第2話
第一話の適当さ加減よりは良くなっていると思います(4ヶ月も書けたんだから当たり前だろ)
ちゃぽーん。
どうやら廊下の扉の一つは風呂だったようだ。旅館の個室についているぐらいの大きさで、全部木でできている。タイルと違ってお肌が傷つかないのはいいことなんだが、それ以前に男子用と女子用に…… 分かれていなかった。
「すいません。出てもいいですか?」
「だめ!」
「風邪ひかれたら困る」
両者は息ぴったりに言ってきた。
それもそうだな。青いほうの女に至ってはちゃんとタオル巻いてるし。でも、赤いほうは何で裸なんだ? というかそもそも
「誰やねんお前!」
「知ってるでしょ? 菜希ちゃんのお友達。誠だよ?」
知っている。いやでも今何で裸なんだ。風呂は一つしかないから混浴だとして、どうして濡れてなかったこいつが入ってきてる。もしかして俺が覚えてないけどあっちが覚えてる…… いや、知らんこんなやつ。
「一緒に風呂入る必要ないだろ!」
とにかく、初対面の異性とは普通入らない。
「風邪ひいちゃうでしょ?」
「せめて水着は着ろよ……」
「だって中学生の時の奴しか持ってないもん。サイズあわない」
言われたときに思ったことがあった。場合によっては着れるかも。
「どこの?」
「むね」
「ごめん」
なぜこういう時だけデリケートゾーンにクリティカルヒットするんだ。
「ていうか、そういう問題じゃなくてそもそも異性と風呂に入るという行為がだね」
青い方は湯船の一番端っこで座っているからいいが、こいつは手の届く、いや肌が触れるぐらい近くまで来ている。大問題だ。特に思春期の現役JKはあかんやろ。
「別にいいじゃん。私はおにーさんのこと好きだし。もちろん異性としてね」
「は?」
好き? 少ししか見たことのない男を?
「きもちわるっ」
さすがに一目ぼれとかでも段階は踏む。いくら相手がかわいくてもさすがに違和感が強すぎてそういう目で見れない。見る気もないが。
「そう? まんざらでもなさそうだけど」
後ろから腰に手を回して、そのあれをまさぐってきた。
「ぴにょっ!?」
変な声が出た。
「どこ触ってんだお前!」
思わず立ち上がって大声を出してしまった。
誠は表情を崩さずに、ずっとこちらを見る。タオルを巻いてないことに気づいたのはそのあとだ。
無言でまた湯に肩まで使った。結局三十分ほどこの女は俺に引っ付いていた。お互い湯には強かったようで、のぼせはしなかったが、心なしか出た瞬間に枷が取れたかのようにふらついた。
どういう訳か既にかわいていた服を着たあと、青い女に詰め寄った。
「一体どういうだよこれは風呂場で下品な女に絡まれたんだが!?」
「私まだ着替え中なんだけど」
加古はシャツを羽織った。誠は後ろの洗面台でドライヤーを使って髪を乾かしていた。
「そんなことはどうでもいい」
肌の露出が多くても胸と股が隠れていれば俺の放送コードには引っかからない。ブラも透けてるがセーフ。
「ここどこなんだよ」
あまりにも風呂という日常的なものがあったので忘れていたが、ここは地下。普通の人間は面倒だけがかかる地下に部屋を作らないので、所有者が変人なのは確かだ。
「私が説明しよう」
男の声が聞こえた。どうやら更衣室にしれっと入ってきていたようだ。
「だから誰!」
今度の人間は、誠と違って完全に知らない奴だった。
「俺はここの施設の責任者だ」
「おたくがボス?」
早田 奨と首にかかったカードに書かれていた。明らかな日本人の名前とは違い、どう見たって白人だった。顔の堀は深いし、背も高くガタイもいい。せいぜいアジア系と言い張れる部分は浅黒い肌の色だけだった。
「名前だけなんで純日本人なのさ」
「こっちにも事情がある」
いったいどういう事情だっていうんだ。
とはいえ名前をわざわざ変な風に変える意味が無いので、クォーターなんだろうか。それにしては日本人離れし過ぎだが。
「なぁあれはなんなんだよ」
「あれってどれよ」
「あの剣とか、黒いのとか」
見た目やどういうものなのかは鮮明だが、名前がわからないのでもやがかかったようにもなっていた。
「説明してやる。着いてこい」
男に連れられて部屋を出る。すぐ別のとこのドアに入った
そこはさっきとは違い、雰囲気的にはこういう場所にあっているものだった。四つテーブルがあるが、普通ではなく、具体的に言うならNASAの管制室や消防の通信司令室にある大きな物で、画面付きコンピューターがそれ自体にひっつくようにして乗っている。
