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なろうラジオ大賞4

星座早見盤は役目を果たせないが、役に立つ

 12月14日を円盤の縁から探してそこへ19時を重なるように動かして行く。楕円形の窓へ見る事の出来る星座の姿が示されていた。


「まあ、これが無くてもあれは分かるけどね」

 南東の方角に一際目立つ三連星を見て僕は呟いた。一番認識されている星座ではないだろうか。僕はあの砂時計のような星座しか見つける事は出来ない。


 そんな僕が寒空の下で星を見上げようなんて行動をしているのは、偏に大好きなあの子に誘われたからだった。街から少し外れたこの丘の上の公園で19時に待ち合わせをしている。

 今日はふたご座流星群という流れ星が沢山見れる日らしい。寂れているこの公園にここまで人がいるとは思わなかった。


「期待していたんだけどな」

 二人で星を見上げて、甘い雰囲気になんて考えた僕が馬鹿でした。


 それも手を振って近付いて来る彼女の姿を見たらどうでも良くなった。


「なぁに、態々持って来たの」

「だってこれが無いとふたご座なんて見つけられないよ」

 彼女は僕の手にしている星座早見盤をみて笑っていた。僕は反論こそしたが、目は彼女の笑窪に釘付けだった。


「もう、馬鹿ね。放射点がふたご座の辺りに有るだけで、空全体に流れるからふたご座を見付けられなくても大丈夫よ」

「えっ、そうだったの。役立たずを持って来てしまったのか」

 がっくりと大袈裟に項垂れる。この星座早見盤はプラスティックで出来ている上にペラペラなので軽いが意外と大きな円形なので何気に嵩張るのだ。折り畳むわけにはいかないので、普段持ち歩く鞄よりも一回り大きなものへと変えた位だ。


「よしよし」

 彼女が徐に僕の下げた頭を撫で出したのだ。これだけでも持って来たことは無駄ではなかった。

「因みに、あれがふたご座ね。こっちに一人とそっちに一人」

 彼女は夜空をなぞる様に指示した。


「双子なのに、全然対称じゃないんだね」

 夜空に浮かぶふたご座は左右で形が結構違っていた。


「もう、無粋な事は言いっこなしよ。きっと二卵性双生児なのよ」

 そんな彼女もまた可愛かった。


「おっ、来た!」

 僕は三回唱える。三回目の時にはもう消えていたかもしれないが良しとしよう。

「あっ、こっちも流れ星! あーっ、願い事できなかった」

「トロイからだよ」

「もう」

 怒ったのか、彼女は星座早見表を奪うと僕の胸倉をつかんで引っ張った。僕の顔と彼女の顔が近付いて唇が重なった。


 僕は口に出して唱えていたらしい。


 二人の顔を星座早見盤が周囲から隠していたのであった。

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