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第2話 射手 8

「気分転換?」

「そうです!」

バイトが終わって家に帰って、あのポンコツAIに相談してみると、なんか斜め上の答えが返ってきた。


「いいですか? そもそもクソガキ一人でどうにかなる問題じゃないんです」

「開き直るな」

人の命がかかってるのに、遊んでろって言うのか。


「そうじゃないですよ。現状ではどうにもならないので、無駄に疲労を溜め込むより、FEARが現れた時に全力を出せるようにしておけってことです」


「最初からそう言え」

「何言っても文句言われるじゃないですか」

あまりにも会話に低評価が多いので、AIは少し怒った。しかしそれも、結局彼のただの逆ギレなのだが。


「いちいち勘違いされるような言い方するお前が悪い」

水晶の表面の波が少し高くなった。どうやら感情の動きのような物に合わせて、波の動きも変わるらしい。AIのくせに、そんな物まであるのか。


白刃は目を少し大きく開いて、肘をついた。じっと不思議そうな目で水晶を見つめる。


「なんですか?」

少し様子が変わったので、水晶は形を変えて勾玉のような形になった。首を傾げているように見える。


「いや…… お前みたいな意味わからんやつでもまともなこと言うんだな」

「ひどいっ! 殺すぞ」

「おい待て今なんつった」

ひどいっ! のあとにかなり低く言ったので不明瞭だが、暴言を吐かれた気がする。まるで別人が割り込んできたようだった。


「じゃあひとまず気晴らししようかな」

スマホを取り出して、行きたい所への経路を調べる。一緒に行く友達は…… そういえばいなかった。

しかし欲しいものも最近いっぱい出来たし。バイトで稼いでも使わなきゃ意味ないよな。貯めるなんて言ったら絶対使わないし。


白刃はひとまず、頭をリセットすることにした。



「奨さん」

加古がDRSのファクトリーに入る。ファクトリーなんて大層な名前をしているが、実際は大学の研究室程の広さで、 本や模型がそこかしこに置いてある。ひとつ特別な物があるとすれば、部屋の角っ子に置いてあるバカでかい、正方形の機械だ。


アービトレイターを作るための専用物で、どうやら奨さんにしか構造は分からないらしい。ていうか作ってるところ見たことない。


しかし、加古が来たのはアービトレイターの事を知るためではなく、ある事の進捗を確認するためだった。


パソコンの前でずっと作業していた奨が、久しぶりに動き、振り向いた。


「なに?」

「アービトレイターって、私のもありますよね」

「突然だな…… 羨ましいのか?」

まるで兄だけおもちゃを買ってもらった弟みたいに詰め寄ってきたので、奨は嫉妬を疑った。奨は加古が他者に関して、そういう感情を抱くのは見たことがなかったので、少し驚いた。


「違います。必要だから聞きに来たんです」

「必要? 君が?」

アービトレイターは、確かに強いが使えばいいというものでもない。その証拠に白刃は、アービトレイターの性能をあまり活かせてはいなかった。使ってやっと加古と同じぐらいの実力。本来、令人一人なら規格外レベルでない限り、右腕だけ動かしてても勝てるほどのものなのだが。


しかし、加古と白刃が協力すれば、普通にFEARの対処はできる。加古一人で戦う必要性だって、そこまでありはしない。欲しがる理由は、感情以外に見えなかった。


「彼はやっぱり信用できません」

「ああ…… まじか」

彼の嫌な予感が的中した。加古は柔軟に物事を考えられる、いわゆる賢い人間だが、白刃のような頭の悪い人間とは、一緒にいたくないのだ。もちろん戦いの場での話で、別に日頃から人を選んでいる訳では無い。


「自分勝手に行動するし、下手したら私を背中から撃つことだってあるかも」

「ああわかったわかったから」

加古の話が止まらなさそうだったのでブレーキをかけた。実は、作っていない訳では無い。


「あるよ」

「いつ出来ますか」

「もう出来てる」

以外に目的があっさり叶ったので、加古は虚を付かれた。少し嬉しくなって、胸が高鳴る。


「でもひとつ」

それは、彼女のアービトレイターの特性にあった。彼女は超感覚で、周りの動きをほぼ完璧に感知できる。なので加古専用のは、今白刃の使っているように接近戦用にして、これは誠や彼女が場面によって使い分けるための、いわゆる露払いの物のはずだった。


それゆえ基本的に一体しか居ないFEARとは、かなり相性が悪い。彼女の目的であろう自身でFEARを仕留めるには、帯に短し襷に長しだ。結局FEARのとどめは白刃に任せることになる。


「……そうですか」

説明を聞いて、加古は少し肩を竦める。



「大丈夫です。ください」

「わかった」

思ったように感じられて、思ったようにいっていなかった事に正直落胆したが、ないものねだりは出来ないし、まだ使ってさえいないものを評価する気にはなれなかった。


「今から調整する?」

「お願いします」

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