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3.いくつか魔法を使ってみた

ユートは図書館司書にお礼を言いサンディモ図書館を出た。

図書館の近くで、人通りの少ない場所を見つけ、そこの地面にテレポート魔法陣を書いた。

掌に魔力を集中し、魔法陣に向けると魔法陣が赤く光り、魔力が見えなくなった。テレポート用のエネルギーに変換されたのであろう。その状態で目と掌を他の場所に向けると、赤い魔法陣の一部記述が変化し、見ている箇所にはもう一つの青色に光る魔法陣が現れた。


『あれがテレポート先だな』


 恐らく実際は魔法陣の形をした、単なる目印であろう。そして、赤色の魔法陣で変化した記述の部分は、青色の魔法陣がある場所の座標に間違いない。


「テレポート」


 一瞬で青色の魔法陣の所に移動した。とても便利な魔法だ。

 図書館にテレポートするためには此処の座標が必要なので、再度テレポート魔法を起動し、その時に設定された座標を記録用の板に書き込んだ。

 再確認のため、そこから少し離れた別の場所から先ほど板に書き込んだ座標を使ってテレポート魔法陣を書いた。掌に魔力を集中し、魔法陣に向けると魔法陣が赤色に光った。どうやら赤い魔法陣から目を離さなければ書き込んだ座標は変更されない。よく考えられた魔法陣だ。


「テレポート」


 期待した通りの位置に瞬間移動した。


『これで、好きな時に此処の図書館で本を読んだり、勉強したり出来るな』


 ユートは魔法に関する今日の収穫に満足しながら家に帰った。


 次の日、ユートは教会の授業がが終わった後、水魔法の実験をした川の場所に行った。使ってみたい魔法をここで練習しようと思ったからだ。


 教本から、照明魔法を探して、その魔法陣を書いた。この魔法陣には、『ライトオン』と『ライトオフ』の二種類の詠唱が記述されていた。

 ユートはこれについて不思議に思った。恐らく、小さな子供の頃から使っていたならば気にしなかったかもしれない。

 普通、詠唱は一つ。魔法を発動するのに必要だから詠唱すると思っていた。なのに、なぜ、この魔法は詠唱が二つなのか?でも、明かりをつけたら消すことも必要。当たり前といえば当たり前だ。ひょっとしたら、これは魔法への指示なのか?実際に魔法を使ってみた。

 魔力を掌に集中し、それを魔法陣に向けた。魔法陣が赤く輝き、魔力は照明用のエネルギーに変換された。照明を設置したい場所に掌と目を向け


「ライトオン」


と詠唱するとその場所に球の光が輝き、周りを照らした。その状態で


「ライトオフ」


と詠唱すると光と魔法陣が同時に消えた。

 思った通りに明かりが灯り、消えた。

 魔法が意思を持っているわけでは無いので、魔法への指示だとしても明かりをつけろと言ったら、仰せの通りにと点灯するはずがない。

 という事は、『ライトオン』詠唱という条件で照明を点灯するという処理を行い、『ライトオフ』詠唱という条件で照明を消灯するという処理を行う『条件分岐処理』を行っているのではないか?

 つまり詠唱というのはある魔法処理を実行するための条件なのだ。では、なぜその魔法処理の分岐を行う為に詠唱というものが使われるのか?

 

