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8.

 教会に寄付した金額を台帳に記入し、サインをする。

 教会では寄付金が不正利用されないように出納簿を記入するようになっていた。そして、それには寄付した物も記載するようになっていたため、ガラスビーズアートを記入する際、私は前世で使っていた言葉のまま、ダイヤモンドアートと記入してしまっていた。


 司祭様には何も言われなかったので、そのままにして帰りの馬車に乗り込んだ。


「クリストファー殿下、イケメンでしたね。そしてマリア様はやっぱりと言うか……。本当にマナーのなってない令嬢でしたね」

 アンナが呆れ顔で呟く。

「私としましては、お嬢様が殿下と仲良くなって信頼関係を築いていただいた方が、よっぽど現実的ですけど」

 まぁ、それをやりたいのは山々なんだけどね。

「そうなんだけど、イベントは起こったわ」

「イベント、ですか?」

「そうよ、バザーの会場でヒロインは王太子殿下を見つけ、駆け寄る。そして言葉を交わすんだけど、殿下にはすでに婚約者がいる。それが私なんだけど。ヒロインは王妃様から注意され泣きながら教会に駆け込む。殿下が、それを見てヒロインに好感を持つようになるの」

 ゲームのイベントを思い出しながら話す。

「何ですか、それ。殿下って馬鹿なんですか?」

 馬車の中で他に誰も聞いていないから良いものを、アンナったらそれは不敬よ。苦笑いするしかなかった。

 そしてヒロインは、教会の中であのアートを見つける。二つあるうちの一つを教会から譲ってもらって、クリストファー殿下に贈る。そのアートに感銘を受けた殿下はますますヒロインを好きになるっていうストーリーだった。

 これがアートを売らずに、教会に飾っておいてもらえるようにした理由。

 でも、この事はどうなるかわからないのでアンナにも秘密にしておく。




 家につくと、来客があっていた。ガマダセル公爵家の次男、アルフレッドだ。

「ごきげんよう、アルフレッド様」

 淑女の礼をとり、挨拶をする。

「こんにちは。エヴァ、聞いたよ。クリストファー殿下の婚約者になったんだってね」

 幼なじみのアルフレッドはお祝いの言葉を伝えに来てくれたらしい。

「ありがとうございます」

 淑女らしく微笑み、返事をする。

「ついでにデビュタントまでは殿下との面会を控えるって、さっき伯爵から聞いたよ」

「そうですわ。今までのわたくしでは、王太子妃など務まりませんから。お妃教育が終わるまで、とお願い申し上げたのです」

 建前の言葉を並べる。

 いや、実は断罪後の人脈作りのためです、なんて口が裂けても言えないけどね。

「そうかぁ。エヴァも、いろいろ考えているんだね。エライエライ」

 不用意に頭を撫でられ、心臓がトクン、と跳ねる。

 どんなに高飛車でワガママな私に対しても、アルフレッドは、あの頃から変わらない、優しい幼なじみだ。

「エヴァ、何かツラいことがあったら、僕に言うんだよ」

 たいして歳は変わらないはずなんだけど、アルフレッドの言葉は私を安心させた。

「それでしたら、私が婚約破棄されたあかつきには、お嫁にもらってくださいませ」

 冗談めかして笑うと、

「じゃあ、早く婚約破棄されておいで」

 と返された。お互いに信頼しあってるから交わせる言葉。本当に安心するわ。 

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