ると、ユートが

「母さんお帰りなさい、今日イノシシを獲ってきたよ。しばらくは肉の心配はいらないね」と言った。

 この頃からユートは狩りに行って、時々獲物を獲って来るようになり。母はそれを近所にお裾分けする事で、近所との関係が好転してきた。いつも孤独なユートの唯一楽しみなのは食事の時間だ。最近は近所から色々な食材を頂いたりして、母と楽しく様々な食事をすることが増えた。

 一方ユート自身は学校での他生徒との関係は、以前と全く変わらず、皆から無視され、陰で無能呼ばわりされていた。

 ある日、夕食の時、ユートは食事を食べながら母のアリサに言った。


「俺は隣のルブランロイト公国に移住したいと思っているんだ。その国では魔法スキルが無いだけで、この国のような酷い差別を受ける事は無いと聞きました。移住することで俺達の不遇な境遇から抜け出したいのです」


それを聞いたアリサは


「ユートがそれで幸せになれるのであれば、それに反対する事はありませんよ」


「母はこの国をどうお考えですか?」


「この国は差別が酷くて嫌いです。こんな差別が無ければ私たちはもっと幸せで豊かな暮らしが出来たはずです」


「教会での教育が終了したら一度ルブランロイト公国に行き、どのような国か見たいと思っています。もし、この国よりも良い国だと感じたら、母と一緒に移住したい。そうすれば、きっと幸せで豊かな暮らしが出来ると思います」


「ユートが移住するというのであれば勿論私もユートに付いて行き一緒に暮らしますよ」


ユートは十五歳になり、教会での教育も終了した。ルブランロイト公国に行く為に、お金を稼ぐ必要があった。サンディモ市に冒険者ギルドがあった。そこに行ってギルドの登録をおこなった。

サンディモ市はいかにも差別社会って感じだ。やたらと騎士が偉そうにしていて、市民を小ばかにしているような街だ。関わり合いになりたく無いらしく、騎士や上流階級の人を避けるように生活している。


「こんにちは」


「いらっしゃい。ギルド登録ですか?」


「何故分かったんですか?」


「この季節は教育が終了する時期なのでギルド登録が多いんですよ。それに、いかにもキミは卒業したてだからね」


「年季の入った人には敵わないな」


「え、それって私、年寄りに見えるってこと?」


「いえいえ、人を見る目が肥えているってことです。ギルドにこんな綺麗なお姉さんが居るなんて思いませんでしたよ」


「君は良い子だね」


「え、そんなこと言われたの初めてですよ。私、皆からは無能って呼ばれてるんです」


と言って身分証明カードを見せた。


「あ....なるほど」


直ぐにその理由を理解した模様だ。


「でも大丈夫だよ。冒険者は実力が全ての世界。冒険者になった人は皆分かってる....魔法スキルが無いのに驚いちゃったけど」


「小動物とか普通の獣の討伐とかはありますか?」


「んー、農作物の被害が酷い場合は駆除依頼が有るけど、魔獣討伐のほうが断然お金稼げるし肉もまあまあ美味しいから....小動物とか普通の獣は討伐しないよ。だから結構いっぱい住んでいるんだ」


「ちょっと聞きたいことがあるんですが、ルブランロイト公国まで行くにはどのくらいお金が掛かるか知ってますか?」


「乗合いの馬車に乗っていけば国境まで二泊、モンテサント市まで二泊ってとこだから六百クロネぐらいかな、余裕を見て八百クロネ程持っていれば行けるよ。乗合の馬車は結構冒険者が利用するから安全でお勧めだよ」


話をしながらてきぱきと登録を済ませてくれた。


「ではギルド登録済ませたので、ランクはFです」


「有難う」


「最初は薬草の採取からやって、身なりを整えてから魔獣の討伐とかに行ってね!」


依頼の掲示板を見て、


『薬草を採取すれば十日程で稼げるか....小動物がいたら、ついでに一匹程狩って

毎日家にテレポートすればお金を使う事が無いしすぐ溜まるな』


 薬草を採取に行った。、小動物も多く住んでいて索敵魔法に直ぐ引っかかった。毎日一匹獲って家に帰った。母は大喜びだ。そして十日で約千クロネ溜まった。


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