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65.

「しっ。静かに」

 私の口を塞いだ人物を恐る恐る見上げると、茶髪に青い瞳の人物と視線がぶつかった。

「で、でん……んっ!」

 私の口を塞いでいた手が離され、代わりに殿下の唇で口を塞がれた。

 何で行方不明になっていた殿下がここにいるの?何で変装したままなの?思うところはあるけれど、殿下が無事だった。それだけで私の胸は満たされていった。

 二度と離すまいと力強く抱き締められ、私も殿下の背に手を回した。

 どれくらい抱き合っていたか分からないけど、その時間は一瞬にも永遠にも思えた。

 唇が離れ、吐息混じりに

「会いたかった……」

 と囁かれる。

「私も、お会いしたかったです」

 色々と聞きたいこともあるのに、殿下への思いが溢れてしまう。

 愛しい、殿下……。




「エヴァさん、何か見つかりましたか?」

 いつの間にかミゲルが二階へと来ていて、殿下と抱き合っている姿を目撃されてしまった。

「で、殿下?」

 ミゲルが駆け寄って来て、殿下に向かって膝を折る。

「ミゲル、久しぶりだな」

「殿下、こんなところで何をしていらっしゃるんですか?」

 私を抱き締めたまま、殿下が顔だけをミゲルに向ける。

「見て分からぬか?エヴァと愛を育んでいるんだ。無粋な奴だな」

 殿下の返答は突っ込み所満載だった。

「そんなことを聞いているんじゃありませんよ殿下どれだけ心配したと思ってるんですかランシュアの後を追ってあの日殿下もアレクシスのいる国境に現れるはずだったのにいつまで経っても現れないしもしかしたらどこかで垂れ死んでいるのではと思っていたんですよ」

 やっぱりというか、ミゲルの息継ぎをしない突っ込みが入る。

「分かってるよ、そんなに喚きたてるな。私はエヴァ不足で死にそうだったんだぞ。そっちこそ少しくらい気を利かせろ」

 殿下は私の額にキスを一つ落とすと、ミゲルに向き直った。

「要するにミランダに捕まっていたんだ」

「何だって!?」

 ミゲルが驚愕の声を上げる。私は驚き過ぎて声が出なかった。

「ランシュアの後を追っていたら、とある貴族の邸にたどり着いた。それがジョエルの家だ。その家を監視していたら、眠り薬を使われてね。そしてここに連れてこられた。

ミランダが私のことを気に入って、下僕になるなら命は助けてやると言ってきたから、そうしたんだ」

「殿下が下僕とは……」

 ミゲルはショックを受けているようで、私も殿下がそのようなことになっていたことに驚きを隠せなかった。

「ミランダは男同士の絡みが好きで、もう一人の従者と良く絡ませられていたよ」

 殿下、もしかしてその従者と……?

「しかし、相手が男とキスするなんて死んでもごめんだという奴で、そう見えるように演技をしていたんだよ」

 実際にキスとかなかったのね、安心したわ。

「とにかく、ミランダは自分の性癖が世に知れ渡るのを恐れている。だから、ランシュアやジョエルを呪い殺そうとしているんだ」

 それがミランダ王妃の秘密?それだけのことで呪い殺そうとするかしら?

「それと呪術師についてだが、実際に呪う人と接触しない限り呪いはかけられないそうだ。つまり、直接何かをしない限り、呪いは起きない」

「そうなのね、じゃあジョエルとランシュアはルディスタンの王宮にいる限り安全なのね」

 私が言うと殿下はにっこり微笑んで頷いた。

「それにしてもジョエルって男が陛下に切りかかったときは焦りましたよ」

「それで?父上は無事だったのか?」

「はい、エヴァ様がジョエルに体当たりをして、心臓からは短剣が逸れましたが、腕を怪我をされまして……。でもその時のエヴァ様の応急処置が手早かったので事なきを得ました」

 なぜかミゲルが誇らしそうに話す。

「それで……それでエヴァには怪我はなかったのか!?」

 ものすごい剣幕で肩を掴まれてしまった。

「だ、大丈夫です、ほらこうしてピンピンしてるじゃないですか」

 殿下に安心してもらおうと、笑顔を向ける。

「そうですね、元気そうで……。おや、ここはどうしたの?首のところ。私が付けたキスマークではなさそうだけど?」

 ロザリンドの手形の痣がだいぶ薄くなったとはいえ、所々痕が残っているので首もとを隠すように巻いていたスカーフを捲られる。

「殿下、一体いつの間にエヴァ様を手篭めにしたんですか?」

 ミゲルの地を這うようなうなり声がするけど、今はこの痣のことを説明しなきゃいけない。

「これは、ロザリンドが薬のせいでおかしくなっていたときに……」

 私は、ロザリンドの薬の件と、薬の元になるものがアガザエルトの国境付近の街で採れること、その国境付近の住民の異変について調べていることなどを話した。

「そんなことになっていたんですね」

 殿下は溜め息をつくと

「そんな危険なことにエヴァが巻き込まれていたなんて……」

 と項垂れ、私をギュっと抱き締めた。

「それと、私には見張りが付いていてね、さっき撒いてきたから今頃騒ぎになっているかもしれないね」

「殿下、そんな大事なことは先に言いましょう」

「あはは、ごめんごめん。エヴァがあまりにも可愛かったから」

 そこ、私のせいなの?

 とにかく、この図書館から部屋に戻ることにした。

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