59.
「エヴァ、アンナから連絡を貰ったが、どういう事だ?」
アンナの連絡を受けたアレクシス様はすぐに駆けつけてくれた。
「アレクシス様、ロザリンドを助けてください。おそらく麻薬中毒です」
「何だって!?」
アレクシス様も驚愕を隠せないでいた。
私はロザリンドから聞いた話と、ロザリンドの症状を説明した。
「もし、そんなものが流通したら大変なことになる。知らせてくれてありがとう、俺は先に王宮へ向かうぞ」
ロザリンドを馬車に乗せ、一緒に王宮へ向かう。
「ロザリンド、大丈夫?」
馬車に揺られながら、ロザリンドを気遣う。しかし、ロザリンドは急に笑ったり、泣いたりと感情が不安定だ。そして、
「エヴァ様が…………様を弄んだりするから……」
ロザリンドの呂律は益々怪しくなっている。
「エヴァ様が悪いのよ、あの方を弄んだりするから……」
ロザリンドがクワッと目を見開き私の首に手をかけ、その手に力を込めていった。
「や、やめて……ロザ……」
咄嗟のことで身動きできず、首を絞められる。どこからそんな力が出るのかって思うほど力を込められ、段々と意識が遠退いていく。
もうダメだ、死ぬ……と思ったとき、馬車がガタンと揺れた。その揺れのおかげで、ロザリンドは馬車の中で転げ、私の首から手が離れた。
「……はぁ、はぁ、はぁ、た、助かった……」
ロザリンドは、転んだ拍子に頭をぶつけたのか、意識を失っていた。
王宮につくと、アレクシス様とミゲルが待っていてくれた。
王宮につくなり、アレクシス様は私を見て悲しそうな顔をされた。
「エヴァ、首……大丈夫か?」
私の首にはくっきりとロザリンドの手形がついていたからだ。
私は陛下へお目通りが叶い、ロザリンドの身柄をミゲルに預けて、陛下の元へと向かった。
「陛下、急にお訪ねして申し訳ありません。至急お話したいことがございます」
陛下の前で、最低限のマナーで挨拶をし、ロザリンドが使った薬について話した。
「では、エヴァ。その植物がその幻覚作用などがあるのはどこで知り得た?」
「あ……えーと、以前読んだ本に……」
もう、こんな緊急事態にそこ重要じゃないでしょう?
「とにかく、ロザリンドは薬が抜けるまで軟禁しておかないと、何をしでかすか分からないのです。エヴァの首の痣はここに来る途中、ロザリンドにつけられた痕です」
私の首に付いている生々しい痣を見て、陛下はロザリンドの身柄を預かることを了承してくれた。
ここなら薬師もいるし、麻薬の情報も他に漏れる心配はない。後はロザリンドの体から薬が抜けるのを待つだけだわ。
「ロザリンドさん、気がついた?」
アレクシスが急遽、エヴァ様がロズウェル商会のロザリンドを連れてくるから、身柄を預かって欲しいと言って来たときには何事かと思ったが、ロザリンドさんは気を失っていて、エヴァ様の首には手形の痣がついていて……。ロザリンドさんが薬の影響で正常じゃないから 目が覚めても決して責めたりしないで、と念を押された。
ロザリンドさんを部屋に運び、アレクシスに指示された通りに割れたりして危険なものを撤去した。
「う……ん…………。ここは……どこ……?ってぎゃああ、ミ、ミゲル様!?」
ロザリンドさんは気が付くなり、叫び声を上げた。
「やあ、気分はどうかい?」
務めて穏やかに声をかけると、彼女はかすかに震えていた。
「わ、私は……一体何を……?」
ガタガタ震える彼女に上着を掛けてやる。
「大丈夫?エヴァ様が王宮まで連れてきてくださったんだ。憶えてる?」
「あ、あの……ご、ご迷惑をお、おかけ、しまして……申し訳……ありません……」
このロザリンドさん……、目の下に隈が出来てる。まるで活気がなく、虚ろな表情。アガザエルト側の国境付近の住民たちのそれと似ている。
まさか……?
「あ、あの、薬……、バッグの中に薬があるので……」
彼女がどこか落ち着かない様子でキョロキョロする。
しかし、預かったのは彼女の身柄一つだけで、バッグなどは何も受け取っていない。
「すまない、君のバッグなどは預かってないんだ」
私がそう告げると、ロザリンドは余計に震え出した。
「あれが……、あれがないと落ち着かなくて……」
その薬とやら、調べる必要がありそうだな。おそらくアレクシスとエヴァ様が陛下には報告しているだろうが……。
「あ、あの、ミゲル様?」
ロザリンドさんの落ち着きのなさは一体どうしたことか。
ロズウェル商会が王宮に取引に来ていたときのロザリンドさんはもっと堂々としていたのに。
「大丈夫だよ、ロザリンドさん。貴女は薬なんかに頼らなくても、いつも落ち着いていて自分の仕事に誇りを持っていらっしゃったではありませんか」
肩に手を置き励ます。すると彼女がいきなり抱き付いてきた。
「ミゲル様、ずっとお慕いしておりました……。それなのに、エヴァ様に弄ばれてお可哀相に……」
やはり、いつものロザリンドさんではない。
もしも、想いを寄せていたとしても、こんな突飛な行動を彼女がするはずがない。
その薬、アガザエルトが関係していたら、調べるのは困難になりそうだと、違うことを思いながら、私に回された腕をはずそうとしたが、普通の女性の力とは思えない程の力で固定されていた。
これは厄介なことになりそうだな。
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