『魔法を実行する過程で、魔法の起動後に使用者が決定しなければならない事があり、それを実行するための手段として考えられたもの』


と推定した。


 例えば水魔法の場合、魔法陣に向かって魔力を集中することで水魔法の処理を起動。魔法陣に書いてある処理に従って、集中した魔力を水という物質に変換する。

 その後、タイミングを見計らって水を飛ばさなければならないが、これが出来ないと暴発してしまう。

 そのため、狙いを定めた後『ウォーター』の詠唱で水を飛ばす処理を実行するという条件分岐を行っていると考えられる。


『これを理解できたことは非常に大きいぞ』


と思った。


『次に、狩りに使うことが出来る魔法を習得したいな』


 ユートの家は貧乏なので、値段の高い肉はなかなか食べられない。そこで、自分で獣を狩って、肉を手に入れたい。

 魔法陣の教本から炎魔法の魔法陣を見つけ、その通りに書いた。魔力を掌に集中し、それを魔法陣に向けた。魔法陣が赤く光り掌の魔力が炎に変化した。

目と掌を魔法陣から川に向けると魔法陣の一部記述が水魔法と同様に変化した。それを確認後、


「ファイア」


と詠唱すると炎はその方向に飛んで行った。


 水魔法と同様に炎の飛ばす方向を変えようとすると魔法陣のデータが変わるのは何故だろうか。

 明らかに外部からのデータに影響を受け、炎の飛ばす方向設定を変化させているように見える。

 目と掌を向ける方向でデータが変わっているのならば、それは俺本人のデータだろう。ということは使用者のステータス天恵から飛ばしたい方向のデータを受け取っていると推定できる。

 そこで、ステータス情報を見える状態にし、炎魔法陣を起動した。推定通り、ステータス情報に方角の状態が追加され、目と掌を向ける方向で変化している事を確認した。


炎魔法を狩りのために使えるか試したが、以下の通り、狩りにはあまり向かないという結論に達した。

1.火事になる心配がある

2.炎の飛ぶ速度があまり早くないので遠くから攻撃した場合、避けることが比較的容易

3.相手の死角から炎を飛ばさないと見つかり易い


 次に魔法陣の教本から雷魔法の魔法陣を見つけ、その通りに書いた。魔力を掌に集中し、それを魔法陣に向けた。魔法陣が赤く光り掌の魔力がエネルギーに変化した。目を魔法陣から川に向けた。赤色の魔法陣の記述が変化した。それと共に見ている箇所にはもう一つの青色に光る魔法陣が現れた。テレポート魔法と同じだ。


「ライトニング」


詠唱すると、瞬時に青の魔法陣の上方から閃光が走り川に向け落ちた。たまたま川に泳いでいた魚が感電死して浮かんでいた。これはすごい。

 おそらく青い魔法陣は、使用者だけが位置を確認するために見えるのであろう。なぜなら、魚が魔法陣に気が付けば逃げたであろう。

 でも、なぜ、手元にあった電気エネルギーが青の魔法陣の上方で放電したのだろうか?

 ひょっとしたらテレポート魔法で電気エネルギーをその場所に瞬間移動させたのか?雷魔法陣とテレポート魔法陣を比較すると、予想は的中し、雷魔法陣の記述の中にテレポート魔法陣と思われる記述があり、そのテレポート魔法を発動しているように見える。

 雷魔法陣は魔力をテレポート用のエネルギーと電気エネルギーに変換し、電気エネルギーを青の魔法陣の場所にテレポートした直後、雷を落とすといった方法を取っているのであろう。

 もう一点疑問がある。放電するタイミングはどうしてるのであろう?タイミングがおかしいと、テレポートする前に放電してしまうかもしれない。

 ならばテレポートしたことを検知して放電すればよいことになるな。或いは魔法が発動されたことを検知しているのかもしれない。

これも、色々実験してみれば記述している箇所を特定できるであろう。


『ライトニング』という雷魔法は以下の通り狩りに向いていそうだ。

1.雷として落ちるほどの高エネルギーである。よって当たった時の殺傷能力は高い

2.攻撃は一瞬で終わるので避けようがない

3.上空から地面に落ちるので気が付きにくい

4.外した場合も落ちた地面から足を通して感電する場合がある



 それにしても、どのようにしてテレポートしているのだろうか?電気、炎、光を発生しているのだろうか?

 疑問が残るが、テレポート魔法に限らず、どの魔法も魔力エネルギーを魔法に変換している箇所は魔法陣の言語が分からないので理解は出来ない。多分、言語が分かったとしても理解出来ないであろう。ただ、分かるのは魔法の知識を利用し記述された魔法陣が凄いということだけだ。

 ユートが何とか理解できそうなのは、どのような記述の構成で魔法が発動されているかであり、それが理解できれば魔法を作り替えることが出来るのである。

 ユートは魔法陣の記述を変えて、一つ一つ何のための記述かを解明しようと、実験を繰り返した。


『さて、今日は魚を獲ったからこれでいいか。夕食は腹いっぱい食べれるぞ』


 ユートは嬉しそうに魚を持って家に帰った。


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