床も真っ黒の化学繊維のカーペットで、照明は暗くはないが明るくもない。大きなスクリーンが席が向いている方にあった。
「こういうのでいいんだよこういうので」
「何を期待してたんだ?」
「見る限り物騒な感じなのに、風呂なんかがあってびっくりしたからだよ」
男はドアに一番近い席に座り、足を組んだ。
「そろそろ本題に入っていいか」
俺はそれに頷いた。悪い人では無さそうだが、得体がしれないので怖い。
「まずあの黒いの、黒いのって言うんじゃなくてFEARって言うんだ」
「んな悪趣味な」
苦しみとか苦痛とか、そういう意味の言葉だ。
「悪趣味なのはこいつの習性さ。さっきのは違ったが、人が変化することがある」
「変化……?」
「あれを抜いてまだ人間がなったのは二体しか確認されていない」
「二体しかないんだ」
淡白で適当な返事だった。
「……ずいぶん冷静だなぁ」
別にそういうわけではなかった。ただ、令人とかいう超常的な存在と一緒に住んでいるのに、今更そんなことに驚くのはおかしなことだとは思った。
「こいつの存在が確認されたのは8年前、君がまだ九歳のときだ」
コンピューターから透明のスクリーンが上に出てきて、さっきの映像が出てきた。青い髪の女はぼこぼこにされている。本人はそれを見て、少し考え込んだ。
「分かると思うが、強すぎて生身じゃ倒せないもんだから、あれを作ったのさ」
「あれあれって、名前ないんです」
「アービトレイター」
青い髪の女が割り込んできた。
「開発段階での名前だ。さっきのの識別番号はYD-00 フルティング」
「ゼロゼロ? Y? プロトタイプってこと」
「そんなところ」
「……なんかロボットみたい。これじゃない感」
「名前とかどうでもいいだろ」
自分が持っていたくせに、まったく愛着がないようなのでイラっときた。
「馬鹿だなお前。名前が大事なんだよ名前が、英語で書いときゃいいもんじゃねえし、神話に出てくる名前つけりゃいいもんじゃないの」
とは言うものの、みんながよく言うバルカン砲だって火の神ヴァルカンから来ているし、そもそも英語だって語源が神様だったりするのはよくあることだった。
「第一ですねフルティングって何だ発音がダセエ。もっとこう…… エクスカリバー! モルガン! サイファー! とか」
「わかったわかったわかったから落ち着け」
奨が立ち上がって腕で落ち着くようにジェスチャーしてきた。
話が脱線していることに気づき、深呼吸して落ち着いた。危うく五分ぐらい無駄にするところだった。
奨はもう一度椅子に座って落ち着いた。
「それは令人にしか使えないものだったんだけど」
「俺が使えたと」
「そういうこと」
にやけそうな顔を必死に硬くした。あれを使えれば令人、いやそれ以上に強くなれる。なら皆を守れるはずだ。
「そして、君しか使えない」
「……俺しか?」
少し引っかかった。一人にしか使えない機械なんて普通存在しないだろう。パスワードとかを抜きにしたら。
「なんで」
「わからないけど、君にしか反応してくれないんだよこいつ。何しても」
「じゃあ俺は」
「だから君をここに呼んで、戦ってほしいってお願いしたいんだ」
結論にたどり着くと、どうしていいかわからなくなった。
俺にとっては少ししかない沈黙があった。奨は眉をハノ字にして、口をゆがめた。リアクションが薄かったからだろう。
「乗ってくれると思ったんだけどなぁ」
それからもう少し考えた後、一度決断した。
「何をすればいいか教えてくれ。それから考える」
さすがにどれぐらいの難易度かもわからないものを受けるわけにはいかない。考えうるものでも、軍の特殊部隊めいたシチュエーションしか思い浮かばなかった。
「わかった。じゃあ決心ついたら連絡くれ」
奨はメモ用紙に電話番号を書いて渡してきた。
帰ってよさそうだったので、引っ付く誠を引きはがして部屋を出ようと足を進めた。
呼びかけられたので、振り向く。女がアタッシュケースを片腕で差しだしてきた。
「使え」
目付きが悪かったのでどもりながらも、あまりにもブレがなかったのでそれを受け取った。
俺は少し委縮して、扉を少しだけ開けて隙間に入り込むように出ていった。そのあとに、加古はため息をついて俯いた。
「良かったんですか。あれまで持たせて。あんな軽そうな男に」
「別にいいと思うよ」
どうやら考えがあるようなそぶりだったが、私には奨の考えていることがわからなかったので、仕方なく頭の中から思考を消した。
ちなみにサブタイトルは某日曜仮面のぱく… パロディです。何なのかはわかる人は分かると思います