【39.5】歌と獣と鎖
全くなんで俺がこんなことしてんだよ。こんな事何度考えたか分からないが何度もこの言葉が玉村 和斗の頭をループしてる。ひとまずうるさい姉を部屋までぶち込んだのはいいが問題はそこからだった。
失恋ソングのオンパレードだ。俺も何か曲を入れようと思っても俺が歌うのは5、6曲先と表示される。しかし、それはまだいい5、6曲待てば歌えるんだからな。
『待てば』な……気づいたら割り込みで俺の番が永遠に来ないなんてことがあるなんて思わないだろ普通。
別に姉は歌が下手なわけじゃない何なら上手いそれをひたすら聴くのは苦ではない。『歌詞の通りを歌ってさえいれば』全然問題はない。
歌詞の途中で「あぁ……遊ちゃん」、「どうしてなの遊ちゃん……」、「私なら一生養う」等と間奏の時にポエムのように自分の事さえ言わなければな。
「なぁ、お姉様よ。『歌詞通り』歌えないのか?」
「はぁ?この歌の歌詞を読み解けば間奏でこの歌が伝えたいホントの事を言うのが普通でしょ?」
なんだよ、読み解くって国語の問題でもやってんのか……?
我が姉ながら全く理解出来ない。
「そんな事よりカズ、遊ちゃんとは連絡ついたの?」
「いや、まだだな。何なら俺が1番アイツからの連絡を待ってるまであるかもしれないな」
こんな獣と同じ部屋にいつまでも居たら精神的にも良くない。
「とにかく連絡来たら早く私に言いなさいよ!」
「はいはい。とりあえず一旦トイレ行ってくるわ」
そう姉に伝えて、俺は部屋から出た。
その後、俺は運命と出会った。
そこからはアイツに色々と事情聴取をした。
姉にテキトーに言ったと思われないようにスマホでボイスメモアプリを開いた。
そして今、部屋に戻ってきた。
「なに?アンタ遅かったけどお腹の調子でも悪いの?」
「普通だ。いや、何なら絶好調になったな」
「絶好調?そんなに大きい方でスッキリしたの?」
「ちげぇよ、なんで大便した前提で話進めるんだよ」
「え、違うの?トイレ行ってたのに?」
「いや、まぁもういいや。とりあえず姉ちゃんこれ聴いてくれよ」
そうして俺はポッケからケータイを取り出して、アプリを開いて、さっきの遊里との会話を再生した。
「よくやったとかのいつも通りの言葉は要らないわね」
そうだな、お姉様。そんな言葉よりも帰っていいよって言われた方がいいな。
「礼は要らないって言ったら褒美でもくれるのか?」
「そうね……あ、ドリンク入れて来ていいわよ」
「大体のカラオケはドリンクフリーなんだよ……」
「あ、私カルピスでよろしく」
「そしてちゃっかり使おうとすんなよ!!」
「それよりもアンタこれ」
「いや、いいんだぜ?礼は本当にいらないから……」
そのまま俺を家に返してさえくれればと言おうとしてる時に姉は被せるように言ってきた。
「これ撮る暇があれば私を呼びなさいよ……全くこの弟は」
「俺はアンタが先走らないようにしてるんだが!?」
玉村 和斗魂の叫びがカラオケルームの一室で響き渡った。




