【34】賭け事
違和感に気づいたのは、ボウリングを初めて10分くらいしてからだった。
先輩は「えへへ〜」と笑っているが、こんなことがあるものだろうか。
「先輩……これワザとやってます?」
「え?何が?」
「いや、だってこれ……」
そう言いながら俺は自分たちのレーン上にあるモニターに指をさした。
「なんかおかしなことある?」
「え?この数字見ても何も思わないんですか?」
「んー、綺麗な数字だなぁってことくらいしか思わないかな」
「別にこの並びはそんなに綺麗なもんじゃないでしょ……」
個人の結果として見ると全く綺麗な数字とかでは無いのだ。ボウリングにはモニターがあり、そのモニターの上の方には、その時に倒したピンの数が記されてあり、下には7、16、24、29、36と倒した合計のピンの数が記されてある。
別にこれ自体は何もおかしなところではない。
おかしいのはこの数字が上下で並んでいるという点だ。
「えぇ〜?綺麗だよ」
「先輩って本気出せばいくらでもストライク取れたりするもんなんですか……?」
「あははは!ないない!そんなこと出来たら今頃プロだよ」
それもそうだ。でも、いくら何でもここまで同じ数字が並べられたらそんなことも疑いたくなるもんだろう。
「ただ、私はね……」
そう言うと先輩はモニターを見た後に俺を見て、こう続けた。
「君のその時の投げ方やボールが最初にどこに落ちるのかを見て、その真似をしてるだけ。と言ってもさすがに男女だから力の差は多少出るけどね」
「先輩……今すぐにでもプロに行った方がいいです」
「いや、むりむり」
「いやいや、ここまで出来るなら何とかなるでしょ」
「まぁ……多分私はやればできる子だから、ある程度の事はコツさえ掴んでたらできるのよ」
「それで、そんなやればできる子の先輩はなぜそっち側にいかないんですか?」
「困ったことにすごく飽き性な上に体力が無くてね……」
「なるほど……なら、仕方ないですね」
「おい、後輩。そこは『いやいや、先輩なら出来ますよ!』って持ちあげるところじゃないかな?」
「いや、だって……その通りすぎて」
実際先輩は色々な企画を立ち上げ、通ることは多いが、その企画が長期のものとなったりすると急にやる気をなくし、結果部下(主に俺)がそれを引き継ぐことになることがほとんどだ。
「まぁ、そんなこんなで私にはたまにやるくらいが丁度良いのよ」
「そんなもんなんですね」
「んーっと!そろそろ感覚戻ってきたし、本気で投げていこうかな」
先輩は背伸びしながら今日1番の笑顔を俺に見せた。
「あ、ありえねぇ……」
俺もなんだかんだで感覚を掴めてきて、たまにストライクを出したり、スペアを出したりでなかなかの高スコアを叩き出してたと思う。
けど、モニター下にある先輩のスコアはほとんどがストライクたまにスペアといった具合だ。
「ほんとね。君がまさかあんなにボウリングの玉を投げれるなんてね」
「喧嘩売ってます?」
「ごめんごめん、冗談だよ〜」
「いや、そんな笑いながら言われても……」
「さぁ、後輩!ご飯に行こうか」
「そう言うと思って予約取ってますよ」
「え!?私まだお寿司か焼肉か決めてないんだけど!?」
「多分焼肉になるんじゃないですか?お酒は飲むでしょうし、周囲の目をあまりに気にせずに話せますから」
「おぉ〜、そこまで考えてたかぁ!流石だね」
そう言うと、先輩はグッと親指を突き立てていた。
「とは言っても、まだ時間はありますからね。何処か行きましょうか」
「なんか楽しくなってきたね!次はどこ行く?」
「そうですね……」
俺と先輩は目的地も決まってないが、とりあえず歩くことにした。
まだもし見てくれてる方がいれば…嬉しいです




