【39】友達から親友そして……
この歳になるとあまり大人の泣き顔なんて見ることは少ないだろうと思ってたが、まさか目の前で大人の、しかも友人の泣き顔を見ることになるとは思ってもみなかったな。
「おい……お前なんで返信返さないんだよぉ……俺たち親友だろ?」
「何が親友だ。会って早々クサイ事言うなよ」
そう言われふとポケットに突っ込んでたケータイを取り出し画面を光らせるとそこにはメッセージが10件以上来ていた。全部、和斗からだったけど。
要約すると、どこにいるんだ?部屋は?お前の歌声が聴きたいな等友達だろうが親友だろうが多分男に送るものではないメッセージが来ていた。
「お前なに?俺の事好きなの?」
「あぁ……今お前に出会えて俺は心底ホッとしてる」
「そうか。とりあえず戻っていいか?」
「お前俺の今の言葉聞いてた?てかメッセージ見た上でその反応?冷たすぎない?」
「はいはい、すまんすまん。それで、どうした?先輩待たせてるから戻りたいんだけど」
「おいおい兄弟もうちょっとだけ俺に付き合ってくれよ」
こんな反応をしてるのに俺のポジションが親友から兄弟にチェンジしてるのは気になるが、俺の肩に置いた手がかなり力が入ってるのか無理に振りほどくことが出来ない。
「よし、わかった話は聞くから手短にしてくれ」
そう言うと和斗はニコッと笑ってケータイを取りだし、画面をスライドたっぷを繰り返し、小声で「これでよし」と呟いてた。
「お前部屋番は?」
「206」
「今まで何してた?」
「歌を歌ってた」
「他には?」
「酒飲んでツマミを少々」
「そうか、ふむふむ」
「なぁ、これなんだ?何かのアンケートか?」
「アンケートと言えばアンケートだな。獣を制御する鎖みたいなもんと思ってくれればいい」
「お前今何してるだよ……」
「本当に何をしてるんだろうな……」
そう言った和斗の目はどこか遠くを見つめていた。
あまり深く関わったら何かに巻き込まれそうだしとっとと戻るか。
「じゃ、俺は戻るから」
そういい手を挙げ和斗に背を向けたその時「おい」と言われ振り返った。
「お前さ、その先輩にはなんかこう恋愛感情みたいなもんでもあるのか?」
「んー、特にないな。なんだかんだ一緒にいて楽しいけどな」
「そっか。まぁお前が楽しめてんならいいや。また今度飲みながら教えてくれ」
「おう」
そう言い俺と和斗はお互いの部屋に歩いていった。
ん?そういえばなんでアイツここにいるんだ?
まぁいっか。早く戻らないと先輩を1人にさせたままだった。そう思い早歩きで戻ることにした。
部屋の前まで着いた俺は先輩が歌ってたらと思いそっと扉を開けた。
「あれ?先輩歌ってなかったんですか?」
「んー、少しのど休憩中」
そう言いながらケータイに落としてた視線をこちらに向けてきた。
「すみません、さっき友人とすれ違いまして」
「あ、なるほどなるほど。あまりにも遅いから飲みすぎたかと思ったよ」
「流石に自分の限界くらい把握してますよ」
と俺は少し笑うように先輩に言った。
「どうします?まだ歌いますか?」
「んー、いや!歌は一旦休みで話そうよ」
えぇ……なんだろうここに来て説教かな。最近勤務態度あまりよくなかったかなぁ。




