【26】振袖 心乃枝と恋
また更新が遅れて申し訳ありませんm(_ _)m
幼い頃、好奇心旺盛だった私は、気になったもの、興味あるものには自分が満足するまで首を突っ込むような子だった。そんな私だったからこそ男でも女でも関係なく交流を持ってた。
かと言って男勝りって訳でもなかった。オシャレには興味があったし、綺麗な服、可愛い服を見たり、着たりすると胸が踊った。
私は誰にでも友達として接してた。男の子からしたらそれは特殊な感情を抱かせる行為に繋がっていたのかもしれない。他の女の子よりもスキンシップが多かったように感じさせ、男の子が期待してしまうような行動を取っていたのかもしれない。
そんなことを知らずに繰り返した私は中学生の時に初めて告白をされた。
その子と仲が悪いかと聞かれれば私は笑顔で仲は良い方だと答えるようなそんな子から告白をされた。周りには付き合ってる子なんて居なかったということもあったし、私自身その子とのなんてことない話で笑ってられる今の関係のままでいたかった。関係を変えたくなかった私は彼の告白を断った。
しかし、そういう人の色恋に関する噂というか情報というものはすぐに広まるもので、気づけば周知の事実のようになっていた。そんなこともあって彼とはそれから気まずくなっていき、次第にお互い顔を合わせても何も話さなくなっていた。
それから時は過ぎ……私は高校生へとなった。
高校生ともなると周りの子は付き合い出す子は増え、私の目からもその子たちはとても輝いたように見えた。その周りに影響された私はしばらくして高校で出会ったとある男子と付き合うことになった。
私は少し期待していたんだと思う。周りの子達があんなにも楽しそうにしていたから、きっと恋人という存在はきっと素敵なもので私の世界をもっと色付かせてくれるものだと、そう思っていた……。
だが、蓋を開けて見れば今までの交友関係は制限されるような窮屈な世界になった。では、楽しくなかったか?と聞かれればそうではない。
ただ、私には輝いてたあの子たちのようにはなれなかった。彼氏と言っても私にとっては友達の延長戦上の存在でしかなかった。彼が別の女子と仲良さそうにしても嫉妬はしなかったし、独占欲もなかった。身体を求められるとそんな事しなくてもよくない?と思えていた。私は結局その男子と別れることとなった。元の友達同士で話し、遊ぶ方が私にとっては楽しかった。
私はきっとまだ『恋』を知らないのだろう。
そんな私もいつかは狂おしい程に誰かを好きになり、嫉妬したり、何がなんでもその人を手に入れたくなるようなそんな時が来るのだろうか?
それから私、振袖 心乃枝はいつの間にか恋を知らない大人になっていた。
○ ○ ○
「ふぅ、今日はなんとか遅刻せずに間に合ったな」
俺は朝礼が始まるギリギリに滑り込むように会社に着いた。
「おーっす、向井ギリギリだな」
俺が息を切らしながら自分のデスクに着くと、隣のデスクにいる同期の中村 広大から話しかけられた。
「おっす、中村」
「朝礼が終わったら振袖先輩が『私のところまで来るよーに!』てさ」
「あー、はいはい了解だ」
「良いよなぁ、振袖先輩。可愛いし綺麗だし、俺もあんな人の下に付きたかったわ」
「ほぉ……お前俺があの人からどんだけしごかれてるか知ってて言ってんのか?」
「バカ!お前、あの人からしごきならご褒美同然だろ!」
「お前アホだなぁ……」
そんなバカ話をしながら朝礼を終えた俺は先輩のところまで向かった。近くまで行き、俺の姿を確認すると先輩は手招きをした。
「おはようございます、何用ですか?」
「おはよ〜、用件なんて言わずともわかってるよね?」
「やっぱアレですか」
「うん、ここじゃなんだから少し出て話そうか」
俺と先輩はそれから休憩所の方へと行った。
「朝礼が終わってからすぐに休憩所ってなかなかですね」
「いいんだよ、やる仕事なんてほぼほぼ終わらせてるんだし、君が」
「は……?」
「一昨日の遅刻した日にやってもらった仕事あったでしょ?あれで2、3週間分の仕事は終わってると思うよ」
「すげぇ多いなって思ってたらそんなにあったんですか……」
「細かな確認とかが残ってるから完璧に終わってるって訳じゃないけど、今そんなことはいいのよ」
「告白のやつですね」
「うん、何か策は思いついたかな?」
「策って言えるもんか分からないですけど……」
俺はそれから先輩に秋音と話し合った考えのことを話した。
「なるほどね、人目か」
「人目が集まりやすい駅とかでなら大丈夫と思うんで、そこでサクッとフっちゃって下さい」
「当事者じゃないからって君は軽く言うなぁ……」
「まぁ、本当に策を考えただけですからね」
「……よし、君も来なさい」
「……は?なんで……?」
「策を考えた本人としてはちゃんとそれが通じるか確認は大事でしょ?」
なるほど、確かに先輩の言うことも一理ある。というか多分もし自分の考えたもので一悶着あろうものなら今後の俺の仕事量は更に増えることになるだろう。近くで見守り、もしなんかあった時に別の策を用意出来て、解決出来るならそれに越したことはない。その為には俺自身がその場を見る必要がある。
「わかりました。一応人混みに紛れて見守ることにします」
「君にしてはやけに素直じゃない?」
「今後の事を考えたらそっちの方がいいかなと……」
「うむうむ、君も先の事考え、行動できるようになってきたね。立派な社畜への1歩だよ」
「そこは社畜ではなく、社会人って言って貰えませんかね……」
「社会人の大半は社畜だからね、大丈夫よ」
そう言うと先輩は「ひとまず、ありがとう」と言いその場を去っていった。
「めんどくさいことにならずに早く終わってくれることを祈るか……」
俺は近くにあった自販機でコーヒーを買い、自分のデスクへと戻った。
「おいおい、来て早々に休憩かよ」
俺が片手にコーヒーを持って帰ってくるものだから、中村は俺が休憩していると思ったのだろう。
「ばか、違ぇよ。仕事だ」
「ほぉ〜ん、まぁ、なんでも良いけどさ」
そう言うとチラッと俺のデスクの上を見るように、中村は俺に視線を寄越した。
「おい、なんだこれは?」
「さっき振袖先輩が来て、『戻ってきたらやるように伝えといて〜♪』って」
「さっきまで仕事はほぼないって言ってたじゃねぇか……あの嘘つきめ」
「何もすることがないよりかはすることがあった方がいいだろ?」
「まぁ……それもそうだけど」
俺はその日も残業をして帰るのだった。
恋の形って人によって様々あると思うんですよね




