78.
皆さんお久しぶりです。久々の更新です。よろしくお願いします。
「エヴァ……。なんでこんなことに……」
肩に深い傷を負い、民家の一室で未だに目を覚まさないエヴァの傍らで、あの時、エヴァたちと一緒に行かなかったことを激しく後悔した。
エヴァたちを見送った翌日、第三王妃が急に『土地を視察に行く』と言い城を出たと、ミトロン陛下が血相を変えて飛び込んできた。
嫌な予感しかしない。
「陛下……!」
「ああ、馬を使うといい。私も後を追う」
ミトロン陛下に馬を借りることができ、国境の街へ向かって急いだ。
街へ着くと騒ぎが起きていた。
嫌な予感がだんだんと確信に変わる。
「おい、あっちの小屋で火事だってよ」
「何だって?さっき殺人未遂事件があったばかりじゃないか。今日は変な日だな」
街の住民が話していることが聞こえ、もしかしてエヴァたちが巻き込まれているんじゃないか、と不安が大きくなる。
「おい、教会に王妃様がお出ましだってよ」
「へえ、そうかい。アレやるのかな?」
「かもな」
殺人未遂事件も火事も気になるけど、まずは第三王妃の居場所を確認しておいた方がよいと判断し、住民の行く方と同じ方向へ進んだ。
「さっきこの辺で見たって言ってたぞ」
行き着いた教会の中に王妃の姿は見えなかった。
まだこの辺にいるかも知れないと、王妃の姿を探すと、教会の近くで話し声が聞こえてきた。
声のする方へ行ってみると、ナルディが剣を振り上げて、ロザリンドに斬りかかろうとしているところだった。
あっ、と思う暇もなくそこにエヴァが飛び出しできて、容赦なくその刃はエヴァの肩へ食い込んだ。
血飛沫が散り、エヴァの身体が地面に倒れていく。
ロザリンドが悲鳴をあげ、アレクシスとミゲルが駆け寄って来て、ナルディの持っていた剣を蹴り飛ばした。
必死にエヴァの名前を呼ぶと、エヴァの唇が『で』『ん』『か』と動いたような気がした。
騒然となり、野次馬が段々集まってきた。
後ろに第三王妃がいるためか、皆、遠巻きにこちらを見ているだけだった。
辺りをエヴァの赤い血が染めていく。
エヴァの身体を抱きかかえ、その名を声の限りに呼ぶが、その閉じられた瞳が開くことはなかった。
今のエヴァは、ただ寝ているだけのようだった。
肩に巻かれた包帯が痛々しい。
早く目を覚ましてくれ。
「エヴァはまだ目を覚まさないのか?」
「アレクシス……」
アレクシスが私のとなりに腰掛ける。
「なあ、アレクシス……。このままエヴァが目を覚まさなかったら、私は……」
「縁起でもないこと言うな!」
アレクシスに一喝され、ビクッとなる。
「ああ、すまない」
「俺は……、一度失っているんだ。前世で」
「そうだったな」
前世でも、子どもを助けようとして事故に巻き込まれたんだ。
私たちのことも、助けようとして溺れて……。
本当に、そんなところは変わらない。
「人助けをするのは別に悪いことじゃない。だけど、いくらなんでも、自分が身代わりにならなくてもいいんじゃないか?」
私の呟きは誰にあてるでもなく宙をさ迷う。
「でも、そういうところはエヴァらしいよな」
アレクシスの溜め息とともに零れた台詞に、無言で頷いた。
困っている人を放っておけない、例え自分の身を危険に曝そうとも。それがエヴァなんだ。
「エヴァ、早く目を覚まして……」
祈るように、縋るようにエヴァの手を握りしめると、その手は柔らかく暖かかった。
「どさくさに紛れて変なことすんなよ」
「バッ!誰が!」
アレクシスの揶揄うような指摘が、この張り詰めた空気を少しだけ和らげてくれた。
「エヴァ!大丈夫!?」
その時、けたたましくドアを開けてアルフレッドが入ってきた。
「アルフレッド、どうしてここに?」
「アガザエルト国王からエヴァの家に連絡があって、たまたま伯爵邸を訪れていた僕が、様子を見てくる役を買って出たんだ」
「何でたまたま伯爵邸にいたんだ?お前は。確か出禁になっていたはずだろ?」
「いやぁ、それがね、刺繍のことで伯爵に呼び出されて……。今回は大目に見ると仰ってくれたんだ」
ああ、あの刺繍か。今、思い出しても怒りが込み上げる。
「まー、伯爵に感謝だね。これで堂々とエヴァの元を訪れることができる」
ヘラヘラと嬉しそうにしているが、生憎だな。
「エヴァは私のことを愛していると言ったぞ」
「「え!?」」
ガマダセル公爵家の兄弟が声を揃えて驚く。
「何をそんなに驚いている?」
「何で僕だけがいない時に、そんなに話が進んじゃうんだよ……」
がっくりと膝をついたアルフレッドが、アレクシスの足に巻かれた包帯に気付いた。
「兄さん、足どうしたの?」
「ああ、火事に巻き込まれて……」
「火事!?」
それから、アレクシスは昨日からの出来事を話してくれた。




