【35】焼肉
それから俺と先輩は焼肉の時間になるまで洋服を見たり、ゲーセンで遊んだ。
「そろそろ良い時間になってきたし、焼肉行こうか」
「ですね」
「いやぁ、悪いね。先輩なのに後輩に奢ってもらうなんて」
「不思議なことに顔を見ると全然悪いと思ってなさそうですよ」
ブーブーと震えるスマホを片手に画面をのぞき込むとまた和斗からだった。
「なんだか連絡多めだね」
「何ででしょうね。いつもはこんなにやり取りしないんですけど」
「仲のいい女の子とか?」
「残念ながら全て同じ男からです」
「後輩。私はそっちでも全然良いと思うよ」
「あの……先輩?俺に彼女いた事知ってますよね?」
「なぁに、好みなんていつ変わるか分からないんだし、ありえないことじゃないよ」
「それ言われたらそれまでなんですけど……」
「んで、そのお友達はなんだって?」
「んー、なんかずっと場所を聞いてきますね」
「え、何もしかして向こうの方が気がある感じ……?」
「大丈夫です。俺もあいつも女の子しか眼中にないですから」
先輩は「ふーん。そっかぁ」と言ってブーブー言った。
にしても、今日は本当に多いな……。
先輩と出掛けてること言ったからか?いやでもアイツならそんな時は放っておいて後日話を聞きに来るはずなんだけどな。
とりあえず和斗には『焼肉行って今日は終わると思う』と返した。
それから先輩とはブラブラ話をしながら目的地まで行った。
「後輩」
「なんです?先輩」
「ここ食べ放題じゃない?」
「?当たり前でしょ」
「いやいや、高いお肉食べさせてよ!」
「先輩よく考えて下さい。高いのはなんかこう店内そのものが狭いからあまりはしゃいだりする事ができないじゃないですか」
「安心しろ後輩。焼肉なんてどこもかしこも騒いでうるさい」
「まぁ……そうですね。けど高い焼肉って限界来るの早くないですか?」
「……悲しいけど分かっちゃうな。それ」
「ですよね。それでは行きましょうか」
「そうだそうだ!高いも安いも関係ない!肉を食えればそれでいい!タダ肉!」
そのまま店に入り、席に案内されてコースや飲み物を選んだ。
ちなみにコースはタン食べ放題の1番高いコースになった。
「タンって美味しいのはわかるんですけど、食べるのって最初くらいじゃないですか?」
「いやいや何をおっしゃるかね。タンがあれば他は要らないよってレベルでタンしか食べないよ」
「カルビとかロース食べないですか?」
「んー、多少食べはするんだけど……すぐお腹いっぱいなっちゃって個人的にはタンだけでお腹を満たしたいってレベルなんだよね」
「よく飽きないですね……」
「そうだね!タンの事を愛してると言っても過言では無いね!」
「んじゃ、沢山タン食べないとですね!」
先輩と俺はタンを多めで注文することにした。
流石に俺はタンだけじゃ飽きると思ったからカルビやロース等のものもちょいちょい頼んでた。
「最近仕事はどう?」
「なんかその言葉って凄いですよね。会社の飲み会みたいな切り出しを感じて仕事感強くなりますね」
「実際会社の先輩後輩だしね」
そう言うと先輩は笑いながらタンを網の上に置いた。
「でも、なんだかんだ久しぶり友達とかと遊んだりする時も『仕事どう?』みたいな会話から始まりますもんね」
「学校とかだったら共通の話題なんていくらでもあるけど、社会人となると仕事内容も立場も皆違うから」
先輩の言う通りかもしれない。
久しぶりの次の言葉と言えば「最近どう?」みたいな事しか言えなくて、基本仕事関係の返しが来ることが多い。
「んで、後輩。仕事でもプライベートでもいいけど最近はどんな感じだい?」
「仕事に関してはどこかの先輩のせいで仕事量増えまくって困ってます」
「うんうん!良い先輩を持ったね。若いうちに鍛えられて」
「物は言いようだなぁ……」
「まぁ、仕事関係はここまでにして……プライベートの話題といこうじゃないか」
先輩はそう言うと俺の皿に肉を1枚置いた。
「と、言うと?」
「恋愛の話をしようよ」
そう言うと先輩はトングを置いて俺と目を合わせた。




