サイコロの証明 順君と組ちゃんの場合、の数
順列と組み合わせの違いがこれで分かれば幸いです。
人生はギャンブルだ。56回目の転生先の体で男は考える。今回は平和な日本に転生できたが今まではそんなに長く生きられないことも多々あった。今は数学教師をしていた。全員初対面の生徒たちの中で一人だけ「知っている」奴がいた。この世で二人だけに与えられた第六感があらゆる転生先でとある魂を教えてくれる。毎回出会うそいつは今、女の子の姿をしていた。今回は数学教師と女生徒という設定らしい。僕らには過去現在未来は存在しない。あるのは前回と今回と次回だけ。なぜか3回転生する度に一度記憶がリセットされる。それでも第六感が働いたしびれるような記憶だけは消えることなく二人は56回目を自覚していた。
「ぜんっぜん分かんない!」
放課後、赤点を取った唯一の生徒が補習で頭を抱えていた。56回目の体は数字を見ると頭痛がする体質らしい。順列と組み合わせの違いをなかなか理解してくれない。3つのサイコロの出目の組み合わせは56通りということを説明したところで彼女が下を向いた。
「これでもう最後なの…?」
第6感まである僕らがサイコロだとすれば3人目っていったい誰だよと思う。
「僕はそう思わない。」
「でも、もう全部の組み合わせが終わっちゃってる。」
「じゃあ賭けをしようか。サイコロの合計が9なら君、10なら僕の勝ちでまだ可能性はあるってことでいいかい?」
何度目かに10になった。
「何かタネがあるんでしょう。」
「ああ、僕は天才だからね。」
「ばかっ。」
「簡単な順列の問題さ。例えば3つそれぞれに前回今回次回と名前を付けて順序まで考慮すれば216通りの出方がある。その中で合計9は25、10は27通り。僕の勝ちだ。」
「はめたわね、だから勉強しろと言いたいんでしょう。」
「ご挨拶だな。君のために216通りもあるって証明したのをもう忘れたのか。」
チャイムが鳴って補習から解放された彼女は笑顔で教室を去って行った。
「まったく君はどうしてそう鈍いんだ。」
教室で男は一人ため息をついた。
男の考え方では順番を意識する。彼女の方を9にしたのはアルファベットで9番目が「アイ」だから。10番目のJはトランプのJ。彼女という1を足せばいつでも12にしてあげられることにも気付いてほしかった。
「二つのどちらかは分かってくれると思ったが。まあ僕の方が二通りも上手だから仕方がないか。」
前世でガリレオと呼ばれた男も恋という難題には手を焼かされる。
分かるかー!…ちなみに経験豊富なギャンブラーは計算しなくても10の方が出る確率が高いことを知っていたそうです。