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71.

「おお、そういや忘れていたよ。ミランダがあまりにも可愛くて」

 その言葉が発せられると同時に私の視界ももとに戻った。

 っていうか、何だか今の台詞、誰かさんに似てるんですけど……?

 王族ってみんなこうなのかしら?

「ミランダ、紹介しよう。こちらはルディスタン国の王太子、クリストファー殿下だよ」

 ミトロン陛下が変装したままの殿下を紹介する。

「え?ミッシェル……?」

 ミランダ王妃がミッシェルを見る。

「今まで黙っていてすみません」

 殿下が変装を解く。茶色の髪から、サラサラのプラチナブロンドが、青い瞳はカラコンを外してルディスタン王家特有のアメジストに戻る。

「あ、あ、……」

 ミランダ王妃は驚きのあまり声もでないようだった。

「ミランダ、少し話を聞いてもいいか?」

 ミトロン陛下がミランダ王妃に問いかける。

「……はい」

 ミランダ王妃が強ばった表情で答える。

「お前はナルディのことをどう思っているんだ?」

「ナルディ……ですか?美しいと思います」

「それだけか?」

「え?それだけですが……」

「では、お前は男同士の絡みとやらが好きなのか?」

「なぜそれを……?」

 多分、殿下がミトロン陛下のところに行った時点で、それはバレてるんだと思うけど。

「お前は、先日までここにいたジョエルを、呪い殺そうとしているのか?」

 そこはストレートに聞いても『はい』と答えないでしょう?普通……。

「そんなこと思っておりません!ジョエルには恋人がいたことを知って、帰したんです」

「ミランダ様は、ジョエルを捜していたのではなかったですか?」

 殿下が切り返す。

「それは、二人に謝りたかったのよ。恋人がいるのを知らずに長いこと引き離してしまっていたから」

「それはまことか?」

 ミトロン国王に問い詰められ、ミランダ王妃は今にも泣き出しそうな顔をしている。

「すまない、お前のことを信じてないわけではない。ただ、ジョエルがルディスタンの王弟を名乗って現れたのは、お前に呪い殺されそうになっているからだと聞いてな」

「な、なんですか?それ……」

 ミランダ王妃は急にキョトンとした。

 この反応、なにも知らないんだわ。やっぱり呪い殺すという話はミランダ王妃の差し金ではないのね。

「呪術師にジョエルたちを呪い殺させると言っていたのは貴女ではなかったのですか?」

 殿下の問いにミランダ王妃が否定の仕草をする。

「呪術師?そんなものいるんですか?……彼には幸せになってもらいたいと思っていたのに」

 じゃあ、なぜジョエルは呪術師に呪い殺されるって言ったのかしら?

 目的はミランダ王妃に謝罪させるために立場が必要だったと言っていたような気がするんだけど……。

「ジョエルがもしミランダ様に復讐したとして、誰が得するんでしょう?ジョエルはミランダ王妃に謝罪させたいと言っていましたので」

 思わず呟いた言葉は、ミトロン陛下にも届いていたようで……。

「私のミランダがいなくなって喜ぶのは、第二、第三王妃とその派閥……」

「そして、ミランダ様が男性同士の絡みが好きだと知っている人物が、性癖がバレるのを恐れたミランダ様に呪い殺されると、ジョエルに嘘を吹き込んだ……」

「私にも心当たりがある。ミランダ様から逃げたら殺されると脅されました」

 殿下が、何でもないことのようにサラッと言うから、スルーしてしまうところだったけど、それ。重要じゃない。

「それ、誰に言われたんですか?」

「ナルディです」

 ナルディってあの女の子みたいな男!?

「そんな、あの子が……」

 ミランダ王妃にとって、ナルディは侍従ではなかった?

「ナルディはミランダ様を愛していると言ってましたが……」

「ミランダ、まだ、ナルディが何かしたわけではない。ちゃんと調べるよ。ミランダを愛してるとか、許さん」

 いやいや、ミトロン陛下?私情入りまくってませんか?

「とにかく、ナルディには気取られないように。調査が済むまでは」

 ミトロン陛下の言葉に皆で頷く。

「あ、あの……今さらですけど、ルディスタンの王太子とは知らずに失礼なことをしてしまって……。本当にごめんなさい」

 あ、そういえばそうだったわね。

「こちらこそ、騙していたわけですし、調査のためとはいえ、すみません」

 お互いが謝罪によって和解したところでミトロン国王はミランダ王妃の頭をポンポンと撫でた。

「お前は、いつもの虚勢を張ったような喋り方より、今の方がいいぞ」

 その言葉にミランダ王妃が照れている。こうしてみると、十九歳なのも頷ける。

「ところで、アガザエルトの『呪われた土地』を探られたくなかったのはどうしてか教えていただけますか?」


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