2*南フランスの軽食、ピサラディエール
あれこれとご縁があって、海外在住のお友だちが多いのですが、中でも親しい人が南仏に住んでいるため、過去何度か訪問したことがあります。
フランスといっても、南仏コートダジュールはパリとは全く違う陽気な気候で、画家たちが愛した青い海が果てしなく広がり「もう帰りたくない」と思えるほど素敵です。しかし、そこは世界のセレブが集まる保養地。あっという間に財布がすっからかんになる、ハイパーインフレな土地柄でもあります。
そのため、食事はどうしてもレストランより軽食がメインとなります(いつも貧乏旅行なので)フランスの軽食というと、クレープやバゲットのサンドイッチなどが思い浮かぶ方も多いでしょう。しかし、南フランスにはご当地ならではの美味しい軽食がいっぱいあるのです。その中で、今回は「ピサラディエール」をご紹介しましょう。
まず、ざっとどんなものかというと、ちょっと厚めのピザのような生地に、飴色たまねぎ、そしてアンチョビとオリーブを乗せたものです。聞いただけで、きりっと冷やしたロゼワインが飲みたくなってきます。白でもいいんですが、南仏ではロゼを好んで飲む方が多いようで、大抵のお店にグラスで置いてあります。
見た目がピザっぽいので、初めは「ピザ・ラディエール」なのかと思っていましたが、現地で綴りを見たら「Pissaladière」でした。一続きの単語なのですね。イタリアのジェノバが発祥だそうです。もともとニース郡はサルディーニャ王国(旧イタリア統一の拠点)からフランスに併合された土地なので、イタリア料理の影響を受けたメニューが多いんですよね。
さて、肝心のピサラディエールのお味の方ですが、これは日本人好みだと思います。甘いたまねぎのまろやかさに、しょっぱいアンチョビのアクセント。そして、ふわっと香るオリーブ。ね、ワインが飲みたくなるでしょう?
お店によってアレンジも色々。たまねぎがペーストになっている店もありますし、サーディンが乗っているのも見かけました。気軽な食堂でも食べられますが、店頭で切り売りを買って、海岸で風に吹かれながら食べるのも最高です。
なお、このピサラディエール、自宅でもかんたんに似たものが作れます。材料は、厚めのピザ生地、またはナン(カレーのコーナーに売っている袋入りのアレです)、飴色たまねぎのレトルトパック(これもカレー売場ですね笑)、アンチョビ、ブラックオリーブ。
オリーブは絶対にブラックで。種を抜いて輪切りにしたものや、半割のものがニースっぽいです。後はお好みで、仕上げのレモンやハーブ類。食べる前にちょっと上等なオリーブオイルを垂らせば、なおいいですね。
作り方は、生地の上にたまねぎをのせ、アンチョビとオリーブを散らすだけ。現地で食べたものは、アンチョビを斜めの格子状に並べているものが多かったです。味付けはシンプルに塩胡椒。アンチョビの塩気があるので、私はごく少量だけにしています。
後はオーブンで焼いて出来上がり。オーブンの機種にもよりますが、私は生地が生なら200度で15~20分、加熱済みの生地なら180度で10分強を目安に焼いています。ここらは様子を見ながらがいいと思います。
これはさっと作れてお酒に合うので、自宅パーティーなどにもおすすめです。先に準備だけしておけば、お客さまの顔を見てからオーブンに入れられます。ただし、オイル分が多いので(特にたまねぎ)ダイエットには向きません。ピサラディエールを食べるときは、カロリーのことは一瞬忘れるのが正しい作法です(笑)