第2話 射手 9
銃撃戦書きたいなぁ()
時刻は午後十一時。町には色々と建物があるが、そのどれもが明かりをつけておらず、店は既に閉まっていて、聞こえるのは空調や車の通り過ぎる音だけだった。
白刃は駅の前に立って、呆然とする。時刻表の、彼が住んでいるところの駅に行く電車は最後のが十時五十分発と書かれていた。つまり終電を逃したのだ。かなり急いで来たので、少し息が上がっていた。
「や…… や、やらかしたァァァァ!」
彼が遅れたのには色々と理由があるが、カバンの中に入れずに、さっき買ったケースに大事そうに入れてある物が最大の原因だった。
プラモデル屋には、ごく稀だが買ったプラモを作れるスペースがあったりする。白刃の家の近くには、プラモデルを含めおもちゃの品揃えのいい店がないので、遠くまで来ていい店を探していたのだ。その甲斐あってとてもいいお店があった。
そして、最近買った小説に登場する、主人公のロボットを見て、即決で買ってしまったまでは良かった。しかしかなりパーツ数が多く、夢中になって作っているうちに時間が過ぎ、こんな事になってしまったのだ。
(ランナー四十枚とか気が狂ってんのか……!)
「やべえよ」
どう考えても、家まで歩いて帰れる距離ではなかった。しかし、まだ希望はある。
「そうだ」
養父に頼んで、迎えに来てもらおう。どうせ帰るのが遅いんだ、多少時間がかかったって変わらんだろう。
一体どんな仕事していたらこんなに遅い時間に帰るんだと思いながら、白刃は電話をかける。かけてしばらくすると、彼の声が聞こえてきたので、安心した。
「はい。お願いします〜」
何時ものようになれない敬語を使いながら話を終えると、一気に静かになった。
「ちょっとぐらいなんか音しろよ……」
ベンチに荷物と一緒に座って、散々遊び散らかした昼間の事を思い出し、少し寂しくなった。別に学校行ってないので毎日が日曜日だが、日曜日の寝る前に憂鬱になる現象は俺にも当てはまるようだ。
それは楽しい事が終わったからだったかもしれない。ついさっきまでは何も考えなくても良かったが、今からはまたあの事で悩むことになるだろう。いや、あの子を救えるかどうか怖がることになると言った方が正しいか。
「あ〜最悪」
すっかりしおらしくなり、弱音を吐く。これほどまでに自分の嫌いなタイプの人間を羨むのは久しぶりだった。
怒号が鳴り響く。突然のことにびっくりして、サーッとさっきまでの考えが引いて行った。
「うるせぇぇぇぇ!」
声質的にヤンキーの喧嘩かなんかだろう。こんなに夜遅くにまで元気な奴らだ。クソ、人が考え込んでる時に呑気に喧嘩なんかしやがって。なんで仲良くできないんだ?
「くそっ行くしかないか……」
ベンチから立ち上がってすぐ、主人公みたいな行動で、カッコつけてるみたいになり、恥ずかしさで硬直する。いや違う、喧嘩だとどんな人でもやりすぎることがあるから、ほおっては置けないだけだ。
ひとまず自分を納得させて、荷物を置いて声にした方へ向かう。
「こえー」
場所的に、この近くだろう。
公園の生垣から覗き見ると、奥に四人ぐらいの人が見えた。どうやら想像していたより、人数が少ないようだ。
「よくみえない……」
暗くて何をやってるか分からない。さっきの怒号もなんでだろう。
その時、白刃は緊張から最悪のミスをした。生垣の草を鳴らしてしまったのだ。当然、不良達はいっせいに音のなった周囲に注意を向ける。
(やべえやべえやべえやべえ!)
すぐに頭を引っ込めて隠れる。心臓の音が、それでバレると心配になるほど大きくなった。
ひとまず四つん這いで歩いて、生垣にそって回り込む。どうやらそこまでは気づいていないようだ。さて何してたのかな。
「おい逃げたぞ!」
また頭を出そうとしたその時、女の子が生垣を突っ切って走っていった。不良もそれに気づいて追いかけていく。
しかし怖かったのか体が上手く動かなかったのか、少女は転んでしまった。
「あかんっ!」
白刃は彼女と入れ替わりになるように走り、不良に文字通り突撃した。体重は軽いが突然の登場に驚いて、不良は白刃にのしかかられる様に倒れた。
「ちょっ!」
思わず冗談と疑いたくなり、声が漏れる。
二人いたようで、のしかかったままもう一人の方を見ると包丁を持っていた。さすがに武器持ちと戦うことは出来ない。実力不足だし、かなり怖いからだ。
「包丁はヤバいってぇぇえええ」
今度は少女の後を追いかけるように走り始め、転んでいる手を引っ張って無理やり前に進ませる。
「おまわりさぁぁぁん」
白刃は殺されるかもしれなくてとても怖かったので、台風のような速さで逃げていった。そしてそれに不良は追いつけなかった。
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